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5、恋人の心得
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「最近、茉衣いつにもまして機嫌いいね」
「え、そんなに?」
あれから、歩悠先輩との関係は順調でもう先輩は私のことを好きだと思ってもいいんじゃないかと都合のいいことを考えていたくらいだ。
驚いて聞き返したら、別にいつも機嫌いいっていうか明るいから違和感はないけどと苦笑いされた。
歩悠先輩と付き合うことになってからの一週間で何度好きだと口を滑らせそうになったことか。
別に好きだと言いたいわけじゃなくてただ歩悠先輩の隣で好きだと言えることがうれしすぎて世界がふわふわしてる。
そんなうれしさが顔に出てしまっていたみたいで、七星ちゃんに不思議そうな顔をされてしまった。
「うん。なんかいいことあったの?」
「ううん。別になんもないよ」
七星ちゃんには申し訳ないけれどいつ別れるかもわからないような恋人についての話をするつもりはなかった。
このうれしさを共有できないのは悲しいけど別れた後のことを思ったら仕方がない。
心の片隅の痛みを振り切るように笑っておく。
「そう?いいなー、いつも楽しそうで」
七星ちゃんは私の答えにちょっと不満そうな顔をしながら笑った。
隠し事をしたのは伝わってしまったみたいだ。
私は基本的に毎日明るいと言われる性格なのでそこまで疑われるようなものではないらしい。
自分の能天気さにちょっとだけ感謝した。
「ふふっ。七星ちゃんだって彼氏とラブラブなんでしょう?」
思ったよりもうらやましがる七星ちゃんをからかってみたらどうやら彼女はその話を聞いてほしかったようでここぞとばかりに話しだしてきた。
「それが、別れたんだー」
「うえ⁈」
びっくりしすぎて必要以上に大きい声が出てしまった。
七星ちゃんが「うるさい」と軽くにらんでくる。
耳にタコができるくらい「すごく好きなんだ」と何度も聞いていて別れる予兆なんてなかったのに。
「なんか私ばっかり好きみたいでキツくて、気持ちの大きさみたいなのも合わせられなくて別れることにした」
どうやら、話したかっただけのようで、そこまで引きずって後悔している風でもなかった。
仕方がない、とあきらめているようにも見えた。
しかし、私は彼女の言葉を彼女以上に考えてしまった。
何か声をかけたいけど、経験がなさ過ぎてそれ系統のボキャブラリーが皆無なことに絶望した。
口をパクパクしていたら七星ちゃんは「別に茉衣ちゃんにそういうのはきたいしてない」と言われた。
申し訳なさすぎる。
だって思いの大きさが合わないなんて私に言われているみたいで……。
うまくいくはずがないと、言われたような気がしたんだ。
私は自分勝手にも自分が好きでいるのは自由だと歩悠先輩には関係のないことだと思ってしまっていたのだ。
私はもちろん先輩がすきだが、この付き合いはあくまで先輩が私のことを好きではないことが前提にあるのだ。
思いが返ってくるなんて一ミリも期待してないから成立する関係。
「同じくらい好きじゃないとやっぱりつらいことがある?」
「うーん。そうだね自分もつらいし、相手にも我慢とか気を使わせてるかもって思うとやっぱり普通にはしてられなくなる」
七星ちゃんは彼氏との会話を思い出すように話す。
その顔はやっぱり悲しそうな困ったような顔をしていた。
この顔をもしかしたら歩悠先輩にさせてしまうのかと思うと絶対にダメだと思った。
それにただでさえつかれている歩悠先輩に我慢なんてさせたくない。
「どうすればいいのかな?」
「えー、何?茉衣ちゃん彼氏でもできたの?」
心配事に夢中で聞きすぎてしまったようで変に怪しまれてしまった。
探るような七星ちゃんの視線に耐えられない。
「え!え、ちがうよ⁈できてないからね⁈」
「あー、はいはい」
確実に恋人ができたことがばれた気がするけど、あんまり深くまで追及されなかったのでこのままで突き通すことにした。
「んーそうだなー。やっぱり相手の気持ちになってとか?私も失敗してる側だからわからないけど」
「……相手の気持ちに。うん、わかった。ありがと!」
その日から私の恋人としての心得はいかに歩悠先輩とおなじ大きさで重さの想いを返せるかになった。
私が歩悠先輩のことを好きだとばれないように。
細心の注意を払う。
「え、そんなに?」
あれから、歩悠先輩との関係は順調でもう先輩は私のことを好きだと思ってもいいんじゃないかと都合のいいことを考えていたくらいだ。
驚いて聞き返したら、別にいつも機嫌いいっていうか明るいから違和感はないけどと苦笑いされた。
歩悠先輩と付き合うことになってからの一週間で何度好きだと口を滑らせそうになったことか。
別に好きだと言いたいわけじゃなくてただ歩悠先輩の隣で好きだと言えることがうれしすぎて世界がふわふわしてる。
そんなうれしさが顔に出てしまっていたみたいで、七星ちゃんに不思議そうな顔をされてしまった。
「うん。なんかいいことあったの?」
「ううん。別になんもないよ」
七星ちゃんには申し訳ないけれどいつ別れるかもわからないような恋人についての話をするつもりはなかった。
このうれしさを共有できないのは悲しいけど別れた後のことを思ったら仕方がない。
心の片隅の痛みを振り切るように笑っておく。
「そう?いいなー、いつも楽しそうで」
七星ちゃんは私の答えにちょっと不満そうな顔をしながら笑った。
隠し事をしたのは伝わってしまったみたいだ。
私は基本的に毎日明るいと言われる性格なのでそこまで疑われるようなものではないらしい。
自分の能天気さにちょっとだけ感謝した。
「ふふっ。七星ちゃんだって彼氏とラブラブなんでしょう?」
思ったよりもうらやましがる七星ちゃんをからかってみたらどうやら彼女はその話を聞いてほしかったようでここぞとばかりに話しだしてきた。
「それが、別れたんだー」
「うえ⁈」
びっくりしすぎて必要以上に大きい声が出てしまった。
七星ちゃんが「うるさい」と軽くにらんでくる。
耳にタコができるくらい「すごく好きなんだ」と何度も聞いていて別れる予兆なんてなかったのに。
「なんか私ばっかり好きみたいでキツくて、気持ちの大きさみたいなのも合わせられなくて別れることにした」
どうやら、話したかっただけのようで、そこまで引きずって後悔している風でもなかった。
仕方がない、とあきらめているようにも見えた。
しかし、私は彼女の言葉を彼女以上に考えてしまった。
何か声をかけたいけど、経験がなさ過ぎてそれ系統のボキャブラリーが皆無なことに絶望した。
口をパクパクしていたら七星ちゃんは「別に茉衣ちゃんにそういうのはきたいしてない」と言われた。
申し訳なさすぎる。
だって思いの大きさが合わないなんて私に言われているみたいで……。
うまくいくはずがないと、言われたような気がしたんだ。
私は自分勝手にも自分が好きでいるのは自由だと歩悠先輩には関係のないことだと思ってしまっていたのだ。
私はもちろん先輩がすきだが、この付き合いはあくまで先輩が私のことを好きではないことが前提にあるのだ。
思いが返ってくるなんて一ミリも期待してないから成立する関係。
「同じくらい好きじゃないとやっぱりつらいことがある?」
「うーん。そうだね自分もつらいし、相手にも我慢とか気を使わせてるかもって思うとやっぱり普通にはしてられなくなる」
七星ちゃんは彼氏との会話を思い出すように話す。
その顔はやっぱり悲しそうな困ったような顔をしていた。
この顔をもしかしたら歩悠先輩にさせてしまうのかと思うと絶対にダメだと思った。
それにただでさえつかれている歩悠先輩に我慢なんてさせたくない。
「どうすればいいのかな?」
「えー、何?茉衣ちゃん彼氏でもできたの?」
心配事に夢中で聞きすぎてしまったようで変に怪しまれてしまった。
探るような七星ちゃんの視線に耐えられない。
「え!え、ちがうよ⁈できてないからね⁈」
「あー、はいはい」
確実に恋人ができたことがばれた気がするけど、あんまり深くまで追及されなかったのでこのままで突き通すことにした。
「んーそうだなー。やっぱり相手の気持ちになってとか?私も失敗してる側だからわからないけど」
「……相手の気持ちに。うん、わかった。ありがと!」
その日から私の恋人としての心得はいかに歩悠先輩とおなじ大きさで重さの想いを返せるかになった。
私が歩悠先輩のことを好きだとばれないように。
細心の注意を払う。
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