初恋音物語

海音

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初恋音物語#7変化

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#7変化

未来は今学校に行く準備をしている、もうちょっと休もうと思っていたはずだったけど

「海音に会いたいから」

そう呟いて制服を着る

準備を終え玄関に向かいドアノブに手を掛けた時

「どうして...手に力が入らない..」

何回手に力を込めようとしても手が言う事を聞かない

「どうして...」

手が震える

「海音に会いたいのに..」

何度口に出してもドアが開けられない


「おそらく、ストレスが原因の自律神経失調症でしょう」

あの後、お母さんに相談して病院に行くことになった

「何か最近大きなストレスを感じる事はありましたか?」

お医者さんに質問され私は下を向いた

そうしたらお医者さんは何かを察したかのように

「まぁ、年頃ですしそんな事もあるでしょう。精神安定剤を処方しておきますので1日2錠朝と晩に飲んでください」

「は..はい...」

「もし、症状の改善が見られない場合はもう一度受診をお願いします」

「わかりました」

お母さんがそう言って

その日は家に帰り、学校を休んだ。

帰り道、未来はポケットからスマホを取り出した

「これはできるんだ」

そう言って未来はスマホをポケットにしまった。


帰宅


なんとも言えない気持ちになりながら特にこれといった事もせずにぼーっとしていると

「未来、先生から電話きて未来と話したいって言ってるけどどうする?」

お母さんにそう言われた

「誰先生?」

未来が聞くと

「保健室の先生だって」

お母さんが答えた

「じゃあ話す」

と、言って未来はスマホを耳に当てた

「こ..こんにちは...」

未来が挨拶をすると

「あっ!未来ちゃんそんなに緊張しなくて良いからね!」

先生は嬉しそうだった

「先生..何で私こうなっちゃったんですか?」

「もう、生きる意味なんて無いと思っちゃうんです」

「死んで良いですか?」

そう言いながら未来は自分の部屋に向かっていた

勉強机の引き出しから靴紐を取り出した

(凛と遊びに行った時にお揃いで買ったんだっけ)

(ずっと使ってなかったけど、やっと使える)

「先生、今までありがとうございました」

電話越しにそう言うと未来は靴紐を首に巻き始めた

床に落としたスマホからは先生の焦りの声が聞こえる

未来は靴紐の両端を勢いよく引っ張って自分の首を絞めた

あっという間に意識が遠のいた。


(未来!未来!起きろ!未来!)

はっきりしない意識の中そんな声が聞こえた気がした。

(起きろ!起きてくれ!)

さっきよりはっきりと聞こえた

(うん...う..ここどこ?)

未来は目を開いた

視界には覗き込むように未来を見つめる海音の姿があった。

「か..海音...」

掠れ掠れの声で呟いた

「良かった、目を覚ましてくれて」

海音はほっとしたかのように溜息をつく

「ここどこ?」

未来は動揺している

「病院」

海音は答えた

「何で病院にいるの?」

未来の疑問は深まるばかり

「えっと...その..」

海音は何かを渋っているようだった。

「うんーなんか頭に引っ掛かるんだよなー」

未来は目覚めてからずっと頭の中に何か思い出せそうで思い出せないもどかしい何かがずっと引っ掛かっていた。

「起きたばっかだし、何か飲み物でも買ってくるよ」

海音はここぞとばかりに話を変えて飲み物を買いに部屋を出て行った。


数分後


海音が飲み物を二つ持って戻ってきた

「はい、これ」

そう言って海音は未来にコーラを差し出した

「ありがとう」

そう言って未来はペットボトルを開けてコーラを飲んだ

「ぷはぁ~、おいしい~」

「で、何で私入院してるの?」

未来が不思議そうな顔をした

「えっと..その...」

返答に困っているようだった

「もー!何で教えてくれないの!!」

未来は頬を膨らませて言った。

「そういえば、私どれくらいの間眠ってたの?」

「3日..」

海音は確かにそう答えた

「みっ..み..3日!!」

未来は目を丸くして驚いた

「てことは...」

未来は考えるように言う

「私3日間も同じ服着てるの!!」

未来は自分を確かめるように見た

「ってあれ?服が変わってる」

その瞬間海音の頬が赤くなっていた

「どうしたの?」

未来は心配そうに海音を見つめる

「き...きが..え....着替えさせた」

海音が後ろめたそうに下を向いて言った

「えっ!海音が!!」

未来は病院中に響き渡るような声で驚いた

「ってことは海音...私の裸見たの!!!!!!」

未来は真っ赤になった顔を両手で隠した

「ご..ごめん!!断ったんだけど未来のお母さんに...」

海音が必死に弁解する

「お母さんがなんか言ったの?」

未来はちょっと怒っているような声色で海音に聞いた

「未来のお母さんが一人で着替えさせるのが大変だからって...彼氏だから見ても大丈夫でしょって....」

海音は正直に話した

「お母さん...絶対わざとだ..」

ふと海音の方を見ると、申し訳なさそうな顔をしている

(ちょっと言い過ぎちゃったかな...?)

(ごめんなさい)

未来は心の中で謝った、直接は言えなかった

(だってこっちは裸見られたんだし....)

「ずっと寝てたんだしちょっと歩こうかな」

ベットで上半身だけ起こして海音と喋っていた

未来はベットから足を下ろそうとした


その時...


