知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞

文字の大きさ
2 / 45

2 獣化はおおごとでした

しおりを挟む
俺は父上に促されベッドへ戻った。
そして、いつの間にか呼んでいた医術長に診てもらい、もう大丈夫との診断をもらった。

その言葉に家族と控えていた使用人がほっとしたのがわかった。
医術長が下がり、家族と使用人だけになると、

「遅くなったが、大丈夫ならルイの誕生日をやり直そう」

と、父上が言えば

「ええ、それは良いわね。ジルミア、マーノ。準備をしましょう」

「「はい。妃殿下!」」

母様が俺の髪を撫でてから、お付きの侍女を引き連れてウキウキと部屋を出ていった。

そんな母様を父上は愛しそうに見送った。
そして、セレナ姉様とレーナ姉上も母様を手伝うと言って、俺を撫でてから部屋を出た。

なぜ俺を撫でてから出ていく?

俺の部屋には、空気になっている女性使用人を除けば男だけが残った。

まぁ、見目もいいし、細身だからむさ苦しくはないけど、どっちか一人くらいは残っててもらいたかった。

そんな思いが顔に出ていたのか

「なんだアル、母上が恋しいのか?もう7歳なんだから、乳離れしろよ」

と、リード兄上がからかってきた。しかも、やや乱暴に俺の頭を撫でながら。

「ちょっ、リード兄上、痛い。それに、別に恋しい訳じゃないよ。レーナ姉上までが行ったことが意外だっただけだよ」

これも嘘ではない。女性でいて男らしいレーナ姉上は、いつまでも少女のような母様を避けていたからだ。

別に嫌いだからではない。レーナ姉上は華美なドレスが苦手なのだ。今だって、ドレス風のズボンを着ている。

しかし、母様はレーナ姉上やセレナ姉様を着飾りたくて仕方ない。だからレーナ姉上は、必要以上に母様に接するのを避けている。

「リード、一応ルイは病み上がりなんだから、手加減してあげな」

リード兄上が乱した髪を整えるように、俺の頭を撫でるアッシュ兄上。

「なんで皆して俺の頭を撫でるのさ」

気恥ずかしくて、少しぶっきらぼうに言うと

「皆心配していたからな。元気になって嬉しいんだ。大人しく撫でられてやれ」

と言いつつ、父上も参戦した。
ただオーバーヒートしただけで心配かけたのは申し訳なかったけど、やっぱり恥ずかしくて俺は獣化をして、ベッドに潜り込んだ。

しかし、自分で思ったも小さく感じて、毛布の中でもモゾモゾしながら全身を確認すると、子猫サイズだった。

「なんで、子猫サイズなんだよ。成猫とまではいかなくても、もう少し大きいと思ってたのに」

俺が打ちひしがれていると、毛布を剥ぎ取られ、驚いた俺は、しっぽの先まで毛が逆立った。

俺は今日だけで何度、驚かされているのだろう?

しかし、俺以上に父上達も驚いていて、目と口が開いていた。

父上達は固まっていて中々動かない。俺は驚きから立ち直り、所在なくベットの上をウロウロしていた。

そんな俺の動きを目で追ってはいるが、未だに目も口も開いたままだ。

目と口乾くよ?ってか、まばたきもしてなくない?父上達を正気に戻すためにも、ここは猫の鳴き真似でもしてみるべきか?

ベットの中央に座り、父上達を見上げ、首を傾げて考えていると、母様達が戻ってきた。

「ライド、お父様達がルイに会いたいと来ているのだけど、お通ししていいかしら?ライド?」

父上がなんの反応もしないことを訝しがり、部屋に入ってきた母様は、父上達の視線の先を見た。

母様と目が合った。その途端

「きゃーー!かわいい!その色と瞳はルイね?まさか獣化出来るの?かわいいわ!」

きゃっきゃっと母様が俺を抱っこしたり、くるくる回ったりしていた。
そんな声にようやく正気に戻った父上達は、母様を落ち着かせ、母様から俺を救出した。

父上は別に救出したつもりではなかっただろうけど、ベッドに戻された俺は、目が回ってフラフラしていた。

「だ、大丈夫か、ルイ?しかし、いくら俺の子でも、竜人ではないのに獣化するなんて聞いたことないな。誰か父上を呼んで、、」

「もう、来とる。孫の様子を見に、トルズ達も来とるぞ」

おお、お祖父様´ズも来た。そういえば、母様が来てるって言ってたね。

一人で使うには広すぎる部屋だけど、ここまで人が集まると、狭く感じるな。

皆が俺を見ている。子猫サイズで見下ろされているとなんか圧がすごい。俺は獣化を解いた。

「ふむ。すでに獣化を使いこなすか。ルイスよ、熱はもう大丈夫なのか?」

「はい、大丈夫です。ご心配おかけしました」

「それでは、場所を移動しよう。第6サロンは空いているか?」

お祖父様が控えている使用人に確認すると

「はい、大丈夫でございます。すぐに準備いたします」

そう言って消えた。、、え?消えた?
そして少ししてからまた現れて、

「準備が整いました」

と言った。

この世界に産まれて早7年。記憶も整理されて、今までの事もちゃんと覚えているし、分かる。

でも、父上達が来たときもそうだけど、俺の知らない事が今起きている。

俺は、消えて現れた使用人から目を離さずに、

「父上?今、あの人いきなり消えて、また急に現れましたよ?」

父上は一瞬、何を言われたのか分かってなかったけど、俺の視線が固定されているのを見て

「ああ、今までルイは認識出来ていなかったのか。俺達竜人は転移魔法が使えるんだよ。この城は無駄に大きくて広いからな。あらかじめ許可されている場所なら転移での移動が基本だ。だから城で働いてる獣人は、竜人とペアを組んでいる。その事も含めて、改めて説明しよう。今は部屋を移動しよう」

そう言って、俺をベッドから降ろした。しかし俺は寝巻きのまま。

「父上、ルイは俺が連れていくので先に行っていてください」

「分かった。では、皆行くぞ」

お祖父様がそう言うと、音もなく消えた。何度見ても不思議だ。

俺は、俺付きの侍従に衣装部屋に連れていかれ、着替えた。そして、父上の所へいくと

「では行こうか」

と言ってなんのモーションもなく、いきなり部屋の景色が変わり、母様達やお祖父様達が目の前にいた。しかし、俺の意識は部屋の内装に持っていかれた。

「なんか、派手な場所ですね?」

そう、広い部屋全体にキラキラと飾りつけがされていたるのだ。まるで、ここでパーティーでもするような、母様好みの華美な飾りつけが

「うん?ここは第6サロンではないな。ルナが俺をここに呼んだのか?」

「ええそうよ。ここはルイの誕生日パーティーをしようと準備していた場所なの。難しい話の後にすぐに祝えるように、お義父様にここに変更してもらったのよ」

何でも竜人と番になれば、番の事を強く念じれば自分の所へ転移させられるらしい。まぁ、相手が必ず転移魔法を使うと分からなければ、意味ないみたいだけど

「ならばさっさと話を終わらせ、ルイの誕生日を祝おう」

父上の優先順位は常に母様だもんね。周りも当たり前のように受け入れているし。

たぶん俺の天啓や獣化の話がメインなのだろうけど。父上、本当にさっさと話を終わらせられるのかな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

処理中です...