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第七章
立太子に向けて
しおりを挟む「イリスレインを立太子するにあたって、まずは性をグレイウォードに戻すかい? もともと、君の母君もグレイウォードだったんだよ」
翌日の朝餐の場で、国王がほのほのとそう言った。
ラズベリーやブルーべりーの入ったヨーグルトを食べていた手を止めたレインは、しばしの間、なんと返すべきかわからなくて口ごもってしまった。
「……私は、アンダーサンのままでいたいです。育ったのは、アンダーサン公爵家ですから」
ようやっと絞り出すように口にした言葉に、国王はそうか、そうか、と笑う。昨日王城に泊まっていたユリウスが心配そうな目を向けてくるのにほほえんで、レインはヨーグルトに混ぜられたブルーベリーをスプーンですくって食べた。
正直、よくわからない。産みの母、本当の父と同じ姓になるということと、母のあとを継いで女王になるということに不安を覚えるのは、昨日見た夢のせいだろうか。
「レイン」
「あ……」
呼ばれて顔をあげる。
気付けば朝餐は終わっていて、ぼうっとしているレインを、ユリウスが気遣うように見ていた。
「ユリウス様……」
「急ぎの用があるとかで、陛下は行ってしまわれたよ。……レイン、大丈夫かい?」
「大丈夫、なんでしょうか。私、今も迷っていて……」
伏せた目の先に、自分の震える指先がある。
ユリウスがそっとその上に手を重ねて、優しく言った。
「女王になるのが、怖い?」
「わかりません。私が女王になるべきなのか、女王となって、たくさんの人の生活を背負う覚悟があるのか、わからない……」
レインの言葉に、ユリウスは「そうか」と静かに言った。
否定も肯定もされなかった。
それが、レインが何を、どんな道を選んでも許してくれるのだというようで、胸があたたかくなる。
「レインは、そう言えば行ったことがなかったね。……行ってみようか」
「どこへ……?」
レインの質問に、ユリウスは微笑んだ。
「王家の墓へ」
――君の、父君と母君が眠る場所へ。
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