ガシャッ

金属が擦れるような音が響いた

「なに...これ....」

未来の両足は金属の鎖でベットに固定されていた

「どういうこと....?」

未来は驚きのあまり口が塞がらなかった

「あの..これは...」

海音が必死に未来を落ち着かせようとしている

「嫌だ」

「離して!!」

未来は思いっきり足を動かして鎖を外そうとしている

「嫌だ!嫌だ!」

未来の精神は完全に崩壊していた


事態に気付いた看護師が病室に入ってきた

未来は強くベットに押さえ付けられた

「やめろ!」

未来はそれでも暴れ続けた

すぐに医師が入ってきて麻酔を注射された。


1時間後


麻酔が切れて目を覚ました未来は落ち着いていた

ベットの横には椅子に座る海音の姿もあった

「未来...」

「話し掛けないで...」

海音の言葉を遮るように未来は呟いた

「気遣ってよ...」

未来は海音に背を向けたまま言った

「ごめん...」

海音は謝る事しかできなかった

「出てって」

冷たい声だった

海音は黙って病室から出て行った


(ごめんなさい...)

未来は心の中で海音に謝った。


その時海音は未来の病室のドアを出てすぐの所の壁に寄り掛かっていた

「あら、こんな所でどうしたの?」

未来のお母さんだった

「実は..」

海音は病室で起こった事を全て未来のお母さんに話した

「海音君、未来はね昔はすっごく明るくて元気でよく笑う子だったの」

未来のお母さんは言った

「未来が..?」

海音は少し困惑した

「でもね、お父さんが死んじゃったの..あの子お父さんっ子だったから」

「そうなんですか...」


「ここじゃあれだし、近くのカフェにでも言った話しましょう」

未来のお母さんが話を変えるように言った

そして、二人は近くのカフェに向かった。


未来は海音が出て行った後もずっと病室のドアに背を向けて布団中に蹲っていた


その時


「未来ー来たよー」

明るい声と共に病室のドアが開いた

「凛?」

未来は背を向けたまま聞くと

「そーだよー」

凛は答えた

「ごめん凛、せっかく来てくれたのに申し訳ないんだけど今人と話せる気分じゃないんだ」

未来は冷たい声で言った

「そっか...」

凛が少し悲しそうに言う

「じゃあせめて側に居させて」

「わかった」

凛のお願いに未来はそう答えた


数分の沈黙が流れた


「未来..」

凛は意を決して未来に話し掛けると

「話し掛けないで」

未来は凛を拒むように言った


「ごめんなさい...」

未来はが掠れる程小さい声で言った。


そのまま時は流れ夜になり未来は眠りについた

凛はその後もずっと未来の側に居た


深夜


未来は体に何かが乗っかった気がして目が覚めた

「凛..!?」

凛の目にはクマができていた

「未来..未来...私が側に居るから大丈夫だよ」

凛は寝言でそう言った

「凛..ありがとう」

未来は凛を起こさないように小さな声で言った

そのまま未来は凛に抱きつくようにして眠りについた。


早朝


先に目を覚ましたのは未来だった

未来はしっかりと凛に抱きついて寝ていた

(温かい)

未来はしばらくの間凛の温もりを感じていた


数秒後


「う..うぅ..まだ眠いよ...」

まだ半分寝ぼけた声で凛が言った

「あっ!」

とっさの事に未来は声を出して凛から離れた

未来の声で凛もはっきりと目を覚ました

「どうしたの未来?」

あたふたしている未来に凛が首を傾げて聞く

「えっと..その..これは..つまり...」

慌てて言い訳を考える未来を見て凛は言った

「いつもの未来だっ!」

凛は嬉しそうに笑った

それを聞いた未来は気がつくと凛と一緒に笑っていた

「なんか、未来の笑顔って初めて見た気がする」

それを聞いた瞬間未来の動きが止まった

「やっぱり...そうだよね..私、心のどこかで凛の事警戒してた、信じてなかった」

未来は思いの内を話し始めた

「また、苛められたらどうしようって常に頭のどこかで考えてて、凛とか海音にたくさん迷惑掛けて」

「そんなことないよ」

凛が言い切る前に

「そんなことないよって言われても私はそうは思えなかった、でもね.....」

未来はそう言うと、倒れるように凛に抱きついた

「大好きだから....」

か細い声で未来は言った

未来はそのまま続けて

「きっとこれからもたくさん迷惑を掛けると思う、海音とか凛の事を信じれないかもしれないけど..大好きだから海音の事も凛の事も...だから...大好きでいさせてください..」

凛は何も言えず、未来を抱きしめてあげることしかできなかった。


気がつくと凛に抱きしめられたまま未来は眠っていて、その顔はとても安心しているようだった。


「未来...」

もどかしそうな顔をしながら海音が病室に入ってきた

「しー」

凛は人差し指を唇に当てて静かにするように海音に促した

未来が眠っていることは聞かずともわかった

「未来は優しいから、全部独りで溜め込んで..ごめんね、気付いてあげられなくて」

凛は小さな声で言った

「辛かったよね...苦しい思いも、嫌な思いも全部...耐えきれないよね....死にたいって思っちゃうよね.....ごめんね...」

凛は涙を堪えながら言った

「泣かないで..凛...」

不意に聞こえた未来の凛は驚いて未来の方に視線を向けた

「なんだ、寝言か..でも...ありがとう、未来」

眠っている未来に向かって凛は言った

「凛..海音...大好きだよ....」

「未来はまだ眠っているみたいだね」

海音が言った

「僕も凛と同じで、なんで気付いてあげられなかったって思ってる...でも、それを未来に伝えたら未来はもっと悲しくなると思う。だから見せてあげたいんだ、未来が生きたいって思ってくれるような世界を」

海音は未来も見つめながらそう言った

「そうだね、私も見せたい。未来が生きたいって思える世界を」

凛は涙を拭って言った。


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