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サキュバスのミントさん

ブリーダー二人による本日の配合プラン

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~前回までのあらすじ~

俺は淫魔に前後から抱きつかれ、足元には色々あって息子を滾らせる男がorzしていた。

そんなワケで、まずは前面のミントにボディブローをかまして悶絶させ、お次に背面のエイチチの脇腹に肘鉄を食らわし悶絶させ、ついでだからと佐竹さんの溝落ちにも1発入れて悶絶させた後、ビクンビクンと痙攣する3匹を見やること数分。

ようやく痛みが落ち着いたのか、まずは佐竹さんがむくりと起き上がって復活した。

「いたた・・・先輩の腹パン、久々に食らいましたが、相変わらず容赦ないですね・・・・てか、そこの二人はまだわかりますがどうして僕まで・・・」

「息子が元気過ぎるから、ちょっと躾けが必要だと思ってな」

「これでも条件を満たさない限りは大人しい愚息なんですから、大目に見てくださいよ」

「条件を満たすとはっちゃけ過ぎるからいただけないワケだが・・・まぁ、それはどうでもいいとして早くパンツ穿いて来いよ・・・」

「あ、はい」

また腹パンされてはたまらないとばかりに、佐竹さんは素直に頷き、よろめきながら自室へとパンツを取りに向かった。

程なくしてキチンとズボンまで装備して戻ってきたが、その頃になっても二匹の淫魔はピクピクと悶絶したまま起き上がる気配がない。

「あちゃー、チトやりすぎたか? だいぶ手加減したんだが・・・」

ミントのアホはいいとしても、友人の嫁さんであるエイチチをここまでやっちまうと、少々バツが悪い。

「いくら加減した言っても、人外特攻の特性アビリティを持ってる先輩の一撃を貰って、すぐに立ち上がれるモン娘なんてマズ居ませんよ。その辺りの効果が加味されない僕だって普通に悶絶する一発だったんですから。しばらくは起き上がれませんよ。二人とも」

「ぐぬぅ。すまねぇ。佐竹さん。エイチチにも悪い事しちまったな」

佐竹さんの言う通り、俺がモン娘に入れる一発は少々所の騒ぎではない一撃になってしまう。

俺の持つ特性アビリティの一つ人外特攻は、魔物や獣、魚や虫等等、あらゆる人間以外の生物に対して与えるダメージが大幅に増幅されると言う物だ。当然モン娘にも作用する。

「私には詫びなしかーい!!」と、ミントの奴が気合で一瞬立ち上がり、自身に対してのみ詫びを入れない俺に文句を垂れるが、直ぐに「ゲゲボボうぁうおぇぇぇぇ」と腹を押さえ、再びぶっ倒れてしまう。

例えグロッキーでも突っ込めるポイントでは突っ込む。アホな娘だが、その心意気だけは天晴れと言わざるを得ない。

この特性アビリティが効果を発揮する条件は、素手殴りや蹴り等、俺の肉体を直接打ち込む攻撃に限られるので、体表に毒を持つ生物など直接触る事が難しい相手には効果を発揮できないのだが、そう言ったしがらみがない場合の結果は御覧の通りだ。

実行するとどんなに手加減しても、やられた相手はこんな風になっちまう。

なので、ブリーダーはモン娘に対抗する相応の力と最低限の備えをしなくてはならない。

と言う法律は、俺の場合体一つで十分過ぎる程に条件を満たしていたりするのだが、客観的に見て備えを有していると見なされなければならないので、調教鞭は常備しておかなくてはならない。

まぁ、この特性のおかげで躾けで普通にぶん殴れないから、法律云々がなくても俺にとって調教鞭は必須アイテムだ。

んが、今回は前後から密着されてて使えなかったのでしかたがない。

「まぁ、怪我をした様子もないので妻の事は別にいいですけど、そろそろその「佐竹さん」って呼ぶの止めてくださいよ」

「事実だろう?」

「そうですけど、フルネームで呼ばれ続けてるみたいで抵抗ありますって!」

そう、佐竹さんの本名は佐竹燦さたけさん。名前がさんなので、面白がって佐竹さんと呼び続けていたら、俺の中でその敬称とも本名とも取れる呼び方が定着してしまったのだ。

「もうニックネームみたいなもんだから受け入れてくれ」

「フルネームなのにニックネームとか腑に落ちませんよ・・・」

そんな台詞と共にしょっぱい顔で抵抗するが、本気で嫌がってるわけでもないし、別に構わないだろう。

「ところでどうします? もう夕暮れなので、豚朗とのカップリングも試せる時間帯ですが、ミントちゃんまだ動けそうにないですよ?」

佐竹さんの言う通り、自家発電待ちやバカ騒ぎに興じていたおかげで、いつの間にかだいぶ時間が経過しており、既に夜の帳が落ちかけていた。

「う~ん、豚朗君の調子はどうよ?」

発情具合ノリは悪くないと思いますが、自分からがっつくタイプではないので、ミントちゃん次第かと」

「あー、コイツはなぁ、いまだに魔物の雄とやるのは抵抗あるみたいで、今日もしぶしぶなんだよ。このバカにとってはむしろ雌犬散歩プレイがメインで、お見合いはそのついでと言うか、交換条件でやむなく了承しただけだから、交尾については豚朗君頼みだったんだよ」

魔物の雄は基本的に雌(モン娘)を見つけると、発情期だろうがそうでなかろうが、常に誰彼かまわず激しく求愛し、例え雌が受け入れずとも無理矢理しがみついて強制的にやりまくるので、体内受精をする種なら雌の気分に左右されずに交尾が成立する。

満月や新月ともなれば雄のその傾向はより顕著になるので、それに期待していたのだが、豚朗君はどうやらそういうタイプではないらしい。

人間で言えば強姦で有罪確定だが、優秀な雄の条件は雌を逃がさず交尾に至る。と言うのも含まれ、雌の方も自分を無理矢理犯す事ができる雄イコール子供を産んでもいい相手。との事後受け入れになるので、人の価値観で語るのはナンセンスだ。

逆に言えば、雌の抵抗が激しく組み伏せられない雄は負け組みなので、そのまま雌に殺されてしまう事もある。そしてそれが許される。

魔物の世界は人間界程甘くなくシビアなのだ。

貴重な雄を傷つけられたり殺されたりした日には大損害なので、ブリーダーにとっても交尾は気の抜けない大仕事だ。

まぁ、なんにせよ事前に当人同士が納得してからヤルのが一番なのは、人間も魔物も変わりない。

「じゃあ、チャームパヒュームも焚きますか? そうすれば豚朗のスイッチもかなりブーストされますし、ミントちゃんも発情するかもしれませんし」

「どうだろうなぁ、豚朗君のブーストはありがたいんだが、アイツ淫魔のクセになんでか媚薬の類が利き辛いんだよ。それどころか無駄に淫気を操る能力には長けてるんで、パヒュームの効能を魔力に変換して自身を強化しちまう可能性もあるし、経費の割りには分の悪い賭けになっちまうなぁ・・・」

チャームパヒュームはお香タイプの範囲型媚薬で部屋全体に効果がある強力な一品だ。
モン娘用の物だけでなく人間用の物も開発されており、金持ち達のエロスなパーティ等でも重宝されている。

これは夜のペット屋が使う科学薬品系の媚薬ではなく、モン娘由来の希少成分から作られている副作用のない魔法薬なので、くっそ高い。

今回の交尾の肝は、豚朗君を発情させ、なおかつミントの抵抗力を可能な限り奪う事にある。

豚朗君をヒートアップさせても、ミントの抵抗力が上がってしまったら意味がない。

双方合意の上だが、いざ交尾となるともじもじしていて進まない。なんて場合ならパヒュームによるマイナスはないし、成功する可能性がグンと上がるので迷う事はないのだが、今回の場合、ミントを発情させる可能性は限りなくゼロに近く、運が良ければ少しは効果があるかもしれない程度の期待値だ。

プラスが見込めないだけならまだしも、抵抗力が上がる危険性も孕んでいる以上、パヒュームを使用するわけにはいかない。費用対効果が合わないばかりか、豚朗君の危険が増してしまう。

こう言ったお見合いで使用される消耗品やアレコレの諸経費は、ブリーダー双方が総経費を半分づつ負担するのがルールだ。

ブルジョワの佐竹さんにとっては、どんなに高くなっても交尾1回当たりの経費なんざ鼻糞みたいなもんだろうが、俺にとってはパヒュームなんかが加わったらのっぴきらない出費になっちまう。

当たり前だが、種付け料だけは見合いを申し込んだ側が全額雄のオーナーに支払うので、それだけでも俺にとっては大変な出費なのだ。

一番良い方法である双方納得の交尾は、ミントの気性からして不可能なので、今回は豚朗君が無理矢理かます以外の選択肢はない。

「なかなかに厄介ですね・・・大概の雌はパヒューム嗅がせれば一発なんですが、流石にエルダーサキュバスともなると一筋縄では行きませんか・・・」

「うん? エルダーサキュバスとな?? 誰が??」

「ミントちゃんの事ですが?」

「いやいや、なに言ってるんだよ。こいつはそんな上等なもんぢゃねーぞ? ただの下っ端サキュバスだけど??」

エルダーサキュバスは淫魔属の生態系で最も高い位置に君臨する種であり、サキュバスのみならず他の淫魔でさえも統率する事ができる、属内覇種の一角だ。

同ランクのモン娘や魔物にはエンペラーやらエンプレスやらエンシェントやらと大仰な名を冠する奴等もおり、その名に恥じない面倒な力を持っている。

こんな、男の誘惑すらまともにできないポンコツが、ソレに該当するとは到底思えない。

「先輩こそなに言ってるんですか、そこで転がってるだけの状態でもミントちゃんからは恐ろしい程の魔力を感じますし、事前に送って貰った血統証のコピーにもちゃんと記載されてたじゃないですか」

「え? え? えぇぇぇ!!!」

あわてて、持ってきた封筒から血統証を取り出してみる。

不正防止の為に交尾時にはコピーではなく原本を持ち寄り、双方で血筋を確認するのが義務づけられているので、持ってきていたのだ。

んが、

「んん~? succubareとしか書いてねーぞ? やっぱただの下っ端サキュバスだって」

横文字で色々とミントの家系図とも言える名前がズラーっと並んでいるが、ミントの項目にはsuccubareとしか書かれていない。

succubareってのはサキュバスの学名だ。元はラテン語のこれが英語読みで定着してサキュバスになったとかなんとか聞いた事があるが、正確な事は学者ぢゃないからわからないし興味もない。

てか、この血統証って奴は横文字だけで事細かに記されているから、読み辛くてしかたがない。

良くある二次ネタに、過去の血筋から先祖返りを起こして云々かんぬんってのがあるから、可能な限り判明している血統を記録するのは大事に思えるが、実際問題そんなもんはマズ起きないので、ブリーディングの際にはそこまでは考慮しない。

繁殖で直接子に影響が出るのは、精々3代程度前までの血統なので、色々書かれてはいるが大事な部分は一握りだけだ。

「見てみろよ、ミントも、そのおかんも、ばーさんもただのサキュバスだぜ? 父方の魔物も普通種だしエルダーの要素ゼロだよ」

と、自信満々に佐竹さんへと血統証を渡したのだが・・・・

「いやいやいや、とんでもないサラブレッドですって!! 母系は全員エルダーサキュバスじゃないですか!! 種名succubareの後ろに(E)ってちゃんと書いてありますよ!!」

「うん?(E)? ああ、確かに書いてあるな。てか今までお上から預かった連中の血統証には大体そのアルファベットついてたぞ? 偉そうな奴だったりエロい奴だから、略してEなんじゃねーの??」

「そんなワケないでしょう!! これ、政府が発行する正式な公文書ですよ! そんな珍妙な略号つけませんって!!」

「そいつぁ、あっちゃんプリケツだぜ」

「なんですかそれ?」

「子供の頃見た有名なアニメで、ちっさい女の子がものすごいびっくりした時に使ってた造語。知ってるだろ?」

「知りませんよ・・・先輩が子供の頃って遥か昔でしょう・・・」

おーまいがー。

二重の意味でびっくりだが、どうりでミントは交尾相手についてやたらと注文が多いわけだ。上位種であればあるほど、強い♂を求めるのは自然の法則だ。

人間の男に拘ったのは恋愛感情面以外に、単純に生態系の頂点が人間だから本能的に望んでいたのだろう。

「てか、略して(E)とか書かないで、ちゃんとエルダーって書けよ! 仕事しろよ! 役人共!! わっかりづれぇーよ!!」

くそったれぇ、役人って奴ぁ、今も昔も怠ける事ばかりがんばりやがって・・・・全くもってしょうもない。

俺が読み方を知らなかったとかそう言うのはこの際スルーだ! 全部役人が悪い。

うん。

「大体、先輩の所にお役人から押し付けられるモン娘が下っ端種族なわけないでしょう。今までの(E)付きも含め、他のブリーダーの手に負えないから、最終的にあなたの所に押し付けられるワケですし」

「ぐぬぅ、まぁ、なぁ・・・こいつを引き取る事になった時も、3匹のプロフィールを見せられて、その中から1匹選べと迫られたんだが、コイツ以外、全部最高ランクのめんどくさい種族だったから、ミントを選んだんだが・・・言われてみればその状況でコイツだけ下っ端だなんて美味い話はないわなー・・・」

俺のトコへとお上から回されるモン娘は基本的に厄介者。そう指摘する佐竹さんの主張は正しい。

そもそもミントの配属理由は繁殖母体ではなく「再教育」だ。人間界で生きる為の常識と正しい性知識を学ぶべく家に在籍している。

本来なら俺ではなく、教育を売りにしているブリーダーが請け負うのが筋ってもんだ。(もっとも、その辺りは既に通過済みで、彼等の手には負えなかったんだろうが)

佐竹さんは真面目過ぎて役人から嫌われているが、俺の場合は単純に存在が気に入らないらしく、お役人からは蛇蝎の如く嫌われている。

なので、まともに繁殖できる様な固体は回してもらえない。そのクセ成果だけは出せと迫ってくる。

会社組織で言えば無理難題なプロジェクトを押し付けられて、失敗すればどやされ減給。そんな状況だ。

ミントの様な厄介者を再教育しつつ繁殖も行えって言うんだから、意地が悪いにも程がある。

家の事情を少し説明すると、俺自身のモン娘使役キャパシティは大きいものの、それを飼うスペースを有していない為に、最大3匹までしか飼育許可が降りていない。

モン娘は法律で定めた飼育スペースがないと、どんなに本人の資質が高くても法律的に使役できないのだ。

これはあまり知られていないが、普通の犬なんかでも各市町村で最大飼育数が決められており、当人の資質とは別に客観的な適正飼育が求められるのはモン娘の法律に限った事ではない。

犬猫のブリーダーで飼育崩壊なんてケースが聞かれるが、モン娘でそんな事が起きれば大変な社会的迷惑を振りまく事になるので、その辺りに関しての法律を厳格にしなければいけないのは俺も理解している。

んが、飼育できる頭数が限られるとなれば、固体を厳選して繁殖に有用な固体を飼育しなければならないのに、公務員と言う立場上、お上から下される無理難題は原則的に引き受けなくてはならない。

無駄にキャパはあるので、他で手に負えない種でも俺なら扱えるし、失敗しても難癖付けるいい材料が手に入るだけなので、お役人は二重の意味で押し付けるメリットがある。

結果として、連中から嫌われている俺の手元には、厄介者だけが集まり、まともな繁殖に使える者はほとんどやってこないって寸法だ。

常時満員で飼育スペースがないから、自分で新たなモン娘とも契約できないし、教育が終われば、また新たな厄介者を即座に押し付けられる無限ループである。

今回、ミントが来てくれたおかげでそこに光明が差したかの様に見えたが、その光はどうやら見間違いだった様だ。

だが、それでもだ。チャンスが僅かでもあるなら試してみたい。それがブリーダーのサガと言うものだ。

「とりあえず、動けない今の内に豚朗君の豚小屋に放り込んでしまおう。運が良ければサキュバスの淫気に反応した豚朗君が、動けないミント相手に無双して早々に決着がつくかもしれないし」

「なんと言うか、ホント、先輩のブリーディングって、いっつもこんな感じですよね・・・・」

強引なプランしか選べない俺の提案に、佐竹さんが微妙な表情で苦笑いするが、俺だって好きでこんなやりかたしてるワケぢゃねーからな?

そんなこんなで、男二人がそれぞれの相棒を背負い、ボロ屋から繁殖場へと向かうのだった。

動けないものの、一連の会話は聞こえていたのか、ミントの奴は背負う際に「うごごご、やめろ~ショッカ~、ぶっ飛ばすぞぅ~」などと搾り出した様な小声で抵抗していた。
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