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2、突然のSOS
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「今日も疲れたね」
休日の生徒会の仕事が終わって寮のルームメイトで私と同じく生徒会に所属している不破《ふわ》七星《ななせ》ちゃんと二人で部屋のソファに倒れこむ。
いつも休日まで仕事があるわけじゃないけど新年度が始まったばかりなので何かとやらなくちゃいけないことが多い。
「今、何時ー?食堂、混んでるかな」
七星ちゃんの問いに時間を見ようとスマホを取り出すため立ち上がる。
休日の仕事は午前中だけなので今はちょうどお昼を少し過ぎたあたりだろうか。
寮の食堂はとてもおいしいし大好きだけど、今は疲れすぎてて部屋を出るもの面倒だった。
お昼寝してから行こうと七星ちゃんに言おうかなと思いながらスマホの電源を付けた。
「……え?」
時計に目が行く前にあまり見覚えのないアイコンからのメッセージに少し焦った。
スマホには先ほど生徒会室で別れてきたばかりの歩悠先輩からの通知が入っていて首をひねりながら開いてみると「助けて」の三文字。
不穏な空気を感じ取ってあわててスマホを操作する。
詳しく確認しようとしてトークルームを開くけどそんな文字はどこにもなくて代わりに送信取消を示す文言が記されている。
私の思わず漏れた声に七星ちゃんが心配そうに声をかけてくれていたような気がしたけれど何も説明せずに部屋を飛び出してきてしまった。
だって、あの歩悠先輩の一大事かもしれない。
送り間違いならそれでいいと思う。
ただ、本当に助けを求めていて駆けつけてあげられないのは嫌だと思った。
一秒でも遅れたくなくて全力で走る。
手遅れなんてことが起こるかもわからないけど、一刻を争う事態だったらと思うと走っているのとは違う意味で呼吸が浅くなってくる。
通知が来たのは一分前とかだった。
まだ大丈夫なはず。
先輩の居場所なんてわからないけど、私と先輩が会える場所なんてたかが知れている。
私の足は自然と生徒会室に向かっていった。
どんなに体が疲れていてもこんなに走れてしまう自分に驚く。
ちょっと現金かもしれないなと場違いにも苦笑する。
はやく、はやく、はやく。
生徒会室にたどり着くといつもはそーっと開ける扉を両手で思いっきり開け放ってしまう。
焦りすぎてて静かになんて考えもしなかった。
先輩がいつも座る会長専用の少し大きな机に目を向けると山積みな書類の向こう側でぽかんとした歩悠先輩と目が合った。
「あれ、茉衣。どうしたの?」
思ったよりも元気そうな様子にひとまずほっと息を吐いた。
送信取消をしたんだからメッセージのことは言わないほうがいいよね。
そこで初めて自分がその質問に答えられる用意をしてきてないことに気が付いてしまった。
唯一の理由のメッセージだって送信取消されているのに、何とも言えない自分の想像力の足りなさにげんなりする。
「あ、えっとー。わ、忘れ物です!」
結局、無意味な言い訳をしてしまった。
私がばかなせいで先輩に変な嘘をつく羽目になってしまったし。
「そっか。大丈夫?気を付けて帰ってねー」
私はありもしない忘れ物を取るために自分の机に向かう。
今、先輩の目が赤くはれていなかったか。
少し声が鼻声だった気がする。
私はこのまま立ち去るべきだろうか。
「……先輩は、どうしたんですか?」
気が付いたらそう口から出ていた。
さっき反省したばっかりなのにまた頭より先に体が動いた。
どうしてこう自分の考えがまとまらないうちに口が動いてしまうのかと思いながらも今更取り消すのもためらわれて大人しく先輩の答えを待つことにした。
先輩は何とも言えない困った顔をしている。
申し訳ない。
「あ、うん。今、先生に呼び出されてて」
やっぱり気落ちしたような声にいてもたってもいられなくなる。
生徒会を担当している先生はとてもやさしいし怒ったりするようなことはオトンどないけど、頑固というかちょっと難しい人なのだ。
歩悠先輩は会長だから先生と話すことも一番多くて、よく呼び出されている。
「先輩はもう少し人を頼ってもいいような気がします。いつもすごく大変そうに見えるし、………ちょっと辛そう」
私の言葉に先輩はびっくりしたようなこのまま固まっている。
当然だ。
何も知らないような庶務の後輩に変なアドバイスをもらってびっくりしているんだろう。
「でも、俺は会長だし」
気まずげにだけど意志のある声でそれはできないと訴えられたような気がした。
真面目で責任感の強い先輩は多分人に仕事を任せたりするのに抵抗があるのおかもしれない。
「先輩の周りにいる人たちはきっと、少なくとも生徒会にいる人たちはみんな、先輩に頼られたらうれしい人たちばかりですよ」
多分また生徒会担当の先生に無理難題を吹っ掛けられたんだろう。
前々から思っていたが歩悠先輩は少々溜め込みがちなとことがある。
会長の隣でいつも仕事をしている副会長が自分を頼れとヤキモキしているのに気が付いていないのなんて会長くらいだ。
副会長以外だって先輩と同じ学年の人なんかは特に頼ってもらえた時にはめちゃくちゃ嬉しそうにしているし、歩悠先輩だけがとても忙しそうにしていたらどうしたものかと首をひねっている。
私だけじゃなくたってみんなそんな場面をたくさん見ていると思う。
「誰かを頼りづらかったら私でも、何かやらせるのが忍びなかったら話を聞くだけでもいいですよ。私も先輩に頼られたらうれしい人間ですから」
そう言って笑えば、歩悠先輩は驚いた顔をふにゃりと歪めてうれしそうな泣きそうな顔を作った。
伝わればいいなと思う。
私やほかのメンバーが会長を大好きなのだということが。
会長に頼られたらとっても喜んで、張り切ってしまえるんだということが。
休日の生徒会の仕事が終わって寮のルームメイトで私と同じく生徒会に所属している不破《ふわ》七星《ななせ》ちゃんと二人で部屋のソファに倒れこむ。
いつも休日まで仕事があるわけじゃないけど新年度が始まったばかりなので何かとやらなくちゃいけないことが多い。
「今、何時ー?食堂、混んでるかな」
七星ちゃんの問いに時間を見ようとスマホを取り出すため立ち上がる。
休日の仕事は午前中だけなので今はちょうどお昼を少し過ぎたあたりだろうか。
寮の食堂はとてもおいしいし大好きだけど、今は疲れすぎてて部屋を出るもの面倒だった。
お昼寝してから行こうと七星ちゃんに言おうかなと思いながらスマホの電源を付けた。
「……え?」
時計に目が行く前にあまり見覚えのないアイコンからのメッセージに少し焦った。
スマホには先ほど生徒会室で別れてきたばかりの歩悠先輩からの通知が入っていて首をひねりながら開いてみると「助けて」の三文字。
不穏な空気を感じ取ってあわててスマホを操作する。
詳しく確認しようとしてトークルームを開くけどそんな文字はどこにもなくて代わりに送信取消を示す文言が記されている。
私の思わず漏れた声に七星ちゃんが心配そうに声をかけてくれていたような気がしたけれど何も説明せずに部屋を飛び出してきてしまった。
だって、あの歩悠先輩の一大事かもしれない。
送り間違いならそれでいいと思う。
ただ、本当に助けを求めていて駆けつけてあげられないのは嫌だと思った。
一秒でも遅れたくなくて全力で走る。
手遅れなんてことが起こるかもわからないけど、一刻を争う事態だったらと思うと走っているのとは違う意味で呼吸が浅くなってくる。
通知が来たのは一分前とかだった。
まだ大丈夫なはず。
先輩の居場所なんてわからないけど、私と先輩が会える場所なんてたかが知れている。
私の足は自然と生徒会室に向かっていった。
どんなに体が疲れていてもこんなに走れてしまう自分に驚く。
ちょっと現金かもしれないなと場違いにも苦笑する。
はやく、はやく、はやく。
生徒会室にたどり着くといつもはそーっと開ける扉を両手で思いっきり開け放ってしまう。
焦りすぎてて静かになんて考えもしなかった。
先輩がいつも座る会長専用の少し大きな机に目を向けると山積みな書類の向こう側でぽかんとした歩悠先輩と目が合った。
「あれ、茉衣。どうしたの?」
思ったよりも元気そうな様子にひとまずほっと息を吐いた。
送信取消をしたんだからメッセージのことは言わないほうがいいよね。
そこで初めて自分がその質問に答えられる用意をしてきてないことに気が付いてしまった。
唯一の理由のメッセージだって送信取消されているのに、何とも言えない自分の想像力の足りなさにげんなりする。
「あ、えっとー。わ、忘れ物です!」
結局、無意味な言い訳をしてしまった。
私がばかなせいで先輩に変な嘘をつく羽目になってしまったし。
「そっか。大丈夫?気を付けて帰ってねー」
私はありもしない忘れ物を取るために自分の机に向かう。
今、先輩の目が赤くはれていなかったか。
少し声が鼻声だった気がする。
私はこのまま立ち去るべきだろうか。
「……先輩は、どうしたんですか?」
気が付いたらそう口から出ていた。
さっき反省したばっかりなのにまた頭より先に体が動いた。
どうしてこう自分の考えがまとまらないうちに口が動いてしまうのかと思いながらも今更取り消すのもためらわれて大人しく先輩の答えを待つことにした。
先輩は何とも言えない困った顔をしている。
申し訳ない。
「あ、うん。今、先生に呼び出されてて」
やっぱり気落ちしたような声にいてもたってもいられなくなる。
生徒会を担当している先生はとてもやさしいし怒ったりするようなことはオトンどないけど、頑固というかちょっと難しい人なのだ。
歩悠先輩は会長だから先生と話すことも一番多くて、よく呼び出されている。
「先輩はもう少し人を頼ってもいいような気がします。いつもすごく大変そうに見えるし、………ちょっと辛そう」
私の言葉に先輩はびっくりしたようなこのまま固まっている。
当然だ。
何も知らないような庶務の後輩に変なアドバイスをもらってびっくりしているんだろう。
「でも、俺は会長だし」
気まずげにだけど意志のある声でそれはできないと訴えられたような気がした。
真面目で責任感の強い先輩は多分人に仕事を任せたりするのに抵抗があるのおかもしれない。
「先輩の周りにいる人たちはきっと、少なくとも生徒会にいる人たちはみんな、先輩に頼られたらうれしい人たちばかりですよ」
多分また生徒会担当の先生に無理難題を吹っ掛けられたんだろう。
前々から思っていたが歩悠先輩は少々溜め込みがちなとことがある。
会長の隣でいつも仕事をしている副会長が自分を頼れとヤキモキしているのに気が付いていないのなんて会長くらいだ。
副会長以外だって先輩と同じ学年の人なんかは特に頼ってもらえた時にはめちゃくちゃ嬉しそうにしているし、歩悠先輩だけがとても忙しそうにしていたらどうしたものかと首をひねっている。
私だけじゃなくたってみんなそんな場面をたくさん見ていると思う。
「誰かを頼りづらかったら私でも、何かやらせるのが忍びなかったら話を聞くだけでもいいですよ。私も先輩に頼られたらうれしい人間ですから」
そう言って笑えば、歩悠先輩は驚いた顔をふにゃりと歪めてうれしそうな泣きそうな顔を作った。
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