誰にでもできる簡単なお仕事です。

純粋どくだみ茶

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18.火龍の神殿

43.飲食ギルド。(その2)

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俺達は、飲食ギルドの扉を開け、受付嬢に責任者と話がしたいと伝えた。
程なくして、飲食ギルドの奥の部屋に通された。
俺とクリスがソファに座って待っていると、飲食ギルドのギルド長がやってきた。

「いやー、遅くなって申し訳ない。そう、榊さんのレストランえらい儲かっているようですね。私達もあんな店を持ってみたいですな。」

ギルド長がどうでもいい話を始めると同時に、部屋にいかにもという風情の5人の男達が入ってきて俺達が座るソファの後ろに並んだ。

「でな、榊さん、うちのギルドに収めている上納金なんですが、店の売り上げからするとあの3倍はいけるはずです。ごまかしちゃいけませんよ。」

やっぱりこいつらは金が欲しいんだ。でもなあ、その金で命は買えないんだが、それは分かっているのか。

「そうですか、上納金が足りないんですか。あれで我慢していれば、この関係を維持できたんでしょうけどね。それなら私は、飲食ギルドを辞めますよ。」

「ははは、そんな事をしても市場からの仕入れはできないし、街に入るには関税もかかりますよ。」

ギルド長が俺達の後ろに立っている男に目配せをした。
男のひとりが俺の頭を掴もうとした時だった。

シュ。

空を切る音が部屋の中に響いた。
ギルド長は、目を見開いた。
俺達の後ろに立っていた5人の男達の腕が全て切り落とされていたからだ。
しかも斬られた腕の切り口からは一滴の血も流れていなかった。

「ひっ。なんだ。何が起こった。」

俺の隣りで静かな表情で座っていたクリスの手には"技切り姫"が握られていた。

「ギルド長さん、俺達の素性って調べたことあるか。ないよな。だからこんな事ができるんだよな。」

俺は、笑顔で静かな声でに淡々とギルド長に話しかけた。

「あんたには、話しておくよ。"ココ"の街が魔族国に攻められた事は覚えているだろ。あの魔族軍は全滅したな。」

「"バーラ"の城塞都市が魔族国の軍勢40万に攻められた話はしってるよな。あの魔族軍は40万のうち23万を失って撤退したよな。」

「王都に魔族軍が突然現れて王都が壊滅した話は知っているよな。あれを撃退したのは誰だと思う。」

「あの戦い好きな魔族国に乗り込んで停戦条約を結ぶように促したのは誰だと思う。」

「最近、この国の王が変わったろ、誰が王の首をすげかえたと思う。」

「反国王派の貴族の軍勢が全滅した話も有名だな。」

ギルド長は、俺達の後ろで両腕を切り落とされてもがき苦しんでいる男達と、俺が笑顔で話す顔を見ながら絶句していた。

「全部俺達だよ。」

「この国で生きていこうと思ったら、絶対やってはいけない事があるんだよ。それが分からなかったようだな。」

「悪いが俺は、あんた達を生かしておく気はない。"ココ"の街から飲食ギルド自体を無くそうと思う。やるならちんけなチンピラなんて使わずにSランクの冒険者を雇ってひと思いにやるべきだったんだよ。」

「言っておくが、国王だろうが国務大臣だろうがこの国のお偉いさん達は、皆俺達の事をよーく知っている。誰も俺達には手を出さない。絶対にな。」

「お前ら、俺がここへ来た時に勝ったと思ったろ。お前ら本当にバカな事したな。あの上納金で我慢していれば命は助かったのにな。」

「アレス、悪いがこいつらをいつもの様にお願いできるかな。」

突然、飲食ギルドの建物の壁が崩れた。そこから人の何倍もの大きさの腕が入ってくると両腕が切られた男達とギルド長を掴んでどこかに消えていった。

飲食ギルドの建物がガタガタと崩れ出したので、建物内で働いていた職員達が慌てて建物から外へと逃げ出した。
俺とクリスは、崩れていく飲食ギルドの建物からゆっくりと歩いて外に出た。

「さあ、皆さんこの建物は危険です。もっと離れてください。」

俺が大声で皆に建物から離れるように促した。

「レディやってくれ。」

そう言うと、ほどなくして空から爆音が響き、一発の隕石が飲食ギルドの建物を直撃した。
瓦礫と砂塵が舞い、飲食ギルドの建物はただの瓦礫と化していた。
この状態では、建物内にあった書類も全て使い物にならないだろう。

アレスもレディもこの場にはいない、しかし近くで俺の指示を待っていた。近い距離なら彼女らとはどこにいても意思の疎通ができるのだ。
俺達は、飲食ギルドの職員が呆然と立っている横を歩いて、ある場所へと向かった。



俺達は、とある建物に入り秘書さんに話をすると、すぐに市長室へと案内された。

「"ココ"の街の市長さん、お忙しいところお時間を空けていただいて申し訳ありません。」

「いえいえ、榊さんにお越しいただくなんて、呼んでいただけたらこちらから出向きましたのに。」

そういうと市長さんは、ソファに座るように促し、秘書さんがお茶と茶請けの菓子をだしてくれた。

「以前からお話していた飲食ギルドですが、今日を持って活動を停止しました。」

「そうですか、それは残念です。ただ、あの者達は、以前からトラブルが絶えなかったのです。いままで何度も忠告はしていたんですがね。全く話を聞いてもらえませんでした。残念です。」

「こちらも、いつも問題ごとがあるたびに、押しかけて申し訳ありません。」

「ははは、そんな事は気になさらずに。お互い良い関係を維持していきましょう。」

「では、これは今回の迷惑料です。少しですがお納めください。」

「いつも申訳ありません。では、これは街の復興資金に回させてもらいます。」

「では、失礼いたします。」

しばらくしてから市長室の隣りの控室から副市長、冒険者ギルドのギルド長、この街を守る守備隊の本部長がが入ってきた。

「行きましたか。」

「飲食ギルドのギルド長もバカな事をしたものだ。あれはど注意したんだが、全く聞く耳を持たなかったな。飲食ギルドのギルド長とは、長い付き合いだったが簡単な幕切れだったな。」

副市長は、長い付き合いと言っていた割には、涙も流さず淡々と話し始めた。

「榊君に"からむ"なんて無茶すぎです。神器や龍神おも仲間にしている彼に喧嘩を売るなんて国を相手に戦争をするよりも無謀です。」

冒険者ギルドのギルド長は、そういうと榊が市長にと置いていった箱を開けた。

「ほお、金貨100枚ですか。彼も律儀ですね。面倒事があるたびに迷惑料として置いていくんですからね。」

守備隊の本部長は、黄金色の菓子が入った箱の中身を見て目を丸くした。

「わしは、何も見なかったぞ。黄金色の菓子など見なかったぞ。」

黄金色の菓子が入った箱の蓋を閉めると、冒険者ギルドのギルド長は、その箱を市長に渡しながら話始めた。

「こういったことは、大人の世界では大切です。彼は若いですが、世の中の理を理解しています。」

「我々が、彼との良好な関係をいつまでも構築できるよう、これからも上手くやっていきましょう。」

市長、副市長、街の守備隊の本部長が口を揃えて言った。

「そうですな。」

大人の裏の世界が垣間見れた出来事でした。



※次話は、2017年1月1日 0:00 公開予定です。
年明け早々に公開ってやってみたかったんです。えらい迷惑なやつですみません。
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