【完結】媚薬を盛られた天才魔術師様を、助手の私が介抱することになりまして

物村

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14 二人だけの夜

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ドミニクスと口づけを交わすのは、これが初めてだった。

最初は、唇を触れ合わせただけ。
離れて、瞳がぶつかる。
その熱に引き寄せられるように、またくっついた。吐息が触れて、もう一度。……何度でも、欲しくなる。

「ヒルダ……、ヒルダ……っ」
「ん……、ドミニクス、さま……」

側にいます、と気持ちを込めて名を呼び返すと、彼の動きがぴたりと止まった。熱の篭った視線が、まっすぐこちらを射抜く。

「……私たちは、恋人同士だろう……」
「はい……」
「“様”は、もう……いらないのでは、ないか……」

乞うように、ちゅ、ちゅと唇を重ねられる。
呼び捨てで呼んでほしいのだ、とわかった。鼓動が早まる。叶えてあげたくて、唇をほどく。

「……ドミニクス……」
「っ、ああ……!!」

背中に腕が回され、隙間がなくなるほど強く抱きしめられた。少し痛い。けれど、その懸命さが嬉しい。

もっと深く触れ合いたくて、背伸びをする。
ためらいながら舌先をのぞかせ、ちょん、と下唇をつついた。

「ね……口を。少しだけ」

意味を測るように、彼が唇を開く。真似するように舌先を見せてくれた。
ヒルダは頬を寄せ、やわらかく舌同士を触れ合わせる。

「……ん、む」

ドミニクスの口から、わずかに息が漏れた。苦しそうにしていないか確かめながら、探るように舌を滑らせていく。途中、彼の舌をやさしく喰むと、身体がびくりと跳ねた。ぎゅう、としがみつくように抱きしめられる。

今度はドミニクスのほうから舌が伸び、ヒルダの中へ潜り込んできた。貪るように奥を探る、熱を孕んだ動きに息が乱れる。

「っ、ふ……、んっ……」

夢中になっているらしく、奥へ、さらに奥へと求めてくる。首が自然と上を向き、触れ合う角度が何度も変わった。途中で舌をちゅう、と吸われた。腰がカクンと揺れる。

口内をくまなく犯されていく。逃げ場がなくて、腰の奥に熱が溜まっていった。

鼻でどうにか息を繋いでいたが、やがて苦しくなる。ドミニクスの胸元に手を置き、わずかに距離を取った。至近距離で、名残惜しそうに瞳が揺れている。眉を下げたその表情に、胸が甘く疼いた。──つくづく、自分はドミニクスに弱い。

「……っ、はぁ……はぁ……」

息を整えたくて、ベッドの端に腰を下ろす。顔を上げると、熱を宿した瞳でこちらを見下ろすドミニクスがいた。

両手が肩に触れ、押し倒される。背中がベッドに沈んだ。
ヒルダが身を預けると、ドミニクスが覆いかぶさる。

指先が肩へ触れ、腕の輪郭をなぞっていく。
その温度が心地よくて、息がこぼれた。

「……ドミニクス、さま……、んっ……」
「……”様”」
「ごめん、なさ……、ん、むうっ」

癖になっていて、咄嗟だと勝手に出てしまう。
責めるように両手を上から押さえつけられ、深い口づけが落ちた。

手の動きが再開する。肩から腕をなぞっていた手が、胸元をかすめた、そのとき──ふいに止まった。視線が迷うように結び目へ落ちる。

ボウタイブラウスのリボンに気づいたのだろう。許可を求めるように見上げてくる。ヒルダはひとつ頷き、端を握らせた。

引っぱられると、しゅるしゅる、と結び目がほどけた。
「う、わ」
嬉しそうな声が、素直に漏れる。

隠れていたボタンを外され、胸元が静かに開かれる。首元に下げていたお守りが、かすかな光を返して彼の視界に入った。

「……つけていて、くれたんだな」

嬉しそうに目を細めて、小さく問う。

「外しても、いいか」

つけるのが当たり前になっていたから、そのままでいたかった。けれど、身体が揺れるたび胸元のあちこちに当たって、少し痛い。
頷くと、ドミニクスは二人のものをそっと外し、並べてサイドボードに置いた。

視線が胸元へ戻る。白く繊細な下着に圧倒されるように、瞳が大きく揺れた。恐る恐るといった手つきで両手で包み込み、ふるふると揺れる感触を確かめるように、何度も手を動かしていく。

