闇の王と菫青石の宝珠〜侯爵令嬢ですが、失踪した兄を捜すついでにイケメンだらけの騎士団に潜入して、魔物討伐も行って参りますっ!〜

藤原 清蓮

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ルイス・ランドルフの記憶

第236話 死闘①

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 どのくらい時間が経ったのか。ギデオンの身体から身を起こした時、背後から嫌な気配を感じ取った。

 来たか。

 この世で一番憎い声が、空間に響く。

「涙のお別れは済んだかしら?」

 ルイスはゆっくりギデオンの身体を床に寝かせ、立ち上がる。

「あら、せっかく苦労して作った魔法陣を壊してしまったの? まぁ、ギデオンの魔力はほぼ回収出来たから良いけれど」

 ダリアは大袈裟にため息を付きつつ言う。

「何のために、彼にこんな事を……」

 ダリアは腕を組み、何かを考える様に指先ポンポンと動かす。その指が止まると「まぁ、いいわ。教えてあげる」と口角を上げた。

「どうせ、あなたもここで死ぬんだから。最期の願いくらい、聞いてあげるわ。私は優しいから」

 ルイスは何も言わずに鋭い視線をダリアに向け続ける。魔眼で見つめ続けているというのに、ダリアはなんて事ない顔をしている。

 この女は、相当な魔力を持っているのだ。

 ルイスは不意打ちがあったとしても、すぐに対応出来るように、手に握る剣に魔力を送り込んだ。

「その男には、になってもらうのよ」
「器?」
「そう。器。私の父の……【闇の王】の魂の入れ物になってもらうの」
「父親? 闇の王……? 魂の入れ物とは、なんだ」

 【闇の王】とは、ガブレリア王国でのギデオンの二つ名だ。それとダリアの父親がどういう関係だというのかと、ルイスは困惑気味に訊ねる。それを感じ取ったのか、ダリアはふっと笑った。

「【闇の王】は、私のお父様のことよ。この世界の誤りを正すための王。……人間に殺されたのよ。父も母も。父は魔力持ちに殺されけど、母は魔力もない無能な人間に殺された。この世界の人間は、みんな屑。魔力の微塵も無い者ほど、偉ぶって、傲慢で、利己的で。そういった人間を一掃して、にするのよ?」
「……魔力の無い者を殺して何になる」
「そりゃあ、調和を保つためよ。この世界の均衡は、魔力の無い無能な人間によって乱れているわ。魔力のある者だけになれば、世界は美しく生まれ変わる。闇の中にある光。闇の中にある、美しい物だけで、この世界を満たすの。もちろん、あなたも生かしてあげる。あなたは最高に美しい魔力を持っているものねぇ?」
「……死んだ者は蘇らない。お前の父親も母親も、もうこの世には居ない。その事を受け入れろ」
 
 静かな声で諭すように言うルイスに、ダリアは鼻で笑った。

「あなたが知らないだけでしょ。死者は蘇るわ。
「人は死を迎えれば、魂も消えてなくなる」

 ダリアは口元を歪め、ふん、と鼻で笑う。

「なんだ……あなたもつまらない屑の人間と同じなの? 自分の知らないことは、全て否定する。ついさっき、あなたはギデオンのしていたのにね。少し、生かしておいても良いかなと思っていたけれど。やっぱり、やめたわ。あなたも殺してあげる。この、私の手で」

 何を言っているのだと、ルイスは困惑する。魂と会話とは、一体なんなのだ、と。
 憐れむような表情で小首を傾げるダリア。その瞳は、何の感情も持ち合わせていない虚無だけが、そこにあった。

「お前は、狂ってる」
「ふふ、どうとでも。さぁ、お喋りはお終い。早くギデオンにお父様の魂を入れなきゃいけないの。ギデオンったら全然、を空け渡してくれないから困ってたのよ。あなたを連れてきて正解だったわ。やっと、

 その言葉に、ルイスは嫌な予感だけがした。ギデオンは利用されるだけされて、殺された。その事に強い憤りを覚え、腹の底から湧き立つ怒りの塊は、徐々に脳天へ向かう。

「お前だけは、絶対に許さない……」

 静かな怒りが篭る声。ゆっくり目を閉じて、呼吸を一つ。
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