「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ

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12話

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 リリアンとアルバート王太子を筆頭とする王都の使者団は、長く困難な旅を経て、ついにグレイヴナー公爵領の領都に到着した。

 王太子は、道中の荒涼とした景色と、魔物の痕跡に苛立っていた。彼が期待していたのは、公爵領が王都の援助を切実に必要としている、貧しく惨めな現状だった。

「チッ、こんな荒れた土地、一体何のために来たのだ。クラウディアも、こんな場所で地味に暮らしているのだな」王太子は吐き捨てるように言った。

 しかし、領都の門をくぐった瞬間、彼らは衝撃的な光景を目の当たりにする。

 彼らが想像していた魔物の巣のような荒廃した都市はどこにもない。そこにあったのは、王都よりも整然と整備された街並み、石畳の道、そして活気に満ちた人々の姿だった。

 最新の青魔鉱を動力源とした街灯が夜でも明るく街を照らし、建物の壁には、魔物除けの魔導具が規則正しく埋め込まれている。市場には、見たこともない豊かな作物や、質の高い工芸品が並び、人々は笑顔で取引をしている。

 王都よりも、豊かで、安全で、洗練されていた。

「な……なんだ、これは!?」

 王太子は信じられないといった様子で立ち尽くした。

「この都市は、王都より発展しているではないか!?」

 隣のリリアンは、顔面蒼白になっていた。彼女が想像していた「地味で惨めな姉」の生活とは、かけ離れた光景だったからだ。

「まさか……。こんな、こんな光……あの、地味な姉が関わっているはずが……」

 リリアンは、自分が持つはずの「聖女の光」よりも、この都市の現実的な繁栄が遥かに輝いていることに、嫉妬と恐怖を覚えた。

 使者団は、案内されるまま、グレイヴナー公爵邸へと向かった。公爵邸もまた、豪華絢爛ではないが、機能美と威厳に満ちていた。

 そして、広間で彼らを迎えたのは、黒い軍服姿で威圧感を放つアレクシス・グレイヴナー公爵と、その隣に立つクラウディア公爵夫人だった。

 クラウディアは、以前の地味で目立たない姿ではなかった。辺境産の最高級の生地で仕立てられた、落ち着いた色合いのドレスに身を包み、青魔鉱の光を反射するシンプルな髪飾りをつけている。その立ち姿は優雅で、その瞳は自信と賢明さに満ち溢れていた。

 彼女は、完璧な「賢妃」だった。

 王太子は、かつて見下し、侮辱した元婚約者の圧倒的な地位と、その隣に立つ公爵の重厚な愛の眼差しを目の当たりにし、言葉を失った。

 公爵は、一切の感情を排した冷たい声で挨拶した。

「アルバート殿下。ようこそ、辺境へ。何の用で、この地に足を踏み入れられたか。単なる友好なら、不要です。この辺境は、王都の援助を必要としておりません」

 王太子は、言い訳を探そうと必死だった。

「く、クラウディア!お前、なぜこのような……いや、公爵!私は友好を深めに……そして、辺境の特産品である青魔鉱について、王都に一部の採掘権を譲渡していただきたく……」

 その言葉を聞いたリリアンは、クラウディアに向かって、嫉妬に満ちた叫びをあげた。

「お姉様!なぜ王都に協力しないのです!あなたは王都から追放された身でありながら、その富を独占するつもりですか!?あの青魔鉱は、あなたの地味な知識ではなく、聖女であるわたくしの光こそが、真に活用できるのです!」

 クラウディアは、静かに、そして冷徹に、妹を見つめた。その瞳には、かつての姉妹愛の欠片もない。

「リリアン。わたくしは、あなた方の愚かな浪費と裏切りによって、この地に来ました。そして、わたくしはもう、王都の女ではありません」

 クラウディアは、公爵の手を握った。公爵は、その手を力強く握り返した。

「この地の富は、わたくしの才と、公爵様の尽力によって築かれました。そして、この地の富と権力は、この公爵夫妻のものです。あなた方の援助も、採掘権の譲渡も、一切必要ありません」

 静かに、しかし、圧倒的な力関係の中で幕を開けた。王太子とリリアンは、クラウディアを捨てたことへの最初で最大の報いを、身をもって知ることになったのだ。
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