天才勇者は、二度目です。

秋良

文字の大きさ
1 / 3
0.プロローグ

1.別れ

しおりを挟む
「本当に……ですか?」
空一面に広がる数多くの星。
沢山の木に囲まれた森を抜けた場所。
そこに、俺と彼女の二人。
対峙していた。

半袖と半ズボン。
俺の格好は、信じられないほどラフ。
それに対し、彼女は薄めのピンクに身を包んだドレス姿だった。
まるで、どこかのお姫様のように感じる。

空には大きな満月が見える。
真夜中なのに信じられないほどに明るい。
金に輝く、彼女の髪色。
それが実に印象的だった。

「あぁ、すまない。こればっかり……はな。ここにいる、ことは出来ない」

彼女は、悲しい瞳をする。
別れは悲しい。
俺もその気持ちは同じだ。
しかし、これだけは変えることは出来ない。
それがこの世界のルールだからだ。

最初は、こんな気持ちになるなんて思わなかった。
帰りたい。
その気持ちだけだった。

だが、今は別れが悲しい。
ここまで強く思ったことは初めてだった。

「ここは、楽しかった。俺の夢のすべてだった」
「だったら!?」
「ここは平和になった。俺の意思一つで決めていいものではない」
「ですが……」
「見ろよ、満月。綺麗だろ?」
「はい……」

彼女は一粒、涙を零す。

今日しかない。
満月の日である、今日でなければ。

「だからな。今日で、お別れだ」
「ど、どうして……そんなに強く生きられるんですか?」
「俺の強さか……。別に俺は強くなんてねぇーよ。別れは悲しい。この世界は俺のすべてだったからな」
「じゃあ」
「さっきも言ったはずだ。俺は別世界の住人。俺がいたら、この世界は一生平和にはならない」
「そうね……。ごめんなさい」
「いいさ。この世界は、変わる。俺がいなくても……君と彼らがいれば」
「そうね。そう、信じているわ」
「勇者である、俺が言うんだから間違いないさ」

この場所からは、広大な大地が見受けられる。
どこも思いである場所ばかりだ。

俺の足元には、大きな魔方陣。
これは、満月の日。
そして、日付が変わると同時に稼動する。
時間はもうない。
日付が変わる数分前。
魔方陣から光が漏れ始める。

「この地に栄光を」
「うんっ、この地は私が変えてみせる。もっと良くなるために」

徐々に光は強くなる。
俺自身、眩しいと感じるまでに。

「こんどこそ、お別れだ」
「はいっ! ありがとう……本当に」

その後、俺の意識は完璧に失った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

処理中です...