離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ

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13話

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 いよいよアークライト侯爵とセシルの結婚式が明日に迫っていた。侯爵城は、祝福の準備と、アークライトの極度の緊張に包まれていた。

 セシルは、最後の夜を利用して、アーサー叔父を断罪するための決定的な証拠を揃える必要があった。ルーク副官の助けを借り、侯爵家の古文書館に忍び込む。

「セシル様、本当にアーサー様の不正の証拠がここにあるのでしょうか?ここは、侯爵家の最も機密性の高い文書が保管されている場所です」

 ルークは震える声で尋ねた。

「ええ。アーサー叔父は、結界騎士の魔力資材を横領するために、この機密文書館の記録を何度も書き換えていたはず。彼は最も安全な場所が、最も見つかりにくい場所だと考えたはずよ」

 セシルは、古い書架の一つから、「欺瞞の青」と「強欲の金色」が絡み合った、強い感情の色が発せられているのを見つけた。

「ここよ、ルーク!この棚の奥。何か隠し扉のようなものがあるはずだわ」

 ルークが棚を調べると、隠された小さな鍵穴を発見した。

 一方、アークライトは、セシルが秘密裏に行動していることには気づかず、明日への不安と高揚感で胸がいっぱいだった。彼はセシルの部屋を訪れたが、セシルは不在。

 ルークから「セシル様は庭園の散歩に出られています」と報告を受けたアークライトは、強い「不安の青」を放ちながら、セシルを探しに出た。

 彼がセシルを見つけたのは、庭園の隅にある静かな東屋だった。セシルは、偽りの領収書を並べ、アーサー叔父の悪事をまとめた文書を最終チェックしているところだった。

 アークライトは、セシルが集中していることに気づき、声をかけずに隣に座った。彼の全身は、セシルへの「独占と渇望の赤」に染まっていた。

「セシル」

 彼の低い声に、セシルは驚いて文書を隠した。

「アークライト様……公務はもうよろしいのですか?」

「ああ。明日の結婚式に備えて、一瞬たりとも君から離れたくない」

 彼はセシルの手を握り、力強く言った。

「セシル。君はなぜ、私を選んでくれたのだ。前世の私……冷徹で、君に孤独を与えた男を、なぜ」

 アークライトは、不器用で、言葉にできない不安を抱えていた。彼の感情の色は、愛の金の中に、過去への悔恨の紫が混じっていた。

 セシルは彼の不安を全て受け止めるように、優しく微笑んだ。

「貴方は、私が出会った誰よりも一途で、誠実な方です。冷徹な仮面の下に、孤独と愛情を隠していた。わたくしは、その貴方の真実の愛を、今世こそ掴みたいと心から願ったの」

 セシルは、アーサー叔父の不正について、明日までは何も話さないと決めていた。今夜は、ただ夫の不安を溶かしてあげることだけが、彼女の使命だった。

「私は、貴方の妻になれることが、この人生で最大の幸福です、アークライト様」

 セシルの言葉に、アークライトの瞳から、一筋の涙がこぼれた。彼はセシルを抱きしめた。

「ああ、セシル……私の光。君を二度と孤独にはしない」

 アークライトが自室に戻った後、セシルは再びルークと合流し、鍵穴の奥の隠し金庫を開ける作業に戻った。

 ルークが用意した特殊な鍵を使い、古文書館の隠し金庫が開いた。中には、大量の金塊と共に、古びた羊皮紙が一通入っていた。

 セシルは、その羊皮紙に強い「欺瞞の青」と「憎悪の赤」の感情の色がこびりついているのを見て、震えた。

「これは……!ルーク、読んで!」

 ルークが広げた羊皮紙の内容は、セシルが予想していた横領の証拠よりも遥かに悪辣なものだった。

 それは、アークライトの父である先代侯爵が、死の直前に書いたとされる「遺言状」の偽造文書だった。その内容は、「アークライトが結界騎士としての任に失敗した場合は、侯爵位と全ての権限を弟アーサーに譲る」というもの。そして、その失敗の条件には、「侯爵夫人セシルの不貞」という項目が加えられていた。

(リゼッタの不貞の噂は、この遺言状を発動させるための準備だったのね……!)

 アーサー叔父は、アークライトを裏切りと孤独で精神的に追い詰め、結界騎士としての能力を低下させた上で、セシルに濡れ衣を着せ、侯爵位を奪うという、二重三重の陰謀を張り巡らせていたのだ。

 セシルは、この決定的な証拠を握りしめ、明日の結婚式で、愛する夫を裏切り者の手から完全に守り抜くことを固く誓った。
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