誰にでもできる簡単なお仕事です。

純粋どくだみ茶

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15.決裂した話合の先に

05.もち米を発見しました。

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サッラ平原で撃退した諸侯の領地の没収という嫌な仕事が残っていた。
反国王派の諸侯の全ての貴族の称号は没収となり、身分は平民となった。

領地と財産は全て没収。

領地の没収作業は、基本的に役人と護衛の兵士が行うが、反国王派の残存兵力による闘いも考慮して俺達も一緒に地方領を回っていた。


というのは建前で、実際は、俺のレストランで出せるメニューや食材を探して歩いているのだ。
そんなことは口が裂けても言えないけど。
ただ、地方を回ってみると思ったようなメニューも食材もなかなか見つからない。

次の領地まで馬車で移動中、街道沿いに茶屋があったので寄ってみた。
風情が日本ぽいというかそのまんま。しかも時代劇に出てくるような店構えだ。
いまにも店先で八兵衛が団子を食べて喉に詰まらせそうな感じの店だ。

メニューを見ると団子と緑茶があった。
しかも団子は、三色団子、みたらし団子、餡団子まである。
とりあえず全ての団子を注文してみんなで食べてみた。

「この串に刺さった柔らかいものはなんでしょう。ほんのり甘くて美味しいです。」

「榊さんが作るシュークリームやミルクアイスとは違う甘さですね。」

サティが団子を食べながらナイスな批評をしてくれた。

「うまいな。もっと食べたい。お姉さん、同じもの追加で。」

食べ物好きなベティは、量で勝負か。
ベティさん、両手に団子の串を持って食べないでおくれ。
もう恥ずかしさ爆発だ。

そう、和菓子というのは他の甘味と甘さの種類が違う。
和菓子は、甘味とひとくくりにできない上品さがある食べ物だ。

「主様、この緑茶というのは少々渋みがあって飲みずらいです。」

おや、"クリスお嬢様"のお口には合わなかったようだ。

「私もこの緑茶は、ちょっと苦手です。やっぱり紅茶がいいですね。」

ありゃ、"アレスお嬢様"も評判はいまいちだった。
でも、団子に紅茶はないよな。

「お茶は、御抹茶ならいただいたことがあります。以前、御抹茶用の茶碗を作ったことがあって、そこでご馳走になりました。」

なんと"レディお嬢様"は、異世界で茶道を嗜んでいるとはびっくりだ。
レディは陶芸家でもあり、家とレストランの器は全てレディに作ってもらっているし、レディが作る花瓶は、貴族達に人気で高値で売買されている。

結局、団子の評判は良かったが緑茶はいまいちだった。
まあ、緑茶は慣れないと飲みずらいかもな。



店主のおやじさんに団子について聞いてみたところ、もち米も小豆も3代前の勇者様がこの地方に伝えたものらしい。
昔の勇者様ありがとう。
もち米も小豆もこの辺りで栽培しているので入手するのは簡単らしい。
欲しければ店に在庫があるので売ってくれるというので、もち米と小豆を買って帰ることにした。

そういえば、以前クリスが"和菓子職人Lv3"というスキルを通りすがりの冒険者から奪ってきたことがあった。
おそらくこの地方の出身なのだろう。
クリスが勝手にスキルを奪った冒険者さんごめんなさい。

ただ、"ココ"の街で和菓子を売っても売れるとは思っていない。
和菓子は、分かる人にだけに味わってもらいたい食べ物なのだ。

店主のおやじさんとの話が終わり、何気に茶屋の脇を見ると、そこには桜の木があった。
花の時期ではないので、葉が青々と生い茂っていた。
また、店主のおやじさんに聞いてみた。
これも、3代前の勇者様が広めたものだそうだ。
昔の勇者さん、あんた日本人なんだろ。もうそうとしか思えない。

「あんた、桜の葉の塩漬けが欲しいのか?」

「なぜ、桜の葉の塩漬けが欲しいって分かったんですか。」

「もち米と小豆を買って、さらに桜の木について質問してきたらそうなるだろう。」

店主のおやじさんは何を作ろうとしているの分かったようだ。

「在庫ありますか。」

「あるよ。今、仕込み中なんだ。しかし珍しいな。この地方以外の者は桜の葉なんて食べないと思っていたよ。」

店主のおやじさんと和菓子についてあれこれ話した。
俺は、桜の葉の塩漬けを小さい樽で買った。
これであれが作れるぞ。



道明寺。



餡の甘さを控えめにすると、餅の触感と桜の葉のほのかな塩味が絶妙に感じられるんだ。
店先で緑茶を飲みながら団子を食べていると、ここが異世界だと忘れてしまいそうだ。

「お茶のお代わりいるかい。」

店主のおやじさんが茶を進めてきた。

「ありがとうございます。お茶うまいです。」

やっぱり和菓子を作る以上は、緑茶はかかせないよな。

「おやじさん、この緑茶。」

「在庫あるよ。」

「まだ何も言ってませんが。」

「団子には緑茶だろ。」

「茶葉の種類がいくつかあるがどれにする。」

店主のおやじさんが出してきた茶葉を試飲して3種類ほど買ってみた。



「おやじさんに言うとなんでも出てくるんで関心しているんですが、さすがにこれはないですよね。」

「よもぎ。」

「あるぞ。欲しいのか。」

おやじさん最強だ。まるでかゆいところに手が届く東〇ハ〇ズだ。

「まってな、裏の畑に植えてあるんだ。取ってきてやるよ。しかし、こいつは直ぐに使わないとダメになるぞ。」

「そこは大丈夫です。アイテムバックがあるので鮮度を維持できます。」

「そりゃすごいな。」

「ちょっと待ってな。取ってくるから。」



結局、もち米、小豆、桜の葉の塩漬け、茶葉、よもぎといろいろ買ってしまった。
それと、団子の土産を大量に買い込んだ。
もちろん、うちの連中が馬車の中で食べるためだ。

店主のおやじさんに近いうちにまた来ると言って茶屋を後にした。
今日は、いい買い物ができた。
なんか目的が達成できたので、反国王派の貴族の領地没収の件はどうでもよくなってしまった。

早く"ココ"の街の我が家に帰りたい。
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