12 / 15
初恋音物語#12失っても
しおりを挟む
#12失っても
「ありがとうございました」
未来はお辞儀をして保健室のドアを閉めた。
(私は笑っていないといけない)
そう思って靴を履く。結局あの後みんなが帰るまで保健室に篭っていた。
雨が降りそうな曇り空の下を歩き出した、その間未来は考え事をしていた
(なんで生きているんだろう?)
もう。死んだって同じじゃないか。
じゃあ何故生きているのか、未来には解らなかった
そんな事思いながら歩いていた未来の視界にある人たちが映った
(あっ....)
苛めっ子達だった。でもいつもの高圧的な態度をした苛めっ子達ではなかった
(怯えてる...)
未来にはわかった。それによく見ると苛めっ子達に向かって何かを言ってる人達がいた、未来は電信柱の影に隠れてその人達が何を言っているのか耳を澄ませた
「何で金持って来てないんだよっ!」
「ごめんなさい、明日までには絶対用意しますので」
「は?何言ってんの?今すぐだよっ!」
その人達は今にも苛めっ子達に殴り掛かりそうな勢いだった
(助けなきゃ)
未来の脳裏にはそんな思いが過った、自分を死なせる程酷い事をたくさんしてきた人達なのに。
未来も何でそう思ったのか上手く言葉で説明できる自信はなかった
でも此処で自分に嘘をついたら、もっと自分が嫌いになる気がした。
そう感じ時すでに未来は苛めっ子達に向かって走り出していた
「やめてくださいっ!」
未来が双方の間に割り込んだ時、ちょうど相手の拳が降り掛かってきた。
その拳は勢い良く未来の頭に当たった、未来はそのまま地面に叩き付けられた
未来はそのまま意識を失ってしまった。
目が覚めた時未来の視界に映ったのは白い天井だった
「未来っ!私のことわかる?」
「良かった!未来!」
「海音...凛..どうしたの....?」
未来は目覚めたばかりで、まだ上手く回らない口で尋ねた
「目が覚めた様ですね、良かった」
そう言いながら部屋に入って来たのはおそらくお医者さんだろう
「まだ、目覚めたばかりで混乱する事も多いと思いますがゆっくりで良いので自分と向き合ってみてください」
未来は自分が苛めっ子達を助けようとしてこうなった事をどう捉えたら良いのかわからなかった。
その時病室のドアが開いた
「えっ..」
未来は言葉を失った、そこにいたのは紛れもなく未来を苛めてた苛めっ子達だ。
「あの...助けてくれてありがとう..それと...本当にごめんなさい」
苛めっ子達揃ってそう言って頭を下げた
未来は何も言えなかった
「あっ....」
(声が...でない..)
動揺した未来を見て後ろで見守ってくれていたお医者さんが何かを察したのか
「そろそろ診察の時間ですので、申し訳ないのですが今日はお帰り下さい」
そう言われた苛めっ子達は致し方なく病室を後にした
「初音さんこちらへ」
看護師さんに誘導されて未来は診察室に入った
未来は何も聞かされておらず何が何だか全く理解が出来なかった
「声、出せる?」
椅子に座った私に向かってお医者さんは言った
「あっ...あっ..」
未来は言われた通りにしてみても思うように声が出せなかった
「落ち着いてください、これを使って会話をしましょう」
そう言ってお医者さんはノートとペンを未来に差し出した。
未来はそれを受け取った
「既にお母さんには連絡済みなのでご安心下さい、それと...正直に申し上げますと初音さんは失声症だと思われます。まだ、精密検査をしていないので確かなの事は言えませんが十中八九そうだと思われます」
未来が首を傾げると
「失声症とは心因性発声障害とも呼ばれる、強いストレスや心的外傷などの心因性の原因とする突然声が出なくなってしまう精神的な病気の事です」
"治るんですか?"
未来はノートに書いてみせた
「治ります、ただ先程も言った通り精神的な物ですのでどれくらいで治るのかは初音さん次第と言ったところです」
その後は一通り検査をして未来は病室に戻った
(どうして.....)
未来は勢い良くベットに倒れ込んで布団に顔を沈めた
(ふざけんな!)
未来は心の中で布団に深く顔を沈めたまま叫んだ、口は動くのに声は出ない
未来は脚をバタバタさせ止まらない涙で布団を濡らした
(助けて)
心の声は届かない、届かないでほしい。もし届いてしまったら、もっと自分が嫌いになる
(もう嫌いだから今更どうでも良いか)
そんな言葉が未来の頭を過った
(結局最後はこうなるんだ...今まで何度も次は大丈夫って信じて来てもやっぱりダメだった...だったら最初から自分に期待なんてするんじゃなかった....)
(恋なんて...するんじゃなかった..)
(友達になんて...なるんじゃなかった..)
(独りでいよう)
未来は心にそう誓った。
人と話すのは検査の時だけの最低限度に抑えて、海音や凛からのメッセージは無視。お母さんとも全くと言っていい程喋ることはなかった。
入院と言えば学校にも行かなくて良い。
それで良かった
ここ数日毎日のように海音や凛からメッセージがきている。
そんな日々を過ごしていた
一週間後
「未来ちゃん、お友達が二人来てくれたよ」
看護師さんがそう言うと病室に海音と凛が入ってきた
「未来、久しぶり。全然メッセージ返してくれないから心配して海音を引っ張って来ちゃった」
凛はそう言った
未来はそれでも筆談をせず、無視し続けた。
「み...未来..?」
凛が不安そうな表情を浮かべた、その時に海音が口を開いた
「凛、悪いんだけど未来と二人きりにさせてくれないか」
海音にお願いされた凛は少し悲しげな足取りで病室を出て行った。
「未来、無理に返事をしなくて良いから聞いてくれ、未来は今自分が心の底から嫌いだと思っていると思う、でも僕は未来が好きだそれは絶対に変わらない」
それを聞いた未来は筆談用のノートとペンを手に取って何かを書き始めた
「帰って」
冷たい文字だった
海音は何も言えず
「ごめん」
の一言を言って病室から出て行った。
「どうだった?」
悲しげな表情で病室から出てきた海音に外で待っていた凛が声を掛けた
「何もできなかった」
海音はそれ以上口を開かなかった
病室で独り未来は日記をを開いた、未来はシャーペンを走らせた
(忘れるんだ、全部吐き出して)
そんな思いを胸に未来は日記を書いていく
「今まで何度も自分が生まれてきた事を後悔してきたけど今日程生まれて来なきゃ良かったと思う日は初めて」
そんな言葉しか書けなかった、未来は今にも手に持っているシャーペンで自分を突き刺したいくらいだった。
(もう、寝よう)
未来は日記とシャーペンを片付けて、ベットに倒れ込んで布団に潜った。
朝
未来の目覚めは決して良いと言えるものではなかった。
(海音と凛が出てきた...)
未来がぼーっとしてる間に朝ごはんが運ばれて来た
(いただきます)
心の中でそう言いながら未来は手を合わせた
すると朝ごはんを運んで来てくれた看護師さんが何かを言いたそうにしていた
未来が視線を向けると、看護師さんは話し始めた
「未来ちゃんに会いたいって言ってる人がいるんだけど、どう?会ってみない?」
未来は首を横に振った。
「ちょっとだけで良いからさ」
と、看護師さんは手を引こうとしなかった、未来仕方なく
「ちゃっとだけですよ」
と、筆談ノートに書いて見せた
「ありがとう!未来ちゃん!」
看護師さんは笑顔で喜んだ。
朝ごはんを食べ終えると
「じゃあ行こっか」
未来は看護師さんの後ろについて行った
割と長い距離を歩いて辿り着いたのは精神科がある棟の屋上だった
そこに居たのは、女の子だった
(好亜)
未来はすぐにわかった
(どうして?...)
そんな未来の思考を遮るように好亜は言った
「久しぶりだね、未来」
未来が一歩後退りをすると
「安心して、未来の事はお医者さんから聞いてるから」
「無理に声を出そうとしたり筆談しようとしたりしなくて大丈夫だから」
「私はただ、未来と話したいだけ」
「申し訳ないんですけど、今は未来と二人きりで話をしたいので」
凛がそう言うと看護師さんは屋上の扉を開けて棟内へと入って行った
「ねぇ未来、私の過去の話を聞いて」
「私ね、あ母さんもお父さんもいないんだ、厳密に言うと私を捨ててどっかに行っちゃったの、でね、それを知った周りの人達は何て言ったと思う?可愛そうだとか私は味方だよとか散々そう言われた、でも私には理解できなかった、毎日のように訳もなく叩かれたり酷い事をされたり言われたり、死にたい毎日だった、そんな毎日から解放されたんだから嬉しいに決まってる、それなのに周りの人達はそれを不幸だと言って私を憂いていた、だから私は理解してくれる人をずっと探してた、それでやっと見つけた、それが未来。」
(そんな....)
未来は初めて好亜の過去を知って複雑な感情を抱いた、そんな事も気にせずに好亜は話し続けた
「誰にでも笑顔を振り撒いていた未来を見た瞬間私には解った"嘘"だって、笑顔で偽って本当の自分を隠す。まさに私が親に対してしていた事だった、叩かれても、酷い事をされても、何をされてもずっと笑っていた、それが正解だと思ってた」
「あっ.......」
未来は無理やり声を出そうとしたがやっぱり声は出なかった
「でもそうしているうちに周りとの差を感じるようになってその差を埋める為に笑顔を作って誤魔化してた、それで未来を初めて見た時に私と一緒だって思ってその日の夜に未来の病室に行ったの、未来と話してる時だけは自分に正直になれた、2回目の時はびっくりしたよ、いつもの癖で笑顔を作ったら一瞬でバレちゃったんだから、でもごめんね、未来の辛い昔の話を無理やり話させちゃって」
未来は伝えたい言葉がたくさんあるのにそれを伝えられない自分に心の中で言い聞かせるように言った
(頑張れ私、ここで伝えなかったら絶対に後悔する、もっと自分が嫌いになる)
「わっ...た..」
無理やりにでも声だそうと未来は叫ぶように言った
「私が好亜に話せたのは好亜なら解ってくれるって思ったから私なんかに友達になりたいって言ってくれた好亜なら信じても大丈夫だって思えたから、好亜が無理やり話させたんじゃない」
未来はずっと出せなかった声が出たことに対する驚きと好亜に伝えたい事が溢れてしまいそうだった
「やっぱり私と未来って似た者同士なんだね」
好亜はそう言って空を見上げた
「自分の思ってること、言いたいことを口に出してしまったら周りから蔑まれてしまう、だから私は嘘をついて自分を偽った、本当に未来の言う通りだよ、そうやって自分を偽っているうちにそれが本当の自分だと錯覚してしまう」
好亜の頬には大粒の涙が滴っていた
「そして、それに気がついた時に心の底から自分が嫌いになった、それでも本当の自分には戻れなくて...でも未来の前だったら本当の自分に戻れる気がした、未来の病室で未来と話してる時は本当の自分でいれた...それなのに私未来に酷い事しちゃった、せっかく未来が友達になってくれたのに...自分を出してしまったら誰かを傷つけてしまう、だから私は塞ぎ込んだままの方が良いんだって思った」
好亜は開き直るようにそう言った
「私も....好亜に伝えなきゃいけない事があるの、聞いてくれる?」
「うん」
好亜は小さな声で答えた
「まずは、ごめんなさい。この前私がこの屋上から飛び降りようとした時に好亜の事を突き飛ばしたりなんかして」
「未来は悪くない、私があんな酷い事をしなければあんな事にはならなかったんだから」
「それとね、もう一つ話したい事があるの、昔の私も今の好亜みたいだった、自分の事が心の底から嫌いでそんな自分を隠す為に偽って、塞ぎ込んでた。苛められて独りで泣いているくらいが性に合ってるんだって思ってた、でもねこんな私を"好き"って言ってくる人がいた、だから...私は好亜にとってのそういう存在になりたい」
未来の声は優しかった、それはいつかの日の未来に海音が掛けてくれた声みたいに。
「そういう存在って....未来は、強過ぎるよ.....何で私の為にそこまでできるの?」
凛は言った。
「なんでかな?でも、好亜は私とすっごく似ていてその..なんて言うか、寄り添ってあげられる気がするの、私は多分好亜の全てを理解できないと思うでも、誰よりも近くで寄り添ってあげるくらいは」
それを聞いた好亜は言った
「未来は怖くないの!大切な何かを失うことが!」
「未来と仲良くなったらきっと私はまた未来を傷つけてしまう....」
好亜はその場にしゃがみ込んで蹲った
「好亜になら、いくら傷付けられたって良いよ私」
「えっ....」
好亜は困惑した
「好亜は...本当に私と似てる」
未来は少し笑ってそう言った
「もし好亜が今ここから飛び降りようとしたら、私は喜んで好亜と一緒に飛び降りる」
続けて言う未来に
「私は....私でいて良いのかな?」
好亜は言った
「良いんだよ、好亜は好亜でいて」
未来は好亜に近づいて笑顔で手を差し伸べた
好亜は蹲ったまま未来の手を掴んだ。
「泣いて良い?」
好亜は小さな声で未来に問い掛けた
「好きなだけ泣いて良いんだよ」
未来はそう答えると好亜を抱きしめた。
好亜も何も言わずに未来を抱きしめた。
「未来にそんなこと言われたら、生きたくなっちゃうじゃん...」
未来は綺麗な瞳から溢れ落ちた大粒の涙を隠すように俯いて言った
「好亜顔あげて」
未来の言葉に引かれるように好亜はゆっくりと顔を上げた
「涙拭いてあげる」
未来そう言ってポケットからハンカチを取り出して好亜の涙を拭いてあげた
「ほら、可愛くなった」
未来は好亜の顔を見つめて嬉しそうに言った
「あとこれ」
未来は好亜に可愛い髪飾りを付けてあげた
「私とお揃いだよ」
未来はそう言いながら自分の髪に付けている髪飾りを指さした
「笑って、好亜」
未来は満面の笑顔で言った
「もう未来ったら、しょうがないな」
好亜は嬉しそうに言って、少し照れながら笑った
「これ大事にするね」
好亜は髪に留められた髪飾りに軽く触れながら言った。
「好亜大好きっ!」
未来はそう言いながら好亜に抱きついた。
二人は他愛もない話をして笑い合った、一区切りしたところで
「そろそろ戻ろっか」
未来はそう言って屋上のドアを開いた
階段を降りて行く最中も二人の話は絶えることはなかった、二人の病室がある階には看護師さん達が待っていてくれた。
「二人とも30分も屋上で何をしてたの?」
看護師さんは二人に聞いた
「話してただけですよ」
未来が答えると
「そっか」
と、看護師さんはどこか腑に落ちない表情と未来の声が聴けた驚きからか少しそっけなく言った。
その日の夜
好亜の病室にて
好亜は日記を書いていた
「今日起こったできごとをこの日記に書きたいと思います。私は今日まで自分の事が大嫌いでした、生きているだけで辛いし周りに迷惑を掛けて傷付けてしまう、だったらいっそのこと死んでしまった方が周りも自分自身も幸せなんだ、いつからかそう思ってた。だから今日、あの時未来がしようとした事みたいに自分もあの屋上から飛び降りて死んでしまおう、幸せになろうってそう心に決めて屋上に未来を呼んだのに、私は今も生きている。どうしてだと思う?そう自分に問いかけてみても上手く答えられる気がしない、それどころかまた迷ってしまいそうになる、でももう一度生きると決めた以上、もう迷わない、もう一度自分に向き合ってみよう」
その時未来の病室にて
未来もシャーペンを走らせていた
「サボり気味だった日記を久しぶりに書いてみようと思います。私は好亜にとっての救いに慣れるのかな?そんなふうに考えずにはいられない、だって私が好亜の命を繋いでしまったんだから、生きてて良かったって思えるようにしてあげるんだから、絶対に。でも驚いたな、死のうとしてた私が死のうとしてる人を助けようとするなんて....私ももうちょっとだけ自分に自信を持ってみても良いのかな...そんなふうに思えてくる、海音と凛にも酷いことしちゃったから明日ちゃんと謝らないといけないな。私の人生は辛くて悲しくてつまんない。でもそれが私の人生ならそれはそれで楽しめるものなのかもしれないな」
書き終えた未来は日記帳を閉じて布団に入った。
翌朝
「おはよう」
未来の目覚めは珍しく快調だった、未来は誰かにかける言葉ではなく窓の外に広がる空を見つめてそう呟いた。
プルルプルル
未来は電話をかけていた、相手は海音だ。
「未来...」
眠い目を擦ったような声と共に海音が出た
「おはよう!海音!」
未来は電話越しでも伝わるくらいの笑顔と明るい声で言った。
「声が出るようになったの!」
海音は一気に目が覚めたように言った
「うん、まだちょっと違和感があるけど、でも今は喋ることがすっごく楽しい!」
「それは良かっね!」
その後も他愛もない会話がしばらく続いたら
「それと海音、ごめんね。心配して来てくれたのに....」
「そのことなら、気にしないで」
海音は言った
「でも私...ううん、いつまでも過去に囚われてちゃ...だめ..だよね」
未来は振り絞るように言った。
「凛にも謝らないと、じゃあばいばい。」
未来は涙を堪えながら言った、未来は今にも涙が溢れてしまいそうで、海音の返事が返ってくる前に電話を切った。
少し時間を置いて自分を落ち着かせてから凛に電話を掛けた
「好亜...この前は来てくれたのにごめんね」
さっきの涙を経てあの明るい声は出せなかった
「未来!良かった!心配したんだからね....」
「凛、もしかして泣いてる?」
未来は心配して言った
「泣いてないっ!」
凛はそう言ったけど、明らかに声は涙まじりに震えていた。
「やっぱり、泣いてんじゃん」
未来にはお見通しだった。
「ごめんね、私の所為で凛に辛い思いをさせちゃって」
「未来の所為なんかじゃない、私が弱いだけ」
「凛は...弱くなんかない、強過ぎるんだよ」
「どういうこと...?」
「凛は強いから全部自分で受け止めようとしちゃう、だから耐えられなくなって溢れちゃうの、だからね凛、本当に辛くて耐えられなくなった時は頼って良いんだよ。私が言えた口じゃないかもしれないけど凛にはもうこれ以上辛い思いをしてほしくないから」
未来は胸の内を語った。
「私...信じてた、未来なら絶対大丈夫だって」
凛も未来の言葉に安心したようだった
「私だってまだ上手く声を出せないし、自分に自信が無いし、死にたい気持ちだって消えない」
「未来はもし今私が毒薬を渡して"一緒に飲もう"って言ったら飲んでくれる?」
不意の質問だったけど未来は迷わなかった
「飲むわけないじゃん」
「どうして?」
「凛には死んでほしくない、それに私にも生きる理由があるから」
未来はそう答えた
「なんか..未来っぽいね、そういうの」
「これが私なのかな?」
凛の言葉に自然とそんな言葉が出てきた
「私は今も私が何なのよくわからない、でも凛がそう言うならそれが私なのかも」
「そういうところも未来っぽい」
凛は微笑み声でそう言った。
「ありがとうございました」
未来はお辞儀をして保健室のドアを閉めた。
(私は笑っていないといけない)
そう思って靴を履く。結局あの後みんなが帰るまで保健室に篭っていた。
雨が降りそうな曇り空の下を歩き出した、その間未来は考え事をしていた
(なんで生きているんだろう?)
