離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ

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15話

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 結婚式での衝撃的な事件と、アーサー叔父の断罪が終わった後も、アークライトはセシルを片時も離さなかった。披露宴は中断されたが、参列者たちは侯爵夫妻の揺るぎない愛の絆と、侯爵夫人の勇敢さを賞賛した。

 新婚初夜。

 アークライトはセシルを抱きしめながら、静かに感謝の言葉を述べた。彼の全身からは、もはや「警戒の黒」や「焦燥の青」は消え去り、純粋な「愛の金」と「安堵の緑」が輝いていた。

「セシル。君は私の知らないところで、一人で重荷を背負っていたのだな。叔父の裏切りから、私を守るために」

 彼の声には、深い悔恨の念が滲んでいた。

「私は、君に孤独を与えただけでなく、重い義務まで負わせた。本当に、不器用な夫だ」

 セシルは、彼の頬に優しく触れた。

「いいえ、アークライト様。貴方を信じ、共に戦うことが、わたくしの最大の喜びでした。貴方の心を守り抜けたこと、それがわたくしの幸福です」

 セシルの言葉に、アークライトは深く息を吸い込んだ。

「君は、私を二度目の人生で救い出した。私はもう、孤独ではない。君は私の全てだ」

 二人の間に、前世の誤解と孤独の影は、完全に消え去った。結ばれた二人は、真実の愛に満たされた新婚の夜を過ごした。

 翌日、セシルは正式にアークライト侯爵夫人として、侯爵家の全てを取り仕切ることになった。アーサー叔父の横領により混乱していた財政は、セシルの迅速な指示と、ルーク副官の協力によって、速やかに回復に向かった。

 セシルが侯爵家を立て直す手腕は目覚ましく、貴族たちは「冷徹な侯爵の妻は、彼以上に優秀な才女だ」と噂し始めた。

 しかし、セシルが「優秀な侯爵夫人」として公務に取り組めば取り組むほど、アークライトの溺愛は加速した。

 彼は、セシルが執務室にいる間は、一日に十数回もセシルの部屋を訪れ、「茶菓子を運ぶ」という名目でセシルを拘束した。

「アークライト様。これは、わたくしが財政の立て直しを効率的に進めるための大切な公務です。その茶菓子、一時間前にもいただいたばかりですが……」セシルは苦笑した。

 アークライトは無表情のまま、セシルの頭を優しく撫でた。彼の感情の色は、「甘い独占の赤」に染まっていた。

「私が結界維持のために、君の傍にいない時間を、君が他の何かに夢中になることで埋めているのが許せない。この茶菓子は、私と君との絆を忘れないための、義務だ」

(義務という言葉の使い方が、前世と完全に逆になっているわ……!)

 セシルは笑みを漏らした。アークライトの不器用さは変わらないが、その中身は冷たい義務から熱烈な愛に完全に置き換わっていた。

 公務が一段落した午後、アークライトはセシルを連れて、二人きりで庭園の散歩に出た。

「セシル。以前、君は私に、『仕事よりも私を大切にしてくれた』と喜んでくれたな」

「ええ、あの時は本当に嬉しかったです」

 アークライトは立ち止まり、セシルを抱きしめた。

「今世、私は二度と君を孤独にしない。結界騎士としての務めも果たすが、君との時間を何よりも優先する。これが、私の二度目の誓いだ」

 セシルは、冷徹な仮面を脱いだ夫の愛情の深さに心から感謝し、彼に寄り添った。

 二度目の人生で、セシルは愛のない結婚を回避するのではなく、愛のない結婚の真実を暴き、最高の愛の絆を掴んだのだった。
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