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ラミアなリリィさん

リリィさんとお見合い?~後編~

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「やれやれ、私が充電している間にこんな面白い事になっていようとは。この珍事の冒頭を見逃すなんて、我ながら不覚です」

充電モードから再起動したアルファが、開口一番にのたまった台詞がこれだ。

♂を巡って♂と♀が争うと言う珍事にわくわくが止らないらしい。

ところで、蛇の交尾と言う物をじっくりと観察した事がある人はどれだけいるだろう?
恐らく大多数の人はそんなのしらねぇよ! と突っ込むぐらい人生とは無関係な案件だと思うので、ざっくりと説明しようと思う。

種によっても様々だが、奴等の交尾は大体、以下の流れで行われる。

1・発情した♂は♀を見つけると、カクカクした動きで♀に近づく。
2・おもむろに♀の首筋辺りに噛み付くと、波打つ様にして体全体を重ねていく。
3・お互いの総排泄口を合わせる為、♂は尾を♀の腹の下に絡ませながら調節し、♀も♂を受け入れ安くする為に尾を上げる。
4・♂は総排泄口が合わさった事を感じ取ると、2本あるペニスの内、どちらか、あるいは両方をパイルバンカーの如く凄まじい勢いでドーン!と撃ち出し雌の総排泄口に突き刺さす。
5・満足いくまで合体は延々と続く。

と、大まかに言えばこんな流れだ。

4の突き刺す工程がホントにびっくりする勢いなので、ここで着弾に失敗して3へと戻る事は多い。

また、これも種族によって様々だが、彼等の精液はペニスから放たれるのではなく、ペニスの壁面を伝って雌に染込ませる類の物も多い。

この為、効率よく流し込めるように蛇やトカゲのペニスはイガイガした突起が付いているのだが、ネキリヘビのドぎついイガイガは♀の体内に残す為の物なので、普段はソーセージの様につるんとしている。

最初に言ったが、ネキリヘビの射精は非常に特殊な発射型になるので、そこだけはこの種特有のイレギュラーとなるが、魔物とは言えネキリヘビも分類上は蛇に属する以上、この大まかな作法は共通だ。

そして現在。

そのネキリヘビの蛇男君にがっつりうなじの辺りを噛まれて背中でうねうねされている俺は、腕組しつつの仁王立ちで立ち尽くしていた。

定期的に尻付近へと打ち出される凶器はもちろん、身をよじって回避しながら。

打ち出される度に「ぬお!」とか「やめれ!!」と声が出てしまうが、どうやらそのザマがツボだったらしく、ミントもチャコも指を差してゲラゲラと大笑い。

アルファと一さんに至っては内蔵されている録画機能やスマホでその一部始終を撮影しており、なにやらメモまで取ってみたりと、こちらも止めてくれる気配はない。

唯一、リリィだけは鬼の形相でジャブ!ジャブ!フック!!ストレート!!とリズムよくパンチで蛇男君を攻撃し続けているが、蛇の防御力っていうのは見た目以上にすごい。

攻撃系のアビを何一つ持っていない上に、上半身の身体能力は人間の女性と大差ないリリィの拳では、いかにヤンデレモードとは言え蛇男君に傷一つ付けられない。

彼からしてみれば、精々ハエが止った程度の不快感だろう。

打ち出される凶器を一度回避すれば、内部に戻るまで少し時間がかかるのでその間だけは気が休まるが、いかんせん、かなり長い時間こうしているのでそろそろどうにかしたい所だ。

「なぁ、盛り上がってる所申し訳ないが、別にコレ、BLとかホモォとか、そーゆーアレではないので、そろそろなんとかしてくれねぇか? 俺が抵抗すると蛇男君が死にかねないし」

主にキャーキャー騒いでいるミントと一さん&アルファへとそう呼びかける。

「えー。なに言ってるの長さん。そんなに求愛されてるのに無粋なんですけどー」

「そうですよぅ。蛇男のこんな反応かつて見たことないですし! 大人なんだから大人しく蛇男の愛を受け入れてください!」

「ほら! 早く合体してください!! ほらほらほらぁ!!」

各々、身勝手な事を言ってくれる。

「いや、繁殖期の爬虫類や両生類の♂ってのは、魔物に限らず見境ないからな。目の前でちょっとでも♀の反応があれば、とりあえず飛び掛って交尾しようとするんだよ。この場合はミントやリリィの匂いが俺の体に染み付いてる上に、この家の♀度が高すぎてこんな反応に至ってるんだぞ? ぶっちゃけ面白くもなんとも無い、爬虫類系の♂であればごく普通の反応なんだぞ? これ??」

と、このように事態を論理的に解説してやったところ、双方共に驚愕の表情を浮かべた後、困惑。

いや、ミントはしょうがないにしても一さんは知ってなきゃ駄目だろ! アルファに至っては知ってて駄目な方向へと誘導しているだけだ。一番性質が悪い

実際問題、蛇や蛙の交尾で♂同士が合体してしまうのは普通にある事だ。

もちろん。事に至る前に蛙であればリリースコールと呼ばれる特殊な鳴き方で相手に間違いを報せるし、蛇であれば3の工程で失敗するので事に至れず、時間の経過と同時に自然と離れるのだが。

「てかよぉ、仮にこれがその類だとしても、こんなくたびれたおっさんと爬虫類って、どんだけマニアックなんだよ! 需要ねーよ!! つーかてめぇら勢いだけで盛り上がってるだろ!!」

「うん。その感は否めない」

「ですね。勢いは大事です。そして世間様には需要がないのも重々承知。でもそんなの関係ない!!」

「そうそう。もうなんかこの流れで盛り上がろうっていう空気が大事なんですよ!! 気づいてください!!」

またもや各々好き勝手のたまう始末。勢いだけでカマ掘られたらたまったものではない。

「この馬鹿たれ共め。まぁいい。おまえらがクソの役にも立たないってのは良くわかった。とりあえず風呂行ってくるわ」

「んあ? なんだ二人できゃっきゃっしながら風呂にでも入るのか??」

チャコの奴が?顔で聞いてくる。

「アホ。食いついて離さない輩を外すには水ん中に沈めるのが手っ取り早いんだよ。ライターなんかの炎で炙ってもいいけど、人様んちの子にそれはできん。少なからず怪我させちまうからな」

そう沈めるか炙るかはこうしたトラブルが起きた時に一番最初に試す手段だ。

水中耐性のあるスッポンや蛭に吸い付かれた時は炙る選択しかないが、蛇に噛まれて巻きつかれた時の水没は非常に有用だ。

「んだよもー。つまんねーなー!!」

当初は興味を示さなかったチャコだが、騒ぎには混ざりたい模様。
ぶー垂れるチャコはほっといて、俺はいそいそと風呂場へ向かおうとしたのだが、

「ぬおー!!!」

と叫んで歩き出そうとした瞬間に盛大にこけた。

俺が動き始めたせいで♀が抵抗していると思ったのか、ウネウネと着弾ポイントを探るだけだった蛇男君が、一旦、俺を拘束すべく両足に巻きついたのだ。

こうなるとしばらくは凶器を打ち込まれる心配はないのだが、全くもって歩けないので非常によろしくない。

「ご主人様!お手伝いします!!」

身動きが取れなくなった俺の元へと即座に駆けつけ、俺の両手を持ち風呂場へと引きずり始めるリリィ。

手伝ってくれるのは助かるが、なんつーか、腕だけ持たれて引きずられるって、ものすごく間抜けな絵面だな・・・

そのまま引きずられ続け、程なくして風呂場についた俺&蛇男君をえいや!と湯船に放り込むリリィ。
もう少し優しくして欲しいなぁとも思ったが、リリィの腕力ではこれでもがんばった方だ。

こうして俺は湯船に漬かり顔だけ出して蛇男君が離れるのを待った。

そのまま10分程度経っただろうか。 全身の拘束が緩んだな? と思ったとたん蛇男君は暴れながら離れ湯船から洗い場へと飛び出した。

続いて俺も即座に湯船を飛び出し、蛇男君の首根っこをぐわし!! と両手で押さえる。もちろん俺が力を込め過ぎたら首の骨が折れてしまうので、精一杯加減して。

こうすると蛇は巻きついたり暴れたりと大変な騒ぎになるが、噛み付かれる心配はなく、こうして首根っこを掴むのは危ない蛇の正しい持ち方だ。

最も、危険な蛇や暴走中の固体でなければ、蛇の行きたい方に行かせてやる様な優しい持ち方がベストなんだが。

押さえつけられた不快感からバッタンバッタンと大暴れする蛇男君を引きずって、馬鹿共の居る場所へと戻る俺達。

つーか、服を着たまま放り込まれたのでずぶ濡れだ。床も酷くビチャビャである。

・・・・・・・・。

くそぅ、だんだん腹が立ってきたぜ。なんで俺ばっかいつもこんな目に合うんだチキショウめ!

しっちかってやるぜ!! しっ叱ってやるぜ!! こいつら全員しっ叱ってやるぜ!! 

「さて、お前達・・・今回の騒動についてのお沙汰を言い渡す!!」

「「「「!!!!」」」」」

ずぶ濡れのまま帰って来て早々、唐突なお沙汰宣言に馬鹿4匹は揃って俺の顔を見る。
お裁きを告げるのに邪魔なので、とりあえず蛇男君はリリィに預けておく。

「まず、チャコ&ミント。お前達は尻叩き1000回の計」

「ふぁっ!!」

「ちょ! 今回はあたし等なにもしてねーだろ!! 犯人は主にいっちゃんだろ!!」

「そーだよ!そーだよ!ソースだよ!!」

ぶーぶーと反論するミント&チャコ。

「主のピンチになにもしなかった、いや、あろうことかその有様を楽しむという大罪を犯したのだ。てか今の発言がむかついたので500発追加な」

その反論に対し、冷静に罪状&罰を告げる俺。

「なにー!!」

「理不尽すぎる!!」

「うるせぇ! ごちゃごゃ抜かしてないで、尻をこっちに向けて一列に並べ!! さぁ並べ!! 並べぇぇぇーい!!」

並べと連呼しながらハリセンでベッシンベッシン床を叩いて威嚇。

「だぁぁぁー! 長さんご乱心!!」

「誰だよ!! おっさんの変なスイッチ押した奴!!」

喚きながら隅の方へと逃げガクブル震えるチャコ&ミント。

「失礼な奴等だ。俺は乱心もしていないし変なスイッチも入ってなどいない!! これは大罪を犯した者への罰であり罰なのだ!! そう、悪い子には体罰なのだ!! 体罰禁止なんてわけのわからねぇ教育方針は我が家には存在しないのだー!!」

そう良いながらミントへとにじり寄り、両足を掴んでひっくり返すと、その尻へとハリセンをフルスイング。鍬で畑を耕すかの如く何度もフルスイング。

「あっいぃぃん!! 痛ぁーい!!」

執拗に繰り返されるスパンキングにミントの奴が悶絶する。

その様を見ていたら、唐突に閃いてしまった。

「良く考えたら、発情している♂はここに居るし、ミントはミントでどうせ当日になっても発情しないだろうし、受精は見込めないかもしれないが、交尾報告を纏めるだけでいいなら、もう満月とか待たずに今すぐカップリングしてもいいんぢゃね??」

と、手を休めて提案。

「んな!! ちょ、ちょっとまって! なに言っちゃってるのこの人!!」

それに対して、うつぶせのままの姿勢で上半身だけ振り向かせ異を唱えるミント。

「いやさ、元々当日いきなりけしかける予定だったし、いいかなーって」

「いいかなーじゃないわよ! 良くないわよ!! なにイッちゃんみたいな事言ってるのさ!!」

「む、失敬な。イッちゃんと同じにするんじゃねーよ、この尻丸出しサキュバスが!!」

「自分から丸出しにしてるわけじゃないよ!! 今ひん剥かれたからだよ!! こんな愛の無いスパンキング駄目!絶対!!」

ぎゃーぎゃー喚くミントと俺。

「あの~、お二人とも私の名前を蔑称的に使わないで欲しいなぁーなんて・・・」

床がビチャビチャになってしまったので、自発的に掃除を始めたイッちゃんが、床を拭きつつ涙目でそう提案したがスルーだ。

「やめておきなイッちゃん。下手に関わるとこっちに矛先来るから、今はじっと耐えるんだ」

「そうです。マスターの矛先がミントさんに集中している今の内に、早く掃除を終わらせてトンズラしないと巻き込まれますよ」

スルーされた残念なイッちゃんに対して、自室へと逃げるチャコとアルファが助け舟を出した。

「え、でも、牧場長さんがハリセンを振るう度に雫が撒き散らされて、拭く端から濡れていくので、エンドレスなんですよこれぇ~、私も連れてってくださ~い!」

半泣きから全泣きになってチャコとアルファに助けを求めるイッちゃん。

「え、嫌だよ。掃除放り出すの手伝ったなんて知れた日にゃ、確実にあたし達がロックオンされるじゃん」

「そうですよ。私なんてチャコさんやミントさんと違って、マスターのアビ対象ではないので、ハリセンではなくフルスイングの拳骨やビンタが飛んでくるですよ? ロボでも痛い物は痛いんですから。ご免被ります」

「そんな~」

あえなく見捨てられたイッちゃんはその場でへたりこんでしまった。

「ったく、しょーがねぇなぁ、だったらこうすればいいんだよ。おっさんがあんなにずぶ濡れなのは、ある意味イッちゃんのせいなので・・・」

哀れに思ったのかごにょごにょと耳打ちするチャコ。
なにを言ってるのか聞こえないが、イッちゃんが掃除を放りだしたら連帯責任で奴等もしばき回そう。

いやそうでなくとも元々そのつもりだが。

「な、なるほど! わかりましたー!」

チャコの耳打ちでなにかを得心したのか、イッちゃんは一心不乱に床掃除を再開した。
ふむ。なにを言ったのかわからんが、まぁいいだろう。まずはこっちの阿呆に折檻だ。

「オラオラー! 引き続きスパンキングだオラー!!」

「ぎゃーす!! もう無理ぃ!! あの日のお姉ちゃんみたく尻真っ赤になるぅー!! てかカップリングするならなんでその♀を折檻するのさー!!」

「馬鹿野郎!! 野生のポキマーンだって痛めつけた方が捕まえやすいだろうが!! それとおんなじだー!!」

「ぬあー!! 意味不明ー!!!」

文句を垂れるミントの尻へとビッたんべったんハリセンを叩き込む。

何度も繰り返す内に腕が疲れて来たので、本来ならミントのM属性装甲を貫ける程の威力ではないのだが、スイッチが入ってないからか、快感にならずそのままダメージとして通っている様だ。

M属性持ちの感性は良くわからんな。

「さぁて、まだまだスパンキングは終わらなイギィ!!!」

突然、股間に激痛が走り変な声を上げてしまった。

いや、激痛なんて生易しいもんじゃあない。
死の予感が走る痛みだ。ついさっきも味わった痛みだ。

「あの、ちょ、イチジクさん? なにしてはるんですか?」

激痛の原因。股間付近に陣取ったイチジクさんことイッちゃんを見ながら、かろうじてそう搾り出した。

「拭かなきゃ、私のせいだから、拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ!!」

「ぬおー!! やめなイカー!! なんで執拗にゴールデンボールを攻撃してくるんだよ!!」

「だって、黄色いネズミが出てくるゲームも攻撃してから捕まえるじゃないですか! だから拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ!!」

「だぁぁぁー! 意味不明!! バッヂの数が足りねぇのかぁぁ!!」

拭かなきゃと連呼しつつ、手に持った雑巾ごと金玉に掌底をかましてくるイチジクさん。どう考えても拭く動きではないその行動に、俺自身も意味不明な事を口走ってしまう!!

その一撃が当たる度に、手に持ったハリセンからは、チロリロリン、チロリロリンとBダッシュする髭のおっさんが100UPする時みたいな効果音が響き渡る。

先ほどの直殴りに比べたら一撃あたりの衝撃はマシだったが、連打の勢いが止まらない!! いつまで続くんだこれ!!

地獄、否、これは煉獄の掌底!! くそったれ! さっきのチャコの耳打ちは絶対コレだ!! あの野郎やりやがったなぁ!!

「た、助かったー!! イッちゃんマジ天使!! ありがとう!! ありがとう!!」

言ってイチジクさんの腰へと抱きつき頬ずりするミント。

んが、

「濡れてる・・・ここも! そこも! 濡れてる!! 拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ!!」

「い、痛だだだだ、ちょ、イッちゃん!! ヤメテ! 私じゃないよ!! あなたが拭く相手は長さんでしょ!!」

俺の巻き散らかした水分でミントの体、とりわけ胸部や頭部も濡れていたのだが、これにイチジクさんが反応してしまい、今度の矛先はミントに。

「拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ!! 乳尻太ももゴールデンボール! 拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ拭かなきゃ!!」

「やぁああああ!!」

こうして、二人揃ってイチジクさんにもみくちゃにされ、あっちの世界へと旅立った。

因みにこの騒ぎの間に、蛇男君はリリィへとおイタをしたようで、交尾しようと撃ちだしたチンボコを掴まれ毟り取られてしまったらしい。

ネキリヘビのちぎれたペニスが再生するのには、最低でも数ヶ月かかるので、当然、今回のカップリングはお流れとなってしまい、今年の成果ゼロとなった俺は担当の役人からこっぴどく叱られたのであった。

因みに同じく成果なしだったイチジクさんはなぜかスルーされたらしい。

たぶん運極が発動したのだと思う。


解せぬ。

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