35 / 41
【第35話】すでに先手を取られてる
しおりを挟む
サービスエリアで昼休憩を済ませたプラムとアローは、再び高速道路に乗り込み、鹿児島を目指してランエボを走らせていた。
「あ~、美味しかったー! やっぱりうどんは最高よねぇ~」
「ケバブサンド、アレも結構美味かったわ。ちょっと食いづらかったけど」
「あ~、あんた食べてたわね」
「あとやっぱ、ソフトクリーム食べとくべきだったな」
「何よ今さら~! いらないって言ってたじゃないのよー!」
「いやぁ、いざ食わずに出発すると、やっぱなんか寂しいわ」
「も~。ほんっと気ままよねぇ」
青空の下、高速道路から見えるのは、暖かな陽に照らされた田んぼ。どこまでも続く平原のような場所に、民家がポツポツと建っている。
遠くの方を見渡せば、青みが失せた山が見える。初めて通る道にも関わらず、どこか懐かしいような、そんな気持ちになっていく。
「で、あたしたちは鹿児島でどう動きゃぁイイんだ?」
若干半目の、眠たそうな顔をしたプラムが、ハンドルを握りながらアローに聞いた。「えーっとねぇ~・・・」と呟きながら、アローは膝下のグローブボックスから作戦資料を取り出した。紙をぺらり、ぺらりと1枚ずつめくっていく。
「あった。『39委員会による人工衛星『はばたき』の打ち上げ阻止作戦要項』」
アローは目で文字を追いながら、資料を読み上げていく。
「作戦7日前までに、現地で待機している実行部隊と合流。準備ができ次第、宇宙センターに潜入して調査活動開始。施設内部の構造とか、警備員の数とかを調べ上げなきゃいけないみたい」
「実行部隊って、ベル姉自慢の軍隊上がりの集団だろ?」
「メンバーのほとんどがそうらしいわね。けど、ド派手にはやらないみたい。工作班が上手くいかなかった時に、最終手段でカチコミに行くらしいわよ」
「ん!」
「?」
「んんん!」
プラムが突然唸った。
「何よ」
その気味の悪さに顔を歪めるアローは、視線を資料からアローの横顔に移した。
「ケッコーいいこと思いついちゃった」
「はー?」
プラムは勝ち誇ったような顔をすると、ハンドルを強く握りしめる。そして、前を向いたままニヤリと笑ってみせた。
「ベル姉ってさ、自衛隊のお偉いさんとも仲良いだろ?」
「そうね」
「だったらよ、自衛隊に頼んで、どっかの基地から戦闘機飛ばしてもらえばいいじゃん。爆弾落としゃ、ロケットなんてイチコロだろ」
ハンドルを握ったまま、得意げに胸を張るプラム。しかし、アローの反応はプラムの期待からは大きく逸れていた。
「残念だけど、答えはNOよ。ま、プラムにしちゃよく考えた方だと思うけど」
「ハ、なんでだよ」
「そりゃあアンタの言う通り、自衛隊ぶち込めば一瞬で終わるでしょうね。それは絶対にできないのよ。むしろ、その手が使えないから、こうやってアタシたちが派遣されてんのよ」
「どーゆーこっちゃ」
「まぁ聞きなさいよ。種子島宇宙センターのロケット打ち上げ阻止作戦・・・コレにはひとつ、大きな問題があるのよ。分かる?」
「39委員会の見張りか?」
「それは有って当然じゃない。それよりも厄介な問題があんのよ」
「ふーん。何なの?」
「客よ」
「客?」
「そう。種子島宇宙センターのロケット打ち上げには、毎回たくさんの見物人が来る。一般のね」
「そうなんだ。知らんかった」
「しかも今回の『はばたき』打ち上げはね、39委員会の工作でニュースでも大きく取り上げられてんのよ。日本の宇宙開発チームが、なんかスッゴイの打ち上げまーすって」
「うんうん」
「打ち上げの瞬間を生中継するためにテレビ局も集まるし、THEY TUBEで世界中にライブ配信される。いつもより、世間からの注目をかなり浴びてるってこと。これがどういうことか分かる?」
「ンにゃ。全く」
あっさり応えるプラム。アローは前にまっすぐ伸びる高速道路を眺めながら続けた。
「世界中の観衆が見守る中、自衛隊の飛行機やら巡洋艦やらが、打ち上げロケット目掛けてミサイルなんて撃ってみなさいよ。どーなると思う?」
「あ~、それはヤバいわ」
「でしょ~? なーんも知らない一般人からしたら「何事?!」よ。人類の夢である宇宙への進歩を、突然出てきた自衛隊が力づくで破壊する。そんなことしたら最後、自衛隊は非難の超新星爆発を喰らうわね」
「なるほどなぁ・・・」
これには、さすがのプラムも深く納得したようだ。アローはさらに続けた。
「ただでさえ、この国は日本嫌いのメディアと、な~んも考えてない洗脳済み平和ボケカスチンパンジーで溢れてるからね~」
「言い過ぎだろ」
「いーや。コイツらが『自衛隊暴走! 自国の宇宙開発に牙を向く悪魔のテロ集団』なんて報道してみなさいよ。アホがここぞとばかりに自衛隊を袋叩きにするわ。コレがきっかけで、自衛隊解体なんてことも有り得るわ」
「うーーーん、よく考えられてんな」
「納得したでしょ」
「じゃあ、他の国から軍隊引っ張ってきたらどうよ?」
「それもダメ」
「ダメなのか」
「人工衛星『はばたき』はあくまでも日本のロケットよ。他国の軍が攻撃でもしたら、自衛隊出動で即開戦。それこそ、39委員会の思う壺じゃない」
「日本そのものが人質かよ。39委員会、よっぽどの悪党だな」
「そゆこと。将棋で言えば、Group Emmaはとっくの昔に王手を宣告されてんのよ」
「ほえ~。だいぶキツい任務になるのか」
「ま、そうなるでしょうねー」
「やだやだ。もし、警備にALPHABETなんかがいたらと思うとゾッとするわ」
プラムは軽くため息をつくと、一瞬だけアローに目をやった。
「にしてもお前、やけに詳しいな」
「ん? 何が~?」
「なんだろ。軍事的なことっていうか、そこら辺が」
「そう? 考えたら誰でも分かりそうだけど」
「・・・お前、Group Emmaに入る前、何してんだ?」
「さあね~」
「何だよ教えろよ」
「ヤーよ。規則だもん。大体、アンタも教えてくれないじゃないのよ」
「そりゃあ規則だからな」
「いつか語り合える日が来るかもね~」
「そん時は多分、死に際だな」
「怖いわねぇ~」
アローは作戦資料を膝下のグローブボックスに入れると、助手席の背もたれを目一杯倒した。
「怖いから、あたしゃ寝る」
「あ~、美味しかったー! やっぱりうどんは最高よねぇ~」
「ケバブサンド、アレも結構美味かったわ。ちょっと食いづらかったけど」
「あ~、あんた食べてたわね」
「あとやっぱ、ソフトクリーム食べとくべきだったな」
「何よ今さら~! いらないって言ってたじゃないのよー!」
「いやぁ、いざ食わずに出発すると、やっぱなんか寂しいわ」
「も~。ほんっと気ままよねぇ」
青空の下、高速道路から見えるのは、暖かな陽に照らされた田んぼ。どこまでも続く平原のような場所に、民家がポツポツと建っている。
遠くの方を見渡せば、青みが失せた山が見える。初めて通る道にも関わらず、どこか懐かしいような、そんな気持ちになっていく。
「で、あたしたちは鹿児島でどう動きゃぁイイんだ?」
若干半目の、眠たそうな顔をしたプラムが、ハンドルを握りながらアローに聞いた。「えーっとねぇ~・・・」と呟きながら、アローは膝下のグローブボックスから作戦資料を取り出した。紙をぺらり、ぺらりと1枚ずつめくっていく。
「あった。『39委員会による人工衛星『はばたき』の打ち上げ阻止作戦要項』」
アローは目で文字を追いながら、資料を読み上げていく。
「作戦7日前までに、現地で待機している実行部隊と合流。準備ができ次第、宇宙センターに潜入して調査活動開始。施設内部の構造とか、警備員の数とかを調べ上げなきゃいけないみたい」
「実行部隊って、ベル姉自慢の軍隊上がりの集団だろ?」
「メンバーのほとんどがそうらしいわね。けど、ド派手にはやらないみたい。工作班が上手くいかなかった時に、最終手段でカチコミに行くらしいわよ」
「ん!」
「?」
「んんん!」
プラムが突然唸った。
「何よ」
その気味の悪さに顔を歪めるアローは、視線を資料からアローの横顔に移した。
「ケッコーいいこと思いついちゃった」
「はー?」
プラムは勝ち誇ったような顔をすると、ハンドルを強く握りしめる。そして、前を向いたままニヤリと笑ってみせた。
「ベル姉ってさ、自衛隊のお偉いさんとも仲良いだろ?」
「そうね」
「だったらよ、自衛隊に頼んで、どっかの基地から戦闘機飛ばしてもらえばいいじゃん。爆弾落としゃ、ロケットなんてイチコロだろ」
ハンドルを握ったまま、得意げに胸を張るプラム。しかし、アローの反応はプラムの期待からは大きく逸れていた。
「残念だけど、答えはNOよ。ま、プラムにしちゃよく考えた方だと思うけど」
「ハ、なんでだよ」
「そりゃあアンタの言う通り、自衛隊ぶち込めば一瞬で終わるでしょうね。それは絶対にできないのよ。むしろ、その手が使えないから、こうやってアタシたちが派遣されてんのよ」
「どーゆーこっちゃ」
「まぁ聞きなさいよ。種子島宇宙センターのロケット打ち上げ阻止作戦・・・コレにはひとつ、大きな問題があるのよ。分かる?」
「39委員会の見張りか?」
「それは有って当然じゃない。それよりも厄介な問題があんのよ」
「ふーん。何なの?」
「客よ」
「客?」
「そう。種子島宇宙センターのロケット打ち上げには、毎回たくさんの見物人が来る。一般のね」
「そうなんだ。知らんかった」
「しかも今回の『はばたき』打ち上げはね、39委員会の工作でニュースでも大きく取り上げられてんのよ。日本の宇宙開発チームが、なんかスッゴイの打ち上げまーすって」
「うんうん」
「打ち上げの瞬間を生中継するためにテレビ局も集まるし、THEY TUBEで世界中にライブ配信される。いつもより、世間からの注目をかなり浴びてるってこと。これがどういうことか分かる?」
「ンにゃ。全く」
あっさり応えるプラム。アローは前にまっすぐ伸びる高速道路を眺めながら続けた。
「世界中の観衆が見守る中、自衛隊の飛行機やら巡洋艦やらが、打ち上げロケット目掛けてミサイルなんて撃ってみなさいよ。どーなると思う?」
「あ~、それはヤバいわ」
「でしょ~? なーんも知らない一般人からしたら「何事?!」よ。人類の夢である宇宙への進歩を、突然出てきた自衛隊が力づくで破壊する。そんなことしたら最後、自衛隊は非難の超新星爆発を喰らうわね」
「なるほどなぁ・・・」
これには、さすがのプラムも深く納得したようだ。アローはさらに続けた。
「ただでさえ、この国は日本嫌いのメディアと、な~んも考えてない洗脳済み平和ボケカスチンパンジーで溢れてるからね~」
「言い過ぎだろ」
「いーや。コイツらが『自衛隊暴走! 自国の宇宙開発に牙を向く悪魔のテロ集団』なんて報道してみなさいよ。アホがここぞとばかりに自衛隊を袋叩きにするわ。コレがきっかけで、自衛隊解体なんてことも有り得るわ」
「うーーーん、よく考えられてんな」
「納得したでしょ」
「じゃあ、他の国から軍隊引っ張ってきたらどうよ?」
「それもダメ」
「ダメなのか」
「人工衛星『はばたき』はあくまでも日本のロケットよ。他国の軍が攻撃でもしたら、自衛隊出動で即開戦。それこそ、39委員会の思う壺じゃない」
「日本そのものが人質かよ。39委員会、よっぽどの悪党だな」
「そゆこと。将棋で言えば、Group Emmaはとっくの昔に王手を宣告されてんのよ」
「ほえ~。だいぶキツい任務になるのか」
「ま、そうなるでしょうねー」
「やだやだ。もし、警備にALPHABETなんかがいたらと思うとゾッとするわ」
プラムは軽くため息をつくと、一瞬だけアローに目をやった。
「にしてもお前、やけに詳しいな」
「ん? 何が~?」
「なんだろ。軍事的なことっていうか、そこら辺が」
「そう? 考えたら誰でも分かりそうだけど」
「・・・お前、Group Emmaに入る前、何してんだ?」
「さあね~」
「何だよ教えろよ」
「ヤーよ。規則だもん。大体、アンタも教えてくれないじゃないのよ」
「そりゃあ規則だからな」
「いつか語り合える日が来るかもね~」
「そん時は多分、死に際だな」
「怖いわねぇ~」
アローは作戦資料を膝下のグローブボックスに入れると、助手席の背もたれを目一杯倒した。
「怖いから、あたしゃ寝る」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる