「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ

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10話

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 王都では、オスカーの虚偽の報告により、王太子とリリアンの警戒心は一時的に和らいだ。しかし、彼らの財政状況は悪化の一途をたどっていた。

 リリアンの浪費癖は止まらず、王宮の宝飾品や、海外からの高価な衣装への支払いが滞り始めていた。さらに、リリアンが外交の場で他国の貴族を不用意に侮辱したことで、王都の「青魔鉱製品」の取引が次々と打ち切られ始めていた。

「アルバート様、どうしましょう!あの忌々しい辺境の鉱石がなければ、王都は本当に破産してしまいますわ!」

 リリアンは、初めて恐怖に顔を歪ませた。

 アルバート王太子も、青ざめていた。

「あの公爵め、なぜ王都への供給を絞るのだ!こちらがどれだけ窮地に立たされているか分からぬのか!」

 その時、リリアンは一つの愚かな確信を得た。

「そうよ!あの青魔鉱は、きっとお姉様が、偶然発見したのよ!だって、お姉様は地味なものばかり見ていたもの!あの人の『地味な知識』なんて、大した力じゃないわ!ただの運よ!」

 リリアンは、自分には「聖女の光」という華やかな力があるのだから、辺境へ行けば、姉よりも簡単に富と権力を手に入れられると信じ込んだ。

「アルバート様!わたくし、辺境へ行きますわ!公爵様に、わたくしの力こそが辺境の真の繁栄をもたらすとお伝えするのです。そして、お姉様が偶然見つけたという青魔鉱の採掘権を、王都のものにするのです!」

 王太子は、その提案に飛びついた。

「そうだ!リリアン、君が直接公爵に会えば、その魅力で辺境の富を王都に取り戻せるかもしれない!あの冷酷な公爵も、聖なる光を持つ君には逆らえまい!」

 王太子は、リリアンに多額の資金と、少数の護衛を与え、辺境への旅を命じた。

 グレイヴナー公爵邸。

 クラウディアは、公爵とオスカーと共に、王都からの資金難に関する密偵の報告書を読んでいた。

「王都は、ついに財政破綻寸前です。そして、リリアン様が、辺境へ向かっているとの情報が入りました」

 オスカーが報告した。

 クラウディアは冷ややかに微笑んだ。

「やはり来ましたか。妹は、わたくしの地味な成功が、『偶然』によるものだと信じているのでしょう。そして、自分ならもっとうまくやれると」

 アレクシス公爵は、クラウディアを抱き寄せ、その肩に顔を埋めた。彼の声は、獲物を狩る前の獣のように低かった。

「可愛いクラウディア。愚かな妹と、愚かな元婚約者が、自ら罠にかかりに来たな」

「ええ」

 クラウディアは頷いた。

「彼らは、わたくしがここでどのような地位を築き、公爵様からどれほどの溺愛を受けているのか、何も知りません。傲慢な彼らが、辺境の真の姿を目の当たりにした時……」

 公爵は、クラウディアの言葉を引き継いだ。

「彼らは、後悔と絶望の淵に突き落とされるだろう。クラウディア。君は、何も心配しなくていい。彼らがこの地に足を踏み入れた瞬間、彼らへの破滅は、すでに始まっている」

 公爵は、クラウディアの唇に深く口づけを落とした。それは、甘さと、敵への冷酷な宣戦布告を含んだキスだった。

「さあ、クラウディア。最高の舞台を用意しよう。王都の愚か者どもが、地獄を見るための舞台を」

 クラウディアの瞳には、かつて王都で流した涙の代わりに、辺境の賢妃としての冷たい光が宿っていた。
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