【R18】呪いを解けと皇弟が迫ってきますが、処女なので無理です

白岡 みどり

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「……だめだ、やめない」

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 ウォルフリートに口付けをされて、しばらく。
 フィルエシュカは座ることも、歩いてその場を離れることも出来ず、玄関扉の前で立ち尽くしていた。

 頭の中は、いまや手がつけられないくらい、ぐちゃぐちゃになっていた。
 口付けは、恋人同士や夫婦がするもの。そのくらいのことは、婦人会に通えなかった自分でも知っている。
 心臓が激しく鼓動していた。
 生活音のない静かな部屋に、その音だけが響くほどに。

(あ、あたま、冷やそうかな)

 混乱しているから、まずは冷静になったほうがいい。あの口付けに大きな意味なんて、きっとないに決まっている。
 ウォルフリートは多分、まじないの受け方を忘れてしまっただけだろう。
 意味はない、意味はないと自分に言い聞かせながら、玄関から出た。

 時刻は昼前だ。太陽が高く昇っていても、外の空気は澄んでいて冷たい。ほてった顔を冷やすには丁度いい温度だった。
 目の前にはウォルフリートが丁寧に直してくれた畑が広がっている。今年の作付けはもう終わってしまったから、次は来年になるが、きっと良い作物がとれるだろう。
 それと彼は畑と家を囲う柵も、あちこち補修してくれて、この小屋は前よりもずっと安全になった。

 畑に向かって左側に顔を向けると、そこには薪がたくさん積んである。それらのほとんどが、これから来る冬の為にウォルフリート自身が割ってくれたものだ。
 毎年薪が足りなくなることを恐れて、うんと寒い日しか暖炉に火を入れないようにしていたけれど、今年の冬は、その心配はなさそうだ。
 実際、彼は今朝から暖炉に火を入れてくれていたようで、起きた時、部屋の中はもう暖かかった。
 フィルエシュカだけの時ならば、まだ耐えていただろう。

 小屋の周囲、畑、部屋の中。それらのどこをみても、必ず彼の痕跡を見つけられる。
 違う。見つけられるのではなく、探しているのだ。どこにいても、何をしていても自分は、彼と、彼の跡を探してしまっている。

「フィルエシュカ?」

 すっかり聞き馴染んだ声に顔を上げると、荷物が満載の荷車をひいたウォルフリートが、柵を開けて入ってくるところだった。
 せっかく落ち着いた胸がまた、激しく動き出した。

「家の中にいろと言っただろう」

 呆れたように、彼は言う。荷車の持ち手を地面に置いて、こちらに向かってくる。
 あっという間に距離を詰めると、慣れた手つきでフィルエシュカを抱き上げた。逃げる暇も避ける暇も与えない、手際の良さである。
 まるで頭を撫でる時のような、優しい声がする。

「俺はこれから荷を整理する。昨日のまじないでまだ疲れているんだろう? お前は中で休んでいろ」
「な、なんで、気づいたんですか?」

 まじないは無尽蔵にかけられない。
 たくさんすればそれだけ疲れてしまう。そのことは、誰にも話したことがない。なのになぜわかるのだろう。
 愚問だとでもいうように、男は溜め息をついた。

「見ていれば、それくらい分かる」
「ーーっ」

 それだけ言うと、あとは問答無用とばかりに、小屋の中に運び込まれてしまった。
 せっかく冷えた頬は、また熱くなっていた。

(なんで、見てるだけで分かるの?)

 今まで誰一人、まじないをかけるフィルエシュカの体を気遣う人など、いなかったというのに。どうして、ウォルフリートだけは違うのだろう。

 太い腕の中から、椅子へと移動させられる。
 元からあるフィルエシュカの椅子と違って、背もたれのある椅子は、彼の手製とは一見思えないほど、丈夫なつくりだった。
 まだ熱い頬に少し冷えた手が添えられ、その温度差にほんのわずか、身じろぎをした。

「ありがとう……」

 礼を口にした時には既に、緑色の宝石みたいな瞳が真近に迫っていた。光の加減で、時には初夏の若葉のように、また時には、冬でも枯れぬ針葉樹の尖った葉のようにも見える、綺麗な緑の双眸。
 それらはずっと見ていられるほど、美しかった。

「フィルエシュカ。俺はお前の友人をきちんと送ってきた。だから褒美をくれ」
「ほ、褒美?」
「ああ」
「どんな……」

 言い終える前に、その口を、ウォルフリートに塞がれた。
 
「……んっ」

 唇が重なったそこが熱くて熱くて、炙られたチーズみたいに溶けそうだった。
 出掛ける前のように、男は舌で唇の上をなぞるが、ふと何か思いついたかのように離し、要求をしてきた。

「ーーもっとくれ」
「ウォ、ーーんん!!」

 咎めようと口を開いたところへ、襲いかかるみたいに口が重ねられ。
 無防備になっていた隙間に、舌が、捻じ込まれる。
 まさかそんなことをするだなんて、思ってもいなくて。
 彼の服に思い切りしがみつくと、その大きな手は、別の意思を持ってるみたいに、背中をなぞった。

「~~っ!! ん!?」

 その間にも舌は、昨日見つけたばかりの、フィルエシュカの弱いところに到達する。
 自分の舌の置き場を無くしたフィルエシュカが、どうにか異物を阻もうとしても、全て無駄だった。

「ん!! ん、ん……っ!!」

 ざらりとした舌先で、上顎の裏や、舌の裏の付け根、それから舌の表面を順につつかれ、なぞられて、腕から力が抜けていく。
 
(だ、め、やだ、また……)

 今朝初めて味わった不思議な感覚に、全身が覆われていく。
 口ばかりに集中していたら、ウォルフリートの手はいつの間にか、背中から離れていた。
 何処へ行ったのだろう、などと考える必要はない。

 その掌はすっぽりと、自分の胸を覆っていたのだから。

「……フィルエシュカ」

(おわ、った?)

 フィルエシュカを長い口付けから解放し、名前を呼んだ男へ、やっとの思いで視線を向ける。
 男がみせるその表情は恍惚、と言ってよかった。

「ーーんんぅっ」

 戸惑っていると、突然、左の胸の頂を摘まれ、びくりと仰け反った。
 椅子の背もたれは、まるでウォルフリートの広い胸板のようだ。前後を挟まれて、フィルエシュカはどこにも逃げようがない。
 肌着と服による防御など、なんの意味も為さぬかのように、指先は頂をこすり上げていく。

「あ、ぁーーやぁ!?」

 親指と人差し指で、こよりを作るように、擦られ、ひねられる。
 小さな頂が生む大きな不安に、いやいやと、首を振った。

「~~や、ぃやーーウォ、ル、とめ……てぇ……!」

 必死の願いだった。
 
「……だめだ、やめない」
「ーーひぅう!!」

 願いが届かず、絶望したフィルエシュカに与えられたのは、胸の先をまれる、あの感覚だ。 
 彼の唇は右の頂を挟んでいた。

「あぅ、あっ、あっ……!!」

 ウォルフリートは止まらない。
 右の頂を優しく啄ばみながら、右手では、擦り上げられたせいで痛いくらい張り詰めた先を、短い爪を使って引っ掻く。
 フィルエシュカの小指の先くらいの小さな果実。それが生み出す凶暴なまでの感覚に、とうとう耐えきれず、悲鳴をあげた。


「ーーっ……ゃあぁぁあーー!!」


 ーーぶちん、と。

 その瞬間、頭が真っ白になって。


「……ぃ……してる、お前を……」


 まるで水面の向こう側にいるみたいに。
 大事な人のその言葉を聞き取ることは、出来なかった。

 

 

 
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