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【第39話】またの機会に話そうか
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男の圧倒的な握力で首を掴まれるアロー。何度も痛みつけられるも、プラムの居場所を吐かない。もはや満身創痍。微かな余力で口に溜まった血を男に吐き出し、ニヤリと笑って見せた。
「死ね」
男の冷たい声。突きつけられたピストルが、アローのこめかみに食い込む。
「ゥブッ・・・ヘッ・・・」
意識朦朧。光を失いかけた目で、アローは男を睨み続ける。その目を、男もじっと睨み返す。男が、引き金に指を置いた。そっと、指を引く・・・。
その時だった。
「フッ・・・プ・・・ッ・・・」
意識を失いかけたアローが口を開いたのだ。
「・・・」
「プッ・・・プラム・・・ッは・・・」
引き金に置いた指が止まる。
「プラムは・・・アッ」
その瞬間、アローから笑みが消えた。
「あんたの背後よ」
「!!!!!!!!!!!!」
アローのこめかみに向けたピストル・・・脊髄反射で真後ろに──。
二発の激音が、同時に炸裂した。
「定刻を過ぎました」
「・・・プラムとアローは?」
「・・・確認できません」
そう告げたビット。その背後には、ライフルと防弾服に身を包んだベルの部下が並んでいる。その数、およそ30名。皆、ここにきて表情は穏やか。これから起ころうとしていることを悟り、ベルの指示を待っている。ベルは目を閉じた。 そして、すぐに力強く目を開ける。
「作戦を変更。我々はこれより種子島宇宙センターに突入し、人工衛星『はばたき』の直接破壊を敢行する。総員戦闘準備」
隊員全員が足を揃え、敬礼。素早く整った動きで車両に乗り込む。ベルもハイエースに乗り、イヤホンを装着する。後部座席、ベルの隣に座るビットが無線機を構えた。
「各班発進せよ」
外見は一般車両と何ら変わりのない車が、砂埃を立てて猛スピードで走り出した。
「散開」
無線を挟んだビットの指示で、5台の車が散り散りに分かれていく。その様子を車内から見守るベルは、どこにも焦点を合わせずに呟いた。
「頼むわよ・・・」
その時、ひとつの無線が入った。
《こちら3班! 敵の待ち伏せに遭った!》
「なんですって?!」
その瞬間、ベルとビットが乗るハイエースにも鉄と鉄がぶつかり合う衝撃が走った。前を見ると、防弾仕様のフロントガラスに生々しい弾痕が。そして・・・真正面から軍隊車両が1台、機関銃を乱射しながら突進してきている。
「メープル・コープです!」
ハンドルを切り、辛うじて機関銃の射線から逸れたハイエース。蛇のような動きで、ハイエースの背後をメープル・コープの車両が猛追する。
「まだ制限区域外なのに! 気づかれたの?!」
「リーダー! 頭を下げて!」
ビットはすかさずライフルを取り出すと、バックドアガラスの向こうに見えるメープル・コープの車両に向けて発砲を始めた。粉砕される窓ガラス。激音が鳴り響く。
ビットの的確な射撃により、敵車両の勢いが弱まる。やがて弾が尽きると、ビットは頭を下げつつ、素早い動きで弾倉を装填した。再び後方に迫る敵車に向けてライフルを連射し、運転手に大声で指示を送る。
「先にある茂みまで行け!」
「了解!」
その傍ら、ベルは伏せた状態でイヤホンと無線機を構えて叫んでいた。
「各班状況を報告して!」
《こちら1班! 2班は全滅! 現在3班と合流して応戦中!》
「耐えるのよ! すぐ行く!」
その時、大きな音と共に、ベルの体が大きく傾いた。
・・・?!
「タイヤをやられました!」
制御不能に陥ったハイエースは、そのまま急ブレーキ。車体を敵車両に対して横向きに停め、5名全員が車外に飛び出した。
ハイエースを盾に、敵車両に向けて銃弾の雨を降らせる。これにはメープル・コープも怯んだのか、車を大きく旋回させてすぐ近くの茂みに突っ込んで行った。
しかし、茂みの中から、負けじとベルたちを狙い撃ちしてくる。
「くそ・・・! 進めない!」
どれくらい時間が経ったのだろう。少し、夢を見ていた気がする。嫌な夢だ。むかし、仕事でやらかした時の光景。皆、白い目を向けてきた。皆、心無い言葉を浴びせてきた。そこにはもういられなくなった。 どうしようもない未来が不安で仕方なかった。そうとばかり、思っていた・・・。
かすかな息遣いが聞こえる。誰のだ・・・?
