精霊の森に追放された私ですが、森の主【巨大モフモフ熊の精霊王】に気に入られました

腐ったバナナ

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18話

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 精霊の森が人間界から完全に隔離されて、数年の月日が流れた。

 森は、リサの聖女の力とバルトの強大な魔力によって、かつてないほどの豊かさと平和に満たされていた。ルシウスやフィーナのことは、遠い昔の悪夢となり、リサの記憶からも薄れ始めていた。

 王子のリュカは、健やかに成長し、森の精霊たちのアイドルとなっていた。リュカは、父譲りの金色の瞳と、母譲りの癒やしの匂い、そしてモフモフへの狂的な愛を完璧に受け継いでいた。

 リュカは、父の巨大な熊の姿を何よりも愛し、起きている時間のほとんどを、バルトの毛皮の上で過ごしていた。

「パパ!モフモフ、もっと!」

 リュカがそう言ってバルトの分厚い毛皮に飛びつくと、バルトは満足そうに低く喉を鳴らした。バルトは、公務の必要がない限り、人間の姿になることを完全にやめていた。彼は、巨大なモフモフの王として、リサと子の傍にいることを選んだのだ。

「フン。リュカ。お前の匂いも、リサと同じく心地よい。だが、リサの匂いは、俺だけのものだ」

 バルトは、そう言いながら、熊の巨大な頭をリサの膝に乗せた。

 リサは、穏やかな笑みを浮かべ、バルトの頭と、リュカの小さな頭を同時に撫でた。

「バルト様。あなたがモフモフでいらっしゃる限り、誰もわたくしたちを奪えませんね」

「当然だ。この毛皮は、世界で最も安全な温かい牢獄だ。俺の支配は、永遠に続く」

 バルトの支配的な言葉は、リサの心に最も確かな愛の証として響いた。王都の冷たさ、裏切り、そして絶望。それら全てから、バルトの揺るぎない独占的な愛が、リサを救い出したのだ。

 ある日の午後。リサは、森の奥深くにある、かつて自分が追放された場所を訪れた。

 そこは、リサにとって絶望の始まりだった場所。しかし、今は、豊かな薬草が生い茂り、精霊たちの光が満ちていた。

 リサがそこで静かに座っていると、巨大な熊のバルトが、リュカを背中に乗せて現れた。

 バルトは、リサの隣に座り、彼女に寄り添った。

「リサ。なぜ、こんな冷たい場所にいる」

「バルト様。ここは、わたくしがあなたに出会った場所です。わたくしの絶望が、あなたの温もりに変わった場所」

 リサは、バルトの頬に手を添えた。

「わたくしはもう、魔力欠損の令嬢ではありません。あなたの賢妃であり、聖女であり、そしてあなたの愛を永遠に独占する妻です」

 バルトは、その言葉に心底歓喜した。彼は、リサの顔を舐めるように、巨大な鼻先を近づけた。

「リサ。俺は、君の才能も、心も、匂いも、全てを支配する。そして、俺の狂おしいほどの愛で、君を永遠に守り続ける。君の匂いは、俺だけのものだ」

 バルトは、そう誓うように、リサの体を温かい毛皮で完全に包み込み、決して離さなかった。

 リサは、巨大なモフモフの王の揺るぎない愛の支配の中で、目を閉じた。彼女の人生は、最も冷酷な追放から始まり、最も温かい永遠の愛で結ばれたのだ。
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