(完結)妹の婚約者である醜草騎士を押し付けられました。

ちゃむふー

文字の大きさ
23 / 36

22.傷の真実1(建国祭前夜)

しおりを挟む


「フレミア様、今夜は入念に髪をとかしておきましょうね!明日は待ちに待った建国祭ですもの!」


湯浴み後、リアーナが嬉しそうに私の髪をとく。


「そうね。ラウル様の隣に立っても恥ずかしくないようにしなくっちゃ」


「フレミア様は今のままで充分お綺麗です!ラウル様もそのままのフレミア様を愛していらっしゃいますよ」


「ありがと、リアーナ」


「さぁ、噂をすれば影ですわ。ラウル様がいらっしゃったようですね」


ラウル様は、毎日忙しい中でも2人の時間を作ってくださる。
こうして寝る前に可能な限り、お茶を2人で飲む。
この時間が本当に幸せだ。


リアーナが礼をして下がる。

それと入れ替わりにラウル様が入られた。


「フレミア」


「ラウル様、今日も1日お疲れ様でし…あら…」


私はラウル様の顔を見て驚きを隠す事ができなかった。



なぜなら礼をして顔を上げると、なんとラウル様の顔の傷が綺麗に治っていたからだ。


「ラウル様、お顔…治られたのですか?」

そう言うと、少し恥ずかしそうに前髪を触るラウル様。


「何だか今更恥ずかしいのですが…すみません。フレミアを騙すような事になってしまって…少し聞いて貰えますか?」


「はい、少し待ってくださいね。今お茶を淹れますわ」


お茶を淹れ、ラウル様の前に差し出す。


一口飲み、ふぅっと一息つかれる。



「ありがとうございます。……あれは、ジュリー様と婚約が結ばれた直後の事でした。私はフレミアの事が好きだったのでとても落ち込んでいたのです……」






〈過去のラウル視点〉
~ジュリーとラウルの婚約成立直後







「…何だ、ラウル。何かあったのか?覇気がいつもに比べて無いぞ?」


……皇子に一目でばれた。

勿論、公私混同はしないよう気持ちの切り替えはしていたつもりだったし、他の誰にもそのようには言われなかった。


やはり幼い頃から共に過ごした親友には隠せないようだ。


「私に言えないような事か?」

そう皇子に詰め寄られ、

「実はですね…」

渋々説明せざる負えなかった。
ずっとフレミア様を思っていた事、それなのに妹のジュリー様から婚約依頼が来て、了承せざる負えなかった事。


「はははっ!私はずっとお前が女に興味が無いと心配していたがそうでは無かったようで安心したよ。そして…バラレンド侯爵家か…少し調べてみよう」


「何か気になる事があるのですか?」


「まあ…な。さぁ、明日からは隣国へ視察だ!お前もしっかり身体を休めておけよ」


「…かしこまりました」


明日から治安の悪い地方を抜けて隣国へ向かわなければならない。
いらぬ事を考えている場合ではない。


そう思い、気を引き締め直したのだった。









が…






「第一皇子ぃぃ!!しねえぇ!!」


隣国からの帰りの道中、何者かが護衛の包囲網を突破して皇子めがけて突撃してきたのだった。


皇子も中々の手練で、これくらいなら返り討ちに合わせるくらいだが、この時は剣も抜かずに私の方をチラリと見やった。


それに応えるように私は皇子の前に立ち刺客を難なく斬り伏せた。


しかし、護衛の包囲網を掻い潜ってきただけあって凄い執念だった。


隠し持っていた小刀を振りかざし斬りつけられ、すんでのところで避けたものの、左目の横をかすってしまった。



「ご苦労、ラウル」

「いえ、皇子がご無事で何よりです」


傷口がピリピリとする。

(これは…毒か。念の為解毒しておくかな…)


そう思い、解毒剤を取り出そうとすると皇子に小瓶を投げ渡される。



「毒は侮れない。しっかり傷口に塗り込んでおけ」


「はっ!ありがとうございます」



皇子直々に渡されたのだ。
感謝してその場ですぐに瓶を開け、1滴残らず傷口にしっかりと塗り込んでおいた。










そして、次の日。



私の顔は凄い事になっていたのだった。









しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~

***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」 妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。 「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」 元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。 両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません! あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。 他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては! 「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか? あなたにはもう関係のない話ですが? 妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!! ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね? 私、いろいろ調べさせていただいたんですよ? あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか? ・・・××しますよ?

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。 一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。 更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さくら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

処理中です...