精霊の森に追放された私ですが、森の主【巨大モフモフ熊の精霊王】に気に入られました

腐ったバナナ

文字の大きさ
9 / 18

9話

しおりを挟む
 リサとバルトによる完璧な断罪の後、王都の情勢は一変した。

 元婚約者ルシウスは、騎士団長の地位と全財産を剥奪され、虚偽の報告と精霊王への侮辱という罪で、社交界から追放された。妹のフィーナも、姉を陥れた共犯者として、貴族籍を失い、惨めに没落していった。

 彼らは、リサが追放された森の富と権力を奪おうとした結果、生きたまま、最も惨めな形ですべてを失ったのだ。リサは、過去の裏切り者たちが激しい後悔に苛まれる姿を、静かに、そして冷静に受け止めた。

 精霊の森は、精霊王バルトと王妃リサの統治のもと、かつてない平和と豊かさに包まれていた。リサの知恵と精霊の力で森の資源はさらに充実し、王都への薬草取引は、バルトの許可のもと、精霊王国の正当な貿易として確立された。

 リサは、王都の権力に依存することなく、自らの力で最高の地位を築き上げた。

 ある穏やかな午後、リサは森の湖畔で、薬草の世話をしていた。

 その背後から、巨大なモフモフの塊がゆっくりと近づいてくる。それはもちろん、リサの温もりに依存しきっている精霊王バルトだ。

 バルトは、人間の姿になることなく、巨大な熊の姿のまま、リサを後ろから抱きしめるように体を寄せた。

「リサ。君の匂いが、少しでも薄れるのが嫌だ」

 バルトは低く喉を鳴らした。その温かい毛皮と、冷酷な王からは想像もできない甘え声に、リサの心は満たされる。

「バルト様。わたくしはここにいます。もう誰も、わたくしを連れ去ることはできませんよ」

 リサはバルトの分厚い毛皮を優しく撫でつけた。

「分かっている。だが、王都の人間は、君の真の価値を知った。彼らが再び、君の匂いや知恵を盗もうと画策しないか、不安でたまらない」

 バルトは、人間を食らうと恐れられる王でありながら、リサに対しては極度の独占欲と依存心を隠さない。彼は、リサの存在こそが、自分の孤独と力の淀みを癒やす唯一の薬だと知っている。

 リサは、熊の巨大な顔を両手で包み込んだ。

「バルト様。わたくしが欲しいのは、裏切りのない愛です。王都の人間は、愛と引き換えに、私の全てを奪おうとしました。ですが、あなたは違います」

 リサは微笑んだ。

「あなたは、私の知恵も、匂いも、心も、全てを支配すると宣言しました。その絶対的な支配と執着こそが、わたくしにとっての最大の愛の証です。裏切りの余地がないのですから」

 バルトは、リサの言葉に満足そうに「ンー」と唸った。

「そうだ。君は、俺が命を懸けて守り、永遠に独占する宝物だ」

 彼は、巨大な熊の体でリサを優しく押し倒し、全身を温かい毛皮で包み込んだ。リサの体は、バルトの温もりと、彼から発せられる強大な魔力に満たされていく。

 過去の傷は完全に癒やされ、リサの心に残るのは、モフモフの王の狂おしいほどの愛だけだった。二人は、支配と依存で結ばれた、この森の永遠の伴侶となったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔王城の清掃係ですが、ラスボスに懐かれて世界を磨くことになりました

由香
恋愛
異世界に転移したら、なぜか魔王城の清掃係に就職していました。 巨大な玉座、血のついた回廊、禍々しい装飾品の数々。 今日も黙々と床を磨いていたら―― 「お前の磨いた床は、よく眠れる」 恐怖の象徴と名高い魔王様に懐かれました。 見た目は完全にラスボス。 中身はちょっと不器用で、独占欲強めの努力型。 勇者は帰還の道を示し、魔王は隣を選べと願う。 光と闇のはざまで、選ぶのは――ただの清掃係。 戦争よりも、まず床。 征服よりも、まず対話。 これは、世界最強の存在に溺愛されながら 世界平和を“足元から”始める物語。 甘くて、少し熱くて、ちゃんと選ぶ恋。

【完結】辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~

深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。

「異常」と言われて追放された最強聖女、隣国で超チートな癒しの力で溺愛される〜前世は過労死した介護士、今度は幸せになります〜

赤紫
恋愛
 私、リリアナは前世で介護士として過労死した後、異世界で最強の癒しの力を持つ聖女に転生しました。でも完璧すぎる治療魔法を「異常」と恐れられ、婚約者の王太子から「君の力は危険だ」と婚約破棄されて魔獣の森に追放されてしまいます。  絶望の中で瀕死の隣国王子を救ったところ、「君は最高だ!」と初めて私の力を称賛してくれました。新天地では「真の聖女」と呼ばれ、前世の介護経験も活かして疫病を根絶!魔獣との共存も実現して、国民の皆さんから「ありがとう!」の声をたくさんいただきました。  そんな時、私を捨てた元の国で災いが起こり、「戻ってきて」と懇願されたけれど——「私を捨てた国には用はありません」。  今度こそ私は、私を理解してくれる人たちと本当の幸せを掴みます!

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

【完結】追放された私、宮廷楽師になったら最強騎士に溺愛されました

er
恋愛
両親を亡くし、叔父に引き取られたクレアは、義妹ペトラに全てを奪われ虐げられていた。 宮廷楽師選考会への出場も拒まれ、老商人との結婚を強要される。 絶望の中、クレアは母から受け継いだ「音花の恵み」——音楽を物質化する力——を使い、家を飛び出す。 近衛騎士団隊長アーロンに助けられ、彼の助けもあり選考会に参加。首席合格を果たし、叔父と義妹を見返す。クレアは王室専属楽師として、アーロンと共に新たな人生を歩み始める。

「聖女は2人もいらない」と追放された聖女、王国最強のイケメン騎士と偽装結婚して溺愛される

沙寺絃
恋愛
女子高生のエリカは異世界に召喚された。聖女と呼ばれるエリカだが、王子の本命は一緒に召喚されたもう一人の女の子だった。「 聖女は二人もいらない」と城を追放され、魔族に命を狙われたエリカを助けたのは、銀髪のイケメン騎士フレイ。 圧倒的な強さで魔王の手下を倒したフレイは言う。 「あなたこそが聖女です」 「あなたは俺の領地で保護します」 「身柄を預かるにあたり、俺の婚約者ということにしましょう」 こうしてエリカの偽装結婚異世界ライフが始まった。 やがてエリカはイケメン騎士に溺愛されながら、秘められていた聖女の力を開花させていく。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

罰として醜い辺境伯との婚約を命じられましたが、むしろ望むところです! ~私が聖女と同じ力があるからと復縁を迫っても、もう遅い~

上下左右
恋愛
「貴様のような疫病神との婚約は破棄させてもらう!」  触れた魔道具を壊す体質のせいで、三度の婚約破棄を経験した公爵令嬢エリス。家族からも見限られ、罰として鬼将軍クラウス辺境伯への嫁入りを命じられてしまう。  しかしエリスは周囲の評価など意にも介さない。 「顔なんて目と鼻と口がついていれば十分」だと縁談を受け入れる。  だが実際に嫁いでみると、鬼将軍の顔は認識阻害の魔術によって醜くなっていただけで、魔術無力化の特性を持つエリスは、彼が本当は美しい青年だと見抜いていた。  一方、エリスの特異な体質に、元婚約者の伯爵が気づく。それは伝説の聖女と同じ力で、領地の繁栄を約束するものだった。  伯爵は自分から婚約を破棄したにも関わらず、その決定を覆すために復縁するための画策を始めるのだが・・・後悔してももう遅いと、ざまぁな展開に発展していくのだった  本作は不遇だった令嬢が、最恐将軍に溺愛されて、幸せになるまでのハッピーエンドの物語である ※※小説家になろうでも連載中※※

愛を知らない「頭巾被り」の令嬢は最強の騎士、「氷の辺境伯」に溺愛される

守次 奏
恋愛
「わたしは、このお方に出会えて、初めてこの世に産まれることができた」  貴族の間では忌み子の象徴である赤銅色の髪を持って生まれてきた少女、リリアーヌは常に家族から、妹であるマリアンヌからすらも蔑まれ、その髪を隠すように頭巾を被って生きてきた。  そんなリリアーヌは十五歳を迎えた折に、辺境領を収める「氷の辺境伯」「血まみれ辺境伯」の二つ名で呼ばれる、スターク・フォン・ピースレイヤーの元に嫁がされてしまう。  厄介払いのような結婚だったが、それは幸せという言葉を知らない、「頭巾被り」のリリアーヌの運命を変える、そして世界の運命をも揺るがしていく出会いの始まりに過ぎなかった。  これは、一人の少女が生まれた意味を探すために駆け抜けた日々の記録であり、とある幸せな夫婦の物語である。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」様にも短編という形で掲載しています。

処理中です...