訳あり未亡人と、年下の騎士様 ~私はもう、恋なんてしないはずでした~

腐ったバナナ

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12話

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 フィオナがユーリウスとラザラスを断罪し、侯爵家の負債と名誉を清算してから数日後。

 フィオナは侯爵家の屋敷を整理し、質素な邸宅へ引っ越す準備を進めていた。彼女はもはや侯爵夫人ではなく、**「愛を信じる一人の女性」**として、クロードと平穏に暮らすことだけを望んでいた。

 クロードは回復が早く、すでに自力で歩けるようになっていたが、フィオナは彼の看病に専念し、彼を労り続けた。

「フィオナ様。貴女は、侯爵夫人としての全てを捨てられた。後悔はございませんか?」クロードは、フィオナの手を取り、心配そうに尋ねた。

 フィオナは穏やかに微笑んだ。

「ええ、全く。私は孤独と虚飾の地位を捨て、貴方の愛を選びました。貴方と共に生きる未来こそが、私の最高の財産です」

 フィオナの言葉に、クロードの瞳は深い愛と感謝に満たされた。

 その日の午後、王城から緊急の使者が侯爵家を訪れた。

 使者は、王命を携えていた。フィオナがユーリウスらの不正を暴き、混乱していた王都の財政秩序を守った功績、そしてクロードが侯爵家と王都の安全を守った功績を讃えるものだった。

 王命の内容は、フィオナの予想を超えるものだった。

「――騎士クロード・ランバート。貴殿の勇気ある行動と揺るぎない忠誠は、王国の模範である。よって、王家は貴殿に新たな爵位を与え、子爵として叙爵することをここに命じる」

 フィオナは驚き、クロードを見た。

 クロードは、王命を拝聴しながらも、その視線はフィオナに釘付けになっていた。

「王家が私に……爵位を?」

 クロードは、長年、平民の身分という壁に阻まれながらも、実力だけで生きてきた。爵位は、彼の努力が報われた最高の栄誉だった。

 しかし、クロードの感情の色は、歓喜ではなく、フィオナへの切実な思いに満ちていた。

 王命の儀式が終わり、使者が去った後、フィオナはクロードに近づいた。

「クロード殿……いいえ、クロード子爵。おめでとうございます!貴方の実力が、ついに報われました」

 フィオナは心から喜んだ。これにより、二人の間にあった最大の壁であった身分差は、完全に解消されたのだ。

 クロードは、フィオナの肩を両手で掴み、その瞳を熱烈に見つめた。

「フィオナ様。私の爵位は、貴女を守るためだけに存在します」

「私は、貴女の剣として雇われ、貴女の愛を得て、そして貴女の功績によって爵位を得た。この身分の全ては、貴女に捧げるものです」

 クロードは、フィオナが侯爵夫人という称号を捨てたことを知っていたからこそ、新しい爵位を得ることに意味を見出したのだ。

 彼は、フィオナが愛を信じることのできる世界、地位や名誉に縛られない穏やかな場所を、自分の力で作り上げたかったのだ。

「フィオナ。私は、もう貴女の騎士だけではいられない。貴女の夫として、貴女の傍にいたい」

 クロードは、身分差を乗り越えた最高の愛の証として、フィオナに深く、熱い口づけを捧げた。

 フィオナは、彼の愛に溺れながら、冷たい結婚から始まった人生が、最も温かい幸福に辿り着いたことを実感した。
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