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3、好きな人の好きな人
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「茉衣ちゃん、顔がゆるゆるだよ」
会長専用の少し大きめの机に座って眉間にしわを寄せながら書類を確認していく先輩を眺めていたら、同じ庶務の久遠乃蒼くんにあきれた顔をされた。
少し長めの黒髪に高めの身長は歩悠先輩に似ているがこちらは同級生なので憧れる気持ちはわかない。
乃蒼くんも私が先輩を好きなのは知っているからわかってて言っているんだと思うけど反射的に頬を引き締めてごまかしてしまう。
「手、動かしてよ、仕事たまってるんだから」
「別にさぼってないもん。休憩だよ。てか、乃蒼くんと大して進度変わってないじゃん」
乃蒼くんと半分こして書類のホチキス止めをしているが、残っている書類の山にさほど変わりがないことに気が付いて肩を竦める。
本当にさっきまではちゃんと手を動かしていたのだ。
少し得意げに書類の束を示してマウントを取って煽ったら心底嫌そうな顔をされた。
「うるさいなあ。ホチキス止め苦手なんだよ」
「ふふっ、乃蒼くん庶務の仕事でホチキス止めが苦手なのは致命的だね」
乃蒼くんは私の言い分に頬を膨らませてすねたような声を出した。
ちょっと不器用な乃蒼くんはどうやらホチキス止めが苦手だったらしい。
彼は少し冷めた感じがあってクールだとか言われてるけど本当は初対面の人だと表情筋が死んでしまうだけらしかった。
少し慣れてくればたくさん話してくれるいい友達だし彼は多分少しおバカなのでいじるのが楽しいのだ。
だけど、書類を手にてこずっているのを見て今度からは本人に気が付かれないように少し多めに私が取ってあげようと心に留めておく。
不器用なのに誰かにやってもらうのは嫌なのだそうだ。
「今日も乃蒼と楽しそうだったね」
「そうでしたか?ただのホチキス止めですよ」
歩悠先輩はちょっと納得いってなさそうな顔で首をひねって見せる。
別に不機嫌って感じじゃないけど、ほんとに納得いってなさそうって顔をされえしまうとどうしていいかわからない。
「なんで、そこで疑うんですか。そういえば、先輩だって今日羽美先輩ととっても楽しそうに話してたじゃないですか」
私がちょっとした意趣返しのつもりでいうと先輩はしどろもどろになってしまった。
ここまで露骨に反応されると変に詮索してしまいそうだ。
あの日以来、私はなるべく先輩が残る放課後は一緒に残るようにした。
この間のように急な助けに駆けつけるためだ。
あとは、先輩と二人の時間が少し増えたらいいなっていう下心で。
そんな日々を始めてから早二週間がたつ
初めはお互い自分の席で無言での作業が多かったけど、三日ぐらいたった時からどちらからともなく話しかけてそれからは話しながらする作業が多くなった。
なので最近は先輩と二人で生徒会室に残ることが多くなり、自然と以前よりもたくさん話すようなったし、なんなら好きな人の話までする仲になった。
これは、つい昨日の話である。
「茉衣は好きな人とかいるの?」
まるで普段と変わりない世間話のようなノリでとんでもないことを聞かれた。
いつもと同じ残業の時間にされた質問はちょっと衝撃すぎて、とっさに返すことができなかった。
唯一無二の大好きな人にそんなことを聞かれるなんて思っていなくて、危うく持っていた書類をすべてばらまくところだった。
本当に抜けた力を一瞬でも度出た自分をほめたい。
「なんですか?急に。先輩こそいるんですか?」
まさか、「あなたです」なんて言うわけにもいかなくて、質問を質問で返してしまった。
だけど、何でもないことのように普通に返せたと思う。
こういう駆け引きみたいなことはあんまりしたことがないので内心はひやひやしすぎてもう絶対したくないと思った。
「うん。いるよ……って大丈夫_!?_」
思ってもみなかった答えに先ほどせっかく保った書類を結局落としてしまった。
好きな人がいないって予想していたわけじゃないけど、そんなことを教えてくれるまでの仲になっていたのがびっくりだった。
いや、でも向こうから聞いた来たんだし普通なのかな?
「すみません!あ、はい。ありがとうございます。大丈夫です!……それで、どんな人なんですか?」
私はあわてて書類をかき集めてから立ち上がって、無理に会話をつなげる。
自分の想いが成就することなんて考えていないけど。
この際だから聞いてみたいとおもったのだ。
自分の好きな人が好きになる人とはいったいどんな人なのか。
今後の参考までに。
「うーん」
そんなに考えることだろうか。
ずいぶんと悩ませてしまっているようできれいな顔の眉間にしわが寄っている。
先輩はしばらく首をひねっていたけど、教師が生徒にするようにゆっくりと説明という名ののろけを聞かせてくれた。
「気が付かないくらいの小さな優しさをたくさんくれる人。それがとっても助かる。でも気が付くのがいつも遅れてしまって、ありがとうと言ってあげたいのに。本人も気が付いていないような優しさに一番に気が付いてあげたいと思ってるんだ」
今までに見ないくらいの優しい顔をする。
自分では到底勝てないようなその人のすきなとこを聞かせてくれて、なんとなくそれは羽美先輩のことなんじゃないのかなと思った。
いつも会長のために全力を尽くすあの人を好きになるは当たり前なんじゃないかと。
副会長の藤枝羽美はとても気づかいができて優しくて、なんていうかすごくイケメンだと思う。
女子だけど、一番しっくりくるのがイケメンだ。
そして私の中ではいつの間にか歩悠先輩が羽美先輩を好きなのは決定事項みたいになってしまっていた。
なんていうかそれが自分で思うよりしっくりきていたんだと思う。
会長専用の少し大きめの机に座って眉間にしわを寄せながら書類を確認していく先輩を眺めていたら、同じ庶務の久遠乃蒼くんにあきれた顔をされた。
少し長めの黒髪に高めの身長は歩悠先輩に似ているがこちらは同級生なので憧れる気持ちはわかない。
乃蒼くんも私が先輩を好きなのは知っているからわかってて言っているんだと思うけど反射的に頬を引き締めてごまかしてしまう。
「手、動かしてよ、仕事たまってるんだから」
「別にさぼってないもん。休憩だよ。てか、乃蒼くんと大して進度変わってないじゃん」
乃蒼くんと半分こして書類のホチキス止めをしているが、残っている書類の山にさほど変わりがないことに気が付いて肩を竦める。
本当にさっきまではちゃんと手を動かしていたのだ。
少し得意げに書類の束を示してマウントを取って煽ったら心底嫌そうな顔をされた。
「うるさいなあ。ホチキス止め苦手なんだよ」
「ふふっ、乃蒼くん庶務の仕事でホチキス止めが苦手なのは致命的だね」
乃蒼くんは私の言い分に頬を膨らませてすねたような声を出した。
ちょっと不器用な乃蒼くんはどうやらホチキス止めが苦手だったらしい。
彼は少し冷めた感じがあってクールだとか言われてるけど本当は初対面の人だと表情筋が死んでしまうだけらしかった。
少し慣れてくればたくさん話してくれるいい友達だし彼は多分少しおバカなのでいじるのが楽しいのだ。
だけど、書類を手にてこずっているのを見て今度からは本人に気が付かれないように少し多めに私が取ってあげようと心に留めておく。
不器用なのに誰かにやってもらうのは嫌なのだそうだ。
「今日も乃蒼と楽しそうだったね」
「そうでしたか?ただのホチキス止めですよ」
歩悠先輩はちょっと納得いってなさそうな顔で首をひねって見せる。
別に不機嫌って感じじゃないけど、ほんとに納得いってなさそうって顔をされえしまうとどうしていいかわからない。
「なんで、そこで疑うんですか。そういえば、先輩だって今日羽美先輩ととっても楽しそうに話してたじゃないですか」
私がちょっとした意趣返しのつもりでいうと先輩はしどろもどろになってしまった。
ここまで露骨に反応されると変に詮索してしまいそうだ。
あの日以来、私はなるべく先輩が残る放課後は一緒に残るようにした。
この間のように急な助けに駆けつけるためだ。
あとは、先輩と二人の時間が少し増えたらいいなっていう下心で。
そんな日々を始めてから早二週間がたつ
初めはお互い自分の席で無言での作業が多かったけど、三日ぐらいたった時からどちらからともなく話しかけてそれからは話しながらする作業が多くなった。
なので最近は先輩と二人で生徒会室に残ることが多くなり、自然と以前よりもたくさん話すようなったし、なんなら好きな人の話までする仲になった。
これは、つい昨日の話である。
「茉衣は好きな人とかいるの?」
まるで普段と変わりない世間話のようなノリでとんでもないことを聞かれた。
いつもと同じ残業の時間にされた質問はちょっと衝撃すぎて、とっさに返すことができなかった。
唯一無二の大好きな人にそんなことを聞かれるなんて思っていなくて、危うく持っていた書類をすべてばらまくところだった。
本当に抜けた力を一瞬でも度出た自分をほめたい。
「なんですか?急に。先輩こそいるんですか?」
まさか、「あなたです」なんて言うわけにもいかなくて、質問を質問で返してしまった。
だけど、何でもないことのように普通に返せたと思う。
こういう駆け引きみたいなことはあんまりしたことがないので内心はひやひやしすぎてもう絶対したくないと思った。
「うん。いるよ……って大丈夫_!?_」
思ってもみなかった答えに先ほどせっかく保った書類を結局落としてしまった。
好きな人がいないって予想していたわけじゃないけど、そんなことを教えてくれるまでの仲になっていたのがびっくりだった。
いや、でも向こうから聞いた来たんだし普通なのかな?
「すみません!あ、はい。ありがとうございます。大丈夫です!……それで、どんな人なんですか?」
私はあわてて書類をかき集めてから立ち上がって、無理に会話をつなげる。
自分の想いが成就することなんて考えていないけど。
この際だから聞いてみたいとおもったのだ。
自分の好きな人が好きになる人とはいったいどんな人なのか。
今後の参考までに。
「うーん」
そんなに考えることだろうか。
ずいぶんと悩ませてしまっているようできれいな顔の眉間にしわが寄っている。
先輩はしばらく首をひねっていたけど、教師が生徒にするようにゆっくりと説明という名ののろけを聞かせてくれた。
「気が付かないくらいの小さな優しさをたくさんくれる人。それがとっても助かる。でも気が付くのがいつも遅れてしまって、ありがとうと言ってあげたいのに。本人も気が付いていないような優しさに一番に気が付いてあげたいと思ってるんだ」
今までに見ないくらいの優しい顔をする。
自分では到底勝てないようなその人のすきなとこを聞かせてくれて、なんとなくそれは羽美先輩のことなんじゃないのかなと思った。
いつも会長のために全力を尽くすあの人を好きになるは当たり前なんじゃないかと。
副会長の藤枝羽美はとても気づかいができて優しくて、なんていうかすごくイケメンだと思う。
女子だけど、一番しっくりくるのがイケメンだ。
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