末っ子神様の世界に転生した何の取り柄のない平凡な俺がちょっとだけ神様の手伝いをする

菻莅❝りんり❞

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俺は張り紙が剥がれ落ちて、捨てられているなんて知らず、神様が示した屋敷が見える所の茂みに隠れていた。

「さて、ここからどうしようか?入り口に人は居ない。が、狂暴そうな犬の鳴き声が聞こえるんだよなぁ。ここからじゃ姿は見えないけど、絶対ドーベルマンみたいなのがヨダレを垂らしてうろついてるんだ」

こういう所の犬はそうと決まっている!鑑定でどこに居るかわかれば、少しは動きようがあるんだけどなぁ。と思いながら屋敷を見上げると、“良魂”と言う文字が屋敷のあちこちに表示された。

しかし“良魂”って分かりやすいけど、他に無かったの鑑定くん?
さて、居場所は分かるようになったけど問題はどうやって接触して、説得するかだな。あまり時間をかけると見つかるしな。

屋敷を見上げるながら考えてると、“良魂”の文字が一ヶ所に集まりだした。しかも10人全員。
時間的に食堂かもしれない。しかし、10人だけなのかが問題だなと思ってると、今度は“敵”の文字が出てきた。

確かに俺にとっては敵になるかもだけど、この鑑定なんか俺に都合良く進化してないか?
とにかく今は、目の前の事を片付けよう。
“敵”の文字は有り難いことに“良魂”とは反対の方に集まっていた。
神様が運をあげてくれた効果かな?

このまま茂みに隠れて玄関前を通り(思った通りドーベルマンみたいな犬だったよ)、“良魂”の集まってる食堂の方へ向かった。

とても静かに食事をしていた。しかもなんか全員目が死んでるし、どう声をかけようか考えてると、こっち向きで食べていた少年と目があった。年の頃は14~5と言ったところだろう。
思わず俺は、「こんにちは」と挨拶してしまった。

確かに目があったのに、その少年はまた何事も無かったように食事を始めた。

「えーと、あのー、時間がないと思うのでそのままで聞いてください。俺はあまり言葉を多くは知らないので、単刀直入に言います。ここから逃げましょう。残念ながら、ここに居る10人しか助けられませんが」

俺の逃げるって言葉に数人が反応したけど、俺と目のあった少年の言葉でまた死んだ目になった。

「どこのどなたかは知りませんが、余計なことはしないでください。もし今逃げれたとしても、見つかって殺されるだけです。今すぐお帰りください。見つかれば殺されますよ」

食べ終わったのか、全員が席を立った。まずいと焦り、窓から中に入り

「俺は神様から君たち10人を助けてやって欲しいと頼まれたんだ。君たちはまだ引き返せるからって」

俺が言い終わると同時に少年が食器を投げ捨て、俺に掴みかかってきた。

「分かったようなことを言うな!何が神だ!俺たちは神なんて信じない!どんなに苦しくても、どんなに痛くても助けてくれなかった!それに、俺たちはこれしか知らない!もうマトモな生活なんて出来ないんだ!」

「そんなことはない!まだやり直せる!神様は言っていた、ここにいる10人は悪意に染まってないって!生まれたときからここに居るって言うのは君だろう?神様はちゃんと見ている。だけど、神様のルールで助けられないことの方が多いんだ。でも今は、俺を通して俺の手が届く範囲内だけど、助けてやれる」

捕まれてた胸元から手を外し、

「逃げよう?俺の居る教会には、俺が神様に頼まれて助けたスラムの子供達が居る。しかもその教会、神様が自ら加護をかけて、教会内の子供達を守ってる。教会に行けば、殺されない。だから、ここに居る皆で逃げよう」

