追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない

君山洋太朗

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28話 危機と機会

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朝日が昇り始めた頃、俺は事務所で帳簿と向き合っていた。窓の外からは、早朝の喧騒が聞こえてくる。街の外壁近くに構えた事務所は、決して派手ではないが、仕事をするには十分な広さがある。

「レオン、昨日の魔獣素材の在庫確認が終わりました」

ソフィアが書類を手に入ってきた。彼女が秘書として働き始めてから、仕事の効率は格段に上がっている。何より、俺の考えを理解してくれる存在がいることが心強かった。

「ありがとう。この調子なら、今月の売り上げ目標も」

その時、事務所の扉が叩かれた。

* * *

「おや、珍しい来客だな」

冷静を装ったが、内心では驚いていた。俺の前に立っているのは、かつてのパーティーリーダー、ガイウスだった。その後ろには、セリア、ダグ、そしてミレイアの姿もあった。

「レオン...話がある」

ガイウスの声には、かつての威厳が薄れていた。装備の状態も良くない。剣には傷が目立ち、鎧もところどころ痛んでいる。他のメンバーも似たような状態だ。

「座ったらどうだ? ソフィア、お茶を」

「はい」

ソフィアは状況を察したのか、すぐに応じてくれた。

「街が危険な状態にある」

ガイウスが切り出した。北方で魔獣の大群が発見されたという。上位種に率いられたゴブリンの大軍だ。これまでにない規模の脅威らしい。

「ギルドは総動員を要請している。だが、俺たちは...」

言葉を濁すガイウス。装備を見る目には慣れているから、彼らの経済状態は一目で分かった。修繕もままならない状況。これでは前線での戦闘は自殺行為に等しい。

「実は、ちょうどいいタイミングだ」

俺は立ち上がり、窓際に歩み寄った。

「街の防衛力を上げるための新しいスキームを考えていたところだった」

「スキーム?」

セリアが首を傾げる。

「ああ。商業ギルドを通じて、街の商人たちが冒険者パーティーに融資を行う。その資金で装備を一新する。返済は冒険者ギルドが討伐報酬から天引きし、商業ギルドに返す」

「なんだって?」

ダグが驚いた様子で声を上げる。

「簡単に言えば、投資の仕組みだ。君たちには実力がある。問題は装備の状態だ。それを解決すれば、必ず結果は出せる」

俺は机に戻り、ある書類を取り出した。

「これが計画書だ。商業ギルドと冒険者ギルドを結ぶ新しいビジネスモデル。ただし、実績がないため、最初のモデルケースが必要なんだ」

「つまり...私たちに実験体になれと?」

セリアの声には警戒感が混じっていた。

「違う。先駆者になってほしい。このモデルが成功すれば、他のパーティーにも広がる。結果として、街全体の防衛力が上がる」

「でも、なぜ私たちが?」

ミレイアの問いに、俺は真っ直ぐに答えた。

「君たちには実力がある。それは認めている。問題は運用だ。この仕組みが成功する可能性が最も高いのは、君たちのような実力あるパーティーだからだ」

事務所の中が静かになる。

「条件は?」

ガイウスが重い口調で尋ねた。

「討伐報酬の20%を3年間、天引きされる。その代わり、最高級の装備が手に入る。維持費も融資に含まれている」

「20%か...」

「商人たちにとっても魅力的な投資先になる。安定した実力を持つパーティーへの投資は、リスクが低い。利回りも悪くない」

ソフィアがお茶を運んできながら、補足する。

「すでに何人かの商人から前向きな返事をいただいています。レオンの目利きを信頼してくれているんです」

「へえ」

ダグが感心したように声を上げた。

「随分と信用を築いたもんだな」

「これは単なる始まりだ」

俺は言った。

「この仕組みが確立されれば、冒険者と商人の新しい関係が築ける。それは街全体の利益になる」

「でも、失敗したら?」

セリアの問いに、俺は微笑んだ。

「だからこそ、君たちなんだ。失敗しないという確信がある」

ガイウスが深いため息をつく。その目には、かすかな光が宿っていた。

「随分と変わったな、お前は」

「変わってない。昔から俺は効率と利益を重視してきた。ただ、今はそれを形にできる立場にいるだけだ」

「考える時間が欲しい」

「構わない。ただし、今日中には決めてほしい。両ギルドとの交渉もある。準備に時間がかかる」

パーティーメンバーたちが立ち上がる時、ミレイアが振り返った。

「本当に...私たちを選んだ理由は、それだけ?」

「これはビジネスだ。感情で動いているわけじゃない」

「そう...」

彼女は少し寂しそうな表情を見せた。

「でも、それがあなたらしいわ」

彼らが去った後、ソフィアが俺の横に立つ。

「本当に感情的じゃないの?」

「...さあね」

俺は曖昧に答えた。

「ただ、これは正しい判断だと思う。街のため、商人のため、そして冒険者たちのためにも」

ソフィアは小さく笑った。

「彼らが承諾したら?」

「すぐに両ギルドに話を通す。君は商業ギルドの主要な投資家たちへの説明を」

「ええ。私なりの人脈も活用するわ」

窓の外を見る。街は今、かつてない危機に直面している。だが、それは同時に新たなビジネスチャンスでもある。商人として、そして...かつての冒険者として、俺にできることがある。

「準備を始めよう」

ソフィアに向かって言った時、彼女の瞳に決意の色が宿るのが見えた。これから始まる挑戦は、きっと街全体を大きく変えることになるだろう。

そして、それこそが最も効率的な解決策となるはずだ。
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