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犬みたいな脳筋隊長の初恋こじらせが爆発して年越しおせっせになる話
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「俺、また振られたわ」
「ほーん」
あっけらかんと言う男に、クロエ・リンドは心底どうでもよさそうに返した。
ちょうどポットが湯気を上げている。
コーヒー淹れよ。そう決めて白衣を翻し、棚へ向かう。
薄墨色の髪を耳にかけ、首元の短い毛先を癖で押さえた。背伸びして紙コップを取る。
「冷たくね?」
「いや、まあ。だってさあ、これ何度目よ」
「覚えてねえわ」
「でしょう? それだけ聞いたら、こっちの反応だってこうなるでしょうよ」
インスタントに湯を注いで、適当にかき混ぜる。
シャバシャバでも午後の目覚ましには十分だ。
紙コップを握ったまま振り返ると、男は不服そうな顔をしていた。
目の前の男──ヒュー・ヴァルドは、遊撃部隊長らしくよくモテる。若くて強くて顔がよく、ガタイまでいい。
軽装の軍服が、その大柄な体に妙に様になっている。
気さくで面倒見もいい。告白されれば二つ返事で「わかった、よろしくな!」だ。
……ただし、続かない。
デートはする。けれど自分から踏み込まない。連絡もしない。
ひと月もすれば「私に興味ないんだね」と振られる。
それを何度も繰り返していた。
それでも拗れないのは、誰とも体の関係を持たないからだ。誘われても気が乗らず、食事と休日の街歩き程度で止まるらしい。
妙に健全で、妙に不誠実。付き合っているのに、手前でいつも引き返す男。
そんな噂が広まっても、「私ならきっと」と名乗りを上げる子が後を絶たない。
熱量すごいな、とクロエは他人事みたいに思った。“興味を持たれて続いたらラッキー”くらいの、くじ引き扱いなのかもしれない。
……で。
なんでこの男は、いちいち自分に報告してくるんだ。
クロエは遊撃・前線部隊の初期対応担当医務員だ。怪我人を診て応急処置をし、本院へ送るかどうかを判断する。
そういう立場なら、遊撃部隊長と顔を合わせるのは必然だった。
“現場経験が長くて話が早い”
そんな理由で雑に指名されることも増え、気づけば関わりが当たり前になっていた。
そのうちヒューは、怪我も用事もないのに頻繁に来るようになった。
理由を聞いたことがある。
「俺に興味ないのが楽でいいんだよな」
薄情者扱いされたのか、と一瞬だけ凹む。
でも傷つきはしなかった。ヒューのことは嫌いではない。でかめの犬くらいに思っているだけだ。
実家のジョン(大型犬)を思い出しながら、クロエがコーヒーをすすっていると、ヒューはそれを眺めて間延びした声を出す。
「俺、コーヒーの美味さ、わかんねえんだよなあ」
「話、終わった? 仕事に戻りたいんだけど」
「えー、冷た。昔みたいに慰めてよ」
「やだよ。言ったって意味なかったじゃん」
そもそもこの男は傷ついていない。
昔は親身に「こうしたらよかったんじゃない」「こっちから誘ってみたら」と助言したこともある。けれど、いつもなあなあで終わった。
「とりあえずさ。相手に興味ないんだったら、最初に断りなよ」
「うーん。だって別に嫌いじゃないんだぜ? 話してたら好きになるかもしれないかなって」
「……なったことあるの?」
「無いな」
「駄目じゃん」
もういい加減帰ってくれないかな、とクロエは内心でため息をつく。
壁のカレンダーが目に入った。年末年始をまたぐ日付に、大きく丸がつけられている。
年に一度の“年巡の夜”。城下町では灯の市が立ち、通りには屋台と灯火が並ぶ。
人が増えれば、酔客も揉め事も増える。騎士団──とくに遊撃は警備と神殿巡回に駆り出されるのが常だ。
その万一に備えて、医務局も当直体制。クロエも入っている。
祭りに特別な感慨はない。騒がしいし、仕事も増える。
それ自体はいい。
……ただ、その“あと”を思うと。正直、気が重かった。
「どうした?」
「実家帰るのダルいなあって」
「仲、悪いのか?」
「別に。けど、うるさいんだよね。結婚しろってさ。ここ数──」
ガタン!!!
一拍、音だけが残った。
「…………何」
数年、と言い切る前に、ヒューが勢いよく立ち上がっていた。
椅子が床に転がり、ぐわんと揺れている。
「クロエ、結婚するのか」
「いや、しないよ。親が相手見つけろってうるさいだけ」
ヒューが目を見開き、こちらを見据える。
太めの眉と暗緑の瞳が、真正面から外れない。
整っているのに、色気より健全さが勝つ顔。
真顔だ。圧と眼力がやたら強い。
討伐対象と対峙するとき、こんな感じなのかもしれない──と、クロエは馬鹿なことを考えた。
「で。結局なんなの」
「……わからん。すまん」
無表情のまま、沈黙が落ちる。
次の瞬間、ヒューは倒した椅子もそのままに、どこか困ったように言った。
「……戻るわ」
そして去っていく。
「マジで何……」
驚いた拍子に、白衣へコーヒーが一滴落ちていた。
……あとで染み抜きしなければ。
あの日から数日、クロエはヒューを見ていない。
詰所にはいるらしいのに、廊下で鉢合わせることもなければ、医務室にふらりと顔を出すこともなかった。
以前は怪我も用事もないくせに来ていたのに。
寂しい、とは違う。
ただ──どうしたんだろう、とは思ってしまう。
窓際に立って外を見る。
窓の外では、灯火の列がゆっくり揺れていた。雪に滲んだ光が街道を縁取っている。
城下のあちこちに祭の装飾が増え、年巡の夜が近いことだけは否応なく伝わってくる。
クロエはその光景から視線を外した。
そのとき、医務室の扉が勢いよく開いた。
「失礼します! 遊撃の帰還班で負傷者が出ました。医務員殿、すぐ来ていただけますか!」
覗いた顔は見覚えのない若い隊員だった。きっと新入りだろう。背筋が妙にまっすぐだもの。
「わかりました。すぐ向かいます」
クロエが腰を上げると、同室にいた後輩のロンが手を挙げた。
「あ。僕も、手空いてるんで出れます」
「助かる。ありがとう」
ふたりで対処できる範囲だろう。
──少なくとも、そうであってほしい。
詰所の奥の臨時処置室には、軽傷の隊員が数人集められていた。
血の匂いは薄いし、大きな声も出ていない。
クロエは一目で優先順位をつける。
ロンに指示を飛ばしながら、淡々と手を動かした。
傷は浅い。止血と消毒。簡単な縫合と固定で終わる程度だ。
予想どおり、重症者はいなかった。
片付けに入ったところで、背後の扉が音を立てて開いた。
振り返ると、久々に見るヒューが立っていた。扉に手をかけたまま、こちらを見て固まっている。
外套の肩に雪がまだらに張りついていた。溶けきらない白が濃い色の布を斑にしている。
