2 / 15
2
しおりを挟む
宝石を全部換金するため、私はある質屋に来ていた。
「たのもー」
私が大きな声で言うと、奥から目が隠れる位前髪を伸ばした、ヒョロと背の高い男が出てきた。
「道場破りじゃないのだから、その掛け声は無いんじゃないかな?しかも君、曲がりなりにも淑女でしょ?」
目は見えないけど、呆れた様子のわかる態度をとり、番台に座った男に
「今、この時から、貴族じゃなくなるので淑女とか関係ないです。これを換金してください」
と、手持ちの宝石を全部だした。
それを見た男は
「そっか、行くのか。わかった、少し待ってろ」
子供の時から、この質屋にはなにかとお世話になっている。だから、この店主とも顔馴染みなのだ。
まだ家にいたときから、「いつかここを出ていくから、そのときは高く宝石を買い取ってね」といい続けていた。
だから店主は、この宝石を見て全てを悟った。
暫くお店の中を物色していると、奥から店主が出てきた。
「ほら、俺からの餞別でちと多めに買い取った」
そう言って、パンパンに膨らんだ布袋を渡してきた。
「金貨は数枚だけで、後は使いやすいように崩してある。少し重く嵩張るが、我慢してくれ」
私は布袋を受けとると
「ううん、ありがとう。、、、お兄様に会うことがあれば、ごめんなさいって謝っていて」
兄だけが私にとって唯一の家族だ。兄だけがあの家で私を見てくれた。
だから、どんなに逃げ出したくなっても、あの家にいる間は逃げずに踏ん張ってた。
でも、両親に売られ、嫁ぎ先では放置。
兄という支えがなければ、簡単に私は逃げ出した。
「いつか本人に直接言え」
「・・・・ケチ」
暫く睨みあっていたけど、私は目を瞑り、一呼吸して、荷物を抱え直すと
「行ってきます!」
と笑って言って、お店を後にした。
****
「行ったぞ。ったく、めんどくさい兄妹だな」
店主は振り返り言うと、奥から少女に似た青年が出てきた。
「うるさい。あいつが決めたことを止めるわけにはいかないだろう。止めたとしても、俺はあいつを守りきれない」
青年は寂しそうな目で、お店の出口を見た。
「体に気をつけて、行ってらっしゃい」
店主はやれやれというように頭を振り、お店の奥へと行った。
青年はそんな店主を横目に、暫くの間その場に留まっていた。
「たのもー」
私が大きな声で言うと、奥から目が隠れる位前髪を伸ばした、ヒョロと背の高い男が出てきた。
「道場破りじゃないのだから、その掛け声は無いんじゃないかな?しかも君、曲がりなりにも淑女でしょ?」
目は見えないけど、呆れた様子のわかる態度をとり、番台に座った男に
「今、この時から、貴族じゃなくなるので淑女とか関係ないです。これを換金してください」
と、手持ちの宝石を全部だした。
それを見た男は
「そっか、行くのか。わかった、少し待ってろ」
子供の時から、この質屋にはなにかとお世話になっている。だから、この店主とも顔馴染みなのだ。
まだ家にいたときから、「いつかここを出ていくから、そのときは高く宝石を買い取ってね」といい続けていた。
だから店主は、この宝石を見て全てを悟った。
暫くお店の中を物色していると、奥から店主が出てきた。
「ほら、俺からの餞別でちと多めに買い取った」
そう言って、パンパンに膨らんだ布袋を渡してきた。
「金貨は数枚だけで、後は使いやすいように崩してある。少し重く嵩張るが、我慢してくれ」
私は布袋を受けとると
「ううん、ありがとう。、、、お兄様に会うことがあれば、ごめんなさいって謝っていて」
兄だけが私にとって唯一の家族だ。兄だけがあの家で私を見てくれた。
だから、どんなに逃げ出したくなっても、あの家にいる間は逃げずに踏ん張ってた。
でも、両親に売られ、嫁ぎ先では放置。
兄という支えがなければ、簡単に私は逃げ出した。
「いつか本人に直接言え」
「・・・・ケチ」
暫く睨みあっていたけど、私は目を瞑り、一呼吸して、荷物を抱え直すと
「行ってきます!」
と笑って言って、お店を後にした。
****
「行ったぞ。ったく、めんどくさい兄妹だな」
店主は振り返り言うと、奥から少女に似た青年が出てきた。
「うるさい。あいつが決めたことを止めるわけにはいかないだろう。止めたとしても、俺はあいつを守りきれない」
青年は寂しそうな目で、お店の出口を見た。
「体に気をつけて、行ってらっしゃい」
店主はやれやれというように頭を振り、お店の奥へと行った。
青年はそんな店主を横目に、暫くの間その場に留まっていた。
1,798
あなたにおすすめの小説
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました
ほーみ
恋愛
その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。
「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」
そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。
「……は?」
まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
王太子妃に興味はないのに
藤田菜
ファンタジー
眉目秀麗で芸術的才能もある第一王子に比べ、内気で冴えない第二王子に嫁いだアイリス。周囲にはその立場を憐れまれ、第一王子妃には冷たく当たられる。しかし誰に何と言われようとも、アイリスには関係ない。アイリスのすべきことはただ一つ、第二王子を支えることだけ。
その結果誰もが羨む王太子妃という立場になろうとも、彼女は何も変わらない。王太子妃に興味はないのだ。アイリスが興味があるものは、ただ一つだけ。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました
毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作
『魔力掲示板』
特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。
平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。
今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
契約結婚なら「愛さない」なんて条件は曖昧すぎると思うの
七辻ゆゆ
ファンタジー
だからきちんと、お互い納得する契約をしました。完全別居、3年後に離縁、お金がもらえるのをとても楽しみにしていたのですが、愛人さんがやってきましたよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる