透明令嬢は暗殺公爵の箱庭で愛でられる

腐ったバナナ

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2話

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 レオンハルト公爵に抱き上げられたまま連れ去られた先は、帝都の喧騒から切り離された、深い森の奥に佇む漆黒の私邸だった。

「ここは……?」 

「俺の私邸だ。使用人も、俺が選んだ『口の堅い』者しか置いていない。安心しろ、ここならお前を忘れる者など一人もいない」

 公爵は私を降ろすと、邸の最上階にある重厚な扉を開いた。 そこは、目が眩むほど豪華な調度品で整えられた、広大な寝室――いいえ、それは「箱庭」と呼ぶにふさわしい、完璧に守られた檻だった。

 壁一面を覆う書架、最高級の絹が張られた天蓋付きのベッド。そして、夜空を切り取ったような大きな窓からは、公爵の魔力で年中枯れることのない白百合の庭園が見下ろせる。

「……こんなに綺麗な部屋、私には似合いません。どうせ明日になれば、貴方も私のことを……」 

「まだそんなことを言っているのか」

 背後から伸びてきた力強い腕に、私の体は容易く拘束された。 レオンハルト様の胸の鼓動が、背中越しに熱く伝わってくる。

「いいか、エリス。お前の『認識阻害』は呪いではない。溢れ出した魔力が外界との間に膜を作っているだけだ。だから――」

 彼は私の耳たぶを甘噛みし、低い声で続けた。

「こうして、俺の濃密な魔力を直接お前に叩き込み、膜を中和してやれば、お前の存在は俺の中にだけはっきりと固定される」

「ま、魔力を……直接……?」

 彼の手が、ドレスの襟元に掛かった。 震える私の肩を剥き出しにし、彼はその陶器のような白肌に、熱い唇を押し当てる。

「ひあっ……!」

 火花が散るような衝撃が全身を駆け抜けた。 彼の魔力が私の体内に流れ込んでくる。それは暴力的なほどに激しく、同時に、今まで感じたことのないほど心地よい「存在の肯定」だった。 誰にも見えず、誰にも触れられなかった私が、彼の熱によって、今、この場所に「暴き出されて」いく。

「お前の肌は、こんなに熱い。声も、こんなに愛らしい」

 レオンハルト様の黄金の瞳が、暗闇の中で獣のように光った。 彼は私の足首を掴むと、そこに見えない魔力の糸を巻き付けた。それは、私をこの邸から、そして彼の手の中から逃がさないための、絶対的な「鎖」。

「夜はこれからだ、エリス。お前のすべてを俺に刻み込め。お前を誰にも渡さないために、俺が何度でも、お前の存在を証明してやる」

 夜の箱庭に、私の甘い悲鳴が溶けていく。 彼だけが私を見つけ、彼だけが私を暴く。 恐怖よりも深い悦びが、透明だった私の心を、初めて鮮やかな熱情で染め上げていった。
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