と思ったら、ずかずか歩いてくる。歩幅がでかい。距離が一気に詰まった。
次の瞬間、ヒューが無言でロンとクロエの間に割り込んできた。
分厚い胸板が視界を塞ぐ。二人とも反射的に半歩下がった。
「ヴァ、ヴァルド隊長……?」
状況が掴めないロンが恐る恐る声をかけると、ヒューははっとした顔になる。
次の瞬間、我に返ったみたいにぶんぶんと首を横に振った。
「すまん。怪我人が出たと聞いた」
「ああ、それなら……」
ロンが状態を簡潔に説明し、クロエが補足する。
ヒューは聞きながら、どこか落ち着かない顔をしていた。視線が定まらない。
けれど仕事の話になると、必要な判断だけは即座に返してくる。
処置室を出る間際、ヒューはクロエを見た。
また例の、無言の圧と眼力だ。
これが、十日前の出来事。
八日前。ヒューは今度、医務室にひとりで現れた。
「俺、最近具合悪いかもしれん」
いつだか倒した椅子にどかりと座り、開口一番そう言い放つ。
「どのへん」
「……わからん」
憮然と言い切る。大人だろう。症状くらい言ってほしい。
クロエの眉が勝手に寄った。
医務員として、少し距離を空けて立つ。ざっと全身を見回した。
出血も腫れもない。顔色も悪くない。少なくとも怪我人の見た目ではなかった。
「怪我じゃないんだよね」
「怪我では、無い」
「じゃあ体調不良、と。どこが、どう? 吐き気とかあるの」
ヒューは「うーん」と唸り、しばらく黙った。
真面目に考えている顔なのに、答えが出てこないらしい。
その沈黙が続くうちに、室内の空気がわずかにざわつく。
医務室にいた同僚たちが気になったのか、ちらちらとこちらを見ている。様子見の気配が肌に触れるように伝わってきた。
(……ほら。みんなも気にしてる)
そう思いながら、クロエが言葉を待っていると──
唐突に、ヒューがクロエの手を取った。
周囲の視線が、一斉に集まる。ぎょっとした顔がいくつも並んだ。
「クロエ」
「ん? なに」
呼ばれたので返事をする。視線がぶつかり、そのまま言葉を待った。
握られた手の力が強まる。
「ねえ。何これ。何の時間」
「…………俺もさ、よくわかってねえんだよ。でも、何か掴めそうな気がしてる」
そう言いながら、指先を確かめるように触ってくる。無遠慮で、子どもみたいな手つきだ。
下心の気配は感じられない。
クロエはため息を飲み込み、ヒューの頭頂──灰茶色のつむじを見下ろした。
まずは何をしたいのか見届けよう。医務員としての判断だ。たぶん。
そしてヒューは、クロエの手を引き上げる。
自分の頬へ、ぺたりと当てた。
「!?」
硬い皮膚の感覚に、クロエの目が見開く。
めったに触れることのない男の熱が、手のひらに直に伝わってきた。
ヒューは気にした様子もなく、満足げに一度頷く。
そのまま反対の頬へ導いて、もう一度ぺたり。
「……歯でも痛いの?」
クロエが半ば投げやりに口にした、その瞬間。
ヒューがやけにしみじみとした表情を浮かべた。
「……なんか、いい感じ、か? うん。治ったかもしれん! ありがとうな!」
言い逃げみたいに立ち上がり、止める間もなく医務室を出ていった。
扉が閉まって、ようやく空気が戻る。
「リンド、ちょっと! 何あれ! どゆこと!」
同僚が堪えきれないように声を上げる。
「いや、私が聞きたい……」
クロエが手を見ながら呆然と返すと、室内のざわめきがさらに大きくなった。
七日前、五日前、四日前、二日前──ヒューは医務室へ頻繁に現れた。
悩む顔で来て、結局はクロエに触れたり、どうでもいい報告をしたりして、満足すると帰っていく。
その繰り返し。
こんなことを周囲の目も気にせず続けていれば、誰だって分かってしまう。
クロエ自身だって、もう気づいてしまっていた。
「これってぇ……」
「言わないで」
「いや、でもぉ……」
「頼むから」
完全に面白がっている同僚の言葉を手で制し、ジト目になりかけた視線を机に落とす。
ヒューはたぶん、クロエに恋をしている。
そして、それをまだ自覚できていない。
好きな食べ物を聞いてきたかと思えば、数日後には城下町で買って持ってきた。
礼を言って受け取ると、その場で食べろと促される。「美味しい」と答えれば、満足そうに去っていった。
かと思えば、廊下ですれ違いざまに「コーヒー、俺も飲んだぞ」と唐突に報告してくる。前置きゼロ。
「そ、う」と返すのが精一杯でも、それで良かったらしい。ただ言いたかっただけだ。
他にも、顔をまじまじ見てきたり、医務員たちの白衣を気にして「それって俺のサイズもあるのか」と真顔で聞いてきたり(無かった)……そんな奇行の数々を、この数日間ずっと繰り返していた。
周囲は完全に、モテ男の挙動不審な初恋を観察する側だ。応援ムードですらある。
こっちまで生温かい目で見られている。
何でだよ。
そんな空気じゃなかったじゃん。
いよいよ“年巡の夜”当日になった。
城下では灯の市が立ち、通りという通りが屋台と灯火で埋まる。
人が増えれば揉め事も増える。警備強化で隊員が出動し、交代で戻った者たちは、出店で買った食べ物を休憩室や食堂で頬張っていた。
普段ならありえないが、この日だけは交代後に限って酒も許される。
騒ぎすぎない程度に、ちょっとした飲み会みたいな空気が詰所に溜まっていた。
クロエも待機しながら、雑談に付き合い、つまみの菓子を摘む。
交代を数回見送っても、大事は起きない。
今夜はこのまま平和に終わりそうだ。
そう思った途端、眠気がまとわりついた。
休めるときに休んでおきたい。
クロエは席を外し、仮眠室へ向かう。扉を開けた瞬間、喉の奥で声が引っかかった。
「うわ」
「うわとか言うな」
ヒューがいた。しかも、他に誰もいない。
外は祭で浮ついているのに、ここだけ妙に静かだ。交代の切れ目で、みんな巡回に出ているのだろう。
……よりによって二人きり。
クロエは天井を見上げた。
「寝てたの?」
「ああ。ちょい前に起きた。クロエはこれから?」
「そ。今のうちにちょっと寝とこうかと思って」
「ふーん」
ヒューが変に間を置いた。視線が落ち着かない。
いつもの挙動不審だ、とクロエは思う。
「……見ててもいいか?」
「は?」
「クロエの寝てるとこ、見てみたい」
「何言ってるかわかってる? 結構とんでもないこと言ってるよ?」
ヒューは後頭部をがりがり掻いた。言ってから自分で変だと気づいたらしく、眉間に皺を寄せる。
「自分でもどうしてかわかんねえんだけどさ。クロエのこと知りたいんだよ」
言いながら、言葉を探すみたいに目線が泳ぐ。
「知れたら嬉しいし、もっと知りてえってなるし……俺のことも知ってって思う。訳わかんねえ」
本人は本気で困った顔だ。
クロエは半目で見た。
(……これ、本人だけで答えに辿り着けるのか?)
遠い。だいぶ遠い。そう思った瞬間、面倒くささが限界を超えた。
「ヒューはさ。私のこと好きなの?」
ええい、ままよ。
クロエは自分から飛び込むことにした。いい加減、まどろっこしい。
その言葉にヒューは目を見開く。
呆然とこちらを見つめ、はくりと口を開けたまま固まった。脳内で何かを必死に処理しているのが、顔に出ている。
やがて大きな手で口元を押さえ、目元がみるみる明るくなる。
埋めておいた骨を掘り当てた犬みたいに、表情が一気にほころんだ。
「好きだ!」
勢いよく言い切って、次に自分でびっくりした顔になる。
「……そっか。これ、『好き』だったのか!」
雄叫びを上げそうなテンションに、クロエは乾いた声で返した。
「わかってよかったね」
「おう!」
元気がよすぎる。
──一旦解決したかな。もう寝てもいいかな。
クロエが空いているベッドへ視線をやった瞬間、腕をがしりと掴まれた。
「なあ。俺、クロエが好きだ」
ヒューの手が熱い。離す気配はないらしい。
「ありがとう。寝てもいい?」
「いいけど、見ててもいいか?」
「いいって言うとでも思った?」
「だよなあ」
しゅんと眉を下げる。
やりとりを重ねても、妙な下心は見えない。
掴まれている腕も、不快ではなかった。
残念そうな顔まで、なんだか犬みたいだ。……ジョンと一緒に寝るようなものか?
だったら、まあ、いいか。
眠気と面倒くささで思考を放棄する。
「いいよ」
「マジか」
「別にやめてもいいんだけど」
「いやいやいや、やる。やる」
ここは複数人が仮眠を取る部屋だ。
簡素で広くはないベッドがずらりと並び、男女が多少混ざっても使えるよう、それぞれのスペースを仕切るカーテンがついている。
扉から入ってすぐには見えない位置のベッドを選び、カーテンを閉める。
クロエは靴を脱ぎ、その端に腰を下ろした。
隊証を白衣のポケットに突っ込み、白衣を脱ぐ。
シャツと膝丈のタイトスカート、丈夫なタイツ。
普段着のままなのに、妙に無防備に思える。
この状態を人にまじまじ見られるなんて、想定していなかった。
横になった瞬間、視線を強く意識した。
ヒューが真剣そのものの顔でクロエを見ている。任務中か、怪我人を前にしたときくらいの集中だ。
こちらの落ち着かない気持ちは、つゆほども考えていないらしい。
(気まずい……何だこれ……)
ひどくそわそわして、クロエはぎゅっと目をつぶった。
瞬間。ギシ、とベッドが沈む。
「は、え、ちょっと!? 嘘でしょ!?」
ヒューが乗り上げてきた。
手をつき、足も乗せて、クロエを囲い込む。
まだ触れてはいない。距離もある。
それでも──“これは、まるで”が、喉元までせり上がった。
「クロエ……やべー」
うわごとのように呟いて、息を吐く。
垂れ気味の目がとろんととろけている。表情だけ見れば完全にうっとりだ。
「……やべーな、これ」
内容は増えていない。
そういえば、この男は言語化がことごとく下手だった。
クロエも状況的な意味で“やべー”には同意だったが、刺激をしたくない。
黙って様子を見ていると、ヒューは身体を起こし、ベッドの上で膝立ちになった。
顔が離れる。ほんの少しだけ息がしやすくなる。
ヒューは俯瞰でクロエを眺めていた。
視線の高さが下がる。
スカートとタイツに包まれた脚へ注がれている気配が、ひしひしと伝わる。
居心地の悪さに、思わず、もじ、と足が揺れた。
「なあ」
「何」
「俺、クロエが好きだ」
「さっき聞いた。ありがとう」
「クロエは俺のこと、好きか」
「うーん……」
「嘘だろ」
ショックを受けた顔が露骨だ。
いや、でも仕方がないだろう。
これまで一度も、そんな雰囲気はなかった。急にそんな目で見られても、気持ちの切り替えは追いつかない。
でも。
「まだ好きかはわからないんだけどさ、嫌とは思わないんだよなあ」
口にして初めて、自分で納得する。
嫌悪感が、これっぽっちも湧かなかった。
特別こういうことが好きなわけじゃないし、多少の発散は自分でもするし、未経験でもない。
ただ──ヒューに向けられたこの欲を、「受け入れられるな」と思ってしまっただけだ。
「ヒューはさ。これからどうしたいの」
そう問われて、ヒューは膝立ちのまま「うーん」と唸った。
視線が宙を彷徨い、それからクロエの顔に戻ってくる。
しっかり見つめられ、表情が引き締まる。
次の瞬間、また覆いかぶさる姿勢になり、顔同士の距離が一気に縮まった。
「俺のこと、クロエに好きになってもらいたい」
あまりに直球で、飾り気もない。
不覚にも、胸の奥がどきんと跳ねる。
「あと」
まだ続きがあるらしい。
クロエは何も言わず、続きを待った。
「クロエ見すぎたせいで、ずっとちんこ痛え」
「おい」
リーン、ゴーン──……
遠くで新年を告げる鐘が鳴った。
台無しだよ。
鐘の音と同時に、廊下の気配が一気に賑やかになった。
隊員たちが口々に新年の挨拶を交わしているのだろう。
……このままだと、見られてしまう。
想像して青ざめる。ここは集団仮眠室だ。カーテンで仕切られていようが、さすがに無理。
それに──するなら避妊は絶対条件だ。
「ヒュー、人が来るかも」
「く……ッ! このクロエを、見られる、わけに、は……ッ!!」
視線をそらし、拳を握りしめ、心底つらそうに呻く。
その意識だけはちゃんとあるらしい。
だったら今日は終わりかな、と身を起こしかけたとき。
ヒューが顎に手を当て、作戦会議みたいな顔で考え込んだ。
嫌な予感がする。
次の瞬間、がばりと起き上がり、勢いよくカーテンを開けた。
「!?」
クロエも慌てて体を起こす。
ヒューはずかずかと備え付けの棚へ向かい、引き出しを乱暴に開けた。
そして、むんずと掴み上げたそれは──避妊具。
「っ、ヒュ──」
「前にヤッてた奴らが使ってたのを見た」
そうなんだ。
ここでそういうことする人、いるんだ。
……知らなくてよかった情報な気がする。
ヒューはそれをポケットに突っ込み、戻ってくる。
そのままクロエの手を取って立たせた。思ったより優しい力加減だった。
「行くぞ。鍵付きのとこ、知ってる」
耳元に落とされた低い声に、背筋がぶるりと震えた。
仮眠室を出ると、ぞろぞろ歩く隊員たちとすれ違った。
ヒューは隠すように手を放す。代わりに歩幅だけ合わせてくる。
