「無能な妻」と蔑まれた令嬢は、離婚後に隣国の王子に溺愛されました。

腐ったバナナ

文字の大きさ
6 / 9

6話

しおりを挟む
 レオンの切実で情熱的な求婚に、アリアンナは息を詰めた。彼女の理性が、彼の高貴な雰囲気と圧倒的な存在感が、「ただの助手」ではあり得ないことを理解させた。

「レオン……貴方は、一体誰なの?」

 レオンは、アリアンナの両手をそっと引き寄せ、彼女の掌にキスを落とした。そして、その青い瞳を真っ直ぐに見つめ、静かに、しかし威厳をもって語り始めた。

「申し訳ありません、アリア様。貴女を欺いていたことをお許しください。私は、隣国アステア王国の第三王子、レオン・フォン・アステアです」

 アリアンナは、その衝撃的な告白に言葉を失った。彼女の平凡なセカンドライフに現れた優雅な助手は、一国の王子だったのだ。

「王、王子様が……なぜ、辺境で……」

「私は、真の才能と人々の心を学ぶため、身分を隠して旅をしていました。そして、貴女に出会った。貴女の魔力に頼らない卓越した知識と、傷ついた人々を救う優しさは、私にとって何よりも尊い王国の至宝です」

 レオンは、アリアンナの頬に触れ、愛を込めた視線で続けた。

「アリア様。貴女の才能は、王都の愚かな貴族たちが評価できるものではない。ましてや、元夫のエドガー侯爵などに、再び踏みにじらせるわけにはいかない」

 レオンは、膝をつき、最も高貴な敬意をもってアリアンナに求婚した。

「アリア様。私は、隣国王子としての全ての権力を懸けて、貴女を守ります。貴女が「無能な妻」と蔑まれた過去を、世界一溺愛される王妃の未来で完全に上書きしたい」

「どうか、私の妻になってください。貴女の自由は私が尊重します。しかし、貴女の命と心だけは、私に永遠に独占させてください」

 レオンの一途で情熱的な愛の告白は、アリアンナの心を揺さぶった。彼は、侯爵家とは違い、彼女の才能と価値を心から肯定してくれている。そして、彼女の孤独な過去を理解し、未来の幸福を約束してくれている。

 アリアンナは、涙を流しながら、レオンの手を取った。

「レオン様……いえ、レオン。ありがとうございます。私は、愛のない貴族の檻から解放されたいだけでした。でも、貴方は、自由と、そして最高の愛をくれました」

「私は、貴方の妻になります。そして、貴方が私の才能を肯定してくれる限り、私は貴方の愛を永遠に受け入れます」

 レオンは、歓喜に満ちた表情でアリアンナを抱きしめた。

「ああ、アリア!貴女は、私がこの世界で唯一愛する女性だ。貴女を蔑んだ者たちには、地獄の底まで後悔させてやる」

 レオンは、求婚が受け入れられたことを確認すると、すぐに極秘裏に手配していた伝令役を呼び寄せた。

「直ちに、王都のアステア王国大使館に連絡せよ。王国の威信を懸け、ノイマン侯爵家とグランツ公爵家の動向を監視させろ。そして、第三王子レオンの正式な結婚の意思を、王宮へ伝えろ。相手は、アリアンナ・グランツだ」

 レオンの冷徹な指示は、愛する女性を貶めた者たちへの制裁と、アリアンナの地位の確定を意味していた。

 辺境の小さな診療所で交わされた王子と元侯爵夫人の愛の誓いは、やがて二つの王国を揺るがす大きな波となって、王都へと向かうのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

地味令嬢の私が婚約破棄された結果、なぜか最強王子に溺愛されてます

白米
恋愛
侯爵家の三女・ミレイアは、控えめで目立たない“地味令嬢”。 特に取り柄もなく、華やかな社交界ではいつも壁の花。だが幼いころに交わされた約束で、彼女は王弟・レオンハルト殿下との婚約者となっていた。 だがある日、突然の婚約破棄通告――。 「やはり君とは釣り合わない」 そう言い放ったのは、表向きには完璧な王弟殿下。そしてその横には、社交界の華と呼ばれる公爵令嬢の姿が。 悲しみも怒りも感じる間もなく、あっさりと手放されたミレイア。 しかしその瞬間を見ていたのが、王家随一の武闘派にして“最強”と噂される第一王子・ユリウスだった。 「……くだらん。お前を手放すなんて、あいつは見る目がないな」 「よければ、俺が貰ってやろうか?」 冗談かと思いきや、なぜか本気のご様子!? 次の日には「俺の婚約者として紹介する」と言われ、さらには 「笑った顔が見たい」「他の男の前で泣くな」 ――溺愛モードが止まらない!

嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です

由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。 婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。 ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。 「君を嫌ったことなど、一度もない」 それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。 勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。

酔っぱらい令嬢の英雄譚 ~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~

ゆずこしょう
恋愛
婚約者と共に参加するはずだった、 夜会当日── 婚約者は「馬車の予約ができなかった」という理由で、 迎えに来ることはなかった。 そして王宮で彼女が目にしたのは、 婚約者と、見知らぬ女性が寄り添う姿。 領地存続のために婿が必要だったエヴァンジェリンは、 感情に流されることもなく、 淡々と婚約破棄の算段を立て始める。 目の前にあった美味しいチョコレートをつまみながら、 頭の中で、今後の算段を考えていると 別の修羅場が始まって──!? その夜、ほんの少しお酒を口にしたことで、 エヴァンジェリンの評価と人生は、 思いもよらぬ方向へ転がり始める── 2月11日 第一章完結 2月15日 第二章スタート予定

白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。 新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。 二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。 ところが。 ◆市場に行けばついてくる ◆荷物は全部持ちたがる ◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる ◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる ……どう見ても、干渉しまくり。 「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」 「……君のことを、放っておけない」 距離はゆっくり縮まり、 優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。 そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。 “冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え―― 「二度と妻を侮辱するな」 守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、 いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

【完結】身代わりに病弱だった令嬢が隣国の冷酷王子と政略結婚したら、薬師の知識が役に立ちました。

朝日みらい
恋愛
リリスは内気な性格の貴族令嬢。幼い頃に患った大病の影響で、薬師顔負けの知識を持ち、自ら薬を調合する日々を送っている。家族の愛情を一身に受ける妹セシリアとは対照的に、彼女は控えめで存在感が薄い。 ある日、リリスは両親から突然「妹の代わりに隣国の王子と政略結婚をするように」と命じられる。結婚相手であるエドアルド王子は、かつて幼馴染でありながら、今では冷たく距離を置かれる存在。リリスは幼い頃から密かにエドアルドに憧れていたが、病弱だった過去もあって自分に自信が持てず、彼の真意がわからないまま結婚の日を迎えてしまい――

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

処理中です...