30 / 46
閑話3 元パーティーの苦境
しおりを挟む
「装備の修理費が足りない…」
薄暗い酒場の隅で、ガイウスは溜息をつきながら帳簿を見つめていた。カウンターに並べられた酒瓶の列が、その憔悴した表情を映し出している。
「リーダー、どうしましょう?」
セリアが心配そうに声をかける。彼女の赤い長髪は以前の艶を失い、魔法剣にも傷が目立ち始めていた。
「このままじゃ、Cランクのクエストも受けられなくなる」
ミレイアの声には、いつもの明るさが感じられない。彼女の持つ癒しの杖も、修理が必要な状態だった。
「...レオンがいなくなってから、なにもかもうまくいかねぇな」
ダグが呟く。槍の柄に巻かれた布は擦り切れ、刃先には欠けが目立つ。
誰もが思っていた現実を、ダグが口にした瞬間、重苦しい空気が酒場の隅を支配する。
「レオン…か」
ガイウスは苦い表情で酒を煽った。
あれから数ヶ月。レオンを追放してから、パーティーの収支は急激に悪化していた。
「あいつがいた頃は、確かに…儲けは良かった」
セリアが静かに言葉を紡ぐ。レオンの「価値転換」によって、魔獣の素材は常に高値で売れていた。装備の修理費も、その収入でまかなえていた。
「でも、あいつは冒険者らしくなかった!」
ダグが拳を振り下ろす。グラスが揺れ、中の酒がこぼれる。
「計算ばっかりして、戦闘にも参加しないで…」
言葉は強かったが、その声には後悔の色が滲んでいた。
「本当に…そうだったのかしら」
ミレイアが小さな声で問いかける。
「あの子なりの戦い方があったんじゃないかな。私たちが、理解しようとしなかっただけで…」
誰も反論できない。レオンの提案を、彼らは本気で聞こうとしていただろうか。効率や計画について語る彼の言葉を、「つまらない」の一言で切り捨ててはいなかっただろうか。
「噂だと、あいつ今じゃ大成功してるらしいぞ」
ダグが新しい情報を口にする。
「街の北地区で不動産を手がけてるって話だ。他にも魔獣の素材を高品質に変換して売りさばいてるとかなんとか」
「そうよ。私、見かけたわ」
セリアが言葉を継ぐ。
「商人たちと談笑してて、見違えるように自信に満ちていた。もう、あの頃のあいつじゃなかった」
「商人か…」
ガイウスは苦笑する。
「結局、あいつは商人の血筋だったんだな。俺たちが無理に冒険者にしようとしてたのかもしれない」
静寂が流れる。酒場の喧騒が、より一層この隅の重苦しさを際立たせる。
「でも、今更後悔したところで…」
ミレイアが言いかける。その時、酒場の扉が勢いよく開かれた。
「大変です!」
若い冒険者が叫ぶ。
「北方で、魔獣の大群が発見されました!ギルドが総動員を要請しています!」
場内が騒然となる。
ガイウスは帳簿を見つめ直す。装備の状態を考えれば、前線での戦闘は危険すぎる。かといって、この機会を逃せば、パーティーの評判は地に落ちる。
「どうする?リーダー」
セリアが問いかける。ガイウスの表情が険しくなる。
「…レオンの元を訪ねるしかないかもしれない」
重い口調で、ガイウスは決断を口にした。
「あいつなら、なんとかしてくれるかもしれない」
かつての仲間の言葉に、誰も反論しなかった。窓の外では、警鐘が鳴り響いていた。パーティーの未来を左右する危機の足音が、刻一刻と近づいていた。
酒場の隅で、四人は互いの顔を見合わせる。プライドか、パーティーの存続か。選択の時が迫っていた。
薄暗い酒場の隅で、ガイウスは溜息をつきながら帳簿を見つめていた。カウンターに並べられた酒瓶の列が、その憔悴した表情を映し出している。
「リーダー、どうしましょう?」
セリアが心配そうに声をかける。彼女の赤い長髪は以前の艶を失い、魔法剣にも傷が目立ち始めていた。
「このままじゃ、Cランクのクエストも受けられなくなる」
ミレイアの声には、いつもの明るさが感じられない。彼女の持つ癒しの杖も、修理が必要な状態だった。
「...レオンがいなくなってから、なにもかもうまくいかねぇな」
ダグが呟く。槍の柄に巻かれた布は擦り切れ、刃先には欠けが目立つ。
誰もが思っていた現実を、ダグが口にした瞬間、重苦しい空気が酒場の隅を支配する。
「レオン…か」
ガイウスは苦い表情で酒を煽った。
あれから数ヶ月。レオンを追放してから、パーティーの収支は急激に悪化していた。
「あいつがいた頃は、確かに…儲けは良かった」
セリアが静かに言葉を紡ぐ。レオンの「価値転換」によって、魔獣の素材は常に高値で売れていた。装備の修理費も、その収入でまかなえていた。
「でも、あいつは冒険者らしくなかった!」
ダグが拳を振り下ろす。グラスが揺れ、中の酒がこぼれる。
「計算ばっかりして、戦闘にも参加しないで…」
言葉は強かったが、その声には後悔の色が滲んでいた。
「本当に…そうだったのかしら」
ミレイアが小さな声で問いかける。
「あの子なりの戦い方があったんじゃないかな。私たちが、理解しようとしなかっただけで…」
誰も反論できない。レオンの提案を、彼らは本気で聞こうとしていただろうか。効率や計画について語る彼の言葉を、「つまらない」の一言で切り捨ててはいなかっただろうか。
「噂だと、あいつ今じゃ大成功してるらしいぞ」
ダグが新しい情報を口にする。
「街の北地区で不動産を手がけてるって話だ。他にも魔獣の素材を高品質に変換して売りさばいてるとかなんとか」
「そうよ。私、見かけたわ」
セリアが言葉を継ぐ。
「商人たちと談笑してて、見違えるように自信に満ちていた。もう、あの頃のあいつじゃなかった」
「商人か…」
ガイウスは苦笑する。
「結局、あいつは商人の血筋だったんだな。俺たちが無理に冒険者にしようとしてたのかもしれない」
静寂が流れる。酒場の喧騒が、より一層この隅の重苦しさを際立たせる。
「でも、今更後悔したところで…」
ミレイアが言いかける。その時、酒場の扉が勢いよく開かれた。
「大変です!」
若い冒険者が叫ぶ。
「北方で、魔獣の大群が発見されました!ギルドが総動員を要請しています!」
場内が騒然となる。
ガイウスは帳簿を見つめ直す。装備の状態を考えれば、前線での戦闘は危険すぎる。かといって、この機会を逃せば、パーティーの評判は地に落ちる。
「どうする?リーダー」
セリアが問いかける。ガイウスの表情が険しくなる。
「…レオンの元を訪ねるしかないかもしれない」
重い口調で、ガイウスは決断を口にした。
「あいつなら、なんとかしてくれるかもしれない」
かつての仲間の言葉に、誰も反論しなかった。窓の外では、警鐘が鳴り響いていた。パーティーの未来を左右する危機の足音が、刻一刻と近づいていた。
酒場の隅で、四人は互いの顔を見合わせる。プライドか、パーティーの存続か。選択の時が迫っていた。
10
あなたにおすすめの小説
「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。
しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。
絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。
一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。
これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。
しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。
全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。
超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!?
万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。
一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。
「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」
――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。
これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる