28 / 128
第28話 1つの疑問
しおりを挟む「ねぇ、これからどこへ向かう予定なの?」
セリーヌからの唐突な問い掛けに動揺するが、確かに当てもなく歩くわけにもいかず、本音を言えば行きたくはないが素直に答えた。
「え、えっと……ぼ、冒険者ギルド……かな……」
「えっ!? そうなの!? 丁度さ、私も向かうところだったの! じゃあ、このまま一緒に行こ?」
「あ、あぁ、そうだな……うん、そうしよう!」
「えへへっ、同じことを考えてたなんて……なんだか嬉しいなぁ」
(あぁ、セリーヌの笑顔を見ると癒されるなぁ……)
セリーヌとの何気無い会話に僅かだが幸せを感じた気がする。
でも今の俺達は恋人ではなく、ごく普通の幼馴染でただの冒険者仲間という関係なので、俺が幸せを感じるのはおかしな話なのもしれない。
(まぁ、セリーヌと5年も恋人でいられた時点で充分おかしな話なんだけどな……)
そんなことを考える間にセリーヌから質問が。
「ねぇ、その右肩に乗せてるのって……」
「あぁ、モモのこと? ピンクモンキーのメスでモモっていうんだ。可愛いだろ?」
「えぇ! 物凄く可愛いわ! モモちゃん、こっちにおいで?」
「キキッ!」
セリーヌが右腕を曲げながら差し出すと、モモは躊躇なく差し出された腕から肩へと登る。
(!? モモがセリーヌの元へ向かった!?)
その光景を目の当たりにして思わず吃驚。
何故なら、ピンクモンキーは人の感情や欲望にとても敏感であり、邪な考えを持つ者には一切近寄らないからである。
つまり、セリーヌは邪な考えなど一切持っていないという結論に至るわけだ。
(やっぱり、あの瞬間に見たセリーヌの表情は見間違いなのか……? いや、まだ分からない……でも、モモがあんなに懐くほどだし……)
昨夜の件で人からの目を異常なほど気にするようになり、どうしても疑わずにはいられない。
だがそれでも心から信じたい気持ちが上回り、セリーヌを疑っていたことに対して恥じる。
「セリーヌ……勝手に疑っていて、ごめん……」
「えっ? 何が? 私、何か疑われていたの?」
「えっ!?」
(えっ!? 何故、疑っていたことを……もしかして、思っていたことを口に出してた!?)
どうやら無意識に呟いていたようで、それを思うと急に心苦しくなってしまい、昨夜の件も含めて疑っていたことを正直に告白することに……
「なるほど、そういうわけなのね……そっか、それなら仕方ないかも……」
「ゔっ!?」
(ゔっ!? 胸が痛い……あの明るいセリーヌが、俺なんかのためにこれほど落ち込むなんて……)
セリーヌの落ち込む姿を見た瞬間、俺の胸は張り裂けそうなほどの痛みを感じた。
しかしそれと同時に、ふと1つの疑問が浮かび上がる。
それは「何故、俺と破局する道を選んだのか」という疑問である。
確かに俺は、セリーヌにとって相応しい恋人ではないのかもしれないが、特に喧嘩や浮気をしたわけでもない。なのに、何故……
(あぁ、死ぬほど怖い……でも……)
セリーヌに今、その疑問の答えを聞こうと思う。
たとえその答えにより深く傷つき、立ち直れなくなったとしても……
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる