10 / 82
虹の力の分け方
しおりを挟む
夜中に苦しんでいたランス様へ聖女の力を分けた翌朝。
朝食を済ませ、ランス様と私は屋敷の外にある小さな庭園を歩いていた。
季節の花が美しく咲き誇っている。昨夜窓から眺めた時も月に照らされて美しいと思ったけれど、昼間の庭園もやはり美しい。
「ここで話をしよう」
庭園の中にあるガゼボにランス様が腰かけたので、私も隣に座る。
「昨夜は驚かせてしまってすまない。白龍使いの騎士は、白龍の力を使えるがその代償として時折体が苦しくなる病を患うんだ」
白龍の力は膨大なため、その力を使う体が耐えられなくなるそうだ。その度に体が悲鳴をあげ、耐え難い苦痛を伴うのだという。
「その苦痛を和らげるのが聖女の虹の力だ。聖女の力は白龍と同じ力だと言われているが、その力は聖女である人間を通しての力だからそれを取り込むことで白龍使いの騎士は白龍の力に体が馴染んでいくことができる」
なるほど、昨日の苦しみが和らいだのは、聖女の虹の力を取り込むことができたから。
「白龍の力を使う時は様々で、その力の量もその時によって違う。使う力が強ければ強いほど分けてもらう聖女の力も量が変わってくるんだ」
それに、とランス様は話を続ける。
「白龍自体も、多くの力を使えば消費してしまい回復に時間がかかってしまう。そんな時には騎士を通じて力を補給することもできる。白龍とその騎士との繋がりは深いものだからね。だから聖女から騎士へ力を分けてもらう必要があるんだ」
そう言いながらランス様は戸惑いぎみに私の顔を見る。
「騎士団長が、聖女の力の分け方は色々あるって言っていたことを覚えてる?」
そういえば、そんなこと言われた気がする。はい、と頷けばランス様は目線を落として言いにくそうな顔をしている。なんだろう?
「……その、気を悪くしないでほしいのだけれど。分け方はこうして近くにいるだけでも少しなら分けてもらえる。昨夜みたいに手を握ってもらうことでも分けてもらえるんだ。あとは抱き締めたりすることもかな。そして」
ゆっくりとランス様が目を合わせてきた。
「……もっと力の量が多く必要な場合、キスをする必要がある」
キ、キス?!キスで聖女の力を分けるの?!
「あと、その、あれだよ。言いにくいのだけど……その、男女の交わりだとより多くの量を分けてもらうことができる」
顔を少し背けて恥ずかしそうに言うランス様。
えっ、えっ、待って、その、男女の交わりって、その言葉通りのことですか?!
思わず絶句していると、ランス様が申し訳なさそうに私の顔を見た。
「男女の交わりをすることで白龍使いの騎士は白龍の力をより多く安定して扱うことができるようになると言われている。だからこそ、白龍使いの騎士と虹の力を持つ聖女は結婚という契約を結び、心と体の両方の繋がりを強めるんだそうだ」
あまりの衝撃に何も言えない。つまりは、私とランス様もキスだけでなく、その、男女の交わりを行うということになるんだろうか。
「もちろん、君の嫌がることはしたくない。キスだってそれ以上のことだって、やりたくないならやらなくていいんだよ」
無言になってしまっている私を気遣ってランス様は慌ててそう言ってくださるけれど。
「で、でも、それではランス様はミゼル様の力を使うたびに苦しい思いをしてしまうのでは?ミゼル様だって力の回復に時間がかかってしまいます」
「そうなってしまうね。でも君の嫌がることはしたくない。大丈夫、手を握ってもらいながら力をゆっくり分けてもらうから」
それならいいかな?とランス様は優しく微笑んでくれる。それはいいのだけれど……なんだか腑に落ちない。
「ランス様は、その、私とキスをするのはお嫌ですか?」
思わず聞いてしまったけれど、ランス様の驚く顔を見て恥ずかしくなってしまう。
「……俺は嫌じゃないよ。むしろ嬉しいというかなんというか」
語尾が弱々しくなっていくけれど、嬉しいと言ってた?今嬉しいって言ってたよね???
「でも君は嫌だろう?無理しなくていいんだよ」
困ったように笑うランス様。
「嫌、ではありません。むしろランス様が苦しむ姿を見なくて済むのならキスの一つや二つ……」
そう言ったら、途中でランス様の人差し指が口元に添えられて、続きを言うのを止められてしまった。
「男の前で気軽にそんなこと言うもんじゃない。だめだよ」
「気軽になんて言っていません。私はランス様とだったらキスしてみたいです。それに私の力がお役に立つのだったら尚更です」
私の言葉を聞いて、ランス様は口元を手で押さえて顔を赤らめている。
「その、キス以上ができるかどうかはちょっとわからないですけど……まずはキスからということでお願いします」
言いながら恥ずかしくなって俯いてしまった。どうしよう、勢い余ってキスしたいなんて言ってしまったけれど本当に恥ずかしい!
スッと私の手にランス様の手が重なって優しく握ってくる。
「ありがとう、セシル。そう言ってくれて嬉しいよ」
顔をあげると、とても優しい微笑みでランス様が見つめてくる。あぁ、恥ずかしいけれどうっとりするくらい綺麗。
朝食を済ませ、ランス様と私は屋敷の外にある小さな庭園を歩いていた。
季節の花が美しく咲き誇っている。昨夜窓から眺めた時も月に照らされて美しいと思ったけれど、昼間の庭園もやはり美しい。
「ここで話をしよう」
庭園の中にあるガゼボにランス様が腰かけたので、私も隣に座る。
「昨夜は驚かせてしまってすまない。白龍使いの騎士は、白龍の力を使えるがその代償として時折体が苦しくなる病を患うんだ」
白龍の力は膨大なため、その力を使う体が耐えられなくなるそうだ。その度に体が悲鳴をあげ、耐え難い苦痛を伴うのだという。
「その苦痛を和らげるのが聖女の虹の力だ。聖女の力は白龍と同じ力だと言われているが、その力は聖女である人間を通しての力だからそれを取り込むことで白龍使いの騎士は白龍の力に体が馴染んでいくことができる」
なるほど、昨日の苦しみが和らいだのは、聖女の虹の力を取り込むことができたから。
「白龍の力を使う時は様々で、その力の量もその時によって違う。使う力が強ければ強いほど分けてもらう聖女の力も量が変わってくるんだ」
それに、とランス様は話を続ける。
「白龍自体も、多くの力を使えば消費してしまい回復に時間がかかってしまう。そんな時には騎士を通じて力を補給することもできる。白龍とその騎士との繋がりは深いものだからね。だから聖女から騎士へ力を分けてもらう必要があるんだ」
そう言いながらランス様は戸惑いぎみに私の顔を見る。
「騎士団長が、聖女の力の分け方は色々あるって言っていたことを覚えてる?」
そういえば、そんなこと言われた気がする。はい、と頷けばランス様は目線を落として言いにくそうな顔をしている。なんだろう?
「……その、気を悪くしないでほしいのだけれど。分け方はこうして近くにいるだけでも少しなら分けてもらえる。昨夜みたいに手を握ってもらうことでも分けてもらえるんだ。あとは抱き締めたりすることもかな。そして」
ゆっくりとランス様が目を合わせてきた。
「……もっと力の量が多く必要な場合、キスをする必要がある」
キ、キス?!キスで聖女の力を分けるの?!
「あと、その、あれだよ。言いにくいのだけど……その、男女の交わりだとより多くの量を分けてもらうことができる」
顔を少し背けて恥ずかしそうに言うランス様。
えっ、えっ、待って、その、男女の交わりって、その言葉通りのことですか?!
思わず絶句していると、ランス様が申し訳なさそうに私の顔を見た。
「男女の交わりをすることで白龍使いの騎士は白龍の力をより多く安定して扱うことができるようになると言われている。だからこそ、白龍使いの騎士と虹の力を持つ聖女は結婚という契約を結び、心と体の両方の繋がりを強めるんだそうだ」
あまりの衝撃に何も言えない。つまりは、私とランス様もキスだけでなく、その、男女の交わりを行うということになるんだろうか。
「もちろん、君の嫌がることはしたくない。キスだってそれ以上のことだって、やりたくないならやらなくていいんだよ」
無言になってしまっている私を気遣ってランス様は慌ててそう言ってくださるけれど。
「で、でも、それではランス様はミゼル様の力を使うたびに苦しい思いをしてしまうのでは?ミゼル様だって力の回復に時間がかかってしまいます」
「そうなってしまうね。でも君の嫌がることはしたくない。大丈夫、手を握ってもらいながら力をゆっくり分けてもらうから」
それならいいかな?とランス様は優しく微笑んでくれる。それはいいのだけれど……なんだか腑に落ちない。
「ランス様は、その、私とキスをするのはお嫌ですか?」
思わず聞いてしまったけれど、ランス様の驚く顔を見て恥ずかしくなってしまう。
「……俺は嫌じゃないよ。むしろ嬉しいというかなんというか」
語尾が弱々しくなっていくけれど、嬉しいと言ってた?今嬉しいって言ってたよね???
「でも君は嫌だろう?無理しなくていいんだよ」
困ったように笑うランス様。
「嫌、ではありません。むしろランス様が苦しむ姿を見なくて済むのならキスの一つや二つ……」
そう言ったら、途中でランス様の人差し指が口元に添えられて、続きを言うのを止められてしまった。
「男の前で気軽にそんなこと言うもんじゃない。だめだよ」
「気軽になんて言っていません。私はランス様とだったらキスしてみたいです。それに私の力がお役に立つのだったら尚更です」
私の言葉を聞いて、ランス様は口元を手で押さえて顔を赤らめている。
「その、キス以上ができるかどうかはちょっとわからないですけど……まずはキスからということでお願いします」
言いながら恥ずかしくなって俯いてしまった。どうしよう、勢い余ってキスしたいなんて言ってしまったけれど本当に恥ずかしい!
スッと私の手にランス様の手が重なって優しく握ってくる。
「ありがとう、セシル。そう言ってくれて嬉しいよ」
顔をあげると、とても優しい微笑みでランス様が見つめてくる。あぁ、恥ずかしいけれどうっとりするくらい綺麗。
16
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!
屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。
そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。
そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。
ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。
突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。
リクハルド様に似ても似つかない子供。
そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる