末っ子神様の世界に転生した何の取り柄のない平凡な俺がちょっとだけ神様の手伝いをする

菻莅❝りんり❞

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21 旅立ちの前

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外は雪がちらついている、2の刻。今、食堂には綺麗な服を着た大人の男の人と女の人。二人の子供と思われる男の子と、その他数人のがたいの良い人達と、俺にトーダ、アレン、ラインに、レジー、ジニー、パミル、セルディがいる。

話しは数日前、狩りの森で魔物に襲われている男の子を助けた事が発端だ。

今年はそれほど雪も降らなかったので、安心して狩りの森へ行けた。お肉の在庫も乏しくなり、お肉確保と、冬の時にしかない薬草の採集をしていた。

そんな時、子供の叫び声が聞こえ、急いで駆けつけるといつもは冬眠しているはずの熊の魔物が子供を襲おうとしているところだった。

的が大きいので、多少派手な魔法を使っても子供には当たらないと判断したトーダが風の魔法を放った。熊の意識が俺達に向いた瞬間、木の上で気配を消して隠れていたアレンが、子供を保護し戦線から離れた。

それを確認して、トーダとラインが攻撃を再開した。熊の魔物は大きいから動きは遅いので、動きの早いトーダ達に翻弄されすぐに倒された。

俺はトーダ達が攻撃を再開した時、アレンの所に走り、子供のケガの有無を確認した。子供は転んだのか、膝を少し擦りむいているだけで、大きなケガはなかった。相当怖かったのか、アレンにしがみついたまま泣いていた。

トーダ達は熊の魔物の解体まで済ませてから、俺達の所まで来た。

「どうしてこんな所に、一人でいたんだ?」

と、トーダが聞いたが、子供は未だに泣き続けている。

「泣き止むまで待つしかないね」

アレンって基本、年下には優しいんだよね。なのに何でだか俺には厳しい。つい、ジト目でアレンを見てしまった。

ゆっくり休めるように、簡易サンクチュアリを設置して、泣いている子供はアレンに任せて、マジックバックからホカホカのスープ鍋を取り出した。

冬の狩りの森に、長居をするつもりはないけど、寒さでどうしても体は冷えてしまう。その為セルディがスープ鍋を持たせてくれた。それがこんな感じで役立つとは思ってなかっただろう。

スープの匂いに、恐怖よりも食欲が勝ったようで、子供は泣き止んで、こっちを見ていた。

「お前も食べるか?」

ラインが子供に聞くと、おずおずと頷いた。
ラインが予備のお椀にスープを注ぎ、子供に渡した。

「熱いから、気を付けろよ」

「う、うん。あ、ありが、、とう、」

誰も何も話さず、スープをすする音だけがした。
沈黙に耐えられなかったのか、トーダが

「うまいか?」

子供は、ふーふーと冷ましながらゆっくりと飲んでいたが、あまり減っているようには見えなかった。トーダの問いに少しためらいながら

「ちょっと、味がこい、気がする、、けど、おいしい」

「・・・正直だな」

実はこのスープを作ったのはトーダだ。スープを作ってから、狩りの準備をしていたので、出来たスープ鍋を俺に持たせてくれたのが、セルディだっただけで。

トーダと子供以外はスープにむせた。スープを作った人物を知っているだけに、笑いが押さえられなかった。

スープも食べ終わり、子供も落ち着いてきたから事情を聞こうとした時、大勢の人の声と、馬車の音がこっちに向かってくるのがわかった。
俺は子供を預かり、トーダ達は結界内から警戒体制を取った。

しかし、いち早く声の主がわかった子供は、

「お父様~、お母様~、ここで~す」

と大声で叫んだ。子供の声に答えるように

「旦那様、こちらからミカエル様のお声が」

どうやら子供のお迎えが来たようだ。子供が嬉しそうにしているので、トーダ達は警戒を解いた。俺は子供から手を離し、魔石の回収を始めた。

一分も経たない内に、大勢の騎士と馬車が一台、俺達の前に止まった。騎士達は剣を抜き、俺達に剣先を向けてきた。
いきなり剣を向けられ、子供は俺達の後ろに隠れた。

「随分なご挨拶だな。何も聞かずに剣を抜くか、普通?」

「ミカエル様を離せ。そうすれば今回だけは見逃す。拒否すれば、命の保証はない」

と、騎士達のリーダーっぽい人が言った。
人の話を聞かないタイプか?

「セダ止めよ。皆も剣を引け、ミカが怖がっている」

馬車の中から声がしたと思ったら、男の人が降りてきた。

「あっ、お父様!」

子供は俺達の後ろから男の人に手を振った。
俺は、子供を連れて男の人の前に行った。トーダ達も後ろから付いてきた。

「ビッグベアーに襲われている所を助けました。だけど、転んだかして膝を擦りむいただけで、大きなケガはありません。恐怖からさっきまで泣いていたので、お子さんがなぜ一人で居たのは聞けませんでした」

と、男の人に伝え、今度は子供の方を見て

「ご両親が来てくれて良かったね。でもこんな危ない森で一人になるのは良くないよ。もう、ご両親からはぐれたらダメだよ」

そう言って、子供を男の人に渡した。

「あなた達も、子供から目を離さないようにしてください。トーダ、アレン、ライン行こう」

トーダ達は何か言いたそうだったけど、俺は小さく首を振り、進むよう促した。
見た目からして絶対に貴族だ。為人がわからない以上、関わるべきじゃない。
引き留める声がしてるが、聞こえないふりで森を出た。

なのに5日後、あの貴族が教会に現れた。あの時のような大勢ではないが、少数の騎士もいる。

「やっと見つけたよ。あの時のお礼をしたくてね、探したよ。中に入っても?」

教会前の雪かきをしていた俺は、一緒にしていたレジーとジニーに、トーダ達を呼んで来てくれるようにお願いした。

「よく、ここが分かりましたね?後を付けていた人は撒いたと、思ってたんですが」

「ハハ、確かに撒かれた、と報告を受けたよ。でも君達はスラムでは有名みたいでね。すぐにわかったよ。ただ誰も君達の居場所を知らなくて、そこは苦労したよ」

俺が男の人と話してると、トーダ達が来た。

「ミクリ、大丈夫か?」

「大丈夫。お礼を言いに来ただけのようだ、、」

後ろを向き、トーダの問いに答えると、視界に入った神像の前に神様がいて、手を振っていた。

「悪い、トーダ。ちょっとここ頼む」

早口でそう言うと、急いで神様の所へ行くと

「ミクリさん。あの人達がミクリさんが希望した人達です。地方から出てきてもらいました。予想外だったのは、子供の行動力ですね。でもミクリさん達が近くにいて良かったです」

俺は額に手を当てて、大きくため息を吐いた。

コソコソ「神様、そういうことは言っといて下さい。今回神様から何も言われてなかったので、信用出来ない貴族と思ったじゃないですか!じゃ、あの人達は神様のお墨付きなんですね?」

「はい。信用出来る人ですよ」

そう言って、消えていった。例の貴族の人達がいるので、教壇に隠れるように、小声で神様と会話をした。俺はもう一度ため息を吐いて、トーダ達を呼び、あの人達は神様が俺達に引き合わせようと、呼び寄せた事を伝えた。

トーダはジニーにパミルとセルディを食堂に連れてくるようお願いして、

「待たせた。外は寒いだろう、入ってれ(入れるならな)」

うん?最後なんか言った?俺はトーダを見たが、トーダはなんでもないように貴族の人達を案内した。
結果から言えば、全員弾かれることなく、入れた。
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