神様は見てくれている。助けられないことに心を痛めてる。その事を分かって欲しい。俺の手を取って欲しい。

「行こう?」

と、手を出すと俺達のやり取りをみていたら子供達が俺の手を取ってくれた。そして、少年の手を取って俺の手に乗せた。

「おにいちゃん、いこう?もうおにいちゃんがいたいのみたくない。」

「お兄ちゃんがわたしたちのかわりにいたいことされてるの知ってるの」

「おにいちゃん、いつもまもってくれてありがとう。もういいよ?おにいちゃんはおにいちゃんをまもろう」

小さい子ども達の言葉に少年は泣き出した。俺も泣きそうだ。皆いいこや。
暫くして、泣き止んだ彼は

「逃げるとしたら今しかない。大切なものは少ないから肌身離さず持っている。このまま行ける!」

そう言うと、それぞれの大切なモノを首元から取り出し掲げて見せた。

「よし、この窓から行くぞ」

そう言って年長組の内2人が先に降り、次におチビ達を降ろした。後は一人で降りられるので、先に降りた2人が周りの警戒をしていた。流石、暗殺者の教育を受けてただけはある。連携が取れてるし、無駄がない。

誰にも見つかること無く俺が浸入してきた壁に着いた時、ドーベルマンに見つかった。

ワンワンワンと濁音が付きそうな声で吠えまくり、襲ってきた。
年長組がドーベルマンと格闘している内に、おチビ達を壁の穴から出していった。
俺と年長組を残して全員を出して

「後は俺達だけだ。大丈夫か?こっちに来れるか?」

「ああ、こいつで終わりだ!」

そう言って、ドーベルマンを倒したらこっちへ来て、穴を通って行った。最後に俺が出ていき、全員が居ることを確認したら、教会まで走り出した。

しかし、やはり追手が来た。俺はこの中で一番足が遅いので、少年に教会までの道を教え、先導を頼んだ。足が遅い事で必然的に殿を勤める事になった為、魔法を使い足止めを試みたが魔法初心者、あっさりやぶやれた。しかしめげずに魔法を使って足止めをした。

どのくらい走ったか、行くときはそれ程遠くには感じなかったけど、それなりの距離はあったらしい。走って、魔法で足止めをしてとしていると、見慣れた教会が見えたとこで、俺は叫んだ。

「走れ、走れ!チビ達は抱えて走れ!教会の中に入れれば大丈夫だから!とにかく、走れ!」

俺は無駄だと分かっていたが、魔法で壁を作り少しでも足止めをして彼らが教会に入る時間をかせいだ。
ふと、教会を見ると騒ぎに気づいて出てきたのかレジー達がいた。俺は咄嗟に

「レジー、そいつらを保護!早くしろ!」

レジーは年長組を集め、走ってきている10人の子供達を教会に引き入れた。後は俺だけ。
俺は後少しで教会に着く所で、追手の一人が投げたナイフが背中に刺さり、その場に倒れた。
また死ぬのかな?俺

気がついたら、腰に手を当てて怒ってますと言うような顔の神様がいた。

「私、言いましたよね?今回は危険だと。何で一人で行動したんですか!」

いまいち状況が読めないが、取り敢えず神様の質問に答えよう。

「レジー達は忙しそうだったし、神様だって特にレジー達に手伝ってもらえとは言ってないよね?丸投げだったし」

丸投げで少し怯んだが、

「それでも、誰にも何も言わずに行くのは団体生活の場ではあり得ません」

「メモしたけど?」

「剥がれ落ちて、捨てられたので伝わってません」

「あらら、落ちちゃったの?」

神様はあきれたように

「はぁ、今回は私も言葉が足らなかったと言うことで、小言もここまでにします。後はあの子達に怒られてください。怪我は私が治しました。ですが、今回限りです。次は助けられません。どうか気をつけて。追手の人達は加護に弾かれたときに記憶を改竄して子供達を見失ったことにしてます」

「怪我、治してくれたんですか?ありがとうございます。でも、あの子達って?怒られるって何ですか?」

神様は答えず、手を降って

「次回はまだ余裕があるので、親睦を深める時間に使ってください」

そう言って、俺の意識は現実に戻ってきた。
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