「っ、すごい……」

うっとりした表情のまま、下着で持ち上げられた谷間に思い切り顔を埋めた。すう、はあ、と深呼吸をして、谷間に舌をぬるりと滑らせてくる。

顎がクンと反り、息が漏れた。
手は絶え間なく、胸をたぷたぷと揺らす。──夢中な顔ごと、胸に預けられてしまう。

目を閉じて堪能するその姿が、どうしようもなく愛おしい。ヒルダはそっと彼の頭を撫でた。

「っ、ヒルダ……っ」

顔を上げたドミニクスが、息を吸い込むようにして勢いよく唇を重ねてくる。両手はそのまま胸を下着越しに揉みしだいている。固くなった下半身は無意識なのか、ぐっ……ぐっ……と下腹部に押し付けられ始めた。

熱に当てられ、ヒルダの身体も強い刺激を求めてしまう。

「んっ、おねがい……、直接、さわって……!」

身を反らせるようにして、自分で下着を取り払った。裸の胸がふるりと揺れ、ドミニクスの瞳が釘付けになる。次の瞬間、勢いよく両手で掴まれた。

「ああっ!」

手のひら全体で揺らされながら、くりくりと親指で先端を押し込まれる。刺激で大きな声が漏れた。
空いていたもう片方は口で含まれる。控えめに舐められたかと思えば、直後にちゅう、と音が立つくらい吸われる。角度を変えて繰り返され、歯を当てられた瞬間──

「ん、んっ!」

ドミニクスの頭を抱き寄せ、胸に押しつけた。同時に身体がびくんと震える。

「気持ち、良かった……のか」
「っ、見れば、わかるでしょ……」

嬉しそうに声を震わせる彼の顔をまともに見られず、ぷいと顔を背けた。

「……なんか、いいな……それ」

顔が近づき、落ちてきたのは触れるだけの口づけ。
そのときの得意げな表情が、どうしようもなく不公平に思えた。ヒルダからも仕掛けることにする。

視線を合わせたまま、トラウザー越しに昂りへ触れてみると、「うあっ!?」という声と共に身体が跳ねた。熱を孕み、強く主張するそれの形を確かめるように、布越しに上下に擦る。みるみるうちに顔が赤くなり、息遣いが荒くなる。

紅潮した頬、半開きの口、潤んだ瞳。
余裕のない表情に、ヒルダの喉がこくりと鳴った。

「ドミニクス、かわいい」
「っ! この……っ」

その顔がもっと見たくて動きを早めようとすると、手を取り払われた。

ドミニクスは身体を起こし、シャツを脱ぐ。もどかしそうにカチャカチャとベルトを外した。下着ごとトラウザーをずり下ろすと、勢いよくドミニクスの陰茎がぶるんと勃ち上がった。

長身の身体に見合ったそれは、お腹に突きそうな程に上を向いている。先端には、ぷくりと雫が浮かんでいた。

「これでも、可愛いと言えるか……?」

ぎらぎらした目で、自身を扱きながら見下ろしてくる。その姿がまるで、「これでお前を滅茶苦茶にするぞ」と言っているようで、背筋がぞくぞく震えた。

スカートへ手が伸び、勢いよくめくられて下着が露わになった。

「きゃあっ!」

戻そうとしても、両膝の裏側から押される。見せつけるような体勢で、動けなくされた。

「っ、いやっ、はなしてっ」

無防備な下着が、目の前に晒される。隠したいのに、膝裏を押さえられて動けない。腰が浮き、膝から下だけが虚しく宙を切った。

「……びしょびしょで、中、透けてる……」
「……っ、うぅ~~~……」

たっぷり潤ったそこを食い入るように見つめられて、情けなく唸ることしかできない。普段見ることのない、ぐずぐずになった自分。ドミニクスが大きく喉を鳴らした。

布越しの割れ目をなぞるように、屹立を擦り付けられる。ぐちゃぐちゃといやらしい音が鳴った。
動きが、どんどん遠慮のないものになる。

膝裏を押さえつけられたまま、快感を逃がせない。視界がじわりと潤み、半開きの口から声にならない息が漏れ続けた。

「んっ、んうっ! あ、あっ、やぁっ」
「はぁ……、ぐっ、もう……挿れたいっ」
「や! えっ!? ああっ!」

クロッチを横にずらされ、秘所が露わになる。
遮るもののない蜜口に、ぴたりとそれが押し当てられた。

「んんんーーっ!!」

一気に奥まで突き入れられた。
身体の奥までこじあけられて、頭の中がぱちぱちと弾ける。

「っ、はぁ……、ヒルダ……、ヒルダ……っ!」

焦点の合わない、とろりとした瞳のまま、腰が動き始めた。最初は馴染ませるみたいに、ゆっくり。
それが、たんっ、たんっ、と打ち付ける動きに変わっていく。

膝裏を掴まれ、腰を浮かされたまま、好きなように動かされる。弾力のある先端で奥を突かれたり、壁の上側を擦られたり。膣口近くまで一気に抜かれたり。

でたらめな律動に、身体は翻弄され続けていた。

「やあっ! んっ、ひんっ! んうっ、んんっ!」

昂っていく熱を逃がすように、首をいやいやと振る。手で口を押さえようとした瞬間──顔の上に重なる影。覆いかぶさるように、ドミニクスの顔が一気に迫った。

「だめだ、ヒルダ。顔、隠すな……」
「ひうっ!?」

体勢が変わり、角度が変わった瞬間、弱いところに深く当たった。瞳は虚ろなまま、腰を押しつけるように何度も深く沈み込む。

身体の奥まで塞がれて、逃げる場所がなくなる。

「あ、も、だめっ! きちゃう! あっ、ああーーっ!!」

熱が弾け、思考が真っ白に染まった。

「っ、ぐうっ──!」

絶頂の締め付けに耐えきれないみたいに、ドミニクスがびゅくびゅくと熱を吐き出した。
勢いよく注がれていく。
ヒルダは、ぼんやりしたまま──それを受け入れていた。

視線を向けると、彼は覆いかぶさったまま荒い息を吐いている。顔は真っ赤に染まり、額には細かな汗の粒が浮かぶ。一生懸命なその姿が愛おしくて、ヒルダは額の汗をそっと拭った。

「っ、はあっ……、ヒルダ……、まだ……」

ゆるゆると甘えるように腰が動き始める。腰まわりにまくられたスカートの裾が、肌に絡むようにまとわりついた。ずらされた下着もそのままだと気づいて、意識が一気に現実へ引き戻される。

「ちょ、ちょっと! ドミニクスっ」
「んー……?」
「スカート、脱ぎたい、で、やあっ! あ、あ、いま、そこっ、ぐりぐり、し、ないでっ、んんっ!」
「んー……」

訴えの最中も夢中で動かされて、膝裏を掴む手をぺちぺち叩いた。そこでようやく気づいたように、短く「っ、すまない」と返される。名残惜しそうに抜かれたあと、腰回りで丸まっていたスカートと下着を脱がせてくれた。

すぐにでも再開したいのだろう。それらは椅子のそばに、ぽいと放られる。

一瞬むっとした。けれど、いまのドミニクスを見れば責める気にもなれない。……あとできれいに掛け直そう、と小さく息を吐いた。

ベッドに乗り上げたドミニクスが、まだ足りないと言わんばかりに抱きついてくる。ヒルダは優しく抱きしめ返した。肌同士の接触が気持ちよくて、ぬくもりに目を閉じる。ドミニクスの背中を撫でた。

「はぁ、っ、ヒルダ……!」

前にも思ったが、彼は背中を撫でられるのがとても好きらしい。手のひらが背をなぞるたび、幸せそうに顔がほころぶ。

肌を重ねながら、ヒルダは思う。彼の身体は昔より骨ばしさが消え、全体にうっすら厚みが出ている気がする。ささやかな変化だ。けれど、ただただ愛おしい。

やがて、またドミニクスがゆっくり入ってくる。名前を呼ばれ、口づけられ、抱きしめられ、揺さぶられる。
たどたどしくても、一生懸命に愛してくれた。

ヒルダも負けじと受け止めたくて、口づけを返す。頬や肩を撫でながら、腰へ足を絡めた。中が一杯になるまで愛されて、心から幸せだった。



「ふふ。たくさん、してしまいましたね」
「ああ。……子供、出来るだろうか」
「出来てしまうかもしれませんね。──赤ちゃん、欲しいですか?」
「欲しい。ヒルダとの子供が、欲しい……」

あたたかな湯の中で、二人は静かに寄り添っていた。湯気がゆらゆらと立ちのぼり、穏やかな沈黙がふたりを包む。

ドミニクスは湯船の中で足を伸ばし、その間にヒルダを座らせていた。背中を預けたヒルダの腹の上に、彼の手が重なる。湯の温もりと同じくらい優しい手つきで、お腹を慈しむように撫でていた。

「家族というものに、ずっと憧れてたんだ。親も、兄弟も……いなかったから」

その言葉に、思わず顔を上げる。
背後を振り返ると、湯気の向こうでドミニクスが小さく笑っていた。

──いなかった?
じゃあ、ゲイルは。グランツ家の人たちは……?
胸の奥で、小さく波が立つ。

「……っ、ああ。言っていなかったか」

彼は目を伏せ、湯面を見つめた。

「私は養子として、あの家に迎え入れられたんだ。もとは孤児院で暮らしていた。魔力の高い孤児がいると聞きつけたグランツ家の当主が、掘り出し物だと……拾っていった」
「そう、だったのですね……。ずっと、あの方が、実の兄だとばかり……」

言葉にしながら、胸の奥に複雑な感情が浮かぶ。

ようやく、グランツ家の中でドミニクスだけが異質だった理由が腑に落ちた。
実の家族が処罰されることを気に病んでいるのでは、と案じていた。けれど──

どこか、ほっとしてしまった自分がいる。
それに気づいて、少しだけ目を伏せる。

「……あの家でも、孤児院でも、私は家族として扱われなかった。だから──ヒルダ……」

声に熱が篭りはじめる。お腹を撫でていた手が動き、背中ごと強く抱きしめられた。湯の波がちゃぷりと揺れ、肌に伝わる鼓動がさらに熱を帯びる。肩口へ、啄むように口付けが落ちた。

「……今日は、もう、おしまいですよ」

お尻に当たる不埒な気配。回された腕を、ぺちりと叩く。

「今日はもう、寝ましょう。──寝る前に少しだけ、私から貴方に触れたいんです。その時間が、なくなってしまいますから」

その言葉に、ドミニクスの瞳が大きく輝いた。
ヒルダは手を伸ばし、湯の中で彼の手を取る。ぬるりとした温もりを伝いながら、立ち上がらせた。



「ヒルダ、これは……?」

鏡台の前。
促されて椅子に腰を下ろしたドミニクスが、鏡越しにこちらを見ている。少し不安そうに眉を寄せる顔が、灯りの中で柔らかく映っていた。

「髪の毛を乾かした後……少しだけ、お手入れをさせてください」

声をかけながら、備え付けのタオルで頭全体を包みこむ。水気を丁寧に吸い取り、ふわふわのタオルで軽く押さえるたび、「ああ」とか「うう」とか、慣れない様子の声が漏れた。

その戸惑いぶりがおかしくて、思わず笑みがこぼれる。

水気が落ち着いたころ、香油を数滴、手のひらに垂らした。温めてから、銀灰色の毛先へ揉み込む。
淡い香りが、ふわりと部屋に溶けた。

「……! これ、ヒルダの香りだ」

気づいた瞬間、鏡越しの顔がぱっと明るくなる。その表情に、ヒルダも少し頬を緩めた。

「ええ。部屋から持ってきちゃいました。貴方の髪に触れて、櫛で梳かしてみたいなって……ずっと思っていたんです」
「えっ……」

小さく驚いた声とともに、ドミニクスが振り向く。
視線がぶつかり、息がふと止まった。

「っ、ふん。ヒルダは本当に……私のことが、好きなんだな!」

照れまじりに放たれた、あまりに今さらな言葉。思わず吹き出してしまう。
櫛を手に取り、髪をゆっくり梳きながら、穏やかに告げた。

「そうですよ? 私は、貴方──ドミニクスのことが、とっても大好きなんです」

その言葉を聞いたドミニクスは、顔を真っ赤に染めたあと、「ぐ、う……」と唸り声をあげた。
ヒルダはつややかに整った髪に満足し、そっとその頭を撫でる。

「これから、二人で……いろんなことをしていきましょうね。
貴方と私で。……それから、いつか……家族、みんなでも」
「……ああ」

返されたその声が、部屋の中にやわらかく響く。
静かな夜に、ふたりだけの約束が溶けていった。
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