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16.アイロワニー伯爵家
しおりを挟むそこには、
アイロワニー伯爵夫妻に、
ラウル様のお兄様と奥様の皆が集まっていた。
「まぁ、ようこそいらっしゃいました。以前夜会でお見かけした時よりお綺麗になられましたね、フレミア嬢」
夫人が声をかけてくださる。
伯爵も隣でニコニコと微笑んでいる。
「フレミア・バラレンドでございます。これから、どうぞよろしくお願い致します。そして…遅くなりましたが、バラレンド家の度重なる無礼、申し訳ございませんでした…」
こちらも挨拶をし、今までの無礼を詫びる。
「貴女は悪くないわ。それに、私たちはとても喜んでいますのよ。フレミア嬢がラウルと結婚する事を。ねえ、あなた」
「あぁ。フレミア嬢なら大歓迎だ!」
「ありがとうございます…!」
ラウル様の両親に快く受け入れて貰えて安堵する。
「ラウルは昔っから女性に興味が無く皆心配していたのですよ。なのに、フレミア様の事を知ってからは随分長い間想いを寄せて…それが実って家族皆で喜んでいたのですよ。な、ラウル?」
いたずらめいてラウル様を小突くラウル様のお兄様マルク様。
「ちょっと…兄上やめてください…!」
「ふふ、フレミア様。私はマルクの妻、サラですわ。私もフレミア様にお会い出来る事を楽しみにしていたのです!隣の領地は栄えていて、フレミア様の噂も聞いていました。私にもぜひ色々と教えてください!仲良くしましょうね!」
そう言って笑うサラ様はマリーゴールドのように明るく朗らかで素敵な女性だ。
「サラ、あまりフレミア様と仲良くするとラウルがヤキモチを妬くかもしれないからほどほどにな!」
マルク様がそう言うと、
「妬きませんっ」
間髪入れずラウル様が言い返し皆が笑う。
ここではすっかりラウル様も末っ子の顔になっている。
その様子を微笑ましく、そして羨ましく思いつい口に出してしまった。
「皆様は…とても素敵なご家族ですね」
私がそう言うと伯爵夫人が少し驚いたような顔をして、
「何を言ってるの?人ごとみたいに!もうフレミア嬢いえ、フレミアもアイロワニー伯爵家の大切な家族よ」
そう微笑んで言った。
(家族………)
思い返せば私の家族はお母様ただ1人だった。
…父は祖父の言いなりだった。
祖父は典型的な男尊女卑の考えで、後継である男が欲しかった為私や私を産んだ母に冷たく当たり、父も祖父の反感を買いたく無くて見て見ぬふりをしていた。
そのただ1人の母が亡くなり義母や妹が来たが、いつも私は厄介者扱いをされていた。
祖父は亡くなっていたものの、次は父は義母の言いなりだった為父は何も変わらなかった。
母が居なくなって悲しかったあの頃、泣いていると怒鳴られた為、あの日から泣く事を我慢するようになった。
(けれど…)
静かに顔を上げると、伯爵も義兄夫妻も…そしてラウル様も。
微笑みながら伯爵夫人の言葉を肯定するように頷いてくれた。
(お母様……今日は泣いても良いですよねっ…?)
「ありっありがとう…ございます…」
涙が次々に溢れ、そう答える事しかできない私の肩をラウル様がそっと支えてくださったのだった。
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