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王都の騎士
しおりを挟む目の前にいる二体の黒銀の龍のうち、一体の口が開かれて口の中に光が集まる。えっ、これってまさか……!
コオオオオオ……ドオオオオオン!
ものすごい爆音と共に、黒銀の口から光線が放たれた、一瞬で目の前が光に包まれて眩しくて何も見えない!もう一度爆音がして地面が揺れ、思わずよろけるとランス様が咄嗟に受け止めてくれた。
地面の揺れがおさまって瞑っていた目を開けると、粉塵が風に流されて目の前に大きな結界が見えた。白龍様が結界を張ってくれたみたい。周囲を見渡すと全員無事だわ、よかった!
「グアアアアア!」
光線を放った方の黒銀の龍は雄叫びを上げながら急に羽を広げて空へ上昇し、空中で止まったかと思ったらまた口の中が光っている。今度は空中からもっと強力な光線を放つつもりなんだわ!
それを見た白龍姿のユイン様とジュイン様、ウェズ様がものすごいスピードで空へ飛び、黒銀の龍へ攻撃を仕掛けて阻止した……すごい。
黒銀の龍とユイン様たちが激しく争っていて、上空では大きな音とともにいくつもの光がついたり消えたりしている。白龍様三体に対して黒銀の龍は一体なのに互角の戦いを見せているなんてどれだけ強いのだろう。
不安になって思わずランス様を見ると、ランス様は真剣な顔で目の前の黒銀の龍を睨みつけている。そうだ、ここでヒヨってなんかいられない。私たちは何がなんでもニオ様とリオン様を助けなければいけないのだ。
突然白龍姿のミゼル様が目の前の黒銀の龍に向かって走り出し、黒銀の龍へ襲いかかった!黒銀の龍はミゼル様の攻撃を受け止め、お互いにお互いの両手をぎっちりつかみ合っている。
ミシッ、ミシミシッ
黒銀の龍の爪がミゼル様の両手に食い込み、ミゼル様の鱗状の皮膚から血が流れ出している!それでもミゼル様は黒銀の龍の手をぎっちり掴んで離さない。
さらにギール様が黒銀の龍の背後に周り、首筋に噛み付いた!
「ギイアアアア!」
黒銀の龍は叫び声をあげ、体をブンッと大きく振った。その衝撃でギール様が吹っ飛ばされてしまう!飛ばされたギール様は上手に着地したと思うと、すぐに両手から光の線が現れて黒銀の翼と尻尾を拘束する。
「いくぞ!俺たちも加勢するんだ!」
ユーズ団長の掛け声で騎士様たちが走り出す。騎士様たちの剣からは青白い光が出ているのでたぶん白龍の力を使っている。そうしなければこの黒銀の龍に傷ひとつつけることはできないと本能でわかっているんだ。
「リラ、私たちも私たちができることをしましょう!」
「わかったの!」
全体への強化魔法は魔力の消費が激しくてもう一度発動することはできない。でも、一人一人にまた強化魔法をかけることならできる。
リラはリラでミゼル様やギール様、上空の白龍様たちの怪我を治癒魔法で治している。いつの間にかこんなに頼もしくなって……!
「わ、私の、私のせいで、こんな、こんなことに……!」
両目を大きく見開いて目の前の光景を見ながらニオ様が震えながら呟いた。ニオ様の両目からは涙が溢れて止まらない。
「悪いのは君だけじゃない。君を止めることができなかった私のせいでもあるんだ。あぁ、ニオ、ごめんよ。私のせいだ。何がなんでも君を止めてあげるべきだったんだ。君をこんな辛い目に合わせてしまうなんて……」
リオン様がそう言ってニオ様を抱きしめる。リオン様もとても苦しそうで見ていて本当に辛い。確かにこの状況はニオ様とリオン様のせいでもある。でも、二人がそうなってしまった大元の原因は二人だけの問題ではないのだ。でもだからといってどうするべきだったのかなんて誰にもわからない。本当に苦しい、苦しすぎる。
近くで二人の様子を神妙な顔で見ていたベル様が深呼吸をした。
「……シキ、ルル、行きましょう」
「はい、ベル様」
ベル様の呼びかけに、シキ様とルル様が目を合わせ頷いた。行くって、一体どこへ?
「セシル、リラ、二人を頼みます」
そう言ってベル様たちはケインズ団長の元へ走っていった。
◇◆◇◆
「アデル国の王都の騎士が、小賢しい。白龍の力を持たないただの騎士が俺に勝てるわけがないだろう。大人しく降参しろ。そうすれば苦しい思いをしないよう一思いに殺してやるさ」
ベイルはそう言って腰にかけていた剣を抜いた。剣からはドス黒い禍々しい光が出ている。
「はっ、銀龍の力に頼りっぱなしの野郎に降参だぁ?寝言は寝て言えよバァカ」
ケインズ団長が走り出す。やっぱり速い!いつの間にかベイルの目の前に現れて剣を振り下ろす!間一髪でベイルが剣を受けるが、ケインズ団長の剣はびくともしない。
ズンッという音と共に地面が割れ、ベイルの足元が沈む。
「くっ、貴様……!」
ベイルの剣の黒い光が増大して、ケインズ団長の剣を跳ね返した。ケインズ団長はひらりと避けてすぐにベイルへ攻撃を仕掛けていく。剣が激しくぶつかり合う音がして、どう見てもベイルが劣勢だ。何ヵ所かベイルに傷を負わせながらケインズ団長は次第にベイルを追い詰めていった、すごい!
「……きっ、くそ!」
ベイルの剣が一層黒々と光り、ケインズ団長を跳ね除けた。ケインズ団長は難なく宙返りをして着地する。ベイルは体の各所から血を流しており息が荒い。反対にケインズ団長は傷ひとつなく息も全く上がっていない。これが王都の騎士団長の実力なんだわ……!
「貴様、白龍の力もないくせになぜ!」
「はぁ?お前こそ銀龍の力を持っているくせにその程度か?いいか、王都の騎士は確かに白龍の力を持たないただの騎士だ。白龍使いの騎士の方が国にとっては重要だろうさ。でもな、この身一つで国と国の民たちを守っているという誇りと矜持を胸に日々鍛錬し任務に当たっているんだ!お前はどうせ銀龍の力に胡座をかいて鍛錬を行なってるんだろ?そんな奴に勝てないほど王都の騎士はボンクラじゃねぇんだよ!」
そう言って走り出したケインズ団長の両手足が、突然地面から伸びてきた黒い靄の縄に拘束された!
「くっ!なんだこいつ」
ケインズ団長は黒い靄の縄を引きちぎろうと両手足を動かすがびくともしない。
「ははは、ははは!威勢のいいことを言っていたがその有様、どんな気分だ?結局この力には敵うまい。いいか?どんなに鍛錬していようとも、この力の前では無力なのだよ!」
そう言ってベイルは地面に剣を突き刺すと、剣が黒く禍々しい光を放った。
「グアアアアアア!」
ケインズ団長の体に繋がれた黒い靄の縄から黒い稲妻が走った。ケインズ団長はあまりの激痛にうめき身悶えるが、拘束されているために動けば動くほどより一層の激痛が伴いさらにうめき苦しんでいる。
稲妻が収まるとケインズ団長の体が膝から崩れ落ち、顔は項垂れて息が上がっている。でも四肢を繋がれているためその場に倒れ込むことすらできない。
「ははは、お前はもうどうすることもできない。そうやって苦しむしかないんだよ」
ベイルの言葉にケインズ団長がほんの少し顔をあげ、ペッと血を吐き出した。そしてベイルを睨みつける。あんな状態になっているのにどこにそんな力がまだ残っているのだろう。
「ふん、本当にクソ生意気な態度をとる男だな」
「アアアアア!」
ベイルの言葉が引き金のように、またケインズ団長の体に稲妻が走る。あまりの様子にニオ様は気を失いそうになり、それをリオン様が受け止めケインズ団長の様子がニオ様に見えないように抱きしめた。本当に、見ていられない光景で思わず目を背けてしまう……。
黒い稲妻がおさまり、シュウウウウとケインズ団長の体から煙が上がる。ケインズ団長は咳き込み、ゼーゼーと息が荒い。ケインズ団長の装備はボロボロで身体中あちこち黒焦げになっており、ケインズ団長自身からも焼け焦げたような煙が発せられていた。
「いいか?お前は無力だ。丸焦げにしてやってもよかったが気が変わった。お前のその首を落とし、あの聖女に見せてやろう。お前の無惨な姿を見てあの聖女は泣き叫び我を忘れてしまうかもしれないな。そしてその姿を見てあの白龍はどうなるだろうな。ははは、想像しただけで面白い」
気持ち悪い嫌な笑みを浮かべながら地面から剣を抜き、ケインズ団長の方へ歩き出した。ケインズ団長の目の前に来たベイルは剣をケインズ団長の首に当て、言い放つ。
「死ね」
ベイルが剣を振り下ろした、その時。
「土塊障壁!」
ベイルの目の前に土の壁ができ、壁から土の拳が出てきてベイルを襲った!
「はあっ!」
白く光る剣がケインズ団長を拘束していた黒い靄の縄を切り裂いていき、拘束を解かれたケインズ団長は膝をつき地面に両手をつくとゲホゲホと咳き込んだ。
「な、なんだと!」
土壁と土の拳をなんとか避け、後ろに下がったベイルが怒ったように叫んだ。
「遅くなって申し訳ありません」
「ま、さか、聖女様に、助けられる、とは、ね。へっ、あり、がとな」
ケインズ様の前には、剣を構えたベル様とシキ様、そして杖を構えたルル様がいた!
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