子猫が鳴けば・・・

菻莅❝りんり❞

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2 始まりの話 1

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私は有馬 咲。歳は20歳は過ぎているとだけ言っておく。

某半ブラック企業に就職してん十年。
支店の一部の人間は2週間の連勤を強いられていた。その中に私も含まれている。

そんな時、次期社長が抜き打ちで視察に来て実情を知った次期社長は上を切り、自分の腹心の部下を据え、臨時の人材も派遣し、連勤組に1週間の有給を取らせた。神がいた!

臨時の派遣の人に引き継ぎを済ませた後、1週間の有給の初日に私は死んだらしい。

次期社長の名誉の為に言うと、過労死ではない。
連勤の後は2日の連休をもらい、引き継ぎの為に出社していても、ちゃんと公休もあった。

その為、若干疲れは残っていても死ぬ程ではなかった。

ではなぜ死んだのか。

それは今、目の前でニコニコしている青年のせい!

「間違いで人を殺しといて、よくニコニコしていられますね?」

「人聞きの悪ことを言わないでくれるかの?お主は死んだわけではない。存在そのものが消滅したんじゃよ」

「なお悪いわ!!」

スパーン!と、なぜか手にあったハリセンで青年の頭を叩いた。

叩いた後に手にあったハリセンに驚いた。

「ぃったいのう。年寄りには優しくせんか」

「どこが年寄りよ!私とそう変わらない見た目でしょが!どっちかって言うと私より若いでしょうが!(見た目は!)」

私は怒り疲れてその場にドカッと座った。

「女性ならもう少し」

「あ゛?」

青年の言葉を遮り睨めば、青年は激しく首を横に振った。

その後は私の機嫌を取るように、お茶や茶菓子を差し出して、今の状況を説明しだした。

曰く、青年が創世神様から任された星が、同期の出来心のイタズラのせいで破滅しかけたとの事。

星の時を止め、創世神様に助けを求めたが

「無理だな。うん、これは無理」

と、即座に星を助けるのは無理だと言われた。

イタズラをした同期は、創世神様にこってり絞られ、任そうと思っていた星を別の人物に任せた。

同期はその別の人物の補佐を任されたが、信用されずに雑用を今もしているとのこと。

それでも青年は、任された星を見捨てられず、時間を巻き戻してはどうにかしようとした。

だけど結果は変わらず数百年。

何度も何度もやり直す事で、一つの小さな奇跡が起きた。

青年はこれで星を守れると思ったが、結果は破滅を数年遅らせるだけだった。

その事に心折れた青年の前に、

「お前の努力をずっと見ていたよ。よく頑張ったな」

そう言って青年の肩に手を置いた。そして

「そんなお前の努力に少しだけ力を貸そう」

その言葉に顔を上げた青年の前に、一人の女性の姿が映った水鏡があった。それが私、有馬 咲である。

「この者をこの世界、ルーベルに召喚するのだ」

その言葉に青年は眉をひそめた。

なぜならば、同期のイタズラが異世界からの魂の召喚で、その召喚された者によって一つの国が荒され、星を破滅に導いたからだ。

「お言葉ですが創世神様。それは」

「まぁ、聞け」

言葉を遮られた青年は、不満を隠す事はせずとも口を閉ざした。

「あれがしたイタズラは最早イタズラを越している。星が一つ、滅びかけたのだからな。
その報いを今も受けている。どんなに真面目に働いても未だに信用されていないのだからな」

そう言いながらも、創世神様の青年をみる目は優しかった。

それはすでに青年が同期を許していて、今も仲良くしているからだ。
同期も自分のした事の責任を取るため、仕事の合間に青年を手伝っている。

「あれが召喚した人物が悪かっただけで、全ての者が同じではないのは理解しているだろう」

問いかけと言うにはその言葉に疑問符はなかった。

青年が渋々ながらも頷くのを見て

「そして、この私自らが指名した人物だ。アレと同じな訳ないだろう」

青年はハッとして、創世神様を見た。そして映し出された咲を見て

「それでも少し、時間を下さい。僕自身で彼女を見極めたいです」

・・・・ちょっとタイム!!

「あんた一人称❝我❞じゃないの?それになんで普通に喋ってるのよ!爺くさい言葉使いは!」

私がまくし立てると

「あなたを見極める為に見ていた中で、ふぁんたじー小説なるものの神様のほとんどがその喋り方だったので、そのほうが雰囲気出るかなって」

てへっ?って感じの顔をしているけど可愛くないから!何よその理由!!

「あと、喋っていてこの言葉使いが癖になっただけじゃ」

と爺くささよろしく、どこから取り出したのかティーカップだった物が湯呑みに変わっていて、ずずーとお茶を啜った。

私も、気持ちを落ち着かせる為にほうじ茶を要求して、ゆっくりと飲んだ。
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