29 / 29
閑話.聖女と偽られて(後編)
しおりを挟むメラニーが涙を拭いながら答える。
「あら、ジェニー。分かりました。」
(この可愛いらしい女性はジェニーというのか…。)
思わず名前を知れて心が躍る。
「デニスさんノエル、こちらはジェニー。私の娘です。ノエルと兄妹のように育ったのですよ。」
「えっ!!!」
(確かに、メラニーさんと少し似ている…!)
そこにサンダーム侯爵と侯爵夫人が来られた。
立ち上がり礼をする。
「おぉ、あの時の赤ん坊がこんなに大きくなって…!元気そうで何よりだ。デニスもノエルも。」
「本当に…!でもこうして大きくなった姿を見る事ができて嬉しいですわ。」
侯爵夫人にこのように声をかけてもらい、これ以上に無く恐縮してしまう…。
「こ、侯爵様の!おかげで生き延びる事ができたとお聞きしましたっ!!ありがとうございますっ!」
深々とお辞儀する。
「まぁ、座ってくださいな。」
侯爵夫人…。子どもがたくさんいるように見えない…。なんて綺麗で優しい女神のような方なのだろう…。
「はい、お茶をどうぞ。」
ジェニーがお茶を出してくれ、その際に咄嗟に手が触れてしまった。その瞬間私の顔は真っ赤になった事だろう。
その様子を見ていた侯爵様がニヤリとして、
「ノエル。覚えていないだろうがこの庭をメラニーとノエルとジェニーで乳母車でよく散歩していたのだよ。今日も散歩して来たらどうだ?ジェニーと。」
「そっっそんな恐れ多いです!!私なんかが侯爵家の庭を歩くなんて…!!」
「そんな事言わないでくれ。ノエルはメラニーの息子みたいなものだ。それならば侯爵家の家族の1人だ。ほら、ジェニー。」
「かしこまりました。」
緊張で右手と右足を出すのが揃って歩いてしまう程だったが、やはり幼い頃一緒だったせいか、驚く程すぐに打ち解ける事ができるようになった。
そして何より一緒にいて楽しかった。
しかし、時間はあっという間に過ぎ、日が暮れてきてしまった。
侯爵や父の元に戻る。
「おかえり。ゆっくり話せたかな?」
「はい…。」
(あぁ、私はジェニーが好きだ。初めて見た時から…。あ、初めてでは無いか…。)
そんな自分の気持ちに気付いてしまったが、もうすぐお別れの時間だ。
「デニスと話していたのだけれど、オレイン商会で扱っている商品が気になったから、これから定期的に侯爵家に来てくれないか?」
侯爵様が言った。
(なんだって!?という事は、またジェニーに会える!!!)
「はいっ!!はい!!!喜んで!!!」
思わず食い気味に返事をしてしまう。
「そんなに嬉しそうなのは、契約が取れたからかな?それとも……。」
侯爵様がそう言うと、皆が笑うのだった。
私は色々あったらしいが、ここで私を産んでくれた実の母親にちょっぴり感謝するのだった。
~~2年後
「もうノエル!そんな怖い顔していたら皆様がびっくりしてしまうわ!」
「ジェニー。分かってはいるのだけど…。まさか侯爵家でこんな素晴らしいパーティを開いて貰えるだなんて緊張してしまって…。」
初めて(では無いけれど)侯爵家を訪れてから、仕事を頂き頻繁に侯爵家に出入りするようになり、ジェニーと顔を合わす事も多くなった。
それから思い切って玉砕覚悟で1年前に告白をしたらOKを貰って、本日結婚をする。そして今日は、侯爵家の皆様の好意で結婚パーティーを開いて貰う事になった。
「ほら、笑って!ノエル!行くわよ!」
そう言って振り返り笑うジェニーは、誰よりも美しく、誰よりも愛おしい。
ジェニーの手を取り、皆様の元へ向かう。
扉の前には、メラニーさんと父が待っていてくれた。
メラニーさんが、目を潤ませながら言う。
「ジェニー綺麗よ。ノエル、ジェニーを幸せにしてあげてね。」
私は大きく頷き、笑顔でこう答えた。
「はい。もちろんです。おかあさん。」
fin.
ーーーーーーーーー
今まで読んでくださりありがとうございました!!
たくさんのお気に入り登録、感想とっても嬉しかったです。楽しい感想をありがとうございました(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
感想の返信が遅くなってしまいすいませんでした。とっても励みになりました!
(皆様勘が鋭くて途中ヒヤヒヤも沢山しましたが…笑)
次作も書いています。
よければお付き合いください!
(またもや腹立たしい女の話です←)
ありがとうございました!!
ちゃむふー
140
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(217件)
あなたにおすすめの小説
【完結】 ご存知なかったのですね。聖女は愛されて力を発揮するのです
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
本当の聖女だと知っているのにも関わらずリンリーとの婚約を破棄し、リンリーの妹のリンナールと婚約すると言い出した王太子のヘルーラド。陛下が承諾したのなら仕方がないと身を引いたリンリー。
リンナールとヘルーラドの婚約発表の時、リンリーにとって追放ととれる発表までされて……。
【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ
綾雅(りょうが)今月は2冊出版!
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」
物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。
★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位
2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位
2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位
2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位
2023/01/08……完結
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
素顔を知らない
基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。
聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。
ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。
王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。
王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。
国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。
火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。
しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。
数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。
ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜
嘉神かろ
恋愛
魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。
妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。
これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
素敵なお話でした。最後のノエルの話まで書いて頂きありがとうございました!よい終わりで大満足です✨
退会済ユーザのコメントです
みんなハッピーで終われて良かったです(*^^*)
ゴードンの展開には驚きましたが、納得。
ゴードンをおとすなんてダンさんすごいですね!
良かったら、ゴードンとダンさんのお話がもう少し読みたいです!!!