訳あり未亡人と、年下の騎士様 ~私はもう、恋なんてしないはずでした~

腐ったバナナ

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11話

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 クロードが重傷を負ってから一週間。彼はフィオナの献身的な看病のおかげで急速に回復しつつあったが、まだベッドから起き上がることはできなかった。

 しかし、クロードの負傷は、フィオナの復讐の炎に油を注ぐ結果となった。愛する人を危険に晒したユーリウスとラザラスを、もはや許すことはできなかった。

「クロード殿。今日は、私が侯爵夫人としての最後の務めを果たしてきます」

 フィオナは、丁寧に仕立てられた喪服に身を包み、臥せっているクロードの頬にキスを落とした。

「貴方の命懸けの愛が、私に最大の武器を与えてくれました。もう、私は何も恐れません」

 クロードは、フィオナの手を握りしめた。

「フィオナ様……無事を祈っています。私の剣は、今、貴女の傍にありませんが、私の魂は常に貴女と共にある」

「ええ」

 フィオナは微笑んだ。

「貴方の愛があれば、私は負けません」

 フィオナは、セバスチャンを伴い、王都の最高裁判所へと向かった。

 ユーリウスは、フィオナがクロードの負傷で動揺し、復讐を諦めるか、あるいは泣きついてくると高をくくっていた。しかし、法廷でフィオナの姿を見たユーリウスは、その冷徹な美しさと揺るぎない威厳に圧倒された。

 法廷に立つフィオナは、もはや孤独な未亡人ではなかった。彼女の背後には、愛する騎士の強い魂が控えていた。

「ユーリウス・ヴァレンティノ卿、及び、闇金融元締めラザラス氏。貴方方は、侯爵家の遺産を乗っ取るため、共謀して負債を水増しし、侯爵家の名誉を傷つけ、さらには侯爵夫人への殺害を企てた」

 フィオナの告発は、冷静かつ論理的だった。

 ユーリウスは嘲笑した。

「証拠はどこにある!夫人は狂っている!」

 その時、フィオナはセバスチャンに命じ、亡き夫の裏帳簿と、クロードが命懸けで確保した偽造された契約書を提出させた。

「これが証拠です。この帳簿に記された数字と、この偽造契約書の日付と金額を照合してください。貴方方は、侯爵家を乗っ取るため、私文書偽造という重罪を犯しました」

 裁判官たちは、フィオナの提出した決定的な証拠の前に、息をのんだ。フィオナの緻密な戦略と知性が、ユーリウスの陰謀を完全に打ち砕いたのだ。

「まさか……この女が、ここまで……!」

 ユーリウスは顔を真っ青にしてその場に崩れ落ちた。彼の野心は、フィオナの愛と知性によって、完全にざまぁされた。ラザラスもまた、証拠を前にして言い逃れができず、重罪人としてその場で拘束された。

 フィオナは、ユーリウスとラザラスを見下ろした。

「貴方方が私から奪おうとしたものは、地位でも財産でもない。私が愛する人と静かに生きる権利でした。その罪は、永遠に償うことはできません」

 フィオナの言葉は、侯爵夫人としての断罪であると同時に、一人の女性としての愛の勝利宣言でもあった。

 裁判が結審した後、フィオナはすぐに侯爵位と侯爵家の財産を国に返上する手続きを始めた。

「セバスチャン。これで全て清算されました。私はもう、ヴァレンティノ侯爵夫人ではありません。私は、クロード殿の愛するフィオナとして生きます」

 フィオナは、孤独な過去と侯爵夫人の重い称号を全て捨て、愛する人の傍で生きるという新たな幸福を選んだのだった。
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