Reセカイ

月乃彰

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第70話 壊れた幻想

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 マリオ・ロンバルディは学園都市の郊外に一軒家を持っており、そこに家族と一緒に住んでいたらしい。
 だがそこに今住まうのは、マリオの皮を被った別人であり、そして四体の魔族が入り浸っている。
 彼の家族は今頃、適当な魔獣の胃の中だろう。

「イア・スカーレットは最強の術師だ。私が準備に準備を重ねて最高の状態で挑んだとしても、勝率は20%ってところかな。勿論、残り80%を引けば死体すら残らないだろうさ」

 四体の魔族は自分たちのことを『四騎士』と呼んでいた。なんでもとある神話になぞらえて名を名乗っているらしい。
 四騎士とギーレは椅子に座り机を囲っている。レグの要望で人生ゲームに付き合いつつ、作戦会議しているのだ。

「でもそれは彼女を殺す場合の話だ。封印となれば話は違う」

 ギーレは懐から真っ黒な六面体のものを取り出した。六面全てに別々の術式が刻まれている。

「特級魔道具『六鏡』。鏡の世界を内包する封印魔道具でね。これならばイア・スカーレットを封印できる」

 『四騎士』の一人、ノイはルーレットを回し、駒を進めつつ、ギーレに対して質問する。

「勿論、無条件というわけではないでしょう?」

「ああ。『六鏡』が発動する条件は一つ。この魔道具は鏡だ。この真っ黒な何も映らない鏡に封印対象を五分間映し続けることで条件を満たすんだ」

 レグ、ラウ、ギーレ、サエの順番でルーレットを回して駒を進めていく。再びノイの手番になり、彼女のターンが終えるまで誰も何も喋らなかった。
 そして、

「⋯⋯本気ですか? それ」

 ギーレはGMCだけでなく、同じ魔族からも有名だ。なぜならば彼は長年生きており、魔族の中では天才として名を上げている。
 そんな彼が二年前、殺された。その相手はイアだった。
 はっきり言って、ギーレの実力は同じ特級魔族であるノイたちとも一線を画している。大魔族という称号はそれだけの意味を持つ。

「無論本気さ。イアは確かに最強だ。⋯⋯が、彼女は万能ではないし、規格外なのはその戦闘力のみ。⋯⋯正直、他の特級魔術師の方が作戦成功率という点においてはキツイものがある」

「と、言うと?」

「他の特級魔術師はゲームのルールをひっくり返してくる。でもイア・スカーレットは一応ルーレットを回してくれるってことさ」

 ◆◆◆

(──そうだ。イア・スカーレットはルールだけは守ってくれる。⋯⋯だが)

 ギーレは『断骨』でイアを叩き切ろうと振り下ろす。だが躱され、その鋭利な爪による刺突が飛んできた。
 『断骨』と防御魔術を併用し防ぐが、しかし、衝撃は殺しきれず吹き飛ばされる。

(だが⋯⋯! だからこそ実力差というものを思い知らされる! 本当に⋯⋯化物め⋯⋯!)

 ギーレが四騎士に伝えた『六鏡』の発動条件に間違いはない。嘘は何も伝えていないが、言っていない真実はあった。
 それは、イア・スカーレットを封印したところで一週間足らずで出てくるだろう、ということ。
 そしてもう一つ。条件を満たしても、ギーレはすぐにはイアを封印する気はないということ。
 ギーレの目的はシャフォン教のテロの成功でも、革命家、色彩の学園都市の支配でも、ましてや四騎士の魔族時代の回帰でもない。
 彼はそれら全てを利用し、だ。
 そして

(さあ見せろ。最強。その実力を! 二年前はその一片たりとも見られなかったが⋯⋯今度こそ!)

 グラディウスがイアに大剣を振り下ろした。イアはそれを素手で弾き、瞬間移動し、グラディウスの胴体に一発、拳を叩き込む。それだけでグラディウスの胴体に風穴が開いた。
 それでもグラディウスは倒れない。左手でイアを掴むが、その膂力に耐えられず左手は引き千切られた。
 ギーレが横から『断骨』を振るう。イアは回避ではなく防御を選択。
 すると、刃もないのにイアの防御を突破し彼女の腕を切り裂いた。

「⋯⋯⋯⋯」

 しかし無駄だ。意にも返さず、蹴りが繰り出される。ギーレは線路内の天井と地面をバウンドする。三回跳んだ後、イアが背後に周り、治った左腕で掴まれ、ぶん投げられた。
 投げられた先はグラディウスだった。グラディウスはギーレを受け止めるが、瞬間、イアが目の前に現れる。
 顔面にドロップキックを受けた。グラディウスは大きく蹌踉めく。

「⋯⋯ん?」

 グラディウスはイアの足を掴む。そのまま壁に叩きつけ、地面に叩きつけ、天井に投げつけた。
 イアは天井を床に立ち上がり、逆さまのままグラディウスを見る。

(さっきより堅くなってる? それにパワーも上がっているような⋯⋯)

 おそらく気のせいではない。グラディウスはイアの攻撃を受けるたびにそれを再生し、ステータスを上げている。イアのジャブ程度なら、既に肉体を破壊されない程度には強固な防御力を得ていた。

(⋯⋯回路も回復した。心核結界⋯⋯は取ってこう。魔術使って様子見だな)

 イアはオーソドックスに回路術式を使う模範的な魔術師だ。しかしその練度は常軌を逸している。

「回路術式Ⅱ、〈変速スピード・シフト〉」

 イアは瞬く間に距離を詰めて、直後、対応できない速度で攻撃を仕掛けてきていた。
 しかし、今度は違う。瞬き一つできずに、既にギーレの上半身の半分ほどは一般攻撃魔術により消し飛んでいた。

(さっきよりも数段速いっ!?)

 それだけではない。グラディウスの肉体にも風穴が既に五つ開いていた。グラディウスは遅れて体制を崩した。
 イアは攻撃をした余韻もない。ただそこに突っ立っているだけのように見えた。術陣の閉塞さえ、見えなかった。
 〈変速スピード・シフト〉という魔術を使った後に一般攻撃魔術を少なくとも六つ起動したはずなのに、その一連の動作を見ることすら叶わなかったのだ。

「⋯⋯なんて奴だ。まるで時でも──」

 ギーレはいつの間にか外にいた。外の、ビルの屋上を超えて、結界の天井付近、つまり上空1km近く、吹き飛んでいた。

「──止められた⋯⋯みたいだ」

 そして直後、ビルの一階の床に、頭を掴まれて叩きつけられていた。それで肉体が粉々になっていないのは、ギーレの耐久力ゆえだが、もし彼が魔族でないのなら二度と動けない体になっていただろう。
 遅れてグラディウスがギーレを助けにやってくる。が、次の瞬間には立体駐車場内に叩き込まれていた。

「⋯⋯で、何だっけ? 『ラスボスというものを教えてあげよう』だっけ? ⋯⋯その程度で?」

 ギーレはゆっくりと立ち上がる。イアからしてみれば蛞蝓とさして変わらない動きだった。

「笑わせる。あの魔獣は少しはマシだったが⋯⋯」

 車が複数台、イア目掛けて飛んできた。それは確かに直撃したが、イアは無傷だったし、衝撃さえ伝わっていないようだった。
 グラディウスがイアを大剣で叩き潰そうとした。しかし、指で抓まれて止められた。

「所詮、その程度か」

 グラディウスの足元に魔術陣が展開され、一般攻撃魔術が炸裂。グラディウスは跡形もなく蒸発した。

「お前の最強の使い魔とやらは死んだが? さて、お前は次、何をする?」

「⋯⋯くくく。ははは。ははははははっ!」

 ギーレは突然笑いだした。気味が悪かった。なぜならそれは諦観から来る感情ではなかったからだ。
 なぜ、この状況で笑うことができるのか。

「イア・スカーレット! 君は何も分かっちゃいない! 使い魔? いいや違う。アレは私が調伏した。その意味が分かるかい?」

「お前の方が強い、と?」

「ああそうさ。そして、あの魔獣の特性を一番理解しているということでもある!」

 グラディウスが再生を完了させる。

「⋯⋯⋯⋯」

 イアは目を少しだけ開いた。明らかな動揺。殺した、あろうことか消し飛ばした思った相手が、どういうわけか生き返ったのだから当たり前だ。
 グラディウスはイアに大剣を薙ぎ払う。イアはそれを

「驚いただろう!? ああ私もだ! 実は心配だったんだよ! いくらグラディウスでも⋯⋯イア・スカーレット、君に追いつくことができるか、ってことが! だが! 今この瞬間! その心配は払拭されたッ!」

 特級魔獣、グラディウス。ギーレが調伏し、自らの手札に加えたそれは正に最強の魔獣と言うに値する能力を持っていた。

「⋯⋯成程。最初に覚えた違和感⋯⋯そして今のスピード、パワー⋯⋯そういうことか」

 大魔獣、グラディウスの固有魔力は『適応』だ。あらゆる事象に、後出しジャンケンの如く適応する能力。
 その肉体の性質を、その魔力の性質を、その身体機能を、対象を超えるように自らに進化を促す。

(少なくとも私のスピード、一般攻撃魔術の火力には適応されているだろう。パワーはどうだろうか? 他の魔術は? 私の固有魔力そのものに適応しているのか、魔術一つ一つに適応しなければいけないのか、もしくはその両方か⋯⋯)

 グラディウスの大剣を躱し続ける毎に、その速度は上がっていっている。今は本気で何とか対応できるが、そのうち全力となり、そして躱しきれなくなるだろう。
 それまでに何とかして、この魔獣を葬らねばならない。

「確かめてみるか。〈完全停止ストップ〉」

 イアがそう唱えた瞬間、グラディウスの動きが止まる。イアはグラディウスを囲むように一般攻撃魔術を──先程より速度と貫通力を引き上げた──複数展開する。
 停止時間は四秒だった。停止解除と同時に魔術を叩き込むが、いくつか躱され、命中したものも焼跡をつけるくらいで大したダメージにはなっていない。

(両方、か。これは中々⋯⋯鬱陶しい、な)

 回路術式Ⅴ、〈完全停止ストップ〉の効果は対象の時間を十秒間停止させるというものだ。
 グラディウスには一度も使っていないが、停止時間が短くなっている。
 ただ完全に無効化されていたわけではない。どうやら適応能力は固有魔力そのものにも働いているが、個別にそれぞれ適応するよりも効き目は悪いようだ。

(と、なると突破方法は一つ。⋯⋯適応される前に屠る)

「どうした最強! それまでかい?」

「五月蝿い、雑魚」

 ギーレに向かって魔術光線を放つが、グラディウスはギーレを守った。等々、完全無効化まで漕ぎ着けたようだ。
 大剣が振り下ろされる。イアはそれを魔術にて破壊するが、同時に舌打ちする。
 グラディウスは最早、大剣を使うよりその肉体で殴りつける方が強くなっていた。
 イアは建物をいくつか貫通し吹き飛ぶ。2km飛ばされた先に、グラディウスは先回りしていた。
 恐ろしい速度だ。
 全面に防御魔術を最大出力で展開。グラディウスの拳を止めるが、一瞬。直ちに壊れる。
 一瞬ではあったがイアは既にそこに居ない。グラディウスに接近し、本気で爪を突き刺した。
 非常に硬い。だが通る。首の肉を引き千切り、そこに血を流し込む。
 吸血鬼の血を取り込むと、生き物はその吸血鬼の配下となる。無論抵抗することもできるが、その場合毒のように相手を蝕む。
 グラディウスも例外ではなく、動きが鈍った。
 
「〈加速アクセラレーション〉」

 〈変速〉による速度上昇に〈加速〉の魔術は重複する。デメリットはあまりの速さにイアでさえ扱いが難しいという点だが、逆に言えば難しいだけだ。
 無数の拳が現れる。その実、一つを除き他は残像だが、残像と言うにはあまりにも実体らしかった。
 グラディウスが数多の肉片に変えられた。しかし、直ちに再生し、イアへのカウンターとして同じ速度の拳を叩き込んだ。
 イアは遂に、全力を出して回避した。

(再生力も適応しているのか。⋯⋯しかし、もう十分だ)

 グラディウスはイアの固有魔力そのものと、魔術一つ一つにそれぞれ適応している。ただし、固有魔力への適応は魔術への適応に比べ、適応速度は遅く、弱め。
 身体能力もイアを超えるように適応し、進化している。同時に再生能力もより速くなっている。
 既にスピードとパワーへの適応は完了しつつある。Ⅴクラスの魔術でないと、まともに通用しないだろう。
 情報は十分に得られた。そして、逃亡する必要はなさそうだ。
 イアは最大速度にてグラディウスに接近する。グラディウスはイアを撃ち落とすべく、踵を落とす──が、イアには当たらなかった。
 〈変速〉という魔術は単なる加速魔術ではない。その最大の強みは、減速も可能であるということ。
 踵落としのタイミングで、イアは自身を減速させることで、グラディウスの攻撃を空振りさせたのだ。
 そして、今度こそ〈変速〉と〈加速〉の合わせ技による最大速度を発揮する。

「────。──心核結界」

「──馬鹿な」

 心核結界は大魔術だ。他の魔術を行使しつつ発動するには脳のリソースが足りない。
 ただし、イア・スカーレットは例外だ。魔術を二つ併用しつつ、更に心核結界を起動した。
 イレギュラーはそれだけにはとどまらない。魔術を適応したのは心核結界の発動そのものだ。それは、ただ自身に魔術的バフを掛けつつ大魔術を使うのとは訳が違う難易度を要求される。
 イアは心核結界の発動を加速させ、更に結界展開と魔術付与、通常別々に行わなければいけない工程を一つにまとめ高速化させた。
 詠唱、魔術起動の高速化及び省略、その上で一切の劣化を伴わない大魔術の発動は──まさに神業だった。

「──〈壊れた幻想ブロークン・レヴァリエ〉」

 完全詠唱された〈壊れた幻想〉は、省略詠唱のそれを100%とした場合、150%の出力で発動する。
 グラディウスは〈壊れた幻想〉への個別的な適応を済ませていない。
 固有魔力への適応のみでは、150%の〈壊れた幻想〉を耐えることは──不可能。

「⋯⋯⋯⋯。⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 グラディウスを捕らえた真っ黒な球体の結界が解除され壊れた後に、残ったのはイアのみだ。
 グラディウスはその存在を時間概念から否定された。

「⋯⋯魔力総量のうち、六割ほどを失った。この魔力回路の麻痺もかなり深刻だ。あと二、三分は魔術が使えない。⋯⋯だが、ギーレ、お前を殺すのには過剰なくらいの余力がある。そうは思わないか?」

 イアは確かに消耗した。しかしそれでも、未だその魔力量はギーレを優に超えている。魔力出力も低下しているが、ギーレの防御を貫通するくらいは余裕だろう。
 パワーも、スピードも、未だ、落ちきっていない。隙もない。
 最強は最強のままだ。

「⋯⋯化物め。本当に、君は、なんて奴だ。⋯⋯正直、今ここで君を殺せると、期待したんだ。もしそうなればどれほど楽だったか⋯⋯」

「⋯⋯何? それではまるで、私を殺すつもりでアレを召喚したわけではない、と言っているように聞こえるが⋯⋯?」

「⋯⋯ どうも私には、茨の道しか用意されていないらしい」

 会話が成り立っていない。けれど、ギーレの言葉の意味を理解した。
 イアは魔術を使う。ギーレを殺すにはオーバーなほどの魔術を。そうしなければいけないと、直感が囁いたから。
 判断は間違っていない。決断の速度も最速だった。
 しかし、けれど、最初から詰んでいた。
 イアの目の前には、鏡の六面体がいつの間にか有った。
 そしてその瞬間、イアの肉体にはとてつもない重力感が生じ、両膝を付き座り込む。更に魔力を封じられ、魔術行使はおろか、魔力強化もできなくなった。

マリオの固有魔力『魔物支配』は文字通り、魔族、魔獣を支配することができる。支配する為には調伏⋯⋯要は対象を瀕死にしないといけないわけだけど、瀕死にした魔物を異空間に収容する能力もあるんだ」

 ギーレの真横の空間に亀裂が生じ、そこから芋虫のような魔獣が現れた。

「この子は精々四級程度の魔獣だけどね、この子の胎内は四次元空間になっている。だからこの子に色んな魔道具とかを食べさせて、物を持ち運んでいるんだ。そこの六面体も、この『断骨』もそうしていた。⋯⋯今の今まで、その六面体から生じる魔力を君が感じ取れなかったのはそれが理由さ」

「⋯⋯お前、何者だ。そもそもなぜ二年前と姿が違う。使っている魔術も違う。何より、なぜそんなに都合の良い魔術を持っている?」

「私本来の固有魔力は『憑依』。これも文字通り、対象の意識を私のものに変更する魔力だ。この魔力で、この肉体を奪ったのさ。この肉体は私が前々から目をつけていた家系の人間でね。元の持ち主の脳構造的に魔術は使えなかったんだが⋯⋯私の知識と外科技術でどうにかできる程度の障害に過ぎない」

「⋯⋯そうか。⋯⋯わかった。ならさっさと封印しろ。お前の顔を見ていると腹が立ってくる」

「私としてはもう少し君の醜態を見ていたいが⋯⋯そうだね。君だとここから今すぐに出てきそうだ。⋯⋯そうだ、いいことを一つ教えてあげよう。この封印魔道具は特級だけど、私の見立ててでは君を無制限に封印できる力はない。ホント、君規格外だから。でも一週間は封じられる」

 特級魔道具『六鏡』は、ギーレが知る限り最高クラスの封印魔道具だが、イアという魔術師を完全封印することはできない。
 長く見積もっても一ヶ月。予想では一週間ほどで『六鏡』はイアの力に耐えられずに自壊するだろう。

「だが、十分だ。グラディウスの尊い犠牲のお陰で君の実力を見ることができた。そして一週間という時間稼ぎができた。⋯⋯シャフォン教の目論見が達成されれば、一週間後に学園都市は壊滅しているし、周辺諸国も大惨事に見舞われているだろうね。例え最強であっても、万能じゃないんだよ、君は」

 ギーレはイアに近づく。

「その時に、君を殺す」

 六面体はバラバラになったかと思えば、イアの周りを飛び回る。飛び回った面から肉のような触手が飛び出し、イアの全身に巻き付いた。

「そうか。首を洗って待っているのはお前の方だ。一週間という時を経たずして、封印は解けるだろうな」

「ふふふ。強がりだね。⋯⋯まあいい。それじゃあおやすみ、イア・スカーレット」

 次の瞬間、『六鏡』は元の状態に戻っていた。
 そこにイアの姿はなかった。

 21:20──特級魔術師イア・スカーレットの封印が完了する。
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