お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞

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家の為に半ば売られるように私はある貴族に嫁がされた。

その貴族は、愛し合う下位貴族の令嬢を本邸に囲っている。

爵位の問題で本妻と出来ないので、お飾りの妻を娶り、跡継ぎは本命に産んで、お飾りの妻の子と届けを出し、そのまま手元で育てるらしい。

だから、ほとんどの貴族はそんな所に娘をやるはずはない。

だから、ある理由から借金がある我が家に白羽の矢が立った。

借金の肩代わりに、代替わりまでの資金援助。
こんな条件を出され、二つ返事で両親は私を売った。

結婚式もなしで初夜もなし。嫁いですぐに別棟に押し込められ、使用人も付けてはもらえなかった。実家からも使用人を連れてくることもダメだと言われ、私は1人、別棟で途方にくれた。


家から持ってきたのは、カバン一つ。
その中身は、数枚の着替えと数個の宝石だけ。

「やってらんない」

なにかが切れた私は、数日かけてこの家の警備状況や出入り口の場所、使用人の動きを確認した。

そしてある昼下がり、私は嫁ぎ先から誰にも知られず、見られず出ていくことに成功した。

ここにいた数日、誰1人として訪れることの無かった別棟から、一人の人が居なくなったことに気づく者は誰も居なかった。

ただ一羽の鷹だけがそれを見ていた。
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