一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います

菻莅❝りんり❞

文字の大きさ
17 / 65

16 妖精が見せる夢

しおりを挟む
愛しい我が子の叫び声に導かれるように、その姿が俺達の前に現れた。

「ああ、リック!リック!」

レイナがリックを抱きしめようとするけど、その手は空を切るだけだった。

俺はレイナの肩を抱きしめた。

「おそらくこれは幻影だ。だけど、この幻影は幻影であってそうではない。神に祈った時に俺が言ったことが現実になったな。リックを置き去りにした俺たちには、何かしらの試練があるかもと。おそらく、これがそれなのだろう」

リックを置き去りにしたのは、1週間前。
さっきリックはこう言った。「おいてかれる」と。なら、これは1週間前の出来事なのだろう。

時々、リックが何を言っているのか聞き取れない部分がある。読唇術をマスターしているセバスを見たけど、首を振られた。
うまい具合に唇の動きもぼかしているからだ。

「子供はよく見ているものだな。まさか、非常用のランプの場所や使い方を知っているとは」

「まぁ、あんな所にステッキを隠してあったなんて」

「リックは相変わらずなのだな」

「ふふ」

俺を筆頭にレイナ、父上、母上と続いた。

リリーは気づかなったと落ち込み、セバスは少し眉を動かしただけで、いつもの顔に戻った。

子供達はだいぶ静かだが、もしかしたら子供達だけ本当に夢を見ているだけなのかもしれない。

リックは厨房へ行くと、真っ先に冷蔵庫に向かった。
尻もちも付きながらも開けた冷蔵庫の中は、空っぽ。冷蔵庫を親の仇見たに睨みを付けて別の場所に向かった。
次に向かったのは、根菜なんかを置いている倉庫だ。

「リックはなんで食材の置いてある場所を知っているんだ?」

俺が疑問を口にすると

「リック様の行動範囲が我々が思っているよりも広い、と言うことでしょうね」


リックは倉庫の扉を見てすぐに踵を返した。次に向かったのは使用人たちの休憩所。

「ふっ。ここにりりーたちが、おかしをかくしてるの、しってるもんね」

と言って、棚の前にランプを置き、イスを引きずってきた。

「ど、どうして、知って、、はっ!あのそのセバスさんこれはですね!」

リリーは、リックが使用人たちのお菓子の隠し場所を知っていることに驚き、慌ててセバスに言い訳をし始めた。

「私も、旦那様や奥様もご存知です。自分達の給料から出して買ったものにとやかく言いませんよ」

とセバスは淡々と言った。リリーはほっと胸をなで下ろしたけど、顔色は悪い。だから俺が少しだけフォローする事にした。

「あそこは使用人達の休憩所だ。お茶を飲もうとお菓子を食べようと、後の仕事に差し支えなせれば、それに、それが使用人達に必要な事なら何も言わないさ。だけど、勤務中に酒などを飲むのはだめだからな」

と、最後は冗談を交えて言った。だがこれは失敗だったようだ。

「だったら父上も気付けだって言って、隠してるお酒を仕事中に飲むのはダメだと思うよ?」

「お母様やセバスの目が無いとすぐサボるのもね」

今まで何の反応も示さなかった子供達の声に、俺は冷や汗が出た。

「ハハ、何を言ってるだい?ジャック、ローズ」

大人組の視線が、特にセバスの視線が痛い。

「父上。子供は大人が思うより大人を、親を見ているものです」

「お母様やセバスの事だけでなく、私たちの存在にも注意が必要という事ですわ」

ジャックは呆れたように、ローズは得意そうにそう言った。

「帰ったら執務室の大掃除が必要ですね」

「ライル?リックの無事を祈るためにも、ゲン担ぎで戻るまで禁酒、しましょうね?」

「・・・楽しみが、、、はい」

是しか許さない雰囲気に、俺は項垂れながら返事をした。

「あちゅ!」

とのリックの声に、俺達の意識はリックに戻った。

「あれは、厨房にある手洗い場?なんであんな場所にいて、何で沸騰してるんだ?」

「まぁ!ヤケドをしなかったかしら」

俺の疑問に答えたのはセバスだった。

「戸棚からお菓子を見つけたリック様が飲み物を求めてあの場所へ。そのまま飲んでしまはないかヒヤヒヤしましたが、そのまま飲まず、飲めるか悩んでいらしゃいました。すると突然、鑑定の能力に目覚められました」

「は?鑑定?」

鑑定って、あの鑑定か?リックはまだ3歳だぞ?
俺の混乱を他所に、セバスは続けた。

「鑑定に何と出たのか分かりませんが、厨房の方を見て❝火は使えない❞とおしゃられ、厨房の水道の方を見て困ったお顔をされました。すると、突然手洗い場の水が沸騰され、弾けた水滴がリック様の頬に飛んだのです」

セバスはリックから目を離さずに言った。

「お近くにリック様のお姿がある時はお目を離さぬよう、言ったはずですが?」

セバスの言葉にリリーが姿勢を正し、リックを凝視した。
子供達も慌ててリックの方を見て、父上達やレイナはしれっと、俺から視線を外した。

「いつも思ってたけど。セバス、俺へのあたり強くないか?」

「気のせいです」

俺の言葉に即座に返してきた。その即答が怪しいと思ったけど、今はリックが先だと、俺もリックに集中した。

手洗い場の沸騰が治まり、リックが「まだ熱そう」と言うと、急に冷めた。

「!!おい、今、コップが」

リックは手洗い場の水を見て、驚きの声を上げていて気づいてないみたいだけど、今、流し台にあったコップがひとりでに動いて、手洗い場の縁に移動した。

リックは、コップの存在に気づいて少し怯えていたけど、すぐにそれに水を入れた。

「なぁ、今のって」

今、リックはコップとランプを交互に持ちながら、休憩所に向かっている。

だけど、その前にあったことが衝撃だった。

「微かに光の粒が見えたので、もしかしたら妖精が近くにいるのかもしれません」

俺には見えなかったものが、セバスには見えていたようだ。

「妖精、、、。もしかして、本当に神がリックを助けてくれているっていうのか?」

お菓子を食べて、お腹いっぱいになったリックはそのまま寝てしまった。
だけど、何処からかブランケットが飛んできて、リックに被せてくれた。
その時、俺にも確かに見えた。妖精の光が

「ああ、神よ。感謝します」

リックが眠ったからか、リックの姿が遠くなって、俺達の目覚めが近いのがわかった。
俺は見えなくなるまでリックを見つめ続けた。

「リック、置いていってしまって済まなかった。でも必ずまた会えるから。だから、だからそれまで元気でいてくれ!生きていてくれ!皆で必ず帰るから!リック、リック!」

この声は届かないだろう。でも言いたかった。幼い息子に生きていて欲しいから。生き抜いて欲しいから。

リックの姿が完全に見えなくなったら、目が覚めた。


*****
き、気づけばお気に入り数が3桁!!沢山のお応援、ありがとうございます🙂‍↕️🥳🥰←(ちょっとはしゃぎすぎかな?)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...