お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞

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宝石を全部換金するため、私はある質屋に来ていた。

「たのもー」

私が大きな声で言うと、奥から目が隠れる位前髪を伸ばした、ヒョロと背の高い男が出てきた。

「道場破りじゃないのだから、その掛け声は無いんじゃないかな?しかも君、曲がりなりにも淑女でしょ?」

目は見えないけど、呆れた様子のわかる態度をとり、番台に座った男に

「今、この時から、貴族じゃなくなるので淑女とか関係ないです。これを換金してください」

と、手持ちの宝石を全部だした。

それを見た男は

「そっか、行くのか。わかった、少し待ってろ」

子供の時から、この質屋にはなにかとお世話になっている。だから、この店主とも顔馴染みなのだ。

まだ家にいたときから、「いつかここを出ていくから、そのときは高く宝石を買い取ってね」といい続けていた。
だから店主は、この宝石を見て全てを悟った。

暫くお店の中を物色していると、奥から店主が出てきた。

「ほら、俺からの餞別でちと多めに買い取った」

そう言って、パンパンに膨らんだ布袋を渡してきた。

「金貨は数枚だけで、後は使いやすいように崩してある。少し重く嵩張るが、我慢してくれ」

私は布袋を受けとると

「ううん、ありがとう。、、、お兄様に会うことがあれば、ごめんなさいって謝っていて」

兄だけが私にとって唯一の家族だ。兄だけがあの家で私を見てくれた。
だから、どんなに逃げ出したくなっても、あの家にいる間は逃げずに踏ん張ってた。

でも、両親に売られ、嫁ぎ先では放置。
兄という支えがなければ、簡単に私は逃げ出した。

「いつか本人に直接言え」

「・・・・ケチ」

暫く睨みあっていたけど、私は目を瞑り、一呼吸して、荷物を抱え直すと

「行ってきます!」

と笑って言って、お店を後にした。

****

「行ったぞ。ったく、めんどくさい兄妹だな」

店主は振り返り言うと、奥から少女に似た青年が出てきた。

「うるさい。あいつが決めたことを止めるわけにはいかないだろう。止めたとしても、俺はあいつを守りきれない」

青年は寂しそうな目で、お店の出口を見た。

「体に気をつけて、行ってらっしゃい」

店主はやれやれというように頭を振り、お店の奥へと行った。

青年はそんな店主を横目に、暫くの間その場に留まっていた。
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