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この日は、任務で厄介な魔物を相手にして腕を負傷してしまった。任務地で応急処置を済ませて、騎士団本部の医務室に急いで駆け込む。魔物の鋭利な爪で抉られて、正直、痛い。
「ガイア、ごめん、ちょっといいかな」
医務室をノックして勢いよく部屋に入ると、机に座るガイアのすぐそばに、白衣を着た女性がいた。軽くウェーブのかかったブラウンの髪に綺麗な顔立ちの女性だ。
(うわ、近い)
背後からガイアを覗き込むようにしているその女性は妙に色っぽい。なんだか見てはいけないものを見てしまった気が気がして慌てて目を逸らすと、私に気づいたガイアが慌てて女性から離れるように距離をとる。女性はその様子に一瞬悲しげな表情を見せるが、私に視線を移すとうっすら笑みをこぼした。
「ニーナ、どうした……って、その腕!怪我したのか!?」
「あ、ええと、うん。怪我しちゃった。ごめんね、お取り込み中」
「は?いや、なんか誤解してるようだけど……」
ガイアが慌てて何かを言おうとすると、それを制するように女性が口を開いた。
「ガイア、緊急なんでしょう?私はもう出るわね。また来るわ」
「え?あ、ああ」
女性はそう言って私のすぐ横を通り抜けてドアへ向かう。私とすれ違う瞬間、私を見てまたうっすら笑みをこぼしたけど、なんなんだろう。胸がざわつく。
「ニーナ、早くこっちへ!椅子に座って」
ガイアにそう言われて椅子に座ると、ガイアは手際よく応急処置された包帯を巻き取っていく。包帯が取れると、ガイアは眉間に皺を寄せた。
「随分と酷い……魔物の爪か?」
「うん、避けきれなくて、腕だけやられちゃった」
「魔物の種類は?」
「ええと……」
ガイアは私にその時の状況を確認しながら、両手を患部にかざして治癒魔法をかけてくれる。ほんのり温かさが伝わってきて、それがどんどん全身に巡っていく。ああ、ガイアに治療されると、なんだか安心する。ホッとして目を瞑っていると、瞼の裏側に映っていた光が段々と弱まって消えたのがわかった。
「よし、とりあえず傷は塞いだ。だけど、今夜は熱が出るかもしれない。屋敷に戻ったら絶対安静だからな」
えっ、傷が塞がって終わりじゃないんだ?私が渋い顔をすると、ガイアはフッと優しく微笑んだ。
「大丈夫、俺がいるんだから心配するなよ」
「……ん、わかった」
そうか、今まで熱を出しても一人でなんとか凌ぐしかなかったけれど、今はガイアと一緒に住んでいるんだった。
「そういえば、さっきの人はいいの?なんだか親密そうだったけど」
「え?ああ、レイムのこと?彼女はここの医療事務官だよ。医務官の補助をしてくれてるんだ。もちろん、俺だけじゃなくて他の医務官の補助もしてる」
「へえ、そうなんだ」
そういえば、何度か廊下ですれ違って挨拶したことがあった気がする。ここに来るときは大体が怪我をしているか定期的にガイアに健康チェックをしてもらうかだったから、ガイア以外の人間についてはほとんど知らなかったな。てゆーか、ただ単に興味がなかったんだと思う。
それにしても事務官って、医務官にあんなに距離が近いんだ?あんな色っぽい女性があんな距離にいて、ガイアはドキドキしたりしないんだろうか?さっきの光景を思い出して、なんだか胸がモヤモヤする。
「ニーナ?顔色が悪いけど、大丈夫か?気分が悪いならちゃんと言えよ」
「え?あ、ああ、ううん。大丈夫。治療、ありがとう。戻るね」
「……ああ、無理はするなよ。帰宅申請は団長に俺から出しておくから、早く帰るんだぞ」
「わかった」
「ガイア、ごめん、ちょっといいかな」
医務室をノックして勢いよく部屋に入ると、机に座るガイアのすぐそばに、白衣を着た女性がいた。軽くウェーブのかかったブラウンの髪に綺麗な顔立ちの女性だ。
(うわ、近い)
背後からガイアを覗き込むようにしているその女性は妙に色っぽい。なんだか見てはいけないものを見てしまった気が気がして慌てて目を逸らすと、私に気づいたガイアが慌てて女性から離れるように距離をとる。女性はその様子に一瞬悲しげな表情を見せるが、私に視線を移すとうっすら笑みをこぼした。
「ニーナ、どうした……って、その腕!怪我したのか!?」
「あ、ええと、うん。怪我しちゃった。ごめんね、お取り込み中」
「は?いや、なんか誤解してるようだけど……」
ガイアが慌てて何かを言おうとすると、それを制するように女性が口を開いた。
「ガイア、緊急なんでしょう?私はもう出るわね。また来るわ」
「え?あ、ああ」
女性はそう言って私のすぐ横を通り抜けてドアへ向かう。私とすれ違う瞬間、私を見てまたうっすら笑みをこぼしたけど、なんなんだろう。胸がざわつく。
「ニーナ、早くこっちへ!椅子に座って」
ガイアにそう言われて椅子に座ると、ガイアは手際よく応急処置された包帯を巻き取っていく。包帯が取れると、ガイアは眉間に皺を寄せた。
「随分と酷い……魔物の爪か?」
「うん、避けきれなくて、腕だけやられちゃった」
「魔物の種類は?」
「ええと……」
ガイアは私にその時の状況を確認しながら、両手を患部にかざして治癒魔法をかけてくれる。ほんのり温かさが伝わってきて、それがどんどん全身に巡っていく。ああ、ガイアに治療されると、なんだか安心する。ホッとして目を瞑っていると、瞼の裏側に映っていた光が段々と弱まって消えたのがわかった。
「よし、とりあえず傷は塞いだ。だけど、今夜は熱が出るかもしれない。屋敷に戻ったら絶対安静だからな」
えっ、傷が塞がって終わりじゃないんだ?私が渋い顔をすると、ガイアはフッと優しく微笑んだ。
「大丈夫、俺がいるんだから心配するなよ」
「……ん、わかった」
そうか、今まで熱を出しても一人でなんとか凌ぐしかなかったけれど、今はガイアと一緒に住んでいるんだった。
「そういえば、さっきの人はいいの?なんだか親密そうだったけど」
「え?ああ、レイムのこと?彼女はここの医療事務官だよ。医務官の補助をしてくれてるんだ。もちろん、俺だけじゃなくて他の医務官の補助もしてる」
「へえ、そうなんだ」
そういえば、何度か廊下ですれ違って挨拶したことがあった気がする。ここに来るときは大体が怪我をしているか定期的にガイアに健康チェックをしてもらうかだったから、ガイア以外の人間についてはほとんど知らなかったな。てゆーか、ただ単に興味がなかったんだと思う。
それにしても事務官って、医務官にあんなに距離が近いんだ?あんな色っぽい女性があんな距離にいて、ガイアはドキドキしたりしないんだろうか?さっきの光景を思い出して、なんだか胸がモヤモヤする。
「ニーナ?顔色が悪いけど、大丈夫か?気分が悪いならちゃんと言えよ」
「え?あ、ああ、ううん。大丈夫。治療、ありがとう。戻るね」
「……ああ、無理はするなよ。帰宅申請は団長に俺から出しておくから、早く帰るんだぞ」
「わかった」
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