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15.決裂した話合の先に
04.平和の代償。(その3)
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兵士の目の前を一瞬、何かが通りすぎた。
目を凝らしても何も見えない。
また、目の前を何かが一瞬通り過ぎた。
雨が降りしきる平原で兵達は、お互いの顔を見合わせた。
「おい、今のはなんだ。」
「何かが目の前を通ったよな。俺の目がおかしい訳じゃないよな。」
「…しかも笑い声がするぞ。」
平原のどこからか低い声で誰かが笑っている。それも笑い声はふたつだ。
兵士達は雨が降りしきる平原をもう一度注意深く見た。
そこには目の前を大男2人が雲に乗って飛んでいた。
雨が降りしきる草原の地面の少し上を大男2人が高笑いを発しながら飛んでいたのだ。
低い声の笑い声だ。体に響く恐ろしい笑い声だ。
大男2人は、反国王派の軍勢の兵達でも見える高さを縦横無尽に飛び、高笑いを発しながら飛んでいた。
やがて大男2人は空高く舞い上がった。
反国王派の兵達は、雨が降りしきる空を見上げた。
いまのはなんだ。何が起きているんだ。
誰もがそう思った瞬間。
平原の空に広がる黒い雲が白く光り、平原の中央に数千もの雷撃が一斉に降り注いだ。
平原に立っている兵に次々と直撃する雷撃。
兵の体から火花が飛び散り、次々と倒れる兵達。
目の前が白く光り何も見えない。
さらに雨が降りしきる空からは、人の頭ほどもあるかという雹が大量に降り注いだ。
目の前は巨大な雹の雨で何も見えない惨状だ。
雷撃が止んだ。
雹が止んだ。
平原の中央にいた反国王派の5万の軍勢で、立っている者は誰ひとりいない。動く者も誰ひとりとしていない。
大盾を持った兵士でさえ誰も動かなかった。
騎馬でさえもも平原に横たわって動かなかった。
現国王派と反国王派のサッラ平原での戦いは終わった。
惨たらしい戦場は、反国王派の5万の兵士の墓場と化していた。
「…ファリダ子爵よ。見たか。あれが"バーラ"の城塞都市を魔族軍から守った冒険者の力だ。」
「一瞬だ。一瞬で5万の軍勢が全滅だ。これをどう説明する。この光景を見た者以外は誰も信じてはくれぬぞ。」
「わしの体が震えておる。この震えは、どうやって止めればいい。…教えてくれ。」
ベンデ伯爵は、兵士達が見ている目の前で、震える己の体を己自らが抱きしめて震えを止めようともがいた。
「…ベンデ伯殿、この世の者ではない。あの冒険者はこの世の者ではない。悪魔か。」
「一瞬で5万の兵の命が消えてしまった。こんなことがあってよいのか。」
「これは一方的な虐殺以外の何物でもない。」
ファリダ子爵は、青くなった唇を噛みしめた。
「ファリダ子爵。世は、目の前でおきたこの光景は、あの冒険者の警告と見た。」
「…警告ですか。」
「そうだ。歯向かった場合、こうなると警告しているのだ。」
「我々が剣を向けた瞬間、一瞬で死んだ5万の兵と同じ運命が待っていると警告しているのだ。」
「恐らく、これがあの冒険者の全力ということはあるまい。奥の手は最後に取っておくものだ。」
「"バーラ"の城塞都市では、"炎の魔人"と"魔王"をも倒したと聞いた。勇者ですら全く手がでなかった相手をだ。」
「あの冒険者が、全力を出せばこの王国は滅ぶぞ。"魔王"を倒せる者が"魔王"より弱いことなど絶対にありえぬ。」
「それを肝に刻み込まねばならん。我々は誰に忠誠を尽くすのか間違えたら一族全ての命はないぞ。」
ベンデ伯爵もファリダ子爵も、サッラ平原のどこかにいるであろう冒険者に"恐怖"を抱いていた。
目を凝らしても何も見えない。
また、目の前を何かが一瞬通り過ぎた。
雨が降りしきる平原で兵達は、お互いの顔を見合わせた。
「おい、今のはなんだ。」
「何かが目の前を通ったよな。俺の目がおかしい訳じゃないよな。」
「…しかも笑い声がするぞ。」
平原のどこからか低い声で誰かが笑っている。それも笑い声はふたつだ。
兵士達は雨が降りしきる平原をもう一度注意深く見た。
そこには目の前を大男2人が雲に乗って飛んでいた。
雨が降りしきる草原の地面の少し上を大男2人が高笑いを発しながら飛んでいたのだ。
低い声の笑い声だ。体に響く恐ろしい笑い声だ。
大男2人は、反国王派の軍勢の兵達でも見える高さを縦横無尽に飛び、高笑いを発しながら飛んでいた。
やがて大男2人は空高く舞い上がった。
反国王派の兵達は、雨が降りしきる空を見上げた。
いまのはなんだ。何が起きているんだ。
誰もがそう思った瞬間。
平原の空に広がる黒い雲が白く光り、平原の中央に数千もの雷撃が一斉に降り注いだ。
平原に立っている兵に次々と直撃する雷撃。
兵の体から火花が飛び散り、次々と倒れる兵達。
目の前が白く光り何も見えない。
さらに雨が降りしきる空からは、人の頭ほどもあるかという雹が大量に降り注いだ。
目の前は巨大な雹の雨で何も見えない惨状だ。
雷撃が止んだ。
雹が止んだ。
平原の中央にいた反国王派の5万の軍勢で、立っている者は誰ひとりいない。動く者も誰ひとりとしていない。
大盾を持った兵士でさえ誰も動かなかった。
騎馬でさえもも平原に横たわって動かなかった。
現国王派と反国王派のサッラ平原での戦いは終わった。
惨たらしい戦場は、反国王派の5万の兵士の墓場と化していた。
「…ファリダ子爵よ。見たか。あれが"バーラ"の城塞都市を魔族軍から守った冒険者の力だ。」
「一瞬だ。一瞬で5万の軍勢が全滅だ。これをどう説明する。この光景を見た者以外は誰も信じてはくれぬぞ。」
「わしの体が震えておる。この震えは、どうやって止めればいい。…教えてくれ。」
ベンデ伯爵は、兵士達が見ている目の前で、震える己の体を己自らが抱きしめて震えを止めようともがいた。
「…ベンデ伯殿、この世の者ではない。あの冒険者はこの世の者ではない。悪魔か。」
「一瞬で5万の兵の命が消えてしまった。こんなことがあってよいのか。」
「これは一方的な虐殺以外の何物でもない。」
ファリダ子爵は、青くなった唇を噛みしめた。
「ファリダ子爵。世は、目の前でおきたこの光景は、あの冒険者の警告と見た。」
「…警告ですか。」
「そうだ。歯向かった場合、こうなると警告しているのだ。」
「我々が剣を向けた瞬間、一瞬で死んだ5万の兵と同じ運命が待っていると警告しているのだ。」
「恐らく、これがあの冒険者の全力ということはあるまい。奥の手は最後に取っておくものだ。」
「"バーラ"の城塞都市では、"炎の魔人"と"魔王"をも倒したと聞いた。勇者ですら全く手がでなかった相手をだ。」
「あの冒険者が、全力を出せばこの王国は滅ぶぞ。"魔王"を倒せる者が"魔王"より弱いことなど絶対にありえぬ。」
「それを肝に刻み込まねばならん。我々は誰に忠誠を尽くすのか間違えたら一族全ての命はないぞ。」
ベンデ伯爵もファリダ子爵も、サッラ平原のどこかにいるであろう冒険者に"恐怖"を抱いていた。
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