もう。死んだって同じじゃないか。
じゃあ何故生きているのか、未来には解らなかった
そんな事思いながら歩いていた未来の視界にある人たちが映った
(あっ....)
苛めっ子達だった。でもいつもの高圧的な態度をした苛めっ子達ではなかった
(怯えてる...)
未来にはわかった。それによく見ると苛めっ子達に向かって何かを言ってる人達がいた、未来は電信柱の影に隠れてその人達が何を言っているのか耳を澄ませた
「何で金持って来てないんだよっ!」
「ごめんなさい、明日までには絶対用意しますので」
「は?何言ってんの?今すぐだよっ!」
その人達は今にも苛めっ子達に殴り掛かりそうな勢いだった
(助けなきゃ)
未来の脳裏にはそんな思いが過った、自分を死なせる程酷い事をたくさんしてきた人達なのに。
未来も何でそう思ったのか上手く言葉で説明できる自信はなかった
でも此処で自分に嘘をついたら、もっと自分が嫌いになる気がした。
そう感じ時すでに未来は苛めっ子達に向かって走り出していた
「やめてくださいっ!」
未来が双方の間に割り込んだ時、ちょうど相手の拳が降り掛かってきた。
その拳は勢い良く未来の頭に当たった、未来はそのまま地面に叩き付けられた
未来はそのまま意識を失ってしまった。
目が覚めた時未来の視界に映ったのは白い天井だった
「未来っ!私のことわかる?」
「良かった!未来!」
「海音...凛..どうしたの....?」
未来は目覚めたばかりで、まだ上手く回らない口で尋ねた
「目が覚めた様ですね、良かった」
そう言いながら部屋に入って来たのはおそらくお医者さんだろう
「まだ、目覚めたばかりで混乱する事も多いと思いますがゆっくりで良いので自分と向き合ってみてください」
未来は自分が苛めっ子達を助けようとしてこうなった事をどう捉えたら良いのかわからなかった。
その時病室のドアが開いた
「えっ..」
未来は言葉を失った、そこにいたのは紛れもなく未来を苛めてた苛めっ子達だ。
「あの...助けてくれてありがとう..それと...本当にごめんなさい」
苛めっ子達揃ってそう言って頭を下げた
未来は何も言えなかった
「あっ....」
(声が...でない..)
動揺した未来を見て後ろで見守ってくれていたお医者さんが何かを察したのか
「そろそろ診察の時間ですので、申し訳ないのですが今日はお帰り下さい」
そう言われた苛めっ子達は致し方なく病室を後にした
「初音さんこちらへ」
看護師さんに誘導されて未来は診察室に入った
未来は何も聞かされておらず何が何だか全く理解が出来なかった
「声、出せる?」
椅子に座った私に向かってお医者さんは言った
「あっ...あっ..」
未来は言われた通りにしてみても思うように声が出せなかった
「落ち着いてください、これを使って会話をしましょう」
そう言ってお医者さんはノートとペンを未来に差し出した。
未来はそれを受け取った
「既にお母さんには連絡済みなのでご安心下さい、それと...正直に申し上げますと初音さんは失声症だと思われます。まだ、精密検査をしていないので確かなの事は言えませんが十中八九そうだと思われます」
未来が首を傾げると
「失声症とは心因性発声障害とも呼ばれる、強いストレスや心的外傷などの心因性の原因とする突然声が出なくなってしまう精神的な病気の事です」
"治るんですか?"
未来はノートに書いてみせた
「治ります、ただ先程も言った通り精神的な物ですのでどれくらいで治るのかは初音さん次第と言ったところです」
その後は一通り検査をして未来は病室に戻った
(どうして.....)
未来は勢い良くベットに倒れ込んで布団に顔を沈めた
(ふざけんな!)
未来は心の中で布団に深く顔を沈めたまま叫んだ、口は動くのに声は出ない
未来は脚をバタバタさせ止まらない涙で布団を濡らした
(助けて)
心の声は届かない、届かないでほしい。もし届いてしまったら、もっと自分が嫌いになる
(もう嫌いだから今更どうでも良いか)
そんな言葉が未来の頭を過った
(結局最後はこうなるんだ...今まで何度も次は大丈夫って信じて来てもやっぱりダメだった...だったら最初から自分に期待なんてするんじゃなかった....)
(恋なんて...するんじゃなかった..)
(友達になんて...なるんじゃなかった..)
(独りでいよう)
未来は心にそう誓った。
人と話すのは検査の時だけの最低限度に抑えて、海音や凛からのメッセージは無視。お母さんとも全くと言っていい程喋ることはなかった。
入院と言えば学校にも行かなくて良い。
それで良かった
ここ数日毎日のように海音や凛からメッセージがきている。
そんな日々を過ごしていた
一週間後
「未来ちゃん、お友達が二人来てくれたよ」
看護師さんがそう言うと病室に海音と凛が入ってきた
「未来、久しぶり。全然メッセージ返してくれないから心配して海音を引っ張って来ちゃった」
凛はそう言った
未来はそれでも筆談をせず、無視し続けた。
「み...未来..?」
凛が不安そうな表情を浮かべた、その時に海音が口を開いた
「凛、悪いんだけど未来と二人きりにさせてくれないか」
海音にお願いされた凛は少し悲しげな足取りで病室を出て行った。
「未来、無理に返事をしなくて良いから聞いてくれ、未来は今自分が心の底から嫌いだと思っていると思う、でも僕は未来が好きだそれは絶対に変わらない」
それを聞いた未来は筆談用のノートとペンを手に取って何かを書き始めた
「帰って」
冷たい文字だった
海音は何も言えず
「ごめん」
の一言を言って病室から出て行った。
「どうだった?」
悲しげな表情で病室から出てきた海音に外で待っていた凛が声を掛けた
「何もできなかった」
海音はそれ以上口を開かなかった
病室で独り未来は日記をを開いた、未来はシャーペンを走らせた
(忘れるんだ、全部吐き出して)
そんな思いを胸に未来は日記を書いていく
「今まで何度も自分が生まれてきた事を後悔してきたけど今日程生まれて来なきゃ良かったと思う日は初めて」
そんな言葉しか書けなかった、未来は今にも手に持っているシャーペンで自分を突き刺したいくらいだった。
(もう、寝よう)
未来は日記とシャーペンを片付けて、ベットに倒れ込んで布団に潜った。
朝
未来の目覚めは決して良いと言えるものではなかった。
(海音と凛が出てきた...)
未来がぼーっとしてる間に朝ごはんが運ばれて来た
(いただきます)
心の中でそう言いながら未来は手を合わせた
すると朝ごはんを運んで来てくれた看護師さんが何かを言いたそうにしていた
未来が視線を向けると、看護師さんは話し始めた
「未来ちゃんに会いたいって言ってる人がいるんだけど、どう?会ってみない?」
未来は首を横に振った。
「ちょっとだけで良いからさ」
と、看護師さんは手を引こうとしなかった、未来仕方なく
「ちゃっとだけですよ」
と、筆談ノートに書いて見せた
「ありがとう!未来ちゃん!」
看護師さんは笑顔で喜んだ。
朝ごはんを食べ終えると
「じゃあ行こっか」
未来は看護師さんの後ろについて行った
割と長い距離を歩いて辿り着いたのは精神科がある棟の屋上だった
そこに居たのは、女の子だった
(好亜)
未来はすぐにわかった
(どうして?...)
そんな未来の思考を遮るように好亜は言った
「久しぶりだね、未来」
未来が一歩後退りをすると
「安心して、未来の事はお医者さんから聞いてるから」
「無理に声を出そうとしたり筆談しようとしたりしなくて大丈夫だから」
「私はただ、未来と話したいだけ」
「申し訳ないんですけど、今は未来と二人きりで話をしたいので」
凛がそう言うと看護師さんは屋上の扉を開けて棟内へと入って行った
「ねぇ未来、私の過去の話を聞いて」
「私ね、あ母さんもお父さんもいないんだ、厳密に言うと私を捨ててどっかに行っちゃったの、でね、それを知った周りの人達は何て言ったと思う?可愛そうだとか私は味方だよとか散々そう言われた、でも私には理解できなかった、毎日のように訳もなく叩かれたり酷い事をされたり言われたり、死にたい毎日だった、そんな毎日から解放されたんだから嬉しいに決まってる、それなのに周りの人達はそれを不幸だと言って私を憂いていた、だから私は理解してくれる人をずっと探してた、それでやっと見つけた、それが未来。」
(そんな....)
未来は初めて好亜の過去を知って複雑な感情を抱いた、そんな事も気にせずに好亜は話し続けた
「誰にでも笑顔を振り撒いていた未来を見た瞬間私には解った"嘘"だって、笑顔で偽って本当の自分を隠す。まさに私が親に対してしていた事だった、叩かれても、酷い事をされても、何をされてもずっと笑っていた、それが正解だと思ってた」
「あっ.......」
未来は無理やり声を出そうとしたがやっぱり声は出なかった
「でもそうしているうちに周りとの差を感じるようになってその差を埋める為に笑顔を作って誤魔化してた、それで未来を初めて見た時に私と一緒だって思ってその日の夜に未来の病室に行ったの、未来と話してる時だけは自分に正直になれた、2回目の時はびっくりしたよ、いつもの癖で笑顔を作ったら一瞬でバレちゃったんだから、でもごめんね、未来の辛い昔の話を無理やり話させちゃって」
未来は伝えたい言葉がたくさんあるのにそれを伝えられない自分に心の中で言い聞かせるように言った
(頑張れ私、ここで伝えなかったら絶対に後悔する、もっと自分が嫌いになる)
「わっ...た..」
無理やりにでも声だそうと未来は叫ぶように言った
「私が好亜に話せたのは好亜なら解ってくれるって思ったから私なんかに友達になりたいって言ってくれた好亜なら信じても大丈夫だって思えたから、好亜が無理やり話させたんじゃない」
未来はずっと出せなかった声が出たことに対する驚きと好亜に伝えたい事が溢れてしまいそうだった
「やっぱり私と未来って似た者同士なんだね」
好亜はそう言って空を見上げた
「自分の思ってること、言いたいことを口に出してしまったら周りから蔑まれてしまう、だから私は嘘をついて自分を偽った、本当に未来の言う通りだよ、そうやって自分を偽っているうちにそれが本当の自分だと錯覚してしまう」
好亜の頬には大粒の涙が滴っていた
「そして、それに気がついた時に心の底から自分が嫌いになった、それでも本当の自分には戻れなくて...でも未来の前だったら本当の自分に戻れる気がした、未来の病室で未来と話してる時は本当の自分でいれた...それなのに私未来に酷い事しちゃった、せっかく未来が友達になってくれたのに...自分を出してしまったら誰かを傷つけてしまう、だから私は塞ぎ込んだままの方が良いんだって思った」
好亜は開き直るようにそう言った
「私も....好亜に伝えなきゃいけない事があるの、聞いてくれる?」
「うん」
好亜は小さな声で答えた
「まずは、ごめんなさい。この前私がこの屋上から飛び降りようとした時に好亜の事を突き飛ばしたりなんかして」
「未来は悪くない、私があんな酷い事をしなければあんな事にはならなかったんだから」
「それとね、もう一つ話したい事があるの、昔の私も今の好亜みたいだった、自分の事が心の底から嫌いでそんな自分を隠す為に偽って、塞ぎ込んでた。苛められて独りで泣いているくらいが性に合ってるんだって思ってた、でもねこんな私を"好き"って言ってくる人がいた、だから...私は好亜にとってのそういう存在になりたい」
未来の声は優しかった、それはいつかの日の未来に海音が掛けてくれた声みたいに。
「そういう存在って....未来は、強過ぎるよ.....何で私の為にそこまでできるの?」
凛は言った。
「なんでかな?でも、好亜は私とすっごく似ていてその..なんて言うか、寄り添ってあげられる気がするの、私は多分好亜の全てを理解できないと思うでも、誰よりも近くで寄り添ってあげるくらいは」
それを聞いた好亜は言った
「未来は怖くないの!大切な何かを失うことが!」
「未来と仲良くなったらきっと私はまた未来を傷つけてしまう....」
好亜はその場にしゃがみ込んで蹲った
「好亜になら、いくら傷付けられたって良いよ私」
「えっ....」
好亜は困惑した
「好亜は...本当に私と似てる」
未来は少し笑ってそう言った
「もし好亜が今ここから飛び降りようとしたら、私は喜んで好亜と一緒に飛び降りる」
続けて言う未来に
「私は....私でいて良いのかな?」
好亜は言った
「良いんだよ、好亜は好亜でいて」
未来は好亜に近づいて笑顔で手を差し伸べた
好亜は蹲ったまま未来の手を掴んだ。
「泣いて良い?」
好亜は小さな声で未来に問い掛けた
「好きなだけ泣いて良いんだよ」
未来はそう答えると好亜を抱きしめた。
好亜も何も言わずに未来を抱きしめた。
「未来にそんなこと言われたら、生きたくなっちゃうじゃん...」
未来は綺麗な瞳から溢れ落ちた大粒の涙を隠すように俯いて言った
「好亜顔あげて」
未来の言葉に引かれるように好亜はゆっくりと顔を上げた
「涙拭いてあげる」
未来そう言ってポケットからハンカチを取り出して好亜の涙を拭いてあげた
「ほら、可愛くなった」
未来は好亜の顔を見つめて嬉しそうに言った
「あとこれ」
未来は好亜に可愛い髪飾りを付けてあげた
「私とお揃いだよ」
未来はそう言いながら自分の髪に付けている髪飾りを指さした
「笑って、好亜」
未来は満面の笑顔で言った
「もう未来ったら、しょうがないな」
好亜は嬉しそうに言って、少し照れながら笑った