すれ違いざま軽く挨拶を交わすと、隊員たちは「ねみー」と笑いながら、いま出たばかりの部屋へ吸い込まれていった。
……危なかった。
ヒューは迷いなく廊下を進む。
いつも使う階とは違う階段を上り、静かなフロアへ入っていった。
ここは──上役のための階だ。
クロエには用がなく、緊急時以外ほとんど足を踏み入れたことがない。
奥まった一角に、鍵付きの仮眠室が並んでいた。
ヒューは一室の扉を指先で叩き、鍵が下りていないのを確かめてからノブを回す。
中は簡素だが広い。
厚手の扉に遮光のカーテン。清潔な白い寝具。
ひとりで横たわるには十分な幅のベッドが置かれている。
見渡していると、カチャンと背後で鍵がかかった。
「ここなら二人きりだ。邪魔は絶対入らない」
言い終えるより早く抱き上げられ、そのままベッドに下ろされた。
さっきの薄いマットレスとは違い、身体が沈みすぎない。さすが上役クラス。
「わっ、ちょっ」
すぐにヒューがベッドに乗り上げてくる。
白衣が、シャツが、わしわしと剥がされていく。
「待っ──」
「大丈夫。ちゃんとする」
言いながら、首筋に口が落ちた。
舌が、れろっと熱くなぞる。
「……っ」
ぞくりとする。
男の唇は硬くて、舌は思ったより濡れていて、息が熱い。
ヒューが顔を上げ、まっすぐ見てきた。
「クロエ、いいんだよな」
「今更聞くの? そのつもりでついてきたんだけど」
「俺のこと好き?」
「まだわかんないってば」
「…………好きじゃなくても、クロエは誰とでも出来る?」
声のトーンが一気に落ちた。
底冷えするような声音に、背筋が粟立つ。
暗緑の瞳が細くなる。
視線だけで喉元を押さえつけられたみたいだった。
んなわけない。
クロエはぶんぶん首を横に振る。
「さすがに無理。ヒューとするのが嫌じゃなかったってだけ」
「そっか」
短く言って、ヒューの顔が少しだけほどける。
「じゃあ──好きになってもらえるように、頑張らんとな」
そう言って笑った笑顔は、いつもの人好きのする笑顔じゃない。
じっとりとした熱を帯び、深い欲を隠そうともしていなかった。
そこからのヒューは、本当にすごかった。
深いキスを重ねながら、「あー、好き」と何度も呟く。
唇が離れるたび、糸を引くみたいに息が絡む。
タイツとショーツだけになったクロエを見下ろして、「めっちゃクる……」と息を漏らした。
言葉は相変わらず下手なのに、手つきは丁寧だ。
舌が全身を、焦らすみたいに辿っていくたび、甘い痺れが走る。
脇の下や膝裏が、こんなに敏感だなんて。自分でも知らなかった。
そして、秘部に口が落ちた瞬間。
クロエは息を詰める。肩が震え、咄嗟にヒューの腕を掴む。硬い軍服の袖がくしゃりと音を立てた。
「っ、ヒュ──」
「好き。クロエ、好き」
逃げたいのに、指が内側のいちばん響くところを外さない。
舌と指が同時に責めてくる。
「もう無理……っ、や、だ……!」
「大丈夫、無理じゃない。……ほら」
「んっ、んん!」
泣きそうになりながら抗っても止まらなくて。
気づけば、初めて潮まで噴いてしまった。
ぷしゃ、と音を立てて溢れた水気が、ヒューの軍服を濡らしていく。
放心しながら見ていたが、その事実が一拍遅れて恥ずかしさに変わり、顔に熱が集まる。視界が涙で滲んだ。
「っ、ひどい……! だから無理って言ったのに……!!」
「はは、ごめんなあ。可愛いなあ」
まるで反省していない声音だった。
クロエが濡らしてしまった軍服を、ヒューは乱雑に脱いでいく。留め具が外れ、重たい布が床に落ちた。
最後の一枚まで迷いなく剥ぎ取ると、戦場仕込みの体が露わになる。
無駄のない厚い胸板と締まった腹が、呼吸に合わせて静かに上下していた。
「クロエのこと、俺がこんなぐちゃぐちゃにしてるんだ。すげーなあ……」
心底嬉しそうに目を細める。
ヒューは避妊具を取り出し、装着した。クロエの両手を恋人繋ぎでぎゅっと握られる。そのまま、やわらかくなりきった中へと入ってきた。
「っ、ふ……うぅっ、ああっ……!」
太く逞しいそれが、ひだというひだを一つずつなぞるように、ゆっくり奥へ進んでくる。
勢いよく来ると思っていたぶん、じわじわ広がって、余計に耐えがたい。
こつん、と奥を軽く小突かれる。
「ひゃう、っ」と間抜けな声が漏れた。
「かわいい」
低い声が耳に落ちる。
ヒューは腰をゆるく揺らし、内側を丁寧に擦ってくる。
「ヒュー、っ、んっ、んぅっ……!」
「っ、この顔……俺だけのものにしてえなあ……」
腰をぐいっと抱え上げられ、密着が一気に増した。
足を持ち上げられ、尻ごと軽く浮いた体勢のまま、さらに深く抉られる。
「っ、あ、ああ……っ!」
「好き。好き。……クロエ。俺だけ見てて……」
壊れたみたいに繰り返される言葉が、熱の中に落ちてくる。
快感と一緒に、胸の奥がぎゅっとなる。やがてヒューは、薄い膜越しに熱を注ぎ込んだ。
乱れた寝具に並んで横たわり、互いの体温を感じたまま、半ば眠りかけていた。
そういえば仮眠を取ろうと思ってたんだよな、とクロエは思い出す。
年明け早々、まさかこんなことになるなんて。
「なあ……クロエ。俺のこと──」
頭上からヒューの声がした。
見上げると、言いかけた言葉が止まる。
さすがにしつこい、と自覚したのだろう。
けれど暗緑の瞳は揺れたまま、確かめたい想いを隠しきれていない。
「……何でもない」と俯いてしまう。
さっきまでの幸福感との落差が大きい。
確約が欲しいのだろう、とクロエは思う。
正直、とても気持ちがよかった。
ひたすらに自分だけを求めるヒューを見ているうちに、胸がいっぱいになってしまった。
「ヒュー」
声をかけると、顔が上がる。視線がかちあう。
「好きかどうかはまだわからないけれど──ヒューのこと、一生懸命で、愛おしいなと思ったよ」
頭を撫でると、目の前の顔は、ぼんっと音を立てたみたいに真っ赤になった。
「ほーん」
あっけらかんと言う男に、クロエ・リンドは心底どうでもよさそうに返した。
ちょうどポットが湯気を上げている。
コーヒー淹れよ。そう決めて白衣を翻し、棚へ向かう。
薄墨色の髪を耳にかけ、首元の短い毛先を癖で押さえた。背伸びして紙コップを取る。
「冷たくね?」
「いや、まあ。だってさあ、これ何度目よ」
「覚えてねえわ」
「でしょう? それだけ聞いたら、こっちの反応だってこうなるでしょうよ」
インスタントに湯を注いで、適当にかき混ぜる。
シャバシャバでも午後の目覚ましには十分だ。
紙コップを握ったまま振り返ると、男は不服そうな顔をしていた。
目の前の男──ヒュー・ヴァルドは、遊撃部隊長らしくよくモテる。若くて強くて顔がよく、ガタイまでいい。
軽装の軍服が、その大柄な体に妙に様になっている。
気さくで面倒見もいい。告白されれば二つ返事で「わかった、よろしくな!」だ。
……ただし、続かない。
デートはする。けれど自分から踏み込まない。連絡もしない。
ひと月もすれば「私に興味ないんだね」と振られる。
それを何度も繰り返していた。
それでも拗れないのは、誰とも体の関係を持たないからだ。誘われても気が乗らず、食事と休日の街歩き程度で止まるらしい。
妙に健全で、妙に不誠実。付き合っているのに、手前でいつも引き返す男。
そんな噂が広まっても、「私ならきっと」と名乗りを上げる子が後を絶たない。
熱量すごいな、とクロエは他人事みたいに思った。“興味を持たれて続いたらラッキー”くらいの、くじ引き扱いなのかもしれない。
……で。
なんでこの男は、いちいち自分に報告してくるんだ。
クロエは遊撃・前線部隊の初期対応担当医務員だ。怪我人を診て応急処置をし、本院へ送るかどうかを判断する。
そういう立場なら、遊撃部隊長と顔を合わせるのは必然だった。
“現場経験が長くて話が早い”
そんな理由で雑に指名されることも増え、気づけば関わりが当たり前になっていた。
そのうちヒューは、怪我も用事もないのに頻繁に来るようになった。
理由を聞いたことがある。
「俺に興味ないのが楽でいいんだよな」
薄情者扱いされたのか、と一瞬だけ凹む。
でも傷つきはしなかった。ヒューのことは嫌いではない。でかめの犬くらいに思っているだけだ。
実家のジョン(大型犬)を思い出しながら、クロエがコーヒーをすすっていると、ヒューはそれを眺めて間延びした声を出す。
「俺、コーヒーの美味さ、わかんねえんだよなあ」
「話、終わった? 仕事に戻りたいんだけど」
「えー、冷た。昔みたいに慰めてよ」
「やだよ。言ったって意味なかったじゃん」
そもそもこの男は傷ついていない。
昔は親身に「こうしたらよかったんじゃない」「こっちから誘ってみたら」と助言したこともある。けれど、いつもなあなあで終わった。
「とりあえずさ。相手に興味ないんだったら、最初に断りなよ」
「うーん。だって別に嫌いじゃないんだぜ? 話してたら好きになるかもしれないかなって」
「……なったことあるの?」
「無いな」
「駄目じゃん」
もういい加減帰ってくれないかな、とクロエは内心でため息をつく。
壁のカレンダーが目に入った。年末年始をまたぐ日付に、大きく丸がつけられている。
年に一度の“年巡の夜”。城下町では灯の市が立ち、通りには屋台と灯火が並ぶ。
人が増えれば、酔客も揉め事も増える。騎士団──とくに遊撃は警備と神殿巡回に駆り出されるのが常だ。
その万一に備えて、医務局も当直体制。クロエも入っている。
祭りに特別な感慨はない。騒がしいし、仕事も増える。
それ自体はいい。
……ただ、その“あと”を思うと。正直、気が重かった。
「どうした?」
「実家帰るのダルいなあって」
「仲、悪いのか?」
「別に。けど、うるさいんだよね。結婚しろってさ。ここ数──」
ガタン!!!
一拍、音だけが残った。
「…………何」
数年、と言い切る前に、ヒューが勢いよく立ち上がっていた。
椅子が床に転がり、ぐわんと揺れている。
「クロエ、結婚するのか」
「いや、しないよ。親が相手見つけろってうるさいだけ」
ヒューが目を見開き、こちらを見据える。
太めの眉と暗緑の瞳が、真正面から外れない。
整っているのに、色気より健全さが勝つ顔。
真顔だ。圧と眼力がやたら強い。
討伐対象と対峙するとき、こんな感じなのかもしれない──と、クロエは馬鹿なことを考えた。
「で。結局なんなの」
「……わからん。すまん」
無表情のまま、沈黙が落ちる。
次の瞬間、ヒューは倒した椅子もそのままに、どこか困ったように言った。
「……戻るわ」
そして去っていく。
「マジで何……」
驚いた拍子に、白衣へコーヒーが一滴落ちていた。
……あとで染み抜きしなければ。
あの日から数日、クロエはヒューを見ていない。
詰所にはいるらしいのに、廊下で鉢合わせることもなければ、医務室にふらりと顔を出すこともなかった。
以前は怪我も用事もないくせに来ていたのに。
寂しい、とは違う。
ただ──どうしたんだろう、とは思ってしまう。
窓際に立って外を見る。
窓の外では、灯火の列がゆっくり揺れていた。雪に滲んだ光が街道を縁取っている。
城下のあちこちに祭の装飾が増え、年巡の夜が近いことだけは否応なく伝わってくる。
クロエはその光景から視線を外した。
そのとき、医務室の扉が勢いよく開いた。
「失礼します! 遊撃の帰還班で負傷者が出ました。医務員殿、すぐ来ていただけますか!」
覗いた顔は見覚えのない若い隊員だった。きっと新入りだろう。背筋が妙にまっすぐだもの。
「わかりました。すぐ向かいます」
クロエが腰を上げると、同室にいた後輩のロンが手を挙げた。
「あ。僕も、手空いてるんで出れます」
「助かる。ありがとう」
ふたりで対処できる範囲だろう。
──少なくとも、そうであってほしい。
詰所の奥の臨時処置室には、軽傷の隊員が数人集められていた。
血の匂いは薄いし、大きな声も出ていない。
クロエは一目で優先順位をつける。
ロンに指示を飛ばしながら、淡々と手を動かした。
傷は浅い。止血と消毒。簡単な縫合と固定で終わる程度だ。
予想どおり、重症者はいなかった。
片付けに入ったところで、背後の扉が音を立てて開いた。
振り返ると、久々に見るヒューが立っていた。扉に手をかけたまま、こちらを見て固まっている。
外套の肩に雪がまだらに張りついていた。溶けきらない白が濃い色の布を斑にしている。
と思ったら、ずかずか歩いてくる。歩幅がでかい。距離が一気に詰まった。
次の瞬間、ヒューが無言でロンとクロエの間に割り込んできた。
分厚い胸板が視界を塞ぐ。二人とも反射的に半歩下がった。
「ヴァ、ヴァルド隊長……?」
状況が掴めないロンが恐る恐る声をかけると、ヒューははっとした顔になる。
次の瞬間、我に返ったみたいにぶんぶんと首を横に振った。
「すまん。怪我人が出たと聞いた」
「ああ、それなら……」
ロンが状態を簡潔に説明し、クロエが補足する。
ヒューは聞きながら、どこか落ち着かない顔をしていた。視線が定まらない。
けれど仕事の話になると、必要な判断だけは即座に返してくる。
処置室を出る間際、ヒューはクロエを見た。
また例の、無言の圧と眼力だ。
これが、十日前の出来事。
八日前。ヒューは今度、医務室にひとりで現れた。
「俺、最近具合悪いかもしれん」
いつだか倒した椅子にどかりと座り、開口一番そう言い放つ。
「どのへん」
「……わからん」
憮然と言い切る。大人だろう。症状くらい言ってほしい。
クロエの眉が勝手に寄った。
医務員として、少し距離を空けて立つ。ざっと全身を見回した。
出血も腫れもない。顔色も悪くない。少なくとも怪我人の見た目ではなかった。
「怪我じゃないんだよね」
「怪我では、無い」
「じゃあ体調不良、と。どこが、どう? 吐き気とかあるの」
ヒューは「うーん」と唸り、しばらく黙った。
真面目に考えている顔なのに、答えが出てこないらしい。
その沈黙が続くうちに、室内の空気がわずかにざわつく。
医務室にいた同僚たちが気になったのか、ちらちらとこちらを見ている。様子見の気配が肌に触れるように伝わってきた。
(……ほら。みんなも気にしてる)
そう思いながら、クロエが言葉を待っていると──
唐突に、ヒューがクロエの手を取った。
周囲の視線が、一斉に集まる。ぎょっとした顔がいくつも並んだ。
「クロエ」
「ん? なに」
呼ばれたので返事をする。視線がぶつかり、そのまま言葉を待った。
握られた手の力が強まる。
「ねえ。何これ。何の時間」
「…………俺もさ、よくわかってねえんだよ。でも、何か掴めそうな気がしてる」
そう言いながら、指先を確かめるように触ってくる。無遠慮で、子どもみたいな手つきだ。
下心の気配は感じられない。
クロエはため息を飲み込み、ヒューの頭頂──灰茶色のつむじを見下ろした。
まずは何をしたいのか見届けよう。医務員としての判断だ。たぶん。
そしてヒューは、クロエの手を引き上げる。
自分の頬へ、ぺたりと当てた。
「!?」
硬い皮膚の感覚に、クロエの目が見開く。
めったに触れることのない男の熱が、手のひらに直に伝わってきた。
ヒューは気にした様子もなく、満足げに一度頷く。
そのまま反対の頬へ導いて、もう一度ぺたり。
「……歯でも痛いの?」
クロエが半ば投げやりに口にした、その瞬間。
ヒューがやけにしみじみとした表情を浮かべた。
「……なんか、いい感じ、か? うん。治ったかもしれん! ありがとうな!」
言い逃げみたいに立ち上がり、止める間もなく医務室を出ていった。
扉が閉まって、ようやく空気が戻る。
「リンド、ちょっと! 何あれ! どゆこと!」
同僚が堪えきれないように声を上げる。
「いや、私が聞きたい……」
クロエが手を見ながら呆然と返すと、室内のざわめきがさらに大きくなった。
七日前、五日前、四日前、二日前──ヒューは医務室へ頻繁に現れた。
悩む顔で来て、結局はクロエに触れたり、どうでもいい報告をしたりして、満足すると帰っていく。
その繰り返し。
こんなことを周囲の目も気にせず続けていれば、誰だって分かってしまう。
クロエ自身だって、もう気づいてしまっていた。
「これってぇ……」
「言わないで」
「いや、でもぉ……」
「頼むから」
完全に面白がっている同僚の言葉を手で制し、ジト目になりかけた視線を机に落とす。
ヒューはたぶん、クロエに恋をしている。
そして、それをまだ自覚できていない。
好きな食べ物を聞いてきたかと思えば、数日後には城下町で買って持ってきた。
礼を言って受け取ると、その場で食べろと促される。「美味しい」と答えれば、満足そうに去っていった。
かと思えば、廊下ですれ違いざまに「コーヒー、俺も飲んだぞ」と唐突に報告してくる。前置きゼロ。
「そ、う」と返すのが精一杯でも、それで良かったらしい。ただ言いたかっただけだ。
他にも、顔をまじまじ見てきたり、医務員たちの白衣を気にして「それって俺のサイズもあるのか」と真顔で聞いてきたり(無かった)……そんな奇行の数々を、この数日間ずっと繰り返していた。
周囲は完全に、モテ男の挙動不審な初恋を観察する側だ。応援ムードですらある。
こっちまで生温かい目で見られている。
何でだよ。
そんな空気じゃなかったじゃん。
いよいよ“年巡の夜”当日になった。
城下では灯の市が立ち、通りという通りが屋台と灯火で埋まる。
人が増えれば揉め事も増える。警備強化で隊員が出動し、交代で戻った者たちは、出店で買った食べ物を休憩室や食堂で頬張っていた。
普段ならありえないが、この日だけは交代後に限って酒も許される。
騒ぎすぎない程度に、ちょっとした飲み会みたいな空気が詰所に溜まっていた。
クロエも待機しながら、雑談に付き合い、つまみの菓子を摘む。
交代を数回見送っても、大事は起きない。
今夜はこのまま平和に終わりそうだ。
そう思った途端、眠気がまとわりついた。
休めるときに休んでおきたい。
クロエは席を外し、仮眠室へ向かう。扉を開けた瞬間、喉の奥で声が引っかかった。
「うわ」
「うわとか言うな」
ヒューがいた。しかも、他に誰もいない。
外は祭で浮ついているのに、ここだけ妙に静かだ。交代の切れ目で、みんな巡回に出ているのだろう。
……よりによって二人きり。
クロエは天井を見上げた。
「寝てたの?」
「ああ。ちょい前に起きた。クロエはこれから?」
「そ。今のうちにちょっと寝とこうかと思って」
「ふーん」
ヒューが変に間を置いた。視線が落ち着かない。
いつもの挙動不審だ、とクロエは思う。
「……見ててもいいか?」
「は?」
「クロエの寝てるとこ、見てみたい」
「何言ってるかわかってる? 結構とんでもないこと言ってるよ?」
ヒューは後頭部をがりがり掻いた。言ってから自分で変だと気づいたらしく、眉間に皺を寄せる。
「自分でもどうしてかわかんねえんだけどさ。クロエのこと知りたいんだよ」
言いながら、言葉を探すみたいに目線が泳ぐ。
「知れたら嬉しいし、もっと知りてえってなるし……俺のことも知ってって思う。訳わかんねえ」
本人は本気で困った顔だ。
クロエは半目で見た。
(……これ、本人だけで答えに辿り着けるのか?)
遠い。だいぶ遠い。そう思った瞬間、面倒くささが限界を超えた。
「ヒューはさ。私のこと好きなの?」
ええい、ままよ。
クロエは自分から飛び込むことにした。いい加減、まどろっこしい。
その言葉にヒューは目を見開く。
呆然とこちらを見つめ、はくりと口を開けたまま固まった。脳内で何かを必死に処理しているのが、顔に出ている。
やがて大きな手で口元を押さえ、目元がみるみる明るくなる。
埋めておいた骨を掘り当てた犬みたいに、表情が一気にほころんだ。
「好きだ!」
勢いよく言い切って、次に自分でびっくりした顔になる。
「……そっか。これ、『好き』だったのか!」
雄叫びを上げそうなテンションに、クロエは乾いた声で返した。
「わかってよかったね」
「おう!」
元気がよすぎる。
──一旦解決したかな。もう寝てもいいかな。
クロエが空いているベッドへ視線をやった瞬間、腕をがしりと掴まれた。
「なあ。俺、クロエが好きだ」
ヒューの手が熱い。離す気配はないらしい。
「ありがとう。寝てもいい?」
「いいけど、見ててもいいか?」
「いいって言うとでも思った?」
「だよなあ」
しゅんと眉を下げる。
やりとりを重ねても、妙な下心は見えない。
掴まれている腕も、不快ではなかった。
残念そうな顔まで、なんだか犬みたいだ。……ジョンと一緒に寝るようなものか?
だったら、まあ、いいか。
眠気と面倒くささで思考を放棄する。
「いいよ」
「マジか」
「別にやめてもいいんだけど」
「いやいやいや、やる。やる」
ここは複数人が仮眠を取る部屋だ。
簡素で広くはないベッドがずらりと並び、男女が多少混ざっても使えるよう、それぞれのスペースを仕切るカーテンがついている。
扉から入ってすぐには見えない位置のベッドを選び、カーテンを閉める。
クロエは靴を脱ぎ、その端に腰を下ろした。
隊証を白衣のポケットに突っ込み、白衣を脱ぐ。
シャツと膝丈のタイトスカート、丈夫なタイツ。
普段着のままなのに、妙に無防備に思える。
この状態を人にまじまじ見られるなんて、想定していなかった。
横になった瞬間、視線を強く意識した。
ヒューが真剣そのものの顔でクロエを見ている。任務中か、怪我人を前にしたときくらいの集中だ。
こちらの落ち着かない気持ちは、つゆほども考えていないらしい。
(気まずい……何だこれ……)
ひどくそわそわして、クロエはぎゅっと目をつぶった。
瞬間。ギシ、とベッドが沈む。
「は、え、ちょっと!? 嘘でしょ!?」
ヒューが乗り上げてきた。
手をつき、足も乗せて、クロエを囲い込む。
まだ触れてはいない。距離もある。
それでも──“これは、まるで”が、喉元までせり上がった。
「クロエ……やべー」
うわごとのように呟いて、息を吐く。
垂れ気味の目がとろんととろけている。表情だけ見れば完全にうっとりだ。
「……やべーな、これ」
内容は増えていない。
そういえば、この男は言語化がことごとく下手だった。
クロエも状況的な意味で“やべー”には同意だったが、刺激をしたくない。
黙って様子を見ていると、ヒューは身体を起こし、ベッドの上で膝立ちになった。
顔が離れる。ほんの少しだけ息がしやすくなる。
ヒューは俯瞰でクロエを眺めていた。
視線の高さが下がる。
スカートとタイツに包まれた脚へ注がれている気配が、ひしひしと伝わる。
居心地の悪さに、思わず、もじ、と足が揺れた。
「なあ」
「何」
「俺、クロエが好きだ」
「さっき聞いた。ありがとう」
「クロエは俺のこと、好きか」
「うーん……」
「嘘だろ」
ショックを受けた顔が露骨だ。
いや、でも仕方がないだろう。
これまで一度も、そんな雰囲気はなかった。急にそんな目で見られても、気持ちの切り替えは追いつかない。
でも。
「まだ好きかはわからないんだけどさ、嫌とは思わないんだよなあ」
口にして初めて、自分で納得する。
嫌悪感が、これっぽっちも湧かなかった。
特別こういうことが好きなわけじゃないし、多少の発散は自分でもするし、未経験でもない。
ただ──ヒューに向けられたこの欲を、「受け入れられるな」と思ってしまっただけだ。
「ヒューはさ。これからどうしたいの」
そう問われて、ヒューは膝立ちのまま「うーん」と唸った。
視線が宙を彷徨い、それからクロエの顔に戻ってくる。
しっかり見つめられ、表情が引き締まる。
次の瞬間、また覆いかぶさる姿勢になり、顔同士の距離が一気に縮まった。
「俺のこと、クロエに好きになってもらいたい」
あまりに直球で、飾り気もない。
不覚にも、胸の奥がどきんと跳ねる。
「あと」
まだ続きがあるらしい。
クロエは何も言わず、続きを待った。
「クロエ見すぎたせいで、ずっとちんこ痛え」
「おい」
リーン、ゴーン──……
遠くで新年を告げる鐘が鳴った。
台無しだよ。
鐘の音と同時に、廊下の気配が一気に賑やかになった。
隊員たちが口々に新年の挨拶を交わしているのだろう。
……このままだと、見られてしまう。
想像して青ざめる。ここは集団仮眠室だ。カーテンで仕切られていようが、さすがに無理。
それに──するなら避妊は絶対条件だ。
「ヒュー、人が来るかも」
「く……ッ! このクロエを、見られる、わけに、は……ッ!!」
視線をそらし、拳を握りしめ、心底つらそうに呻く。
その意識だけはちゃんとあるらしい。
だったら今日は終わりかな、と身を起こしかけたとき。
ヒューが顎に手を当て、作戦会議みたいな顔で考え込んだ。
嫌な予感がする。
次の瞬間、がばりと起き上がり、勢いよくカーテンを開けた。
「!?」
クロエも慌てて体を起こす。
ヒューはずかずかと備え付けの棚へ向かい、引き出しを乱暴に開けた。
そして、むんずと掴み上げたそれは──避妊具。
「っ、ヒュ──」
「前にヤッてた奴らが使ってたのを見た」
そうなんだ。
ここでそういうことする人、いるんだ。
……知らなくてよかった情報な気がする。
ヒューはそれをポケットに突っ込み、戻ってくる。
そのままクロエの手を取って立たせた。思ったより優しい力加減だった。
「行くぞ。鍵付きのとこ、知ってる」
耳元に落とされた低い声に、背筋がぶるりと震えた。
仮眠室を出ると、ぞろぞろ歩く隊員たちとすれ違った。
ヒューは隠すように手を放す。代わりに歩幅だけ合わせてくる。
すれ違いざま軽く挨拶を交わすと、隊員たちは「ねみー」と笑いながら、いま出たばかりの部屋へ吸い込まれていった。
……危なかった。
ヒューは迷いなく廊下を進む。
いつも使う階とは違う階段を上り、静かなフロアへ入っていった。
ここは──上役のための階だ。
クロエには用がなく、緊急時以外ほとんど足を踏み入れたことがない。
奥まった一角に、鍵付きの仮眠室が並んでいた。
ヒューは一室の扉を指先で叩き、鍵が下りていないのを確かめてからノブを回す。
中は簡素だが広い。
厚手の扉に遮光のカーテン。清潔な白い寝具。
ひとりで横たわるには十分な幅のベッドが置かれている。
見渡していると、カチャンと背後で鍵がかかった。
「ここなら二人きりだ。邪魔は絶対入らない」
言い終えるより早く抱き上げられ、そのままベッドに下ろされた。
さっきの薄いマットレスとは違い、身体が沈みすぎない。さすが上役クラス。
「わっ、ちょっ」
すぐにヒューがベッドに乗り上げてくる。
白衣が、シャツが、わしわしと剥がされていく。
「待っ──」
「大丈夫。ちゃんとする」
言いながら、首筋に口が落ちた。
舌が、れろっと熱くなぞる。
「……っ」
ぞくりとする。
男の唇は硬くて、舌は思ったより濡れていて、息が熱い。
ヒューが顔を上げ、まっすぐ見てきた。
「クロエ、いいんだよな」
「今更聞くの? そのつもりでついてきたんだけど」
「俺のこと好き?」
「まだわかんないってば」
「…………好きじゃなくても、クロエは誰とでも出来る?」
声のトーンが一気に落ちた。
底冷えするような声音に、背筋が粟立つ。
暗緑の瞳が細くなる。
視線だけで喉元を押さえつけられたみたいだった。
んなわけない。
クロエはぶんぶん首を横に振る。
「さすがに無理。ヒューとするのが嫌じゃなかったってだけ」
「そっか」
短く言って、ヒューの顔が少しだけほどける。
「じゃあ──好きになってもらえるように、頑張らんとな」
そう言って笑った笑顔は、いつもの人好きのする笑顔じゃない。
じっとりとした熱を帯び、深い欲を隠そうともしていなかった。
そこからのヒューは、本当にすごかった。
深いキスを重ねながら、「あー、好き」と何度も呟く。
唇が離れるたび、糸を引くみたいに息が絡む。
タイツとショーツだけになったクロエを見下ろして、「めっちゃクる……」と息を漏らした。
言葉は相変わらず下手なのに、手つきは丁寧だ。
舌が全身を、焦らすみたいに辿っていくたび、甘い痺れが走る。
脇の下や膝裏が、こんなに敏感だなんて。自分でも知らなかった。
そして、秘部に口が落ちた瞬間。
クロエは息を詰める。肩が震え、咄嗟にヒューの腕を掴む。硬い軍服の袖がくしゃりと音を立てた。
「っ、ヒュ──」
「好き。クロエ、好き」
逃げたいのに、指が内側のいちばん響くところを外さない。
舌と指が同時に責めてくる。
「もう無理……っ、や、だ……!」
「大丈夫、無理じゃない。……ほら」
「んっ、んん!」
泣きそうになりながら抗っても止まらなくて。
気づけば、初めて潮まで噴いてしまった。
ぷしゃ、と音を立てて溢れた水気が、ヒューの軍服を濡らしていく。
放心しながら見ていたが、その事実が一拍遅れて恥ずかしさに変わり、顔に熱が集まる。視界が涙で滲んだ。
「っ、ひどい……! だから無理って言ったのに……!!」
「はは、ごめんなあ。可愛いなあ」
まるで反省していない声音だった。
クロエが濡らしてしまった軍服を、ヒューは乱雑に脱いでいく。留め具が外れ、重たい布が床に落ちた。
最後の一枚まで迷いなく剥ぎ取ると、戦場仕込みの体が露わになる。
無駄のない厚い胸板と締まった腹が、呼吸に合わせて静かに上下していた。
「クロエのこと、俺がこんなぐちゃぐちゃにしてるんだ。すげーなあ……」
心底嬉しそうに目を細める。
ヒューは避妊具を取り出し、装着した。クロエの両手を恋人繋ぎでぎゅっと握られる。そのまま、やわらかくなりきった中へと入ってきた。
「っ、ふ……うぅっ、ああっ……!」
太く逞しいそれが、ひだというひだを一つずつなぞるように、ゆっくり奥へ進んでくる。
勢いよく来ると思っていたぶん、じわじわ広がって、余計に耐えがたい。
こつん、と奥を軽く小突かれる。
「ひゃう、っ」と間抜けな声が漏れた。
「かわいい」
低い声が耳に落ちる。
ヒューは腰をゆるく揺らし、内側を丁寧に擦ってくる。
「ヒュー、っ、んっ、んぅっ……!」
「っ、この顔……俺だけのものにしてえなあ……」
腰をぐいっと抱え上げられ、密着が一気に増した。
足を持ち上げられ、尻ごと軽く浮いた体勢のまま、さらに深く抉られる。
「っ、あ、ああ……っ!」
「好き。好き。……クロエ。俺だけ見てて……」
壊れたみたいに繰り返される言葉が、熱の中に落ちてくる。
快感と一緒に、胸の奥がぎゅっとなる。やがてヒューは、薄い膜越しに熱を注ぎ込んだ。
乱れた寝具に並んで横たわり、互いの体温を感じたまま、半ば眠りかけていた。
そういえば仮眠を取ろうと思ってたんだよな、とクロエは思い出す。
年明け早々、まさかこんなことになるなんて。
「なあ……クロエ。俺のこと──」
頭上からヒューの声がした。
見上げると、言いかけた言葉が止まる。
さすがにしつこい、と自覚したのだろう。
けれど暗緑の瞳は揺れたまま、確かめたい想いを隠しきれていない。
「……何でもない」と俯いてしまう。
さっきまでの幸福感との落差が大きい。
確約が欲しいのだろう、とクロエは思う。
正直、とても気持ちがよかった。
ひたすらに自分だけを求めるヒューを見ているうちに、胸がいっぱいになってしまった。
「ヒュー」
声をかけると、顔が上がる。視線がかちあう。
「好きかどうかはまだわからないけれど──ヒューのこと、一生懸命で、愛おしいなと思ったよ」
頭を撫でると、目の前の顔は、ぼんっと音を立てたみたいに真っ赤になった。
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