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「こんにちは、ニーナさん」
「……こんにちは」
腕の怪我が治ってから一週間が経った。この日、私は健康診断用の書類をガイアに渡そうと医務室に行こうとして、廊下でレイムさんとばったり会ってしまった。
「ガイアなら今は外出してます。何かご用ですか?」
「えっと、健康診断用の書類を記載したので、持ってきたんですけど」
「ああ、それなら私からお渡ししておきます」
レイムさんはそう言ってにっこりと微笑むと、書類を受け取った。
「それじゃ、よろしくお願いします」
「あ、ニーナさん」
なんだかここにいたくない、早くこの場から立ち去りたい。そう思ってレイムさんに挨拶してそそくさと退散しようとしたけれど、レイムさんがそんな私を呼び止めた。えっ、何……?
「少しお話よろしいですか?ガイアのことについて」
ええ、嫌ですけど……。でも嫌ですとも言えないから、仕方なく私はレイムさんのあとをついていった。レイムさんが常駐しているらしい事務室に入ると、誰もいない。そして、着席するよう促される。うう、座りたくない、早くこの場から立ち去りたい!
「あの、お話というのは?」
「ニーナさん、ガイアの婚約者なんですよね?」
真向かえに座るレイムさんの顔は、いつもの美しい笑顔ではなく真顔だった。うわ、なんか怖い……!
「どうしてニーナさんが婚約者なんでしょう?」
「……と、言いますと?」
「ニーナさんはガイアと元々親しいですけど、それはあくまでも騎士と医務官としてですよね?それなのに、突然婚約したと報告されて、驚いたんです。ガイアは婚約者なんて作らない人だと思っていたから」
ああ、まぁ、そうですよね。私だって驚きましたよ。でもそんなこと言えるわけがない。私が戸惑いながらどう言おうかと悩んでいると、レイムさんがさらに言葉を続ける。
「こう言ってはなんですけど、ニーナさんは騎士としてはお強いですし立派かもしれませんけど、女性としての魅力が足りないでしょう。そんなニーナさんと婚約だなんて有り得ないと思うんです。絶対、何かありますよね?」
うっ、やっぱりそう思うんだ?でも、はい、あります、なんて馬鹿正直に言えるわけがない。それに、レイムさんてばサラッと失礼なこと言ってない?
「……レイムさんてガイアのこと、その、好き、なんですか?」
思わずそう聞くと、レイムさんはチラッと私を見てから腕を組み、足を組む。うわぁ、なんだろう、ただそれだけなのに、色気がすごい!
「それをあなたに言う必要が?とにかく、私はずっとガイアの側で仕事をご一緒してきました。そんな私より、あなたが選ばれたことがよくわからないんです」
不服そうな顔でレイムさんは言った。その気持ちはわからなくはないけど、でもそれを私に言われたところで私がどうこうできるわけじゃないんだけどなぁ……。
「そう言われましても……」
「今からでも、辞退してくださいませんか?」
「辞退?」
「そう。あなただって、ガイアの隣にいるのが自分なのはおかしいって、心の底では思っているんじゃないですか?それに、他の人たちだってみんなそう思ってますよ。ガイアにあなたは不釣り合いだって」
最後の言葉に、胸がズキッと痛んだ。ガイアに私は、不釣り合い。そんなこと言われなくたってわかってる。私みたいな魅力が皆無な女なんかより、レイムさんみたいな綺麗で色気があって仕事のできる人の方がガイアにはお似合いなのかもしれない。それに、他の人だって心の中ではみんなそう思っているのかもしれない。
「やっぱり、そう思っているんでしょう?だったら、今からでも遅くないですよ。身を引いてください」
私の表情を見て確信したのだろう。ね?と嬉しそうにレイムさんは微笑む。その微笑みが憎らしいほどに綺麗で可愛らしくて、私はなんだか居た堪れなくなる。
「レイム、いるか?今日ニーナが来るはずなんだけど……あれ、ニーナ!来てたのか」
コンコン、とノックされてガイアが入ってきた。ガイアは私の顔を見て嬉しそうに笑う。それを見て、レイムさんは一瞬厳しい顔をしたけれど、すぐに笑顔になった。
「ガイア、ニーナさんから健康診断の書類を預かっていたの」
「ああ、ありがとう」
「ごめん!私、仕事に戻るね。それじゃ、よろしくお願いします」
「?ああ」
その場にいるのが辛くて、私はそそくさとその場を後にする。背後からガイアの不思議そうな声がしたけれど、私は振り返ることもできずに急いで部屋を出ていった。
「……こんにちは」
腕の怪我が治ってから一週間が経った。この日、私は健康診断用の書類をガイアに渡そうと医務室に行こうとして、廊下でレイムさんとばったり会ってしまった。
「ガイアなら今は外出してます。何かご用ですか?」
「えっと、健康診断用の書類を記載したので、持ってきたんですけど」
「ああ、それなら私からお渡ししておきます」
レイムさんはそう言ってにっこりと微笑むと、書類を受け取った。
「それじゃ、よろしくお願いします」
「あ、ニーナさん」
なんだかここにいたくない、早くこの場から立ち去りたい。そう思ってレイムさんに挨拶してそそくさと退散しようとしたけれど、レイムさんがそんな私を呼び止めた。えっ、何……?
「少しお話よろしいですか?ガイアのことについて」
ええ、嫌ですけど……。でも嫌ですとも言えないから、仕方なく私はレイムさんのあとをついていった。レイムさんが常駐しているらしい事務室に入ると、誰もいない。そして、着席するよう促される。うう、座りたくない、早くこの場から立ち去りたい!
「あの、お話というのは?」
「ニーナさん、ガイアの婚約者なんですよね?」
真向かえに座るレイムさんの顔は、いつもの美しい笑顔ではなく真顔だった。うわ、なんか怖い……!
「どうしてニーナさんが婚約者なんでしょう?」
「……と、言いますと?」
「ニーナさんはガイアと元々親しいですけど、それはあくまでも騎士と医務官としてですよね?それなのに、突然婚約したと報告されて、驚いたんです。ガイアは婚約者なんて作らない人だと思っていたから」
ああ、まぁ、そうですよね。私だって驚きましたよ。でもそんなこと言えるわけがない。私が戸惑いながらどう言おうかと悩んでいると、レイムさんがさらに言葉を続ける。
「こう言ってはなんですけど、ニーナさんは騎士としてはお強いですし立派かもしれませんけど、女性としての魅力が足りないでしょう。そんなニーナさんと婚約だなんて有り得ないと思うんです。絶対、何かありますよね?」
うっ、やっぱりそう思うんだ?でも、はい、あります、なんて馬鹿正直に言えるわけがない。それに、レイムさんてばサラッと失礼なこと言ってない?
「……レイムさんてガイアのこと、その、好き、なんですか?」
思わずそう聞くと、レイムさんはチラッと私を見てから腕を組み、足を組む。うわぁ、なんだろう、ただそれだけなのに、色気がすごい!
「それをあなたに言う必要が?とにかく、私はずっとガイアの側で仕事をご一緒してきました。そんな私より、あなたが選ばれたことがよくわからないんです」
不服そうな顔でレイムさんは言った。その気持ちはわからなくはないけど、でもそれを私に言われたところで私がどうこうできるわけじゃないんだけどなぁ……。
「そう言われましても……」
「今からでも、辞退してくださいませんか?」
「辞退?」
「そう。あなただって、ガイアの隣にいるのが自分なのはおかしいって、心の底では思っているんじゃないですか?それに、他の人たちだってみんなそう思ってますよ。ガイアにあなたは不釣り合いだって」
最後の言葉に、胸がズキッと痛んだ。ガイアに私は、不釣り合い。そんなこと言われなくたってわかってる。私みたいな魅力が皆無な女なんかより、レイムさんみたいな綺麗で色気があって仕事のできる人の方がガイアにはお似合いなのかもしれない。それに、他の人だって心の中ではみんなそう思っているのかもしれない。
「やっぱり、そう思っているんでしょう?だったら、今からでも遅くないですよ。身を引いてください」
私の表情を見て確信したのだろう。ね?と嬉しそうにレイムさんは微笑む。その微笑みが憎らしいほどに綺麗で可愛らしくて、私はなんだか居た堪れなくなる。
「レイム、いるか?今日ニーナが来るはずなんだけど……あれ、ニーナ!来てたのか」
コンコン、とノックされてガイアが入ってきた。ガイアは私の顔を見て嬉しそうに笑う。それを見て、レイムさんは一瞬厳しい顔をしたけれど、すぐに笑顔になった。
「ガイア、ニーナさんから健康診断の書類を預かっていたの」
「ああ、ありがとう」
「ごめん!私、仕事に戻るね。それじゃ、よろしくお願いします」
「?ああ」
その場にいるのが辛くて、私はそそくさとその場を後にする。背後からガイアの不思議そうな声がしたけれど、私は振り返ることもできずに急いで部屋を出ていった。
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