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坂上秀一の場合4
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『好奇心』と『モラル』を天秤にかけた時、秀一の気持ちは大抵、好奇心の方に傾くことが多かった。友人である悟志を階段から突き落とした時もそうだ。階段を降りようとする悟志の背中を目にした時、秀一は訳の分からない烈しい衝動のようなものが自分の胸の奥底から突きあげてくるのをひしひしと感じていた。
抑えがたい衝動に突き動かされるように目の前にある悟志の背中をそっと押した。個人的な恨みがあるわけでも、殺したいほど憎んでいたわけでもなかった。友人が血まみれで倒れているイメージが自然と浮かびあがってきて、何となくそれに沿った行動を取らなければいけないような気がしたのだ。果たして自分の想像した通りの結果になるのか。自分の頭の中で思い描いていた画にどれだけ現実を近づけさせることができるのか。確かめずにはいられなかった。
幸い悟志の怪我は足首の軽い捻挫と打ち身程度で済んだため大事には至らなかったものの担任からは問題児のレッテルを貼られることになった。悟志からは当然ながら絶交を言い渡された。和明からは頬が腫れ上がるまで殴られ、散々な目に遭わされたが自分の欲求を優先した代償として考えれば安いものだと秀一は思った。
◆◆◆◆
カーテンの隙間から微かに溢れる陽の光が、薄暗い部屋の中にさしこみ、床には脱ぎ捨てられたままのワイシャツや下着が無秩序に散らばったまま放置されていた。
世の中もこのくらい無秩序だった方が絶対に面白いだろうに。どうして大人たちは狭い枠組みの中に自分から飛び込んでいくような馬鹿な真似をするのだろうか、などと益体もないことを考えながら秀一は椅子に座ると机に置かれていた和明のノートパソコンを起動させる。
父のプライバシーを踏みにじるような行為をしてでも秀一は、自分を苦しめるものの正体を知りたかった。ここでもやはり秀一の中にある天秤は『好奇心』の方へと傾くことになった。
『死 怖い』、『死 恐怖 原因』といった具合に頭に思い浮かんできた単語を無作為に抽出し、適当にネットで検索をかけてみる。するとタナトフォビアという見慣れない横文字に行き着いた。掘り下げて調べていくとタナトフォビアという用語はジークムント・フロイトというある有名な心理学者が抗うことのできない『死』に過剰なまでの恐れを抱く人たちのことを指す言葉として造りだしたものであるらしいことが分かった。
心臓が嫌な感じに跳ね上がる。死を恐れる臆病な自分の心を見透かされてしまったように感じた。
秀一は次に『タナトフォビア 克服方法』とキーボードを叩いて検索をかけ、画面に表示されたサイトを上から順番に見ていくことにした。『えりっちのブログ』という名前の個人ブログを開いた。
最初はブログ主である『えりっち』の簡単な自己紹介からはじまった。次にタナトフォビアを発症してしまったキッカケやこれまでの自分の生い立ちについて、最終的にはEFTタッピング、NLP(神経言語プログラミング)セラピー、眼球運動脱感作療法(EMDR)、暴露療法(エクスポージャー)などの心理療法の内容まで詳細にブログには書き込まれていた。
抑えがたい衝動に突き動かされるように目の前にある悟志の背中をそっと押した。個人的な恨みがあるわけでも、殺したいほど憎んでいたわけでもなかった。友人が血まみれで倒れているイメージが自然と浮かびあがってきて、何となくそれに沿った行動を取らなければいけないような気がしたのだ。果たして自分の想像した通りの結果になるのか。自分の頭の中で思い描いていた画にどれだけ現実を近づけさせることができるのか。確かめずにはいられなかった。
幸い悟志の怪我は足首の軽い捻挫と打ち身程度で済んだため大事には至らなかったものの担任からは問題児のレッテルを貼られることになった。悟志からは当然ながら絶交を言い渡された。和明からは頬が腫れ上がるまで殴られ、散々な目に遭わされたが自分の欲求を優先した代償として考えれば安いものだと秀一は思った。
◆◆◆◆
カーテンの隙間から微かに溢れる陽の光が、薄暗い部屋の中にさしこみ、床には脱ぎ捨てられたままのワイシャツや下着が無秩序に散らばったまま放置されていた。
世の中もこのくらい無秩序だった方が絶対に面白いだろうに。どうして大人たちは狭い枠組みの中に自分から飛び込んでいくような馬鹿な真似をするのだろうか、などと益体もないことを考えながら秀一は椅子に座ると机に置かれていた和明のノートパソコンを起動させる。
父のプライバシーを踏みにじるような行為をしてでも秀一は、自分を苦しめるものの正体を知りたかった。ここでもやはり秀一の中にある天秤は『好奇心』の方へと傾くことになった。
『死 怖い』、『死 恐怖 原因』といった具合に頭に思い浮かんできた単語を無作為に抽出し、適当にネットで検索をかけてみる。するとタナトフォビアという見慣れない横文字に行き着いた。掘り下げて調べていくとタナトフォビアという用語はジークムント・フロイトというある有名な心理学者が抗うことのできない『死』に過剰なまでの恐れを抱く人たちのことを指す言葉として造りだしたものであるらしいことが分かった。
心臓が嫌な感じに跳ね上がる。死を恐れる臆病な自分の心を見透かされてしまったように感じた。
秀一は次に『タナトフォビア 克服方法』とキーボードを叩いて検索をかけ、画面に表示されたサイトを上から順番に見ていくことにした。『えりっちのブログ』という名前の個人ブログを開いた。
最初はブログ主である『えりっち』の簡単な自己紹介からはじまった。次にタナトフォビアを発症してしまったキッカケやこれまでの自分の生い立ちについて、最終的にはEFTタッピング、NLP(神経言語プログラミング)セラピー、眼球運動脱感作療法(EMDR)、暴露療法(エクスポージャー)などの心理療法の内容まで詳細にブログには書き込まれていた。
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