「ハァ・・・ハッァゲホッ・・・ハッ・・・オェッ」
残念だが、誰かまでは分からない。地面に倒れたこの身体を叩き起こして、そのツラを見てやりたいところだが、残念。そんな体力はどこにも残っていない。
体中が痛い。ジンジンというか、ジワジワというか。痛みの中心点は、まるで潜水艦のソナーのよう。円形に波紋を広げ、満身創痍のカラダの隅々にまで痛みを届ける。
視界に映るのは、ただの空。吸い込まれそうになるほど青い。いい色だ。普段は気にも溜めないが、どうしてか今は素晴らしい景色に見える。
こんなことなら、話しときゃよかったな・・・。
「グッ・・・ゴホッ・・・ハァ・・・ッい」
・・・。
「生きてる・・・?」
「・・・誰に聞いてんだ」
なんだ。まだか。
「ハァッ・・・ハァ・・・フンッ」
青しか見えない景色に向かって、なぜかニヤけてしまった。
「てめえは生きてんのか?」
「ギ・・・ハァ・・・誰に聞いてんのよ・・・ッ」
「ハハ・・・こりゃ失敬。・・・グッ」
痛みに悲鳴をあげる身体を、無理矢理起こした。右肩と左の腰辺りから、血が滲み出ている。
「ハァ・・・ハァッ・・・立てるか」
「ムリ。痛すぎる」
可哀想に。あんなに血まみれになって。
痛みを押し殺しながら立ち上がり、足を引き摺りながら歩み寄る。そのそばに横たわる男の死体を横切って、ようやくボロボロの女性のもとまでたどり着いた。手が自然と女性に伸びる。彼女の肩を持ち、やっとの思いで立ち上がらせる。
互いにおぼつかない足取り。こうして肩を貸し合っていないと、すぐに膝から崩れ落ちてしまいそうだ。
「じ・・・時間は?」
「もうとっくに過ぎてる」
「まーた、怒られるわね」
「ああ」
血まみれのふたりは互いに支え合いながら、広い駐車場を歩いた。
青い空も、心地よい風も。今はまるで気にならない。ただひたすら痛みに耐えながら、倒れそうになる身体とどこかに吸い取られそうな意識を奮い起こし、歩き続ける。
「よく耐えたな。あんだけボコボコにされてよ」
「アタシも・・・バカじゃないんだから」
「ああ。ナイスアシストだった。一発貰ったけどな」
「えへへ・・・アイツの気を背後に向けたの、ウマかったでしょ」
お陰で、プラムは男を仕留めることができた。彼女は男の背後ではなく、真横の物陰に潜んでいたのだ。男に、ランエボの元に走り去っていったと思わせて・・・。すべて、アローが考えた即効の作戦だったのだ。
「ハァ・・・ゴホッ・・・これからどーすんのよ」
「もう時間は過ぎてる。とっくにベル姉たちが突っ込んでるだろ」
「いや・・・そうでもないみたいよ」
プラムに肩を貸されながら、アローはポケットからスマートフォンを取り出した。ロックを解除し、動画アプリを開く。
素早いタッピングで表示された画面には、人工衛星『はばたき』の打ち上げライブ配信を実況する解説者が2名・・・にこやかに、あと数十分に迫った打ち上げの進捗を解説している。
「ベル姉・・・しくじったのか?」
「さあね」
アローが言うと同時に、プラムが再び歩き出した。彼女たちは、もはや痛みさえ忘れていた。やがて、黒いカーカバーに身を包んだ車体のもとまでたどり着いたプラムとアロー。互いに両端を持ち、カバーを取り外す。姿を現したのは、ランサーエボリューションⅦだった。プラムはポケットからキーを取り出すと、ボタンを押した。
ランエボの眼に光が宿る。
「アンタ・・・どうする気?」
「突っ込む」
アローが、鼻で笑った。
「なーィッに、考えてんのよッ・・・アンタ」
「ハハ・・・けど無策じゃねえ」
プラムは足を引き摺りながら、ランエボの背後に回り込んだ。トランクを開けたプラム。アローも、その中身を覗き込む。すると、彼女は目を丸く、大きくさせた。
「アンタ・・・これ取っておいたの?」
「ああ」
91式携帯地対空誘導弾・・・ランエボのトランクに眠っていた代物だ。かつて、無惨に殺された梅がお節介で仕入れていた武器である。
トランクに鎮座する誘導弾を見下ろす、傷だらけのアロー。腹の底から、自然と笑いが込み上げてきた。
「アハハ・・・いいじゃ~ん!」
つられて、プラムも笑い出す。
「だろぉ?」
互いに目が合った。ひどい顔。身体中傷だらけで、口には血を滲ませて。今にも途切れそうな意識を、懸命に保つ。こんなの、若い女性の生き様ではない。
・・・が。プラムとアローは互いに目を合わせたまま、不敵な笑みを浮かべた。
「ブチ込んでやろうじゃんよ」
「よっしゃー! ブッ飛ばすわよぉ~!!」
ふたりは嬉々としてランエボに乗り込んだ。プラムが運転席に座ってキーをセットし、思い切り回す。
エンジン始動。目覚めるランエボ。車内に軽い振動が伝わる。ナビの起動音が車内に流れ、音声があいさつを述べた。後部座席では、アローがトランクから取り出した誘導弾のセッティングを始めている。
ハンドルを握ったプラム。
左足でクラッチペダルを踏み込み、右足でブレーキペダルを軽く踏む。ギアをニュートラルから1速に切り替え、左手でサイドブレーキを握る。
左足でクラッチペダルを踏んだまま、ブレーキペダルから右足を離し、アクセルペダルに滑り込ませて踏み込む。
アクセル・・・まさに咆哮。覚醒するランエボ。 アスファルトを鷲掴みにするタイヤが、激しい摩擦によるスキール音と共に白煙を巻き上げる。
最後のミッション・・・狙うは人類の夢、人工衛星『はばたき』・・・! プラムが、左手に握るサイドブレーキを勢いよく下ろした。
いま──ランサーエボリューションⅦが、白煙と共に凄まじい爆走を始めたのだ・・・!
「死ね」
男の冷たい声。突きつけられたピストルが、アローのこめかみに食い込む。
「ゥブッ・・・ヘッ・・・」
意識朦朧。光を失いかけた目で、アローは男を睨み続ける。その目を、男もじっと睨み返す。男が、引き金に指を置いた。そっと、指を引く・・・。
その時だった。
「フッ・・・プ・・・ッ・・・」
意識を失いかけたアローが口を開いたのだ。
「・・・」
「プッ・・・プラム・・・ッは・・・」
引き金に置いた指が止まる。
「プラムは・・・アッ」
その瞬間、アローから笑みが消えた。
「あんたの背後よ」
「!!!!!!!!!!!!」
アローのこめかみに向けたピストル・・・脊髄反射で真後ろに──。
二発の激音が、同時に炸裂した。
「定刻を過ぎました」
「・・・プラムとアローは?」
「・・・確認できません」
そう告げたビット。その背後には、ライフルと防弾服に身を包んだベルの部下が並んでいる。その数、およそ30名。皆、ここにきて表情は穏やか。これから起ころうとしていることを悟り、ベルの指示を待っている。ベルは目を閉じた。 そして、すぐに力強く目を開ける。
「作戦を変更。我々はこれより種子島宇宙センターに突入し、人工衛星『はばたき』の直接破壊を敢行する。総員戦闘準備」
隊員全員が足を揃え、敬礼。素早く整った動きで車両に乗り込む。ベルもハイエースに乗り、イヤホンを装着する。後部座席、ベルの隣に座るビットが無線機を構えた。
「各班発進せよ」
外見は一般車両と何ら変わりのない車が、砂埃を立てて猛スピードで走り出した。
「散開」
無線を挟んだビットの指示で、5台の車が散り散りに分かれていく。その様子を車内から見守るベルは、どこにも焦点を合わせずに呟いた。
「頼むわよ・・・」
その時、ひとつの無線が入った。
《こちら3班! 敵の待ち伏せに遭った!》
「なんですって?!」
その瞬間、ベルとビットが乗るハイエースにも鉄と鉄がぶつかり合う衝撃が走った。前を見ると、防弾仕様のフロントガラスに生々しい弾痕が。そして・・・真正面から軍隊車両が1台、機関銃を乱射しながら突進してきている。
「メープル・コープです!」
ハンドルを切り、辛うじて機関銃の射線から逸れたハイエース。蛇のような動きで、ハイエースの背後をメープル・コープの車両が猛追する。
「まだ制限区域外なのに! 気づかれたの?!」
「リーダー! 頭を下げて!」
ビットはすかさずライフルを取り出すと、バックドアガラスの向こうに見えるメープル・コープの車両に向けて発砲を始めた。粉砕される窓ガラス。激音が鳴り響く。
ビットの的確な射撃により、敵車両の勢いが弱まる。やがて弾が尽きると、ビットは頭を下げつつ、素早い動きで弾倉を装填した。再び後方に迫る敵車に向けてライフルを連射し、運転手に大声で指示を送る。
「先にある茂みまで行け!」
「了解!」
その傍ら、ベルは伏せた状態でイヤホンと無線機を構えて叫んでいた。
「各班状況を報告して!」
《こちら1班! 2班は全滅! 現在3班と合流して応戦中!》
「耐えるのよ! すぐ行く!」
その時、大きな音と共に、ベルの体が大きく傾いた。
・・・?!
「タイヤをやられました!」
制御不能に陥ったハイエースは、そのまま急ブレーキ。車体を敵車両に対して横向きに停め、5名全員が車外に飛び出した。
ハイエースを盾に、敵車両に向けて銃弾の雨を降らせる。これにはメープル・コープも怯んだのか、車を大きく旋回させてすぐ近くの茂みに突っ込んで行った。
しかし、茂みの中から、負けじとベルたちを狙い撃ちしてくる。
「くそ・・・! 進めない!」
どれくらい時間が経ったのだろう。少し、夢を見ていた気がする。嫌な夢だ。むかし、仕事でやらかした時の光景。皆、白い目を向けてきた。皆、心無い言葉を浴びせてきた。そこにはもういられなくなった。 どうしようもない未来が不安で仕方なかった。そうとばかり、思っていた・・・。
かすかな息遣いが聞こえる。誰のだ・・・?
「ハァ・・・ハッァゲホッ・・・ハッ・・・オェッ」
残念だが、誰かまでは分からない。地面に倒れたこの身体を叩き起こして、そのツラを見てやりたいところだが、残念。そんな体力はどこにも残っていない。
体中が痛い。ジンジンというか、ジワジワというか。痛みの中心点は、まるで潜水艦のソナーのよう。円形に波紋を広げ、満身創痍のカラダの隅々にまで痛みを届ける。
視界に映るのは、ただの空。吸い込まれそうになるほど青い。いい色だ。普段は気にも溜めないが、どうしてか今は素晴らしい景色に見える。
こんなことなら、話しときゃよかったな・・・。
「グッ・・・ゴホッ・・・ハァ・・・ッい」
・・・。
「生きてる・・・?」
「・・・誰に聞いてんだ」
なんだ。まだか。
「ハァッ・・・ハァ・・・フンッ」
青しか見えない景色に向かって、なぜかニヤけてしまった。
「てめえは生きてんのか?」
「ギ・・・ハァ・・・誰に聞いてんのよ・・・ッ」
「ハハ・・・こりゃ失敬。・・・グッ」
痛みに悲鳴をあげる身体を、無理矢理起こした。右肩と左の腰辺りから、血が滲み出ている。
「ハァ・・・ハァッ・・・立てるか」
「ムリ。痛すぎる」
可哀想に。あんなに血まみれになって。
痛みを押し殺しながら立ち上がり、足を引き摺りながら歩み寄る。そのそばに横たわる男の死体を横切って、ようやくボロボロの女性のもとまでたどり着いた。手が自然と女性に伸びる。彼女の肩を持ち、やっとの思いで立ち上がらせる。
互いにおぼつかない足取り。こうして肩を貸し合っていないと、すぐに膝から崩れ落ちてしまいそうだ。
「じ・・・時間は?」
「もうとっくに過ぎてる」
「まーた、怒られるわね」
「ああ」
血まみれのふたりは互いに支え合いながら、広い駐車場を歩いた。
青い空も、心地よい風も。今はまるで気にならない。ただひたすら痛みに耐えながら、倒れそうになる身体とどこかに吸い取られそうな意識を奮い起こし、歩き続ける。
「よく耐えたな。あんだけボコボコにされてよ」
「アタシも・・・バカじゃないんだから」
「ああ。ナイスアシストだった。一発貰ったけどな」
「えへへ・・・アイツの気を背後に向けたの、ウマかったでしょ」
お陰で、プラムは男を仕留めることができた。彼女は男の背後ではなく、真横の物陰に潜んでいたのだ。男に、ランエボの元に走り去っていったと思わせて・・・。すべて、アローが考えた即効の作戦だったのだ。
「ハァ・・・ゴホッ・・・これからどーすんのよ」
「もう時間は過ぎてる。とっくにベル姉たちが突っ込んでるだろ」
「いや・・・そうでもないみたいよ」
プラムに肩を貸されながら、アローはポケットからスマートフォンを取り出した。ロックを解除し、動画アプリを開く。
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「ベル姉・・・しくじったのか?」
「さあね」
アローが言うと同時に、プラムが再び歩き出した。彼女たちは、もはや痛みさえ忘れていた。やがて、黒いカーカバーに身を包んだ車体のもとまでたどり着いたプラムとアロー。互いに両端を持ち、カバーを取り外す。姿を現したのは、ランサーエボリューションⅦだった。プラムはポケットからキーを取り出すと、ボタンを押した。
ランエボの眼に光が宿る。
「アンタ・・・どうする気?」
「突っ込む」
アローが、鼻で笑った。
「なーィッに、考えてんのよッ・・・アンタ」
「ハハ・・・けど無策じゃねえ」
プラムは足を引き摺りながら、ランエボの背後に回り込んだ。トランクを開けたプラム。アローも、その中身を覗き込む。すると、彼女は目を丸く、大きくさせた。
「アンタ・・・これ取っておいたの?」
「ああ」
91式携帯地対空誘導弾・・・ランエボのトランクに眠っていた代物だ。かつて、無惨に殺された梅がお節介で仕入れていた武器である。
トランクに鎮座する誘導弾を見下ろす、傷だらけのアロー。腹の底から、自然と笑いが込み上げてきた。
「アハハ・・・いいじゃ~ん!」
つられて、プラムも笑い出す。
「だろぉ?」
互いに目が合った。ひどい顔。身体中傷だらけで、口には血を滲ませて。今にも途切れそうな意識を、懸命に保つ。こんなの、若い女性の生き様ではない。
・・・が。プラムとアローは互いに目を合わせたまま、不敵な笑みを浮かべた。
「ブチ込んでやろうじゃんよ」
「よっしゃー! ブッ飛ばすわよぉ~!!」
ふたりは嬉々としてランエボに乗り込んだ。プラムが運転席に座ってキーをセットし、思い切り回す。
エンジン始動。目覚めるランエボ。車内に軽い振動が伝わる。ナビの起動音が車内に流れ、音声があいさつを述べた。後部座席では、アローがトランクから取り出した誘導弾のセッティングを始めている。
ハンドルを握ったプラム。
左足でクラッチペダルを踏み込み、右足でブレーキペダルを軽く踏む。ギアをニュートラルから1速に切り替え、左手でサイドブレーキを握る。
左足でクラッチペダルを踏んだまま、ブレーキペダルから右足を離し、アクセルペダルに滑り込ませて踏み込む。
アクセル・・・まさに咆哮。覚醒するランエボ。 アスファルトを鷲掴みにするタイヤが、激しい摩擦によるスキール音と共に白煙を巻き上げる。
最後のミッション・・・狙うは人類の夢、人工衛星『はばたき』・・・! プラムが、左手に握るサイドブレーキを勢いよく下ろした。
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