闇の王と菫青石の宝珠〜侯爵令嬢ですが、失踪した兄を捜すついでにイケメンだらけの騎士団に潜入して、魔物討伐も行って参りますっ!〜

藤原 清蓮

文字の大きさ
39 / 269
第4章 侯爵令嬢、北の砦へ

第38話 お転婆娘の失踪(side エドワード)

しおりを挟む
※長男・エドワード視点です。よろしくお願いします。
_________________________________



 昼を過ぎた頃。

 【闇の王】について調べ始めてすぐ、有力な情報を得たため、父上の元へ向かうべく本邸の門をくぐると、マーサが血相を変えて走り寄って来た。

「エドワード様!」
「どうしたんだ、そんな慌てて」

 私が愛馬から降りると、マーサは上がった息を整えようともせず、私の腕を掴み「お嬢様が!」と声を上げた。邸へ目を向けると、使用人や護衛騎士が慌ただしくしている様子が見てとれた。

 その様子を見て、すぐに合点がいった。

 あのお転婆娘、やりやがったな、と。

「朝食後、あまり体調が思わしく無いと仰って、お薬をお持ちしようかと訊ねましたら、少し休めば大丈夫と仰るので……」
「昼に様子を見に行ったら、居なかった、と」

 そう言うと、マーサは首が捥げるのではと思うくらい、何度も首を縦に振って、手に握っていた紙を私に渡す。くしゃくしゃになったそれを広げると、見慣れた文字が並んでいる。


『マーサへ

 体調が良くなったので、ちょっとそこまでお出掛けしてきます。

 少し帰りが遅くなるかも知れないけど、心配しないでください。

 お土産、楽しみに待っていてね。

アリス』



 私は大きく息を吐く。

 何が、ちょっとそこまで、だ! 気楽に行ける散歩気分かよっ! 絶対違うだろ! しかも少しどころか、かなり遅くなるだろっ!

 私は心の中で悪態を吐き、マーサに目を向ける。

 今にも零れ落ちそうな涙を一杯に溜めた瞳は、必死に私を見つめる。

「レオンの姿も無いのか?」
「はい、騎士達も朝食後から見ていないと」

 なるほど、レオンを連れて行ったなら、恐らく父上もご存知であろうと踏んだ。

「マーサ、大丈夫だ。レオンが一緒だろうから、お前はいつもの仕事に戻ってくれ」
「ですが、エドワード様! お嬢様は昨日、回復薬を大量に作っておいででした! フィンレイ騎士団の皆さまに差し入れだと言って! それが全て無いのです! 私、てっきりエドワード様に預けて差し入れなさると思っておりました……。きっと、アレックス様の事が気になって、ご自身で届けに北の砦へ向かったに違いありません!」

 私はマーサの言葉に深く頷く。

「あぁ、そうだ。分かってる。絶対、そうだと私も思ってる。だからこそマーサ、今は落ち着くんだ。私は今から父上の所へ行くから、その時に話を聞く。後でちゃんとお前にも話すから、今は少し休んで心を落ち着けて……今日はもう、仕事は良いから休みなさい。リチャードには伝えておくから」

 執事のリチャードの名を出すと、マーサは大人しく「はい」と返事をして、私と一緒に邸へ入った。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)
ファンタジー
 元々、トラブルに遭いやすい体質だった男の異世界転生記。  トラブルに巻き込まれたり、自分から飛び込んだり、たまに自分で作ったり、魔物と魔法や剣のある異世界での転生物語。余り期待せずに読んで頂ければありがたいです。    戦闘は少な目です。アルフレッドが強すぎて一方的な戦いが多くなっています。  身内には優しく頼れる存在ですが、家族の幸せの為なら、魔物と悪人限定で無慈悲で引くくらい冷酷になれます。  転生した村は辺境過ぎて、お店もありません。(隣町にはあります)魔法の練習をしたり、魔狼に襲われ討伐したり、日照り解消のために用水路を整備したり、井戸の改良をしたり、猪被害から村に柵を作ったり、盗賊・熊・ゴブリンに襲われたり、水車に風車に手押しポンプ、色々と前世の記憶で作ったりして、段々と発展させて行きます。一部の人達からは神の使いと思われ始めています。………etc そんな日々、アルフレッドの忙しい日常をお楽しみいただければ!  知識チート、魔法チート、剣術チート、アルは無自覚ですが、強制的に出世?させられ、婚約申込者も増えていきます。6歳である事や身分の違いなどもある為、なかなか正式に婚約者が決まりません。女難あり。(メダリオン王国は一夫一妻制)  戦闘は短めを心掛けていますが、時にシリアスパートがあります。ご都合主義です。  基本は、登場人物達のズレた思考により、このお話は成り立っております。コメディーの域にはまったく届いていませんが、偶に、クスッと笑ってもらえる作品になればと考えております。コメディー要素多めを目指しております。女神と神獣も出てきます。 ※舞台のイメージは中世ヨーロッパを少し過去に遡った感じにしています。魔法がある為に、産業、医療などは発展が遅れている感じだと思っていただければ。  中世ヨーロッパの史実に出来るだけ近い状態にしたいと考えていますが、婚姻、出産、平均寿命などは現代と余りにも違い過ぎて適用は困難と判断しました。ご理解くださいますようお願いします。    俺はアラサーのシステムエンジニアだったはずだが、取引先のシステムがウイルスに感染、復旧作業した後に睡魔に襲われ、自前のシュラフで仮眠したところまで覚えているが、どうも過労死して、辺境騎士の3男のアルフレッド6歳児に転生? 前世では早くに両親を亡くし、最愛の妹を残して過労死した社畜ブラックどっぷりの幸薄な人生だった男が、今度こそ家族と幸せに暮らしたいと願い、日々、努力する日常。 ※最後になりますが、作者のスキル不足により、不快な思いをなされる方がおられましたら、申し訳なく思っております。何卒、お許しくださいますようお願い申し上げます。   この作品は、空想の産物であり、現実世界とは一切無関係です。

スローライフ 転生したら竜騎士に?

梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。   

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】初恋相手にぞっこんな腹黒エリート魔術師は、ポンコツになって私を困らせる

季邑 えり
恋愛
 サザン帝国の魔術師、アユフィーラは、ある日とんでもない命令をされた。 「隣国に行って、優秀な魔術師と結婚して連れて来い」  常に人手不足の帝国は、ヘッドハンティングの一つとして、アユフィーラに命じた。それは、彼女の学園時代のかつての恋人が、今や隣国での優秀な魔術師として、有名になっているからだった。  シキズキ・ドース。学園では、アユフィーラに一方的に愛を囁いた彼だったが、4年前に彼女を捨てたのも、彼だった。アユフィーラは、かつての恋人に仕返しすることを思い、隣国に行くことを決めた。  だが、シキズキも秘密の命令を受けていた。お互いを想い合う二人の、絡んでほどけなくなったお話。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...