「これ大事にするね」
好亜は髪に留められた髪飾りに軽く触れながら言った。
「好亜大好きっ!」
未来はそう言いながら好亜に抱きついた。
二人は他愛もない話をして笑い合った、一区切りしたところで
「そろそろ戻ろっか」
未来はそう言って屋上のドアを開いた
階段を降りて行く最中も二人の話は絶えることはなかった、二人の病室がある階には看護師さん達が待っていてくれた。
「二人とも30分も屋上で何をしてたの?」
看護師さんは二人に聞いた
「話してただけですよ」
未来が答えると
「そっか」
と、看護師さんはどこか腑に落ちない表情と未来の声が聴けた驚きからか少しそっけなく言った。
その日の夜
好亜の病室にて
好亜は日記を書いていた
「今日起こったできごとをこの日記に書きたいと思います。私は今日まで自分の事が大嫌いでした、生きているだけで辛いし周りに迷惑を掛けて傷付けてしまう、だったらいっそのこと死んでしまった方が周りも自分自身も幸せなんだ、いつからかそう思ってた。だから今日、あの時未来がしようとした事みたいに自分もあの屋上から飛び降りて死んでしまおう、幸せになろうってそう心に決めて屋上に未来を呼んだのに、私は今も生きている。どうしてだと思う?そう自分に問いかけてみても上手く答えられる気がしない、それどころかまた迷ってしまいそうになる、でももう一度生きると決めた以上、もう迷わない、もう一度自分に向き合ってみよう」
その時未来の病室にて
未来もシャーペンを走らせていた
「サボり気味だった日記を久しぶりに書いてみようと思います。私は好亜にとっての救いに慣れるのかな?そんなふうに考えずにはいられない、だって私が好亜の命を繋いでしまったんだから、生きてて良かったって思えるようにしてあげるんだから、絶対に。でも驚いたな、死のうとしてた私が死のうとしてる人を助けようとするなんて....私ももうちょっとだけ自分に自信を持ってみても良いのかな...そんなふうに思えてくる、海音と凛にも酷いことしちゃったから明日ちゃんと謝らないといけないな。私の人生は辛くて悲しくてつまんない。でもそれが私の人生ならそれはそれで楽しめるものなのかもしれないな」
書き終えた未来は日記帳を閉じて布団に入った。
翌朝
「おはよう」
未来の目覚めは珍しく快調だった、未来は誰かにかける言葉ではなく窓の外に広がる空を見つめてそう呟いた。
プルルプルル
未来は電話をかけていた、相手は海音だ。
「未来...」
眠い目を擦ったような声と共に海音が出た
「おはよう!海音!」
未来は電話越しでも伝わるくらいの笑顔と明るい声で言った。
「声が出るようになったの!」
海音は一気に目が覚めたように言った
「うん、まだちょっと違和感があるけど、でも今は喋ることがすっごく楽しい!」
「それは良かっね!」
その後も他愛もない会話がしばらく続いたら
「それと海音、ごめんね。心配して来てくれたのに....」
「そのことなら、気にしないで」
海音は言った
「でも私...ううん、いつまでも過去に囚われてちゃ...だめ..だよね」
未来は振り絞るように言った。
「凛にも謝らないと、じゃあばいばい。」
未来は涙を堪えながら言った、未来は今にも涙が溢れてしまいそうで、海音の返事が返ってくる前に電話を切った。
少し時間を置いて自分を落ち着かせてから凛に電話を掛けた
「好亜...この前は来てくれたのにごめんね」
さっきの涙を経てあの明るい声は出せなかった
「未来!良かった!心配したんだからね....」
「凛、もしかして泣いてる?」
未来は心配して言った
「泣いてないっ!」
凛はそう言ったけど、明らかに声は涙まじりに震えていた。
「やっぱり、泣いてんじゃん」
未来にはお見通しだった。
「ごめんね、私の所為で凛に辛い思いをさせちゃって」
「未来の所為なんかじゃない、私が弱いだけ」
「凛は...弱くなんかない、強過ぎるんだよ」
「どういうこと...?」
「凛は強いから全部自分で受け止めようとしちゃう、だから耐えられなくなって溢れちゃうの、だからね凛、本当に辛くて耐えられなくなった時は頼って良いんだよ。私が言えた口じゃないかもしれないけど凛にはもうこれ以上辛い思いをしてほしくないから」
未来は胸の内を語った。
「私...信じてた、未来なら絶対大丈夫だって」
凛も未来の言葉に安心したようだった
「私だってまだ上手く声を出せないし、自分に自信が無いし、死にたい気持ちだって消えない」
「未来はもし今私が毒薬を渡して"一緒に飲もう"って言ったら飲んでくれる?」
不意の質問だったけど未来は迷わなかった
「飲むわけないじゃん」
「どうして?」
「凛には死んでほしくない、それに私にも生きる理由があるから」
未来はそう答えた
「なんか..未来っぽいね、そういうの」
「これが私なのかな?」
凛の言葉に自然とそんな言葉が出てきた
「私は今も私が何なのよくわからない、でも凛がそう言うならそれが私なのかも」
「そういうところも未来っぽい」
凛は微笑み声でそう言った。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる