2人の秘密はにがくてあまい

羽衣野 由布

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王子崩壊の時

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 「はぁっ……はぁっ……はぁっ…!」

 目的地も定まらぬまま、校内を全力で駆ける。

 「はぁ…っ…はぁっ…!」

 いやだっ!捕まりたくないっ。

 迫り来る脅威に恐怖心が膨れ上がり、ギリギリと心臓を締め付けてくる。

 やめろ…………来るな…来るなぁっっ!

 「待ってぇ~!」

 「いやだぁぁあっ!」

 光毅は今、ホラー映画さながらに肉食獣の群れから逃げ回っていた。

 「待って小坂くーん!」

 「なんで逃げるの?!」

 そっちこそなんで追いかけて来るんだよ?!

 と、そんな事を返す余裕などなく、ただひたすらに走るスピードを上げる。今教師に見つかったら、きっと反省文ものである。



 ──ねぇねぇ小坂くん!駅前に新しいカフェができたんだって!一緒に行かない?頑張り過ぎると体壊しちゃうよ?

 ──ごめん、俺勉強しないと…

 ──やっほー小坂くーん!今日ヒマー?嫌な事はパァーッと遊んで忘れちゃお!

 ──いや、暇じゃないって。俺は勉強が…

 ──あ、あの…小坂くん…、良かったら…うちで一緒に勉強しない?分からない所があったら、私が教えてあげるよ。

 ──………………。



 今日は木曜日。肉食獣の大量発生から3日経ったが、彼女達の勢いは留まる所を知らず、隙を見つけては光毅の時間と精神力を奪っていった。

 何十回と繰り返したやり取りにうんざりし、光毅はその場から脱兎の如く逃げ出したのだった。

 バスケで鍛えた脚力とスタミナが追手をどんどん引き離していく。

 俺は勉強がしたいんだっ!!

 あと少しで撒けると確信し、突き当たりの角を曲がった。

 …だがしかし。

 「ねぇねぇ、小坂くん見なかった~?」

 「っ!?」

 曲がった先にある階段を降りようとした時、下の階から光毅を探す声が聞こえてきた。

 うっ、嘘だろ?!

 別の階へ行けば撒けるとふんだのに全くの大はずれだった。まさか下からも追手が来ていたとは。

 「え~?知らな~い。ってか私も探してるんだけどぉ」

 「下にはいなかったから、上かなぁ?」

 「行ってみる?」

 …………っ!

 「小坂くぅ~ん!足速すぎ~!待ってよ~!」

 「どこ行ったのー?逃げないでー」

 追手がすぐ近くまで迫ってきた。

 やばい!挟まれるっっ!

 絶体絶命。万事休す。

 しかし、次の瞬間。

 「小坂くんこっち!」

 「え──ぅわっ!」

 光毅はすぐ側の扉から出てきた腕に引っ張り込まれた。



 「え~、マジでどこ~?」

 「まさか見失った?」

 「うそぉー!あ、あっちも行ってみよ」

 「っ……」

 バタバタと走る足音が通過していく。

 体を小さく縮ませ、見つからぬよう必死に祈る。

 やがて遠くで言葉を交わす声が聞こえ、人の気配が遠ざかっていった。

 ………………行ったか?

 「はぁぁー……」

 光毅は後ろにあった段ボール箱に寄りかかった。

 ここはどこかの用具室らしく、物がぎっちり詰め込まれていた。

 おかげですぐに身を隠す事ができ、彼女らを撒く事に成功した。

 「ありがとう。助かった」

 引っ張り込んでくれた女子生徒にお礼を言う。

 「ううん、全然だよ~。なんか大変だったね」

 「ああ、ホント勘弁してほしいよ」

 部屋の外に人がいないのを確認しながら、上がった息を整える。

 「…でもさぁ~」

 「ん?何?」

 扉の方を見たまま返事をした。

 「一方的にフラれるのって、やっぱ辛いよね…」

 「……え…?」

 振り返ると同時に、むにっと柔らかいものが腕に押し付けられた。

 「小坂くん……今すごく苦しいんでしょ?」

 「は?何言って──」

 「その苦しみ、私なら取り除いてあげられるよ」

 柔らかいものは彼女のたわわな胸で、なぜか谷間が見えるほどにシャツのボタンが外されていた。

 「私が…慰めてあげる」

 「ちょっ待っっ、何?!」

 彼女の体重ごと、たわわな胸がのし掛かってきた。そのままあらぬ場所を探ろうと、彼女の手が光毅の体を這う。

 「っ!?」

 魅力的なその誘惑に、しかしながら光毅の体に巡るは恐怖。触れられた場所には気持ち悪さしか感じなかった。

 襲われるっっっ!!!

 「や、やめろっ!」

 「きゃっ!」

 恐怖に任せて彼女を突き飛ばし、慌ててその場から逃げ出した。

 「あっ、え!嘘っ!なんで逃げるの?!」



 「はぁっ……はぁっ…!」

 先程向かうつもりだった階段を一気に駆け下りる。

 走りながら、光毅の中には恐怖に交じって怒りもボコボコ沸き出してきた。

 もう何なんだよ?!なんで俺ばっかりこんな目に遭うんだ?!

 俺が怒らないからって調子に乗りやがって!

 追いかけるだけでは飽き足らず、まさか色仕掛けまでやらかしてくるとは。

 そこまでして捕まえて、一体どうしたいというのだろう。

 どう頭を巡らせても、あの女共の見栄えを良くするために利用される想像しかできない。

 そんなの嫌だ!絶っっっ対逃げ切ってやる!

 と、そう思った矢先だった。

 「もがっ?!」

 階段を降りきりどこへ逃げようかと一瞬立ち止まった時、誰かが後ろから口を塞ぎ階段裏へ引きずり込んだ。

 「んーーーっ!?んぐーー!!」

 今度はなんだ?!!やめろっ、離せっっ!!

 「いたたっ!こら馬鹿っ、暴れんな!俺だ!落ち着け光毅」

 「むぐぐっ…ん?」

 なんとそれは圭佑だった。

 光毅が大人しくなったのを確認し、圭佑は手を離した。

 「ぷはっ!なんだ圭佑か」

 「お前なぁ、力任せに殴んなよ。痛えだろ」

 「だってまた変なのに捕まったかと」

 「せっかく良い隠れ場所教えてやろうとしてんのに、お前の馬鹿デカイ声で誰かにバレたら意味ねぇだろ?」

 「ああ…まぁ」

 圭佑はやれやれと息をつくと、階段裏の奥にあった適当な箱にドカリと座った。その様子を見て、光毅もそれにならった。

 「ここなら行事の時くらいしか人が来ないし、誰も自分の足の下に隠れてるとは思わねぇから安心して隠れていいぞ」

 「そうなんだ…」

 「まぁ声聞かれたら一発でバレるから、人が通る時はしゃべんなよ?」

 「わかった」

 光毅は大きく息を吐き出した。

 やっと息ができた。やっぱり持つべきものは親友だな。

 「だいぶやられてんな。大丈夫か?」

 「あー…いや、あんまり…」

 「だよな。これで大丈夫だったらびっくりだぜ。…つーかお前さぁー、なんで学校来てんだよ?今ここは超危険地帯なんだから、サボって家にこもってりゃ良いだろが」

 「俺だってそうしたかったよ!けど、それだと全然勉強が進まなくて……これじゃあ斉川の思うツボだっていうのが、なんか悔しくて…。でも結局、邪魔が入ってばかりで先生にも斉川にも訊けなくて、逃げ回って疲れるだけで……」

 「あーなるほど……ってお前、この期に及んでまだあいつに勉強教わろうとしてたのかよ?!」

 「だってやっぱり斉川の教え方が一番分かりやすいし!それに、下心ばっかりで気持ち悪い奴らに訊くなんて嫌だ!そんな事するくらいなら、斉川に訊いた方が何倍もましだろ?!」

 「い、いやぁー、んーまぁ……そう言われると、そうかも知れねぇが…」

 「だってこのままじゃまたテストで赤点取っちゃうし、斉川を見返せなくなっちゃうし、母さんに怒られるし、バスケもできなくなっちゃうし、学校の奴らは全員ウザいし、手料理食べられないし…」

 「分かった分かった!充分分かったから落ち着け」

 光毅をなだめると、圭佑は苦虫を噛み潰す顔で腕を組んだ。

 「…しかしなぁー、この騒ぎをなんとかしない事にはどうする事もできないだろ?」

 「う~ん………どうすれば収まるんだ?」

 「まぁ手っ取り早いのは、お前がさっさと1人を選ぶ事だな」

 「は?」

 「これは言わば、お前の『彼女』という席をかけた争奪戦だ。だから、お前がその彼女を作っちまえばこの戦は終わるって訳」

 「なんだよそれ。俺はそんなもの欲しいと思ってない」

 「けど選ばないと終わんねぇんだよ」

 「そんな!……選ぶなんて………。でももし、選ぶとしたら…そんなの……………」

 斉川以外考えられない。

 ………。

 ………。

 「…あ」

 「あ?」

 光毅の頭上に、ピコンと電球が光った。

 「そうか…。選べばいいんだ」

 「なんだ?誰か良い奴いたのか?」

 「斉川を選べばいいんだ!」

 「はあぁあ?!」

 自信満々に輝く瞳に圭佑は思わず声を荒げ、慌てて口をふさいだ。

 音量を小に切り替え、目の前の阿呆に怒りを発する。

 「ばっ、バカかお前?!騒ぎの元凶隣に置いてどうすんだよ!それじゃ収まるどころか更に地獄に突き落とされるに決まってんだろ!」

 「ずっと一緒にいれば何かしようとしてもすぐに止められるだろ?それに勉強訊き放題だし」

 ついでに斉川に寄ってくる虫どももやっつけられるし…ってか『ずっと一緒』ってなんか良いな。

 考えただけで思わず口角が上がる。

 「おい…イケメンが崩壊してるからそのニヤケ顔止めろ」

 圭佑のドン引きな声も、その耳には届かず。

 「ふふ……。あ、でもいきなり『彼女』って事にしたら絶対怒るよな」

 そういうのいらないって言ってたし。

 「んー…」

 「おーい、聞いてんのかー?」

 『彼女』がだめなら…やっぱ『家庭教師』?

 斉川に教えてもらう事になったって言えば、イケるんじゃないか?勉強に集中したいから『彼女』はいらない、必要なのは『家庭教師』だってはっきり言えば。

 しばしシミュレート。

 ……………うん。

 「イケる」

 「何がイケるんだよ?ってか完全に無視だな俺の事」

 「よし!」

 光毅は勢いよく立ち上がった。

 そうと決まれば善は急げだ!

 「んあ?まさか……今から行くのか?」

 「うん。行ってくる」

 「マジかよ…」

 こうなった光毅が止まらない事は経験上よく分かっているため、圭佑は即座に諦めモードへと陥った。

 「あー…うん、分かった。もう好きにしろ。勝手に頑張れ」

 「うん」

 「ただし、くれぐれも俺を巻き込むなよ!どうなっても俺は知らん」

 「分かったよ。ありがとな、ここ見つけてくれて」

 おかげで良い案が浮かんだ。

 「おう。まぁだったしな」

 「そっか。じゃあ行ってくる」

 「せいぜい好きにやってこい。俺はもう少ししてから行くわ」

 「うん。じゃあ…………ん?」

 「ん?」

 返した踵をピタリと止め、光毅は圭佑を振り返った。

 「…なんで、圭佑がここにいる必要があるんだ?」

 「………………」

 「??」

 「……親友ともよ………それは訊いてくれるな……」



 §



 「……あ、あのさぁ…ちょっと確認したいんだけど…」

 「うん…なぁに碧乃っち?」

 「やま…きみは……まだ逃げ続けてるのかな?」

 「そう…みたいだね…」

 「そっかぁ…」

 「…………」

 「…………」

 昼休み。碧乃と藤野は、目の前で繰り広げられる光景に恐怖を感じながら昼食を食べていた。

 そこには、ゆるふわボブの姫君が一人。無表情で何やらブツブツ呪文を唱え、自分のお弁当のおかずを人の形になるように並べていた。

 …そして。

 ドスッ!

 「「っ!?」」

 その音にビクリと二人の肩が跳ねる。

 出来上がった人形ひとがたの心臓の辺りに、勢いよく箸が突き立てられた。

 「えっ…これ、本当に呪いかかったりしてないよね…?」

 「さぁー……死んでないといいけど…」

 無言でその人形を見つめる三吉の様子に、碧乃は静かに息を吐き出した。

 何やってるんだ、ヘタレ騎士。お姫様の仮面剥がれちゃってるよ……。



 §



 早く、早く。

 早く斉川の所へ行かないと。ってか今何時だよ?!

 朝からずっと、人に会っては逃げてを繰り返し、授業すらまともに受けていなかった。

 チラリと覗いた空き教室の時計は、昼休みが後半に差し掛かったと告げていた。

 もうそんな時間?!俺まだ昼飯食べてないんだけど!

 しかし今は腹の虫をなだめている場合じゃない。

 斉川!どこだ斉川?!

 どこにいるのかさっぱり検討もつかず、ただひたすらに学校中を駆け回る。

 もういつものトレーニングを越えるぐらい走っている気がする。

 しかし行けども行けども目当ての人物は見つからず、代わりに余計なものが纏わりついてきた。

 「あ!小坂くんいたぁー!」

 「もう探したよ~。どこ行ってたの?」

 「ねぇねぇ小坂くん、あのねー?」

 休み時間の廊下は人が多く、少し進むたびに光毅を狙う獣の群れは大きくなっていった。

 あるものは腕に絡みつき、あるものは一方的にしゃべり続け、更には道を塞ぐものまで現れた。

 「ちょっ…、だから!俺今忙しいんだって、大事な用が──」

 「捕まえたぁ~!もう離さないんだから!」

 「ちょっと抜けがけずるい!ねぇ小坂くん聞いて!私ね──」

 「小坂ぁー!喜べ!今日の合コンは当たりだぞぉー!」

 「おい離せって!そこどいてくれ!俺は斉川に──」

 早く行かないといけないんだ!

 だがしかし、この場に光毅の声を聞くものは誰一人としていなかった。

 その時、近くの階段から藤野らと共に斉川が現れた。

 「あっ!斉川!斉川っ」

 必死の叫びが聞こえたのか、彼女と目が合った。

 けれど彼女が立ち止まる事はなく、クスリとかすかに笑うとそのまま教室の方へと去っていった。

 「は!?嘘だろ!?」

 あいつわざと無視しやがった!

 「待って!待てって斉川!!」

 その姿は完全に教室の中へと消えていった。

 止まってくれなかったその行為に、抜け出せないこの状況に、怒りはゴボゴボと沸き上がる。

 「離せっ!話を聞け!!」

 「小坂くん!」

 「小坂く~ん」

 「小坂!」

 「おーい小坂ー」

 「っっ……!」

 あああぁぁああぁああーーー!くそっっ!!

 溜まりに溜まった怒りが、限界を突破した。

 「もうお前ら全員どっかいけよ!俺は斉川に用があるんだ!邪魔する奴はぶっ殺すぞっ!!」

 廊下に怒号が轟いた瞬間、その場の空気が一気に凍りついた。

 誰もが慕う『優しいお兄さん』は崩壊。空腹で気が立っている野良犬は、手のつけられない狂犬と化した。

 ったく…、やっと静かになった。

 驚きと恐怖で固まっている輩をかき分け、光毅は自分の教室へと向かった。



 §



 「なんか小坂くんすごい事になってたねー」

 「ってか碧乃っちの事呼んでなかった?」

 「あー、呼んでたかも」

 「でもあれは助けられないよねー」

 「人多すぎてこっちまで抜け出せなくなっちゃうよ」

 「ふふ。そうだねぇ」

 「あ、斉川さん!」

 「ん?」

 教室へ入ると、1人の男子生徒がパタパタと駆け寄ってきた。

 「昨日はありがとう。おかげで勉強がはかどったよ」

 「…そっか。なら良かった」

 「それで、今日も教えてくれるよね?」

 ずいっと笑顔が近付き、その馴れ馴れしさに思わず肩が跳ねる。

 「っ!…あー…う、うん。まぁいいけど」

 「やったね!ホント斉川さん女神!」

 言いながら、なぜか碧乃の両手を取って握ってきた。

 「!?」

 なっ、何?!

 「ってか、超重要な事訊いていい?斉川さん、俺の書いた手紙読んでくれた?」

 「は?て、手紙?」

 「そう。俺頑張って書いたんだけど」

 「いや、あの…えっと…」

 「あ!ちょっと何碧乃っちに気安く触ってんの?!」

 「邪魔するな藤野。俺は今大事な話を──」

 その時、どす黒いオーラが背後に迫り、男子生徒の肩を掴んだ。

 「ん?なんだよ、だから今大事な話してて…」

 振り向くとそれは、オーラを纏い鬼と化した小坂だった。

 「…その手を離せ」

 「えっ?あー、いや、これはただ──」

 「離せよ。んで邪魔」

 そのまま碧乃からその彼をひっぺがし、自分の後ろへと投げた。

 「わっ、痛っ!」

 「斉川……俺に勉強教えろ」

 「へ?…勉強?」

 「ちょっと小坂何言ってんの!俺の方が先に約束して──」

 「あ゛あ?文句あんのか?」

 「ひっ!?」

 その形相で男子生徒を黙らせ、碧乃を再び睨む。

 「いいから教えろ」

 「……ふふっ」

 「あ?何笑ってんだ」

 「ふふふっ。だって」

 この状況で『勉強』って。

 「それっていつ?」

 「今日も明日も明後日もずっとだ!」

 「あはは、ずっとかぁー」

 ……ああ、全く。素晴らしいよ、君は。

 碧乃は楽しくてたまらないと笑みを向けた。

 「しょうがないなぁー」

 後ろで青ざめて固まっている男子生徒と目が合い、苦く笑ってみせた。

 「そういう事みたいだから、ごめんね」

 碧乃は再び、小坂の家庭教師となった。
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