聖女として白龍の生贄になると思ったらなぜか騎士様と契約結婚することになって愛されています

鳥花風星

文字の大きさ
11 / 82

白龍使いの騎士のお仕事

しおりを挟む
 白龍のミゼル様に選ばれ、ランス様の元に来てから一週間が経った。

 私は今、ランス様と一緒にミゼル様の背中に乗って空を飛んでいます。

「初めて君を乗せた時のことを思い出すな。といってもまだ一週間しか経ってないけど」

 ふふ、とランス様が後ろで笑う。今回もランス様の前に私が座っている状態なので、位置的にちょうど息が耳元近くにかかるからくすぐったい。

「んんっ」

「どうしたの?」

 くすぐったくて思わず身動いだら、不思議に思ったランス様が後ろから顔を覗かせてきた。余りの近さで余計にやばい。

「な、なんでもないです!」

 思わず大声で言ってしまうと、ミゼル様が横目でチラリとこちらを見る。あぁ、ミゼル様、うるさくてすみません……。でも、仕方ないんですよ。

 今日もランス様は私がミゼル様から落ちてしまわないよう安定させるためにお腹に手を回している。その手が触れている箇所が熱くて胸やお腹がキュッとなってしまう。背中もランス様の胸元に密着してるし……。

 ついドキドキしてしまって顔が赤くなっていないかな?でもランス様は後ろにいて顔はそんなに見えないだろうし、きっと大丈夫……なはず!





「ここか」

 ミゼル様が降り立った場所は、広い領地の中にあるとある山奥だった。

「ひどいな……」

 ランス様が眉間に皺を寄せて呟く。

 ものすごい瘴気だ。禍禍しいほどの空気で辺り一面が重苦しい。息をするのも辛い。

「こういう瘴気が溢れてしまった場所を浄化するのも白龍の仕事なんだ。そして、白龍が浄化している間に白龍を周りから守るのが白龍使いの騎士の役目」

 瘴気が溢れた場所ではその瘴気に充てられて魔物が凶暴化している場合がある。浄化の最中に凶暴化した魔物が我を忘れて襲ってくることもあるそうだ。そんな凶暴化した魔物から白龍を守るのが白龍使いの仕事だと言う。

「本当はセシルをこんな所に連れてきたくはないんだけど、白龍が浄化に使う力の補充をしてもらわないといけないから」

 ごめんね、とランス様は謝ってきたけれど、ミゼル様とランス様のためならば何てことはありませんとも!

「大丈夫です!お二方のためにも頑張りますね」

 ふんすと鼻息を荒くしてそう言うと、ランス様は嬉しそうに笑った。

「頼もしいな。セシルのことは俺が守るよ。だから離れないでね」

 ランス様が剣を構える。はぁ、そんな姿もとてもかっこいい……つい魅入ってしまうけれど、そんなことにうつつを抜かしている場合ではないのだ。

 気を引き締めてミゼル様を見つめる。ミゼル様が空を見上げると、ミゼル様からふわぁっと清らかなエネルギーが発せられた。

 ミゼル様がキラキラと輝き始める。

「すごい……!」

 ミゼル様から発せられる清らかなエネルギーはどんどんと周りへ広がっていき、瘴気が少しずつ消えていくのがわかる。

「……!」

 何かに気づいてランス様が剣を構えて茂みの方を向いた。すると突然茂みの中から何かが突進してくる。

「魔物……!」

 熊のような体に猪のような顔、角と牙が生え、爪は鋭い。そんな大きな魔物が我を忘れたようにただ走ってくる。

 ランス様が剣をひとふりした。すると剣から青白い光の刃が飛び、魔物を貫く。魔物は真っ二つに割れて塵のように消えていった。

 その後も様々な魔物が何度か襲ってきたが、その度にランス様があっという間に倒していく。

(なんて鮮やかな剣さばきなのかしら……!)

 思わず見とれてしまう。

 そうこうしているうちに、ミゼル様の浄化が終わった。辺りの瘴気は消えて清らかなエネルギーが満ち溢れている。

「お疲れ様、ミゼル」

 ランス様がそう言うと、ミゼル様は首をゆっくりと縦に揺らした。

「……くっ」

 突然、ランス様が体勢を崩した。思わず駆け寄って支えるけれど、足元がおぼつかない。

「ごめん、ミゼルの力を使いすぎたかも」

 魔物と戦う時にミゼル様の力を使い、ブーストのようなものをかけたらしい。

「大丈夫ですか?私にできることは?」

 聖女の力を分ければいいのだろうけれど、この場合どのやり方が良いのかわからない。

「……抱き締めてもいいかな?それで力を分けてもらうことができると思う。俺もだけどミゼルも浄化で力をかなり使ったようなんだ」

 眉間に皺を寄せて苦しそうに言うランス様。早くその苦しみから解放してあげたい!

「わかりました!どうぞ」

 ランス様の真正面に座って両手を広げると、ランス様が少し戸惑いぎみに私を抱き締めた。

 背中に回されたランス様の両手は弱々しい。思わず抱き締める力をほんの少し強めると、ランス様の手の力も強くなった。

 二人の指輪の青い石から光が放たれる。その光に包まれながら、私とランス様はただ抱き締め合っていた。

 どの位経っただろう。指輪の光が徐々に弱まり、消えた。

「……ありがとう。かなり楽になったよ」

 ゆっくり離れて私の両肩を掴みながらランス様は笑顔で言った。顔色も良くなったし、元気になったみたい。

「よかったです」

 ほっと胸を撫で下ろすと、ランス様は微笑みながらずっと見つめてくる。なんだか照れ臭い。

「ミゼルも力をだいぶ補給できたみたいだ」

 ランス様がミゼル様の顔を撫でると、ミゼル様は目を細める。その様子にランス様は一瞬顔をしかめて困ったようだった。どうしたんだろう?

「よし、浄化も無事に終わったし帰ろうか。騎士団本部への報告は別の日に行おう」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

処理中です...